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完全バイヤーズガイド!歴代シビック タイプRを徹底解説!

完全バイヤーズガイド!歴代シビック タイプRを徹底解説!

シビック・タイプR。この名前を聞くと、胸アツになるクルマ好きは多いのではないでしょうか。常にドライビングプレジャーを追求し続けてきた、シビック・タイプRの24年間の歴史を振り返っていきましょう!

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ホンダの魂! それがシビック・タイプR

《写真提供:response》ホンダ・シビック・タイプR Limited Edition

「タイプR」という名称。それは、ホンダとユーザーの間の約束だと言えます。

その約束とは、「タイプR」と名のつくモデルは、その時々のホンダの最高の技術を投入し、ドライバーに最高のドライビングプレジャーを提供すると言うもの。ホンダが初めて世に問うたNSX タイプR以来、ホンダはその約束を忠実に守り続けています。

「タイプR」は、1992年のNSX タイプRの登場以来、約30年の歴史の中でNSX、インテグラ、シビックの3つの車種に設定されています。そのなかで、最も長くタイプR モデルをラインナップし続けているのが、シビックなのです。

シビックは、ホンダのベーシックカーとして、ごく普通のユーザーが普段の生活の足にする乗用車でありながら、一方で、初代から連綿と続く「ホットハッチ」でもあり続けています。日本を代表するホットハッチ、シビックの最強のスポーティグレードが、シビック タイプRなのです。

1997年に発売された初代FK9型シビック タイプR以来、現行型のFK8 タイプRまで6代のタイプRが発売されています。その約24年にわたるシビック タイプRの歴史と、モデルの特徴、そして中古車事情を徹底的に解説します。

歴代タイプR、熱い走りの歴史を紹介!

もはや伝説の名車!初代 EK9

《写真提供:response》EK9 シビック タイプR

初代シビック タイプRは1997年に発売されました。ホンダのタイプRシリーズとしては、、NSX タイプR、インテグラ タイプRに続く、3番目のデビューとなります。

発売当時の型式は、E-EK9。そのため初代シビックタイプRは、EK9タイプRと呼ばれています。

《写真提供:response》EK9 シビック タイプR

EK9タイプRには、185PS/8,200rpmを発揮するB16B型 1.6L直列4気筒DOHCエンジンが搭載されていました。他のタイプR一族と同じく、可変バルブタイミング機構のV-TECを備え、1リッターあたりの出力が100pを超える、自然吸気エンジンとしては驚異的な高出力を誇るエンジンでした。

そのパワーを受け止める足回りも専用にチューンされ、フロントにトルク感応型ヘリカルLSDを装着しトラクションを確保。コーナーの出口で積極的にアクセルを踏めるクルマに仕上げました。

ブレーキの強化も抜かりなく、ブレーキローターの容量アップで耐フェード性が向上。専用チューンのスポーツABSを装備し、軽量ボディを活かした鋭いブレーキングが可能でした。

《写真提供:response》EK9 シビック タイプR

室内は、タイプRの証である真っ赤なレカロシートに、MOMO製ステアリングとチタン製シフトノブを装備。これで血がたぎらないヤツはクルマ好きじゃない!と断言できる仕立てになっていました。

エクステリアも純白のグランプリホワイトに身を包み、ノーズに光る赤いホンダのエンブレム「赤バッチ」が、タイプRである事を主張しました。

EK9タイプRは、コンパクトなボディサイズと軽い車重のため、日本の峠道にジャストサイズなマシンとなっていました。また、1.8L V-TEC エンジンは極めて丈夫なエンジンで、比較的安価にサーキット走行を楽しめました。

そして、EK9タイプRが何より素晴らしかったのは、新車価格が約200万円と、当時の若者でも少し頑張れば買える値段だった事です。実際、多くの若者がEK9タイプRを購入し、峠やサーキットにデビューしました。

デビューイヤーの1997年当時は、走り屋マンガ「イニシャルD」が大人気で連載されていた事もあり、「走り屋」は一大ムーブメントになっていました。その走り屋の世界で、FF乗りの究極のマシンとして、EK9タイプRは輝いたのです。

EK9タイプRの中古車価格は、はっきり言って高騰しています。これは、EK9が既に「伝説の名車」として取り扱われていて、コレクターズアイテムになっているからです。

2021年3月現在で、EK9の最高価格の個体はなんと798万円!新車価格の4倍にまで跳ね上がっています。それ以外でも、コンディションの良い個体は400万円台のプライスを付けており、もはや「気軽に買える」中古車ではなくなっています。

逆に言えば、それだけの金額を出してもEK9が欲しい!と思う人が多いと言う事にもなり、EK9の人気の高さを物語っています。

100万円台後半〜200万円台のモデルは、10万キロを大きく超える走行距離となっていて、コンディションの見極めが必要です。EK9は、今までのオーナーが峠を攻めたり、サーキットを走ったりと、過酷な環境で使われている個体も多いので、その点、注意が必要です。

また、このようなスポーティカーの常として、様々なパーツが社外品に交換されて場合も多いので、それらのパーツが車検対応であるのか等の確認も必要となります。社外パーツは純正品に比べて耐久性が低い場合が多いので、特にマフラーのような部品は穴が空いていないか等の確認を忘れないようにしましょう。

むしろ、EK9ぐらいの古い車になると、フルノーマルの個体のほうがより価値が高くなる傾向にあります。

フルノーマルのコンディションのいいビカ物のEK9を選ぶのか、比較的安価な個体を買って、今でも豊富に販売されている社外パーツに交換して楽しむのか、いろいろな選択肢がある、とも言えます。

何れにせよ、「お買い得」なEK9はほぼ無い状況ですので、ご自分がどの様に楽しみたいかを明確にしてお探しになる事をオススメします。

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実は帰国子女!2代目 EP3

《写真提供:response》EP3 シビック タイプR

2代目シビック タイプRとなるEP3型は、2001年12月に販売が開始されました。

実は、EP3 タイプRは帰国子女。ホンダのイギリス工場で生産されたクルマを日本に持ってきて販売する「輸入車」なのです。

なぜ、当時、日本を代表する乗用車だったシビックのタイプRバージョンが輸入車になってしまったのでしょうか。それは、EP3 タイプRはもともと日本で売る予定がなかった、というホンダの事情があります。

タイプRのベースとなるシビックは、7代目へモデルチェンジするにあたり、クルマとしてのコンセプトを大幅に変更しました。従来の、コンパクトでキビキビ走るという路線から一転、スペースユーティリティを重視するという方向で、7代目シビックは開発されたのです。

これは、はからずもホンダ・オデッセイが火を付けたミニバンブームが日本の自動車市場に大きな影響を与え、より広い室内空間を求めるようになっていたユーザーニーズに対応するための方針転換でした。

また、同時期に発売された初代フィットが、センタータンクレイアウトのメリットを最大限に活かして、コンパクトカーとは思えない広い室内空間を達成したため、上位車種のシビックとしては、フィットよりもさらに広い室内空間を与えなければならなかった、というホンダのラインナップ上の理由もあります。

そのため、7代目シビックはミニ・ミニバンのようなずんぐりとしたフォルムとなり、ウォークスルーが可能なミニバンのような使い勝手を持つモデルとして開発されました。日本国内の販売は5ドアモデルのみを想定しており、日本国内で生産するシビックは5ドアモデルのみでした。

ホンダとしては、従来のスポーティカー路線はインテグラに任せる事にし、シビックはより実用車としての使い勝手を追求する方針だったのです。

《写真提供:response》EP3 シビック タイプR

ところが、7代目シビックが5ドアモデルのみとなってタイプRの販売もない事が明らかになると、日本のモータージャーナリズムの間には衝撃が広がりました。日本のスポーティハッチバックの象徴だったシビックが、ミニバンになってしまうなんて!ましてや、タイプRも発売されないなんて!と言う反響は、ホンダの予想を上回るものでした。

ましてや、ヨーロッパ市場向けには3ドアモデルが開発されており、ホンダのイメージリーダーとしての「タイプR」モデルの開発も行われている事が明らかになると、「なぜタイプRを国内導入しないんだ!」と言う声が高まり、急遽、ヨーロッパ市場向けに開発されていたタイプRを、日本国内にも導入する事になったのです。

ただ、日本国内には3ドアモデルの生産設備がありませんから、EP3 タイプRは全量、イギリス工場で生産されたものを輸入する事になり、「シビックなのに輸入車」という状況になったのです。

《写真提供:response》EP3 シビック タイプR

EP3 タイプRは、先代のEK9からエンジンを換装しており、新たにK20A型 i-VTECエンジンを搭載しました。K20A型は排気量が2,000ccで、先代のB16Bにくらべ排気量を400cc拡大しています。排気量アップにより、エンジン出力は先代の185psから215psと、30psもの大幅なパワーアップがなされました。

ホンダは、タイプR用のエンジンには絶対に手を抜かないので、K20Aは等長ショートインテークマニホールドやデュアルエキゾーストマニホールド等、給排気系の専用のパーツが与えられ、燃焼効率を極限まで追求しています。また、自然吸気エンジンがパワーを追い求める際の最大の阻害要因であるフリクションロスも徹底的に低減する事で、8,400回転をレブリミットとする、ホンダらしい超高回転型エンジンになりました。

EP3 タイプRでは、シャシーも徹底的に強化されています。先代比で動剛性がフロント左右で65%、リア上下で70%向上、静剛性では、曲げで20%、ねじりで80%向上しており、限界性能での優れたハンドリングレスポンスを達成しています。

シャシーの開発においては、ヨーロッパではニュルブルクリンク北コースで、国内では「北海道のニュルブルクリンク」と呼ばれるホンダ鷹栖テストコースでそれぞれ徹底的な走り込みを行い、妥協のない開発が実施されました。

この様に、エンジンもシャシーも確実に進化したEP3 タイプRは、「タイプR」の名に恥じないハイパフォーマンスカーに仕上がっているのです。

《写真提供:response》EP3 シビック タイプR

日本のモータージャーナリズムからの強い要望に答えて、満を持して開発したEP3 タイプRは、2001年12月に国内販売が開始されました。ホンダとしては、マスコミの反響も大きかった事から、販売面での期待をもっていたのかもしれません。

しかし、残念ながら、EP3 タイプRは全然売れませんでした。要因はいろいろ考えられますが、スタイリングが先代EK9に比べて、かなりずんぐりむっくりになってしまった事もあるのかもしれません。

EP3はEK9にくらべ、全長は50mm短くなっていますが、全高が50mmも高くなっています。短く、高くなってしまっているので、視覚的にはあまりスポーティに見えなかったのかも・・・。

ホンダとしては、EK9からの買い替え需要も期待していたのかもしれません。

でも、EK9で峠やサーキットを攻めていた走り屋さんたちも、年齢が上がって、結婚して子供ができたりして、3ドアの乗り心地の悪いタイプRじゃなくて、ミニバンのストリームやステップワゴンを買うようにパートナーさんから強く言われて泣く泣く購入を断念した、という可能性もあります。

また、長年続いてきたシビックのワンメイクレースが、インテグラにとって変わられたり、グループAやJTCC等のツーリングカーレースが終了し、シビックがモータースポーツで活躍する場が無くなってしまったのも、タイプR需要の減少に繋がってしまったのかもしれませんね。

一方、ヨーロッパ市場ではEP3 タイプRは好評を持って迎えられ、イギリスやドイツ等ではそれなりの台数が販売されました。やはり、もともとヨーロッパ市場向けに開発されたクルマなので、ヨーロッパでは売れたと言う事なのでしょうね。

また、イギリスで大人気のツーリングカーレース、BTCC(British Turing Car Championship)にも参戦し、ホンダのモータースポーツイメージの向上に貢献しました。

国内販売が振るわず、「最も地味なシビック タイプR」と言われてしまう事もあるEP3。でも、中古車を買う際には、その不人気さが逆にメリットになったりします。何故なら、EP3 タイプR中古車価格は、安いからです。

カルト的な人気になって中古車価格が高騰しているEK9にくらべ、EP3はクルマとしての性能は大幅に向上しているのに、中古車価格は大幅に安い。これは、本当にタイプRが好きな人にとっては素晴らしい状況ですね。

800万円なんて言うとんでもなく高い個体が存在するEK9に比べ、2021年3月時点でのEP3の最高価格の個体は268万円。新車価格が220万円ほどだったので、新車よりも高い価格にはなっていますが、わずか3.6万キロしか走っていない希少性な個体と言う点を考えれば、まあまあ納得のプライスと言えるでしょう。

10万キロ前後の走行距離の個体は、だいたい120〜130万円前後と、他のシビック タイプRに比べればかなりリーズナブルなお値段になっています。シビック タイプRの中古車価格は、全体的に上昇傾向にあると言われていますが、EP3は例外のようです。

繰り返しになりますが、EP3はクルマとしての性能は大幅にEK9よりも向上していますので、EK9ではなくて、「シビックのタイプRに乗りたい!」と思う方にとっては、EP3タイプRはリーズナブルで魅力的な選択肢となり得るでしょう。

一点、注意をしなければならいのは、EP3が輸入車であると言う事。EP3も発売から20年経っているクルマですので、純正部品の欠品が発生している事は容易に想像できます。さらに、EP3は輸入車である事から、ボディ外板やバンパー等の大きな部品の国内在庫があるのかも心配です。

ホンダのクルマではありますが、一般的な国産車とは少し部品供給の状況が違う、という点は理解しておいたほうがいいかもしれません。

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ファミリーカーにも使える? 3代目 FD2

《写真提供:response》FD2 シビック タイプR

シビック タイプRの歴史を振り返ると、ベース車であるシビックのモデルチェンジに振り回されている、という面が浮かび上がってきてきます。

シビック タイプRの3代目となるFD2型は、先代、先々代と続いた3ドアハッチバックボディから決別し、4ドアセダンとなりました。これは、ベース車の8代目シビックがハッチバックモデルを廃止し、セダンのみの構成となったためです。

残念ながら、7代目シビックの5ドアハッチバックモデルはホンダが期待した程の販売実績を残すことができませんでした。理由は身内にあって、1クラス下のホンダ・フィットが広い室内空間を評価されて大ヒットとなり、従来のシビックのマーケットを奪ってしまったからです。

当時のホンダのディーラーでは、シビックの買い替えに来た顧客が、フィットを見て「ああ、これで十分だからこっちにしよう」と言う光景が繰り返されていたそうで、ホンダの「ベーシックなコンパクトカー」と言う立場は、フィットが担う事になりました。

そのため、シビックはフィットとの差別化として上級移行する事になり、ハッチバックを廃止してセダン専用車となりました。併せてボディサイズも拡大され、8代目シビックはシビックの歴史上初の「3ナンバー」車となりました。

FD2 タイプRは、シビック タイプRの歴史上、唯一の4ドアセダンモデルですが、この4ドアセダンという点が販売上の思わぬメリットとなりました。

3ドアハッチバックでは、パートナーからダメ出しされていた走り屋さん達が、「4ドアのセダンだったらいいでしょ!?」と言葉巧みにパートナーを説得し、FD2 タイプRを購入したからです。

《写真提供:response》FD2 シビック タイプR

実際、4ドアセダンボディはハッチバックに比べて重くなるものの、隔壁が一枚増えるためにボディ剛性の確保がしやすいと言うメリットがあります。また、シビックが3ナンバー車となった事でボディの全幅も広がり、併せてトレッド幅も拡大する事ができるようになりました。

さらに、幅の広いボディであれば、よりグリップ力に優れた幅の広いタイヤを履かせる事も可能になります。

FD2 タイプRを開発するにあたって問題となったのは、EP3 タイプRに比べて重量が増加したボディでした。エンジンは、EP3に引き続きK20Aを採用する事が決まっていましたから、もともと高性能なK20Aをさらにパワーアップする事は容易ではありません。

そのため、FD2ではボディ幅の拡大やホイールベースの延長によって、ポテンシャルがアップしたシャシー性能を徹底的に引き出す方向での開発が行われました。

今までのシビック タイプRは、「サーキットでも峠でも走れる」というコンセプトでしたが、FD2ははっきりと「サーキット最速」を目標とし、とにかくコーナリングスピードを上げるためのサスペンションチューンングが行われました。

まず、飛び道具としてブリジストンと共同開発したハイグリップタイヤ「ポテンザRE070」を投入。サスペンションもバネレートの大幅アップを筆頭に、減衰力を強化した専用ダンパーや、強化スタビライザー、強化ブッシュ等々のタイプR 専用品を惜しげもなく投入し、結果、FD2はスーパーコーナリングマシンとなったのです。

《写真提供:response》FD2 シビック タイプR

ただ、その代償として、FD2 タイプRの乗り心地の悪さは発売当初から大きな話題になりました。

「サーキットベスト」というコンセプトで開発されたFD2 タイプRのサスペンションは、バネもダンパーもガチガチに固められていて、サーキットのようなスムーズな路面では無類のコーナリングスピードを発揮するものの、一般道では路面の凹凸をそのまま乗員に伝えるようなセッティングになっていました。

実際、街中で走っているFD2 タイプRは、路面の細かい凹凸をサスペンションが吸収してくれないので、そのままボディも前後に小刻みに揺れていて、ものすごく乗り心地が悪そうに見えます。

とても、ホンダと言う大メーカーが発売した市販車の動きには見えず、ほとんどチューンングカーのようです。

《写真提供:response》FD2 シビック タイプR

FD2 タイプRは、4ドアボディという実用性の高さが評価されたのか、歴代のシビック タイプRのなかで2番目に売れたモデル(1位は初代EK9 タイプR)となっています。

おそらく、4ドアセダンと言う事で、タイプRを買うときの敷居がだいぶ低くなったのだろうと推測されますが、家族持ちの人は、買った後にご家族から「なんなの!?この乗り心地の悪さは!」と劇詰めされなかったのでしょうか?

そんな事が心配になってしまうほど、標準のFD2 タイプRの乗り心地は激悪でした。

一方、そのおかげで乗り心地向上を目的に、ダンパーやスプリングを社外品に交換するオーナーが続出したので、アフターマーケット業界にとってはFD2 タイプRは美味しいクルマだったようです。

《写真提供:response》FD2 シビック タイプR

中古車のFD2 タイプR、はっきり言って高いです。新車時、280万円ほどで売っていたクルマが、2021年3月現在で、走行距離が10万キロを超えた個体でも180万円ほどします。

そこからは、走行距離が少なくなるにしたがって価格は一直線に上がっていき、走行距離5万キロの個体だと、300万円を超える価格になっています。最近のタイプRモデルの中古車価格の値上がりが話題になる事もありますが、その中でもFD2 タイプRの値上がりが顕著だそうです。

走行距離わずか1000キロ!という個体に至っては、なんと528万円!新車の倍近くになっています。それにしても、14年前のクルマがたった1000キロしか走ってないなんて、本当にガレージの奥で大事に保管されていたんでしょうね。もう、この個体は乗っちゃダメです。買ったら、速攻ガレージにしまい込む用の、コレクターズアイテムですから。

恐らく、FD2 タイプRは、最後の自然吸気エンジン搭載のシビック タイプRである事と、まだ14年前のクルマなので純正部品の確保がしやすい点が人気の理由になっていると思われます。初代EK9は、純正部品の枯渇で維持が難しくなっていると言う声も聞こえてきますので、その点からもFD2が選ばれる理由になっている可能性があります。それに、なんと言っても4ドアセダンですから、実用性も高いですしね。

という訳で、FD2 タイプRには「お買い得な中古車」は見るけるのが難しい状況です。ご自分の予算と個体のコンディションをどこで妥協させるのか、そこがポイントになります。

また、タイプRの例に習って、FD2 タイプRも社外パーツを取り付けている個体が多いので、それらのパーツが車検対応品であるのか等のチェックも必要になります。

FD2 タイプRについては、2007年デビューという事で比較的車齢も若く、エンジンやサスペンションのチューニングパーツも多数出回っているので、自分好みに仕立てたいと思う人にとっては、格好のチューニングベース車と言えます。ノーマルでも十分にポテンシャルは高いので、ノーマルにこだわって乗るのもいいでしょう。

なお、価格が1000万円を超えている個体は、無限が限定300台で販売したFD2ベースのコンプリートカーの「シビック MUGEN RR」になりますので、別枠と考えて下さい。

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タイプR・・・なの? FN2 タイプR「ユーロ」

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR EURO(2009年)

FN2はタイプRなのに「ユーロ」というサブネームが付いている、ちょっと微妙な立ち位置のモデルになっています。真性?タイプRのFD2と販売時期が被っていたので、ますますわかりにくい状況に・・・。

FN2 タイプRユーロは「ユーロ」と付いているだけに、2代目EP3と同じくイギリスからの輸入車となっています。8代目シビックは市場特性にマッチさせるため、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの市場別に、それぞれ設計の異なるモデルを投入する戦略を取っていました。

そのため、ヨーロッパ向けのシビックはフィット用の「グローバル・スモールプラットフォーム」をベースとしたモデルになっており、日本市場で販売されてたFD系のシビックとはメカニズム的な共通点はありません。

なので、FN2 タイプRはシビック タイプRというより、フィット タイプRと言ったほうがより正確、という事になります。

サスペンション形式も、フロントサスペンションはマクファーソンストラット式で共通ですが、リアサスペンション形式は、FD2がダブルウイッシュボーン式、FN2はトーションビーム式と全く異なっていました。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR EURO(2009年)

また、FD2があまりにサーキット特化モデルになってしまったため、サーキットでは無敵の速さを誇るものの、サスペンションが硬すぎて一般道や峠ではなかなか楽しめないモデルになってしまった事も、FN2導入を決めた要因になったかもしれません。

そのような事情から、FN2 タイプRユーロは、サーキットだけでなく一般道でも走りを楽しめるセッティングとなっていました。

特に、ヨーロッパでプレミアムカーのダンバーとして採用される事の多い「SACHS社製ダンパー」は乗り心地とハンドリングを非常に高い次元で両立させていると高い評価を受け、FN2 タイプRユーロのセールスポイントとなりました。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR EURO(2009年)

また、タイヤもFD2の「グリップ力最優先、乗り心地とか静粛性は後回し」な過激なポテンザRE070に対し、FN2はよりバランスの良いポテンザ RE050Aを採用していました。このチョイスも、一般道でのドライビング・フィールを優先した「ユーロ」な味付けと言えます。

エンジンはFD2と同じK20A型ではありますが、2次バランサーシャフトを搭載し、騒音と振動の低減を図る改良を受けていて、最高出力は201psとFD2に比べて若干マイルドなチューンとなっていました。

このように、FN2 タイプRユーロは「ユーロ」の名にふさわしく、長距離を移動するグランドツーリングカーとしてのキャラクターと、タイプRらしいホットハッチとしてのキャラクターを高次元で両立させるように開発されていて、日常生活を共にするのならFD2よりもこちらの方がベターチョイスと言えます。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR EURO(2009年)

同じタイプRでもFD2とは異なる方向性のキャラクターを持ったFN2 タイプRユーロは、トータルで日本に3,500台程度が輸入されたと言われています。ただ、残念ながらFN2 タイプRユーロは日本ではそれほど人気を得る事ができませんでした。

やはり、「タイプR」という走行性能を追求するモデルであれば、同じ時期によりスペックの高いFD2が売られていれば、そっちの方向にユーザーは流れていったのかもしれません。また、FN2の販売価格は約300万円と、FD2よりも割高でした。

ボディタイプも、ファミリーユースでは不便な3ドアハッチバックよりも、いくら乗り心地が激悪とは言え、4ドアセダンのFD2の方が実用性が高かった事も影響したと思われます。

結果、一般道ではより扱いやすい特性を与えられていたにもに関わらず、FN2 タイプRユーロは輸入された3,500台を売り切るのも大変だった、と言われるぐらいの販売実績となってしまいました。

日本のタイプRのユーザーは、クルマのパフォーマンスへのこだわりが、とても強かったのでしょうね。

という訳で、日本市場ではそれほど人気が出なかったFN2 タイプRユーロですが、「不人気車は中古車マニアにとってはお宝車」なのです。

価格が高騰しているEK9やFD2に比べれば、FN2 タイプRユーロはとってもお買い得。200万円出せば、走行距離の少ない、かなりコンディションが良いと思われる個体を手に入れる事ができます。

不人気車故に、あまりアフターマーケットパーツが出なかったのかもしれませんが、社外パーツを取り付けている個体も少なめ。フルノーマルの車両が多いように感じます。

FN2 タイプRユーロは、ノーマルでも高価なSACHS社製ダンパーが装備されていますから、下手に社外品の車高調ダンバーに交換するよりも、ノーマルの状態の「バランスの良さ」を楽しむ、という方向性も有りですね。

歴代タイプRのなかで最も普段使いに適したモデルである事は間違いありませんので、今や貴重な超高回転エンジンを積んだ「ホットハッチ」をお手頃な値段で楽しむのであれば、FN2 タイプRユーロはそれほど悪い選択では無いと言えます。

タイプRの価格が高騰している今だからこそ、比較的お求めやすい価格で低走行距離の個体が多いFN2 タイプRユーロを選ぶ、というのはなかなか渋い選択だと思います。まだ車齢10〜12年ぐらいのクルマなので、グッドコンディションのクルマを選べば、比較的長い期間、FN2 タイプRユーロ楽しむ事ができるでしょう。

ただ、FN2 タイプRユーロは「輸入車」ですので、そろそろ販売終了から10年が経過する事も併せて、長く乗りたい方は純正部品の流通状況をタイプRに詳しい専門ショップ等に確認したほうがいいかもしれません。

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FF世界最速を目指せ! 4代目FK2

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2015年)

FN2 タイプRユーロの販売が収束した後、しばらくの間「タイプR不在期間」が続きました。一方、2010年代の初頭から、ヨーロッパではあるタイムアタック競争が盛り上がりを見せていました。

それは、ドイツにある世界で最も過酷なサーキット、ニュルブルクリンク北コースで「FF市販車世界最速」を決める、という競争でした。

ニュルブルクリンク北コースは全長が20kmを超える長い長いサーキットで、超高速コーナーや激しい段差、クルマがジャンプしてしまいそうになる急坂など、普通のサーキットとは段違いの過酷なコースレイアウトになっています。

ニュルブルクリンク北コースは、世界の自動車メーカーがクルマを開発するための道場となっていて、地元のドイツ勢はもちろん、トヨタのレクサスLFAやニッサンはR-35 GT-Rのような日本車のハイパフォーマーも、このサーキットでクルマを開発し走りを鍛えてきました。

FK2 タイプRが発売される直前の2014年当時、ニュルブルクリンク北コース「FF市販車世界最速」のタイトルホルダーは、ルノー・メガーヌ R.S.トロフィー。

FK2 タイプRは、そのルノー・メガーヌ R.S.トロフィーを打ち破るために開発された、ニュルブルクリンク北コースタイムアタック用のスペシャルマシンなのです。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2015年)

FK2 タイプRは、歴代のシビック タイプRとは明確な断絶があります。それは、シビック タイプRで初めて、ターボエンジンを搭載したからです。歴代のシビック タイプRは、V-TECの技術を活用した、高回転高出力の自然吸気エンジンをアイデンティティとして来ました。

しかし、ニュルブルクリンク北コースでルノー・メガーヌ R.S.トロフィーを打ち破るためには、自然吸気エンジンではどうしてもパワーが足りません。そのために、FK2 タイプRでは、K20C型ターボチャージャー付きエンジンを新たに開発。

エンジンパワーは、過去最強だったFD2 タイプRの225psを大きく上回る310psを達成、トルクも400N・mという強大な値となりました。

今まで、300psのような大パワーはFFレイアウトでは吸収できないとされていました。しかし、FK2 タイプRでは、コンチネンタル・スポーツコンタクト6 ハイグリップタイヤとZFザックス社製のアダプティブ・ダンパーシステム等の最新のテクノロジーを投入する事によって、310psのパワーを確実に路面に伝える事ができるようになりました。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2015年)

ただ、それらの最新技術を活用しても、シャシーの開発は大変だったようです。何故なら、FK2 タイプRのベースとなったヨーロッパ市場向けのシビックは、FN2タイプR ユーロと同じく「グローバル・スモールプラットフォーム」をベースとしていて、実質的なメカニズムはフィットだったからです。

そのため、リアサスペンションはコストの安いトーションビーム式となっており、300psを超えるハイパフォーマンスカーのサスペンションとしてはあまり適さない形式になっていました。

そもそも、FK型シビックのボディ自体が300psを超えるような大出力エンジンの搭載を想定して開発されたものではなく、ボディ剛性も不足していました。そこで、ホンダのエンジニアリングチームはボディ構造の接合に接着剤を積極的に使用する事で、ボディ剛性の大幅アップを達成しました。

接着剤使用の効果は絶大でボディ剛性は大幅にアップし、サスペンションが設計意図通りに正確に動くようになった事で、操縦安定性も格段にレベルアップしました。

また、最速で270kmをマークするニュルブルクリンク北コースでの高速安定性を確保するためのエアロダイナミクスの開発も徹底的に行い、空力をクルマの操縦性向上に積極的に活用しています。

この様に、ホンダやヨーロッパのサプライヤーの最新のテクノロジーを盛り込んだFK2 タイプRは、シビック タイプR史上最速のマシンに仕上がりました。

開発目標としていたニュルブルクリンク北コースでのタイムアタックでは、2015年3月に7分50秒63というタイムを記録。これは、今までルノー・メガーヌ R.S.トロフィーが記録していた7分54秒36を4秒も上回る超絶タイムで、FK2 タイプRは見事、ニュルブルクリンク北コースでの世界最速FF市販車のタイトルを手に入れたのです。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2015年)

しかし、物事はいい面もあれば悪い面もあるもの。見事、FF市販車世界最速のタイトルを手に入れたFK2 タイプRですが、そのための最新のテクノロジーを惜しみなく投入したため、日本での車両価格は400万円を超える高額車となってしまいました。

確かに、200psで300万円だったFN2 タイプRユーロに比べれば、FK2 タイプRはパワーも100ps以上向上していますし、ZFザックス社製のアダプティブ・ダンパーシステムのような高価なコンポーネントも搭載しています。

だけど、それにしても、シビック タイプRで400万円超えかよ・・・、という。もう、クルマ好きの若者が頑張れば買えるクルマでは無くなってしまいました。

さらに、1,880mmの全幅は街中で使うには広すぎるし、235/35ZR19というタイヤサイズは、高いスピードで道路に埋め込まれているキャッツアイ(道路鋲)を踏んでしまうと、簡単にタイヤがパンクしてしまうスペック。そして、コンチネンタル スポーツコンタクト6は超お高いタイヤ・・・。

FN2 タイプRユーロは、価格を含め、もうクルマ好きが一般道で気軽に高性能を楽しめるクルマでは無くなってしまいました。

ただ、ホンダがタイプRでニュルブルクリンク北コースのFF市販車世界最速のタイトルを取りに行くんだ!というチャレンジングスピリットは素晴らしい。チャレンジしないホンダなんて、もうホンダじゃないですからね。

性能と価格はトレードオフ、というのはクルマの悩ましい一側面ですね。

FK2 タイプRの中古車価格は落ち着いています。一時期は日本国内への割当が750台の限定車と言う事で中古車価格も高騰していましたが、新型のFK8型が発売されるという情報が流れると、価格は下がっていきました。

2021年3月時点で、FK2 タイプRの中古車価格は、だいたい370万円〜400万円。新車価格が400万円でしたからほとんど値落ちはしていませんが、限定車のハイパフォーマンスカーなのにプレミアム価格になっていないのは、中古車が欲しいと思っている人にとっては嬉しいポイントです。

悩ましいのは、新型のFK8も中古車のタマがそれなりにあると言う点。

このような高性能車の常として、やっぱり新しいモデルが好まれるんですね。新しいモデルは何かしらの改良が加えられて、よりパフォーマンスが向上していますから、とにかくクルマの性能にこだわる人は、どうしてもそっちに目が行ってしまいます。

現在、FK8とFK2の中古車価格の価格差はおおよそ50〜100万円程度。その価格差をどう考えるかで、FK8とFK2のどちらを選ぶかが決まってきます。

確かに、新型のFK8はFK2よりもサスペンションを中心に大幅な改良が加えられて、更に速いクルマに進化しています。でも、FK2 タイプRでも「超」の付く高性能車である事は間違いありません。

プラス50〜100万円でさらなる高性能を手に入れるのか、あるいは、その分をタイヤ代やパーツ代にあててサーキット走行を楽しむのか、じっくり悩んで下さい。そういう悩みは、FK2タイプRを買おう!と思うような人にとっては、嬉しい悩みのハズです。

気になるのは、FK2タイプRの中古車の走行距離が短い事。ちょっと前に発売されたばかりクルマだと言うこともあるでしょうが、やっぱり「普段使い」するには扱いづらいのかなぁとか、タイヤ代とかオイル代とかのランニングコストが高いのかなぁとか、いろいろ考えてしまいます。

ホンダのクルマとは言え、超高性能車なので主にランニングコストの面で、普通のクルマと同じ感覚では所有できないと言う点は意識しておいた方が良いと思います。購入を検討中の方は、ホンダのディーラーに純正タイヤのお値段を確認した方がいいかもしれません。

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再び、世界最速になるために! FK8

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2020年)

記録は、破られるためにある。

2015年3月に7分50秒63というタイムを記録し、ニュルブルクリンク北コースでの世界最速FF市販車のタイトルを手に入れた、FK2 タイプR。

しかし、翌2016年5月にフォルクスワーゲンが、ゴルフGTIクラブスポーツSで7分49秒21を記録し、タイトルを奪還。地元ドイツ車の意地を見せました。さらに、同年10月には同じくゴルフGTIクラブスポーツSが、タイムを7分47秒19まで更新。

ニュルブルクリンク北コース世界最速FF市販車タイトルマッチは、ホンダ・ルノー・フォルクスワーゲンの三つ巴の戦いになっていました。

ホンダ・ルノー・フォルクスワーゲンという巨大自動車メーカーが、チューニングカーショップの筑波サーキットタイムアタックバトル!みたいなノリで、延々とニュルブルクリンク北コースでタイムアタック合戦を繰り広げているのは、見方によっては大人げないとも思えます。

しかし、「タイプR」という称号をその名前につけている限り、常に戦いの場に身を置いて、世界最速の座を守り続けなければならないのです。フォルクスワーゲンの挑戦を、ホンダは受けて立ちます。新型のFK8型タイプRを投入し、再び世界最速のタイトルを奪いに来たのです。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2020年)

実は、新型FK8 タイプRの開発にあたって、ホンダが投入したファイナルウエポンは、「人」でした。ホンダ社内で最速と噂され、超絶なドライビングテクニックを持つ、柿沼秀樹エンジニアをFK8 タイプRの開発責任者に任命したのです。柿沼エンジニアへの指令は唯一、「もう一度世界一を取ってこい!」でした。

FK8 タイプRの特徴は、最初からタイプRも視野に入れて開発されたシビックと言う点。歴代のタイプRは、ベースとなる普通のシビックの開発が終わった後に、タイプR化の開発が始まっていました。つまり、タイプRの開発には、ベース車であるシビックの限界が常に付きまとっていた、と言う事になります。

柿沼エンジニアがその限界を痛感したのは、FK2タイプRの開発に関わっている時でした。結果的に、FK2タイプRはニュルブルクリンク北コースでの世界最速FF市販車のタイトルを手に入れましたが、リアサスペンションがトーションビーム式のFK2タイプRでは、もうポテンシャルが限界に達していて、これ以上のパフォーマンスを求めるのであれば、サスペンション形式の変更が必要だったのです。

また、ベース車であるシビックも、その開発コンセプトが大幅に変更されました。8代目、9代目は市場毎に別々のシビックを開発していましたが、10代目シビックはその体制を見直し、世界共通で新型車を開発・投入する事になりました。10代目シビックは全世界共通モデルにする事で、販売台数拡大のスケールメリットを活かし、その分、開発にコストを掛ける戦略を取ったのです。

特に、ヨーロッパ市場においては、コンパクトカーのフィットをベースにシビックを開発していたために、VWゴルフやルノー・メガーヌ等のライバルに対して、シャシーの性能面で大きな差を付けられていました。そのギャップを解消するために10代目シビックではシャシーを刷新、リアサスペンション形式をトーションビーム式から、よりポテンシャルの高いマルチリンク式に変更しました。

このサスペンション形式の変更はタイプRの開発も視野に入れて決定されました。FK8 タイプRで再び世界最速のタイトルを奪取するための切り札は、リアサスペンションのマルチリンク化だったのです。

《写真 ホンダ》ホンダ・シビックタイプR(2017年)

FK8 タイプRの開発のポイントは、シャシーでした。

エンジンはFK2 タイプRと同じK20C型ターボチャージャー付きエンジンを更に磨き上げ、最高出力を10psアップの320psとしました。ただ、シビックがFF車である以上、エンジンのパワーをいくら引き上げてもトラクションの限界があって路面にパワーを伝えられません。

そこで、320psのパワーをいかに路面に伝えて、かつ、コーナリングスピードを向上させるのかという点が、FK8 タイプRが再び世界最速の座に付くためのキーポイントになります。

FK8 タイプRでは、まず専用開発のコンチネンタル・スポーツコンタクト6のタイヤサイズを1インチアップさせて、245/30ZR20としました。タイヤのインチアップよるグリップの向上で、トラクションと制動力が向上します。

新たにマルチリンクとなったリアサスペンションは、20インチタイヤを履きこなすためにアームやブッシュを専用品に変更。専用設計のデュアルアクシスストラット式フロントサスペンションと併せ、ロードホールディング性能を格段に向上しました。

ダンパーは、ZFザックス社製のアダプティブ・ダンパーシステムをFK2から継続採用。システムのアップデートで減衰力の調整幅を拡大し、+R、スポーツ、コンフォートと3つのドライブモードを選べるようにしました。

結果、コンフォートモードでは245/30ZR20という超扁平タイヤを履いているとは思えないしなやかな乗り心地と、+Rモードではニュルブルクリンクを全開でアタックできるハードなセッティングをそれぞれ両立させる事に成功しました。

FK8 タイプRの開発にあたっては、超絶なドライビングテクニックを持つ「走れるエンジニア」の柿沼開発責任者が自らステアリングを握り、徹底的に走り込みを行なってドライビングフィールを磨き上げました。

メカニズムのアップデートだけでなく、柿沼エンジニアが徹底的なチューニングを行う事で、「ニュルブルクリンク北コースだけ速く走れる」クルマではなく、サーキットから市街地まで、どんな環境でも走って楽しいクルマに仕上がっているのがFK8 タイプRの特徴です。

では、FK8 タイプRの最大の使命である「ニュルブルクリンク北コース世界最速FF市販車」のタイトルはどうなったのでしょう。見事、2017年4月に7分43秒80のタイムをマークし、タイトルの奪還に成功しました。このタイムは、先代のFK2 タイプRの記録を7秒近く上回り、直近のタイトルホルダーだったゴルフGTIクラブスポーツSの記録を4秒上回る、壮絶なタイムでした。

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