どこまでも広がる空と一体になる爽快感!魅力あふれるオープンカーは意外とお手頃?
《画像提供:Response》光岡ロックスター
「オープンカー」とは、ざっくり言うと「屋根が完全に開くクルマ」全般を意味します。
自動車というものは基本的には金属で囲まれた堅牢なボディが乗員を包み込む構造を持っており、その安心感やプライベート化された空間が魅力の一つですが、オープンカーはこれと完全に逆行する特性を持っています。
屋根を開けた瞬間に車内と車外の空間が混ざり合い、どこまでも広がる空と一体になって心ゆくまで車を走らせる爽快感は、いくら言葉を並べても実際にオープンカーに乗った人にしか理解できない特別な喜び。実際に何台もオープンカーを乗り継いでしまう人がいる程の強力な魅力を持っています。
そんなオープンカーですが熱烈に支持するファンがいる一方で、まだまだ多くの人にとっては非現実で手を出しにくい存在かもしれません。
それは「価格が高そう」あるいは「ルーフを開けて走ることが恥ずかしそう」などの様々なイメージが付きまとうためでもあるでしょう。しかし、実は中古車においてオープンカーは意外にも手を出しやすい価格でも流通しており、その中には魅力的な数多くのモデルが存在します。
この記事では、中古車市場でお買い得となっているオープンカーの中から、とくに個性的な魅力を備えた5台を紹介します。
コスパ最強な中古オープンカーおすすめ5選
■トヨタ MR-S
《画像提供:Response》〈Photo by TOYOTA NEWS ROOM〉トヨタ MR-S(MR2スパイダー)
MR2の後継機として誕生したミッドシップレイアウトの車
MR-Sはトヨタが、1999年~2007年まで生産していた2人乗りのオープンスポーツカーで、それ以前にトヨタが発売していたミッドシップレイアウト(MR)の本格スポーツカー「MR2」の後継車種として誕生しました。
しかし、MR2が掲げていた"目を三角にして走るような"速さを追求するコンセプトから路線を大きく変更し、軽量なボディによるキビキビした走りと、オープンエアーが生み出す爽快なドライブを楽しむ、良く言えば「フレンドリー」悪く言えば「軟弱」な方向性へと舵を切ったモデルです。
MR-Sの車名は「ミッドシップ・ランアバウト・スポーツオープンカー」の頭文字から創作された造語で、MR2からの系譜からも分かるようにエンジンの搭載位置がボディ後方かつ後輪の車軸より前となる「MR」方式のレイアウトを持ちます。
MRは現在における自動車のレイアウトとしては比較的珍しいもので、かつては軽自動車からミニバンまで広く存在したものの、今ではその多くが超高額のスーパーカーなどに採用される形式となっています。
その理由としては、エンジンの荷重が後輪にかかりやすいためトラクションを稼ぎやすい点や、運転席前にエンジンが配置されないため車体の全高を低く設計可能な点、前輪周りが軽量になるためハンドリングが軽やかになる点など複数のメリットが上げられますが、その反面、他のレイアウトと比較して操作性が過敏で運転上級者に向いた特性とも言えます。
そのようなプレミアム性の高いレイアウトを安価な一般ユーザー向けのスポーツカーに採用していることがMR-S最大のメリットであり、またこの車を発売したトヨタの凄い点です。
しかも、MR-Sはそんな特殊なレイアウトを採用していますが、開発コンセプトにあわせて比較的安定型の操作性にセッティングされているため、MRであるゆえの運転の難しさやシビアさとは無縁。エンジンを背中に感じながらも安楽なドライブを楽しめる貴重な存在でした。
また、MR-Sの魅力はこのレイアウトだけにとどまりません。当時先進的だったシーケンシャルMTを搭載した点や、手動で簡単に開閉が可能な「Z型」に折りたたまれる幌の利便性、当時発売されていた別のトヨタ車のパーツやエンジンを流用することでメンテナンス費用が抑えられる点など、その魅力は枚挙にいとまがありません。
販売は好調とは言えなかったが今の車には無い独特のコンセプトを持つ
《画像提供:Response》〈Photo by TOYOTA NEWS ROOM〉トヨタ MR-S(MR2スパイダー)
これほどの特殊性の高いオープンスポーツカーが安価に提供されたのは今では奇跡のように思えますが、なんとMR-Sはヒット作とはならず、むしろ販売は決して好調とは言えませんでした。
その原因を挙げると、開発コンセプトが先代まで続いたMR2のそれと大きく変わりすぎたことや、諸事情からも抑えめの値となったエンジン出力が否定的に見られたこと、そして内外装のデザインについても「ポルシェのボクスターに似ている」と様々な意見が飛び交いました。
さらにMR-Sのヒットを妨げた最大の要因は、市場でライバルとなるマツダ「ロードスター」の魅力が高すぎた、ということもあるでしょう。
しかし、車の楽しさはパワーのみで図れるものではありません。そして開発方向性の変容で自動車ファンが付いてこなかったとしても、比較対象のライバルが魅力的だったとしても、MR-Sのような軽量・オープン・2シーターかつ自らシフトを操作するような車は今となっては珍しく独特の魅力があります。
エンジンはカローラから流用されたものでそこに官能的な要素は存在しませんが、だからこそ燃費は良好で壊れる心配もなく、安心してロングドライブに行ってちゃんと戻って来られます。
ライバルのロードスターもエンジンは基本的には「ファミリア」をベースにしているように、実はライトウェイトオープンスポーツカーの流儀としては実用車のエンジンを流用することは間違いではありません。
そして、デザインは人によって好みが分かれますが、実車は小柄ながらも迫力があり、とくに後ろから見た姿には唯一無二の個性が感じられました。
国産スポーツカー界の中ではイマイチ陽の目を浴びなかったMR-Sですが、ここ最近になってついに中古車市場の相場が若干の値上がりを見せています。当時のMR-Sの風評を知らなかった世代や、秘められた魅力に気づいた人によって良質な個体から抑えられていく可能性は大いにあります。
MR-Sに関心を持っている方は、お買い得に手に入るうちに好みの個体を探すことをオススメします。
MR-Sは販売時期によって前期型と後期型に分かれ、前期型は「5速」後期型は「6速」のMTおよびシーケンシャルMTが搭載されます。この後期型の6速は前期型の5速の上に「オーバードライブ」として追加された形となり、高速道路などを運転する際にエンジンの回転数を抑え、より低燃費でドライブをすることが可能です。また完全にシフトチェンジが不要となるATを搭載するモデルはありませんが、シーケンシャルMT搭載モデルはAT限定の運転免許でも法的に問題なく運転することが可能です。軽量な前期型か、燃費の良い後期型か、エクステリアのデザインも異なるので、好みのタイプを追求するのも楽しいでしょう。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,885mm×1,695mm×1,235mm |
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ホイールベース | 2,450mm |
最大乗車定員 | 2名 |
車両重量 | 960kg |
燃費 | 10モード/10・15モード:14.2km/L |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC ガソリン1,794cc |
エンジン最高出力 | 103kW(140ps) /6,400rpm |
エンジン最大トルク | 170.6N・m(17.4kg・m) /4,400rpm |
駆動方式 | ミッドシップ |
トランスミッション | 5MT |
新車価格 | 1,527,273円(消費税抜) |
中古車価格 | 30~300万円(消費税込) |
■BMW Z4(初代)
《画像提供:Response》BMW
今でも色褪せない、唯一無二のスタイリング
BMWの「Z4」は先代モデルに相当する「Z3」の後継車種として誕生し、その後3世代に渡って販売の続いているFRレイアウトの2人乗りオープンスポーツカーです。そしてBMWブランドならではの高級感を備えたプレミアム性と、座席の真後ろに配置された後輪を駆動させて走るダイレクト感が楽しめる点が支持を集める車です。
最新モデルとなる3代目の価格はまだまだ高いものの、数多く販売された初代モデルはかなり手の届きやすい価格で流通しています。
また、2代目モデルのルーフ機構は硬い屋根が分割されて電動で開閉するリトラクタブルハードトップ形式を採用しており、屋根を閉じている際の静寂性や快適性は上手ですが、初代モデルの幌も電動開閉式のため手間がかからず、これも捨てたものではありません。
むしろ布張りの幌の方が軽量のため、屋根を閉じた際の車体の重心位置は低くなるため走行時の安定性において有利ですし、複雑な機構を搭載していないため故障などのトラブルが発生する可能性も軽減されます。比較的安価でZ4を楽しむなら初代モデルで問題はありません。
さらに高級ブランドのオープンカーだからこそ、外見も選択時の重要な要素となりますが、そんなデザインにおいてもZ4の初代モデルは非常に優れたものを持っています。
当時BMWに在籍していた自動車デザイナーの「クリス・バングル」氏の手によって生み出されたモデルは、どれも斬新かつ奇抜で自動車業界は衝撃を受けましたが、結果として他社は様々な面おいて彼の手法に追随する様子が見えました。
そしてまさにZ4は、スタイリングにその斬新さを注入された最たるモデルの1台です。サイドフェンダーからドア、そして後輪へとボディをえぐりながら流れていく立体的なラインは「フレイム」と名付けられた手法で、ドア前方のプレスラインには車名にちなんだ「Z」の文字が浮かび上がるよう設計されています。
また、ボンネットから車体後方に向かって緩やかに下ってくるキャラクターラインは後輪の直前で跳ね、力強く駆け上がります。
このリアタイヤを強調する造形は往年の名車「コブラ」や「コルベット」などのマッスルカーを彷彿とさせるもので、先進性とともに相反するクラシックな雰囲気も纏うスタイリングは極めて見事としか言えません。
この衝撃的なボディデザインはそこに組み合わされた攻撃的にも思えるフロントマスクも含めて、発表当時は多くの議論を呼びました。しかし発売から約20年経過した今もなお一級レベルで通用するこのスタイリングは、もはや時代によって正当性が証明されたと言っても過言ではありません。
エンジン、内外装飾の組み合わせなど種類が豊富
《画像提供:Response》ロードスター
搭載されるエンジンは基本的には2.0リッターから3.0リッターまで4タイプに分けられ、直列4気筒エンジンの2.0リッターモデル以外は直列6気筒エンジンを搭載しています。組み合わされるトランスミッションはすべてATとなります。
どうしてもMTを駆使してZ4を運転したい方には、ハイパフォーマンスモデルである「Z4 Mロードスター」を選択することで3.2Lのハイパワーエンジンと共に6速MTが付いてきますが、こちらは中古車市場での流通台数はまだ少なく、かつ価格もまだまだ高額となりますので、まずは気軽に楽しむ方向で通常モデルを選択したほうがより多くの個体から状態の良いZ4を探し出すことが可能になるでしょう。
もちろん初代Z4の見た目は先進的であっても年式としては「古い」車になるため、メンテナンスが必要となる場面がいずれ来ることも心に留めておくべきでしょう。しかしBMWの生み出したこの美しい車をさらりと日常で乗りこなせば、その姿は男女問わずカッコよく日常を色鮮やかに彩ってくれるでしょう。
Z4はボディカラーと内装色の組み合わせも多彩なためファッション性も高い車です。納得のできる1台を心ゆくまで探して見ることをおすすめします。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,091mm×1,781mm×1,299mm |
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ホイールベース | 2,495mm |
最大乗車定員 | 2名 |
車両重量 | 1,365kg |
燃費 | - |
エンジン種類 | 直列6気筒DOHC ガソリン2,494cc |
エンジン最高出力 | 141kW(192ps) /6,000rpm |
エンジン最大トルク | 245N・m(25.0kg・m) /3,500rpm |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 5AT |
新車価格 | 4,090,909円(消費税抜) |
中古車価格 | 30~868万円(消費税込) |
■ダイハツ コペン(初代)
《画像提供:Response》ダイハツ・コペン
軽初の電動ハードトップを採用したオープンカー
ダイハツの「コペン」は、軽自動車メーカーとして名を馳せるダイハツの販売するオープンカータイプの軽自動車です。
コペンには初代と2代目が存在しますがどちらも電動ハードトップタイプのオープンルーフ機構を装備しています。(少数ですが初代モデルには手動でルーフを丸ごと取り外すタイプのグレードも存在します)
また、コペンはこの記事で紹介する5車種において最も流通台数の多いモデルです。そのため非常に入手と維持が容易で、かつ軽自動車ゆえに運転もしやすいフレンドリーな存在だと言えるでしょう。
初代コペンは前輪駆動(FF)のレイアウトと2人乗りのボディ構造を持ち、軽自動車として初めて電動ハードトップ機構を採用したモデルという大きな話題を引っ提げて2002年に販売されました。
この電動ハードトップばかりがコペンの話題の大半を占めがちですが、同車の魅力はそれだけにとどまりません。
軽自動車という"生活のための道具"がひしめき合うジャンルに関わらずコペンは安っぽさとは一切無縁の端正なデザインを身にまとい、丸いライトが目を惹く愛らしいデザインでありつつも男性が乗ってもさまになるかっこよさを備えています。
ボディの前後ともに丸みを帯びる統一感の高いテーマによって仕上げられたコペンのエクステリアは、アウディの名車「TT」の意匠から影響を受けているという噂もありましたが、全長全幅のサイズに厳しい制限を定められた軽自動車という規格内で、大人2人を乗車可能としながらこのスタイリングを成立させたダイハツのデザイン力は実に大したものだと驚かされます。
コペンのインテリアは伝統的なスポーツカーの文法に則って丁寧にまとめ上げられており、運転席に座った瞬間に「これから楽しいドライブが待っている」というワクワクした感情が呼び起こされます。
内装に使用される素材は高級なものではありませんが、適材を適所に使用し各パーツの形状がクドくも素っ気なくもない絶妙なバランスを保っているため不思議と安っぽくはありません。ここでもダイハツの底力を感じます。
また、インテリアを詳しく見渡すとマツダ「ロードスター」にも似た雰囲気を感じますが、それもそのはず。実はコペンにはロードスターから流用された部品がインテリアやルーフをロックする機構などに使用されているのです。過去にロードスターに触れたことのある方にとって、コペンは親近感を持つとともに直感的に操作を行うことが可能でしょう。
エンジンまでしっかりとこだわって作られている
《画像提供:Response》ダイハツ・コペン
初代コペンに搭載されるエンジンは軽自動車の上限である660cc。このエンジンはターボを装備し、小型のボディをスポーツカーらしくスイスイと気持ちよく走らせる力を発揮します。
しかもこのエンジンは直列4気筒となっており、現在の軽自動車では3気筒エンジンが主流になっていることを考えると、初代コペンに採用されたパワーソースはどれも貴重なものでした。当時のダイハツがコペンの開発にどれだけ力を注ぎ込んだのかがうかがい知れます。
軽自動車の世界においてのプレミアムスポーツカーであった初代コペン。その中古価格は長きにわたって大きく値落ちせず高値で安定していましたが、さすがに発売から約20年という時間の経過から、安価で流通する個体も見つかります。
運転免許を取り立ての人にも、大きい車の運転に飽きたベテランにも乗っていただきたい。そしてオープンカーのドライブがいかに爽快で楽しいものかを感じてほしい。そんな気持ちでおすすめしたい車がコペンです。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,245mm |
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ホイールベース | 2,230mm |
最大乗車定員 | 2名 |
車両重量 | 830kg |
燃費 | 10モード/10・15モード:18.0km/L |
エンジン種類 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブターボ ガソリン659cc |
エンジン最高出力 | 47kW(64ps) /6,000rpm |
エンジン最大トルク | 110N・m(11.2kg・m) /3,200rpm |
駆動方式 | FF |
トランスミッション | 5MT |
新車価格 | 1,361,818円(消費税抜) |
中古車価格 | 24~400万円(消費税込) |
■フォード マスタング コンバーチブル
《画像提供:Response》フォード マスタング
程よいユルさを持つアメリカのオープンカー
フォードの「マスタング コンバーチブル」は、まさにアメリカ大陸で生まれた自動車らしい大らかさといい加減さ、そして大胆なかっこよさを体現したような車です。
1964年の初代モデル誕生から続く長い歴史を持つ「マスタング」シリーズは世界一販売台数の多いスポーツカーの称号を持つ、いわゆる「アメ車」の中でもとくに有名なモデルの一つで、日本にもそのファンは多く存在します。
近年では映画「ワイルド・スピード」などでも活躍するためマッスルカーという印象が強いですが、V型6気筒や直列4気筒エンジンを搭載するモデルも存在し、すべてがパワフルで燃費が悪いということもありません。そのため本国ではお洒落なクーペ、オープンカーという使い方でも愛されているモデルです。
マスタング コンバーチブルの特徴として取り上げたいのは、大人4人が乗って旅行することが可能だということです。それもここまで紹介してきた車はどれも2人乗りばかりで、オープンカーというジャンルは車体の強度を保つ関係上、一部の特殊な例を除き、あまり大人数を乗せることが得意ではありません。
また登録上4人乗りになっているオープンカーでも、リアシートは実質的に子どもでなければ乗車が難しかったり、あるいは荷物しか置けないスペースとなっている場合も珍しくありません。
しかしマスタングは違います。大柄なアメリカ人が乗車可能というだけあって平均的な日本人サイズであれば男性でも4人が乗れ、しかもオープン状態でのドライブを楽しむことができます。もちろん広々ゆったりと言うほどの広さはありませんが、そのスペースは十分満足と言って良いものです。
マスタングの外見は極めて大胆です。とくに2005年に発売した5代目モデルやそれ以降に登場したモデルからは、初代モデルを意識したクラシックなプロポーションや意匠がボディ全体に施され、それは価格の抑えたベースモデルであっても変わらず、明らかに他車とは違う特別な存在であることを強く主張しています。
このデザインだけでもマスタングを購入する決め手になるほど魅力的な要素ですが、内装や運転した感覚もなかなかに独特で話は尽きません。
安っぽいけどメンテもしやすい? アメリカンな大雑把さが逆にイイ
《画像提供:Response》フォード マスタング コンバーチブル
マスタングの内装はまさに「アメ車」の流儀に則ったもので、その質感はハッキリ言って「安っぽい」の一言。ダッシュボードもインパネもセンターコンソールも「プラスチックの塊」感が満載で、これは驚くほど高品質になった現代の軽自動車の質感には到底及ぶものではありません。もちろんシフトを操作する際にも毎回プラスチックのオモチャを握る感触を楽しめます。
シートは布張りと革張りがグレードや装備によって分かれますが、どちらも「上質」とは言いづらいもの。革シートでも国産高級車のようなしっとりとした柔らかい感触ではなく、むしろ革風のビニールシートのような肌触りです。本物の「本革」なのに不思議でなりません。
ですが、乗っていると奇妙なことに「これでいい」、いや「これがいい」という感覚に飲み込まれてしまいます。ここまで書かれたことは一見すると悪く言っているようにしか読み取れませんが、これがマスタングの不思議な魅力であることは事実です。
オープンカーをドライブしていればいずれ内装には汚れやホコリも付くでしょう。また何度も乗り降りすれば硬い荷物がインテリアにぶつかる事態も発生します。そんなときもマスタングの頑丈なダッシュボードならキズ一つ付きません。付着した汚れも使い古しの雑巾と家庭用洗剤さえあれば一瞬でキレイになります。マスタングに乗ると、他の車もこれくらいメンテナンスが簡単な素材を使えば良いのに…とすら思ってしまいます。
そのハンドリングもマスタングは大らかです。軽めのハンドルをフワッと回して方向を定めれば、"だいたい"その方向に向かって進んで行きます。これほどに量販される人気モデルの操舵性が実際にそこまで曖昧であるわけがありませんが、これまで自動車では至上と思われた「キビキビ」とは完全無縁の世界がそこには存在し、いわゆる「船みたいなハンドリング」と語られる理由が心で理解できます。しかし乗っているうちにやはり感じるのです。「これがいい」と。
搭載するエンジンは、5代目マスタングまでは「V型6気筒」と「V型8気筒」があり、6代目以降は「直列4気筒」も用意されます。
アメリカ車好きの中では独特な排気音を奏でるV型8気筒エンジンを至高とする文化が色濃く残っており、そのため中古車市場でも人気はそちらに集中していますが、V型6気筒エンジンでも約4.0Lもの排気量があるためエキゾースト音はなかなかにパワフル。
ちなみにV6とV8ではハンドリングに違いがあるといいますが、そもそも両者とも車体が重いため実感としてはさほど感じられず、しかも実燃費もそう変わりません。燃費を気にする人は直4エンジンが搭載されたモデルを購入すると良いでしょう。
上記のように様々な特徴を取り上げましたがマスタングは素敵な車です。意外に頑丈で、実用性もなかなかであり、燃費も国産スポーツカーとさほど変わりません。
一見すると激しく人を選ぶ車に見えますが、実際に見て乗ると男女どちらにも好評なクルマです。マスタングが気になる人は、思い切って乗ってみましょう。その先にはきっと楽しい世界が待っていますよ。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,765mm×1,880mm×1,385mm |
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ホイールベース | 2,720mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 1,560kg |
燃費 | - |
エンジン種類 | 水冷V型6気筒SOHC ガソリン4,009cc |
エンジン最高出力 | 157kW(213ps) /5,300rpm |
エンジン最大トルク | 325N・m(33.1kg・m) /3,500rpm |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 5AT |
新車価格 | 3,545,455円(消費税抜) |
中古車価格 | 80~525万円(消費税込) |
■マツダ ロードスター
《画像提供:Response》マツダ ロードスター
世界レベルで最も多く生産されたオープンカー
マツダの「ロードスター」はここまで紹介してきましたオープンカーというジャンルにおいて、最も名前の知れたモデルです。
1989年に初代モデルが誕生した2人乗りのオープンカー「ロードスター」は、現在販売されている4代目モデルにいたるまで30年以上にわたって世界中からの根強い人気に支えられており、ギネスブックにも「世界で最も多く生産されたオープンカー」として登録されています。
ライトウェイトスポーツカーであるロードスターは前述した「MR-S」と同じジャンルに属しますが、ロードスターの個性の一つとしてエンジンをフロントに搭載して後輪を駆動する「FR」レイアウトを採用する点が挙げられます。
このFRというレイアウトは素直なハンドリング特性でスポーツカーらしい車を自在に操る感覚に優れています。またドリフトなどの曲技走行も比較的簡単に行えるため「自動車を操作する楽しさを味わう」という意味において最適なレイアウトの一つです。
このFRという個性に加えて、小柄で軽量なボディとオープンエアーを組み合わせたことで、ロードスターは爽快かつキビキビ走るドライブを誰もが気兼ねなく楽しめる稀有な車となりました。
ロードスターが人気を集める他の理由としては、好みの見た目に変更したり性能を高めるカスタマイズ性の高さとともに、オーナー同士が繋がるコミュニティの豊富さも影響しているでしょう。
初代ロードスターが発売された当時は現在のように気軽に乗れるオープンスポーツカーは多くなく、気軽にその手の車を楽しみたい人にはロードスター以外の選択肢はほとんどありませんでした。
デザインもお洒落で運転も楽しく価格も維持費も身近なロードスターの人気は高まり販売台数も増加。出回る台数が増えるに従ってカスタム用のパーツも続々と開発・販売され、それによってさらに人気が高まる好循環に。
複雑な構造を持たないロードスターは個人でもDIYでカスタム可能な範囲が広く、しかも軽量なボディはカスタム前後の動きの変化が如実に感じられるため、同車はまさにスポーツカー好きに愛される要素が満載だったと言えます。
もちろんロードスターはカスタムしないノーマル状態で乗っても楽しい車です。ハンドルの握り心地や操舵した感触、シフトレバーの操作感まで拘りのある開発者の手によって妥協なく作り込まれており、それは知れば知るほどロードスターという世界の深さにはまり込んでしまいます。
オープンカーたちのなかでもっとも“間違いのない”選択肢
《画像提供:Response》マツダ ロードスター
ロードスターに搭載されるエンジンは歴代モデルすべてが直列4気筒エンジンとなっています。初代モデルと2代目モデルの排気量は1.6リッターと1.8リッターで、これに5速か6速MTあるいは4速ATから好みのトランスミッションが選択できました。
3代目モデルは少し大きな車体に2.0Lのエンジンを搭載し、5速と6速MTは変わりませんがATは6速にグレードアップされました。
現在販売されている4代目モデルでは、ルーフの構造によって搭載エンジンが異なり、幌は1.5Lエンジン、電動ハードトップは2.0Lエンジンと分けられています。また最新モデルだけあって、トランスミッションはMTもATも全て6速へと改められています。
ロードスターはオープンカーの購入を検討する際に、その選択肢の中で最も間違いのないモデルです。価格も維持費も常識的で、国産車ゆえに故障は少なく、万が一の際にも部品が出なかったり修理場所に困るようなことはありません。
デザインもマツダならではの力の入った優れたもので、トランクも備えているため大人2人での旅行にも支障がありません。運転の楽しさや爽快感は世界の自動車の中でもトップクラスと言っても過言ではないでしょう。
昨今の中古車価格の高騰を受けてロードスターの相場も上昇傾向にありますが、流通する物件数も極めて多いため、価格や走行距離、ボディカラーや内装の素材など好みの個体が見つかる可能性は十分にあります。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,995mm×1,720mm×1,245mm |
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ホイールベース | 2,330mm |
最大乗車定員 | 2名 |
車両重量 | 1,090kg |
燃費 | 10モード/10・15モード:13.4km/L |
エンジン種類 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ガソリン1,998cc |
エンジン最高出力 | 125kW(170ps) /6,700rpm |
エンジン最大トルク | 189N・m(19.3kg・m) /5,000rpm |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 5MT |
新車価格 | 1,818,182円(消費税抜) |
中古車価格 | 20~435万円(消費税込) |
魅力にあふれるオープンカーは年中乗れる!
《画像提供:Response》〈写真撮影:諸星陽一〉マツダ ロードスター RS
紹介させていただいた5台はどれも実際に触れて心から魅力的に感じたおすすめできるオープンカーです。
どれも独特で強い個性を放っていますが、一度手に入れ乗ってみると本当にドライブが楽しく、あなたの今後のカーライフを一変させてしまう存在となりえます。
また、オープンカーは日差しを受けて海岸線を駆け抜けるイメージがありますが、実はベストシーズンは年中に存在し、夏の夜から寒い冬まで四季折々の季節感をドライブやファッションとともに楽しむことができます。
あなたの相棒として、ピッタリの1台をぜひ探し出してみて下さい。