カーシェアの市場規模はどのくらい?
カーシェアとはカーシェアリングの略語で、車を共同利用するサービス。インターネットを介して個人や個人・企業等との間や場所・物・スキル等をシェアする「シェアリングエコノミー」の考え方が広がり、それとともにカーシェアも日本に普及しました。
利用者は年々増加しており、消費者庁によれば、2021年で約220万人だった会員数は2022年には約260万人に増加。登録者数と同じく車両数やステーション数も右肩上がりに増加していて今後も増加することが予想されています。
では、関心がある人のボリュームはどれくらいなのでしょうか?その中でも、具体的に「検討行動をしている人=顕在層」として各社のサイト訪問者に焦点をあてて、カーシェア業界の市場規模やどのような層に関心があるのかを分析します。
■今回集計対象となるカーシェアサービス
カーシェアのサービスの形態は2種類あります。
・BtoCタイプ(Business to Consumer)→サービスを運営している企業が車を貸し出す
・CtoCタイプ(Consumer to Consumer)→個人がサービスに登録して車を貸し出す
また、主要都市のみでサービスを提供する会社もあります。今回は種類やサービス提供地域を限定せずに、以下の13サービスを対象に調査を行います。
カーシェアに関心があるのはどのような層?
では、実際にカーシェアはどのような層が関心があるのかを、各サービスの公式Webサイトを訪問した人のデータを参考に考察します。
なお、今回の調査は、毎月更新されるWeb行動ログデータを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて行っています。
■2023年度サイト訪問者数は前年と比較するとほぼ横ばい
まずは、サイト訪問者数を見ていきます。
カーシェアサービスの直近3年間の1年単位のサイト訪問者数
調査期間:2023年4月〜2024年3月 デバイス:PC、スマートフォン
直近3年間の1年単位のサイト訪問者数を見ると、3年前(2021年4月〜2022年3月)から2年前の(2022年4月〜2023年3月)で約400万人増加しています。しかし、直近1年(2023年4月〜2024年3月)は917万人とほぼ横ばいですが、年間のサイト訪問者は900万人以上あり、市場のボリュームは維持されています。
サービス利用者が増加していることも鑑みると、カーシェアというサービスは一般的に認知が普及しているのかもしれません。
続いて、直近1年のサイト訪問者数の月次推移を見てみましょう。
カーシェアサービスのサイト訪問者数
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
サイト訪問者のピークは夏と冬に分かれます。夏は8月、冬は12月からサイト訪問者が増えはじめピークは2月です。
消費者庁の調査によると、カーシェアの利用目的で最も多いのは「旅行・ドライブ・アウトドア・レジャー等」と結果が出ているため、長期休暇に合わせて需要が高まるのでしょう。
冬のサイト訪問者が徐々に増加しているのは、スタッドレスなどの冬の装備をしている車を借りたい層がいることが関係しているのかもしれません。
■訪問者の6割以上は男性で特に50代の関心が高い
続いて、サイト訪問者の性別を見ていきます。ここからは2023年4月〜2024年3月の過去1年間のデータを参考に調査していきます。
カーシェアサービスのサイト訪問者の男女比
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
訪問者のうち65.5%が男性で過半数を超えています。
「車 企業」サイト訪問者の男女比
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
同じ車ジャンルである、「主要カーメーカーのサイト訪問者」の男女比も確認してみます。こちらも男性が57.5%と過半数を超えていますが、カーシェアと比較すると、約8ポイントほど女性が多くなっています。
カーシェアは「主要自動車メーカーのサイト」よりも男性が関心を持ちやすい業界だということがわかります。
続いてサイト訪問者の年代を見ていきます。
カーシェアサービスのサイト訪問者の年代
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
訪問者は40代から関心が高くなりはじめ、50代が最も構成比が高くなっています。また、60代にも一定の関心があるようです。カーシェアは「車をシェアする」という新しい概念なので、若年層の関心が高くなるかと思いましたが意外な結果です。
■世帯年収600万円〜1,500万円以上の関心が高い
続いて、サイト訪問者の世帯年収を見ていきます。
カーシェアサービスのサイト訪問者の世帯年収
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
一般的なネット利用者全体と比較すると、特に世帯年収が600万円以上の人の構成比が高くなっています。サービスの中には車体価格が高い車や、外車などステータスが高い車も使えることが関係しているのかもしれません。
例えば、「Anyca」では日本車以外にも多くの種類の会社を使うことができます。タイムズカーは、価格が高くなる「プレミアムクラス」でアルファードやVOXYなど車体価格がやや高価な車を使うことができます。
カーシェアはレンタカーとは違い、10分単位から使用できるので、旅行などの移動で使う以外にも、購入前の試し乗り的な感覚で利用する用途もあるのかもしれません。
■関東、関西の関心が高い
続いて、どの地方からのサイト訪問者が多いかを見ていきます。
カーシェアサービスのサイト訪問者の居住地域
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
関東、関西のサイト訪問者が多くなっています。特に都心部は駐車料金が高く、車の所有にコストがかかるため、カーシェアの関心が高いのかもしれません。
また、サービスの中には対応している地域が限定されているものが多いです。関東地方、関西地方はほとんどのサービスが対応していることも関係しているでしょう。
カリテコのサイト訪問者の男女比
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
なお、東海エリアを中心に中部地方で主にサービスを提供している「カリテコ」は、中部地方からのサイト訪問者が突出して多くなっています。
タイムズカーのシェア率が高く過半数を大きく超える
続いて、業界内のサイト訪問のシェア率を見ていきます。
カーシェアサービスのシェア率(セッション)
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
サイトの訪問数なので、実際の利用者数のシェアとは異なりますが、関心層との接点という意味では「タイムズカー(旧 タイムズカーシェア)」が約80%と圧倒的に高いです。
2番目に多いのは「楽天カーシェア」。楽天カーシェアが車を貸し出すわけではなく、契約だけ行い、貸し出しは他のカーシェアサービスが行う、ポータルサイト的なサービスです。
地図上から複数サービスのステーションを比較して探すことができ、サービス利用で楽天ポイントを貯めることができるなど利便性が高いことも特徴です。
年齢は中間層が多いが、性別に差異がある
続いて、各サービスのポジショニングマップを見ていきます。マップの縦軸が年齢、横軸が男女をあらわします。
カーシェアサービスのサイトのポジショニングマップ
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
各サービス、年齢はほぼ中間層に偏っていて、男女比の差が大きくなっています。その中でも男性寄り、若年層寄りに位置づけられるのが、CtoCタイプの「Anyca(エニカ)」です。
「Anyca(エニカ)」は個人オーナーが車を貸し出すシステムで、高級車にも乗れることが特徴です。中には新車価格が1,000万円を超えるような高級外車を利用することもできます。
また、一部の車はディーラーが貸し出しを行っていて、最新のEVを利用することもできます。高級車や最新の新車を使うことができるのが、男性や若年層の関心を集めるのかもしれません。
カーシェア関心層は日本車メーカーに興味あり
最後に、カーシェア関心層がどんな自動車メーカーに注目しているかをサイト併用率から見ていきます。
カーシェアサービスのサイトの訪問者が訪問した自動車メーカーサイト
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC、スマートフォン
トップは「日産自動車」。カーシェア関心層の15.5%が日産自動車のサイトも閲覧しています。マークラインズ株式会社の調査によると、2023年の日本車の販売台数はトヨタ、ホンダ、日産の順番になっているため、実際の販売シェアと異なります。
ランクインしている企業を見ると、日本車メーカーが多いため、カーシェア関心層は日本車メーカーに興味があるのかもしれません。
カーシェア関心層は自動車メーカーのサイトも一定数閲覧しており、自動車の購入を検討するためにカーシェアで試してみることが、選択肢に入っている人もいる可能性があります。
まとめ
今回は国内の主要な13のカーシェアサービスの公式Webサイトを訪問した人のデータを参考に、カーシェアに対して、どのような層が関心を持っているのかを調査しました。
その結果、男性、40・50・60代、関東・関西地方の首都圏に在住している人の関心が高いことがわかりました。「タイムズカー」のシェア率が高いものの、中には高級車や外車、新車などを利用できるサービスもあり、特にサービスによって男女比の差が大きいこともわかりました。
カーシェアはただ車を足として利用するだけではなく、「カーシェアで使って良かったクルマを購入する」等の比較検討の材料として利用する選択肢もあるようです。
カーシェアと自動車メーカーの連携が今後より重要となるかもしれません。
▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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