居眠り運転とは?
居眠り運転とは、その名前の通り運転中に居眠りをしながら走行することです。2018年6月1日からは、旅客業や貨物業者に対する規則の中に「ドライバーへの睡眠不足のチェック」が盛り込まれることになりました。
改めて本記事では、居眠り運転をした際の罰則や交通違反点数や、居眠り運転の対策をご紹介します。
居眠り運転の罰則・交通違反点数・行政処分
まずは居眠り運転の罰則や交通違反点数をご紹介します。
居眠り運転は道路交通法による処罰の対象ですが、実際に居眠りをしていたかどうかをその場で判断することはドライブレコーダーなどで証拠映像がないかぎり困難です。
そのため、居眠り運転をした際に道路交通法の「安全運転義務違反」または「過労運転」のどちらにあたるかは取締り時であれば警察、起訴後であれば検察の判断に身を委ねるしかありません。
「安全運転義務違反」と「過労運転」は罰則や行政処分の内容も全くことなりますが、ほとんどの場合は「安全運転義務違反」、過労や睡眠薬の摂取によるものであると明らかな場合は「過労運転」と判断されることがあります。
■道路交通法第70条の違反(安全運転義務違反)と判断された場合
居眠り運転で安全運転義務違反と判断された場合は、道路交通法第70条の違反にあたり、
・交通違反点数の加点
・反則金の支払い
があります。
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
(罰則 第百十九条第一項第九号、同条第二項)
(運転者の遵守事項)
交通違反点数…2点
「安全運転義務違反」は2点の加算となり、いわゆる青切符(青キップ)と呼ばれる、交通違反切符が渡されます。
反則金…普通車で9000円
安全運転義務違反には交通違反通告制度に基づいて、反則金が科されます。反則金の金額は以下の通りです。
大型車…12,000円
普通車…9,000円
二輪車7,000円
小型特殊車…6,000円
原付車…6,000円
交通違反通告制度に基づき、反則金を支払えば罰金を支払う必要はありません。交通違反通告制度についての詳しい説明は下記の記事をごらんください。
罰則…3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する
(中略)
九 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反した者
安全運転義務違反で、反則金を支払わなかった場合は道路交通法第109条を根拠に3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。
■道路交通法第66条の違反(過労運転)と判断された場合
次に過労運転と判断された場合の罰則や交通違反点数をご紹介します。
居眠り運転で過労運転と判断された場合は、道路交通法第66条の違反にあたり、
・交通違反点数の加点
・交通違反に伴う行政処分
があります。
第六十六条 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
(罰則 第百十七条の二第三号、第百十七条の二の二第七号)
(過労運転に係る車両の使用者に対する指示)
交通違反点数…25点
「過労運転」は25点の加算となり、いわゆる赤切符(赤キップ)と呼ばれる、交通違反切符が渡されます。赤切符は6点以上の重大な交通違反を犯した際に渡される切符で、行政処分を伴うことを意味します。
行政処分…免許取り消し
交通違反点数が25点の加点となるため、過去3年間の交通違反の前歴がない方でも2年間の免許取り消しとなります。過去3年間に交通違反の前歴がある方は下記のリンクをご覧ください。
罰則…5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
三 第六十六条(過労運転等の禁止)の規定に違反した者(麻薬、大麻、あへん、覚せい剤又は毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の三の規定に基づく政令で定める物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転した者に限る。)
過労運転の場合は、道路交通法117条の2項3号を根拠として5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
居眠り運転の原因とは?
居眠り運転の原因は一体どこにあるのでしょうか?公益財団法人 高速道路調査会では「高速道路での居眠り運転防止に向けた 効果的な対策に関する調査研究」を発表し、居眠り運転の原因と対策についてまとめています。下記ではこの調査を参考に居眠り運転の原因と対策についてご紹介します。
■居眠り運転の原因は人間の3つのリズム
同調査会の調査資料では、居眠り運転の主要な原因は下記の3つの生体リズムにあるとしています。
人間が持つこれらの3つのメカニズムは、研究により睡眠不足や昼食の食事内容に関わらず発生することが分かっています。
・サーカディアンリズム(概日リズム)
24時間周期の眠気のリズムで、午前2時〜4時に眠気を引き起こす生体リズム
・セミサーカディアンリズム(半概日リズム)
12時間周期の眠気のリズムで午前2時〜4時と午後2時〜4時に眠気を引き起こす生体リズム
・ウルトラディアンリズム(超日リズム)
2時間周期の眠気のリズム(単調な環境下に置かれると顕著になる)
この3つのリズムにより眠気が高まるのが14時~16時、02時~06時とされており、居眠り運転による事故が起きる時間帯との因果関係が見られます。
■寝不足が一番の敵!飲酒運転と同様の能力低下。
生態リズムが影響しているとはいえ、もちろん「寝不足」が一番の大きな原因であることは間違いありません。
17時間起き続けた時の眠気は缶ビール500ml相当の飲酒をしたときと同程度の作業能力低下を引き起こすようです。
運転技能 | アルコール血中濃度 | 飲酒量の目安 |
---|---|---|
集中力が低下する | 0.01%未満 | 缶ビール350ml一本未満 |
多方面への注意力が向かなくなる | 0.02% | 缶ビール350ml一本程度 |
反応時間が遅れる | 0.02% | 缶ビール350ml一本程度 |
トラッキング技能が阻害される | 0.02% | 缶ビール350ml一本程度 |
ハンドル操作がうまく出来なくなる | 0.03% | 缶ビール500ml一本弱 |
視覚機能が阻害される | 0.04% | 缶ビール500ml一本程度 |
規制を無視し始める | 0.05% | 缶ビール350ml二本弱 |
上記の表と照らし合わせると良く分かりますが、17時間起き続けた際の作業・認知能力はアルコール血中濃度が0.04%の飲酒時と同様になります。
この0.04%という血中アルコール濃度を飲酒運転、酒気帯び運転時の違反基準である「呼気中アルコール濃度」に置き換えるとおよそ0.2mg/Lとなり、この数値は酒気帯び運転で免許停止処分とされる数値となります。
違反点数 | 処分 | |
---|---|---|
0.25以上 | 25点 | 免許取消し(2年) |
0.15~0.25未満 | 13点 | 免許停止(90日) |
要するに、極端な寝不足による運転は「免許停止」レベル以上の飲酒運転をしていると言っても過言では無いのです。
居眠り運転に有効な対策は?
居眠り運転に最も有効であると高速道路調査会の調査で結論づけられたのが、カフェインの摂取+仮眠です。
■カフェインの摂取+シートを倒して15分〜30分の仮眠
公益財団法人 高速道路調査会の調査で最も効果が高いという結果になったのが、カフェイン摂取+シートを倒した状態での15分〜30分の仮眠です。
カフェイン摂取と仮眠の相乗効果で、眠気を覚ましさらに覚醒を促すことができます。また、シートを倒すことでより高い効果を得ることができます。
■15分〜30分の仮眠で眠気を解消
単独でも眠気の解消に効果が高いのが15分〜30分の仮眠です。
同調査会が行ったアンケートでは、高速道路で仮眠を取ったことのある一般ドライバーの8割は30分以上の仮眠を取っているようです。
30分以上の仮眠は睡眠慣性と呼ばれる寝ぼけた状態が続くため、逆効果となります。もし30分以上寝てしまった場合は体を動かすなどしてしっかりと脳を覚醒状態にしてから運転をしてください。
■カフェイン摂取で眠気を解消
仮眠と同じく眠気の解消に効果が高いのがカフェインの摂取です。カフェインの眠気抑制効果は少なくとも15分経過した後、2時間程度持続することが証明されています。カフェインの量は150mg(コーヒーであれば1〜2杯)がちょうどよくそれ以上だと副作用や過剰摂取になってしまうので気をつけてください。
他にもある居眠り運転の対策
カフェイン摂取+仮眠ほどの効果はないものの、眠気を感じてもすぐに仮眠ができる場所が確保できない場合もあると思います。JAFでは、居眠り運転を防ぐ対策を紹介しています。
1.長時間ドライブでは、2時間に1回休憩する
長時間のドライブでは最低でも2時間に1回は休憩を取るようにします。休憩はクルマを止めるだけでなく、覚醒を早めるためにも降車して新鮮な空気を肺に送り込むとともに、軽く身体を動かして血液の循環を促しましょう。
長時間のドライブでは2時間に1回は車を止め、外に出て新鮮な空気を吸って休憩を取ってください。また、高速道路では約50kmおきにサービスエリアが、約15kmごとにパーキングエリアが設置されているので上手に活用するのがおすすめです。
2. ガムなど歯ごたえのあるものを噛む
ガムや昆布(歯応えがあり長時間咀嚼できるもの)を噛むことは、脳の血管を拡張させて血行を良くするため、覚醒水準低下を防止する効果があるといわれています。また、脳は糖分が不足して血糖値が下がることで疲労を感じるため、休憩中は糖分の多く含まれた飲み物を飲むようにしましょう。その際は、糖分の吸収をサポートするビタミンB1を多く含む食品などを一緒にとるとさらに効果的です。ビタミンB1は、豚肉やキノコ類、ゴマ、ナッツなどに多く含まれています。
広く知られているガムなどを噛む方法です。メンソール系の香りがするガムを選ぶと香りもすっきりするためより目が覚めやすくおすすめです。
3. 冷たい水で顔を洗う
冷たい水で顔を洗うか冷たいおしぼりなどで顔を拭くと一時的な覚醒効果があります。しかしながら効果はあまり長続きしないようなので他の手段と合わせて行なった方がよいでしょう。
冷たい水で顔を洗い、眠気を覚ます方法です。皮膚に刺激を与えさっぱりとすることで目を覚ますことができます。
4. 会話する・窓を開ける・歌を歌う
同乗者がいて眠っていないのであれば会話につきあってもらいましょう。ただし会話に夢中になりすぎて前方不注意にならないように気をつけてくださいね。渋滞中でなければ窓をあけて空気(風)をとりこんで頭や顔に刺激を与えてください。同乗者がたくさんいる場合は歌合戦なんてどうでしょう。車内もにぎやかになるので一定の覚醒効果はあると思います。
なお、上記にあげた外的刺激の眠気の抑制効果は一時的です。根本的な解決には必ずカフェインの摂取+仮眠を行って下さい。