1・【罰金と反則金の違い】その前に理解しておきたいこと
まず、本記事のメインテーマである「罰金と反則金の違い」をご説明する前に、いくつかの前提を理解して頂く必要があります。
それは「交通事故に伴う3つの責任と処分の内容」についてです。
前提を抑えていただいた後、「罰金」と「反則金」の違いについて記載していきます。
■【大前提】交通事故(違反)には、3つの責任と処罰が課せられる
まず大前提として、ドライバーは交通事故を起こしてしまった際に3つの責任を負わなければいけません。運転免許の取得時には学んでいることではありますが改めて3つの責任の目的・役割と、処罰の内容についてを説明します。
■刑事責任
1つ目は「刑事上の責任」です。
目的・役割:法律による社会秩序の維持。
処罰 :刑事罰
処罰の内容:罰金、禁固、懲役など。
■行政責任
2つ目は「行政上の責任」です。
目的・役割:道路交通の安全性確保
処罰:行政罰
処罰の内容:免許取消し、免許停止、反則金
■民事責任
3点目として、交通事故を起こし相手を死傷させてしまった場合は「民事上の責任」を負います。
目的・役割:被害者の被った損害を金銭により補償する。
処罰:民事罰
処罰の内容:損害賠償
各責任に対しては目的があり、交通事故、交通違反を起こした場合、それぞれ上記の処罰が課せられます。
要約すると下記2点がポイントとなります。
■交通事故(違反)には、3つの責任(行政責任、刑事責任、民事責任)が伴う
■「罰金」は「刑事罰」、「反則金」は「行政刑罰」に該当する
2・【罰金と反則金の違い】罰金とは?
「罰金」は”刑事罰”、「反則金」は”行政罰”である。というのが大まかな罰金と反則金の違いではありますが、それを押さえていただいた上で「罰金」と「反則金」の違いを、もう少し深堀って説明していきます。
「罰金」と「反則金」の2つは、自らが起こしてしまった事故(違反)に対する「罰」として金銭を納めるため、非常に似ており混同しやすいですが、法的な意味合いが全く異なります。
罰金とは…?
罰金とは、交通事故・違反時の点数制度における”6点以上”の重い交通違反に対して課される”刑事罰”である「罰金刑」のことをさします。
裁判において懲役刑・罰金刑のどちらかが確定され、罰金刑の場合、罰金の納付命令を受けます。
■罰金か懲役を伴う重大な交通違反を犯したときに渡されるのは赤切符
罰金(もしくは懲役)を伴う重大な交通違反を犯してしまったときは「告知書」(通称:赤切符)が当事者に渡されます。
赤切符を切られるイコール、罰金か懲役かの刑事罰となるため当事者には”前科”が付きます。
罰金刑に処され、前科が付いた場合は5年間その記録は消えません。
■違反(事故)内容毎の罰金の金額は?
無免許運転の場合、50万円以下の罰金、もしくは3年以下の懲役となるように、罰金額の上限や相場等はおよそで決まっているものの、明確にいくら支払うという基準はありません。
最終的な罰金額は、裁判によって決定されます。
また、重大な交通違反やそれを伴う交通事故を除く交通違反の刑事処分は、多くの場合「略式裁判」となっています。
略式裁判とは、通常イメージする裁判とは違い、必要な手続き等が省略されている裁判で、その場で罰金額が決定される簡易的な裁判です。
略式裁判とは,検察官の請求により,簡易裁判所の管轄に属する(事案が明白で簡易な事件)100万円以下の罰金又は科料に相当する事件について,被疑者に異議のない場合,正式裁判によらないで,検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。
簡易裁判所において,略式命令が発せられた後,略式命令を受けた者(被告人)は,罰金又は科料を納付して手続を終わらせるか,不服がある場合には,正式裁判を申し立てる(略式命令を受け取ってから14日間以内)ことができます。
上記は、検察庁ホームページからの引用ですが、「略式裁判」は裁判という言葉は用いてますが、刑事罰を受けることと意味合いは変わりません。
略式裁判で手続きを終わらせるか、通常の裁判とするかは当事者の任意で決めることが可能です。
3・【罰金と反則金の違い】交通反則通告制度とは…?
反則金の説明をするにあたり、前提として知っていただきたい「交通反則通告制度」についてを先に説明します。
こちらの記事をご覧になっている方は、下記の画像のような「罰金」と「反則金」の記載を見て、どちらを支払えば良いのか気になったという方も多いのではないでしょうか。
「交通反則通告制度」とは、点数制度上6点未満の軽微な交通違反をした場合の手続きを簡略化する制度です。
日本の法律ではどのような軽微なものであっても法律に違反している場合、刑事罰として手続きを進めることが可能です。
しかしながら軽微な交通違反をも都度都度、裁判をし罰則内容を決定していくとなると当然の如く裁判所や警察などの行政機関はパンクします。
そのため、軽微な交通違反に関しては特例とし「交通反則通告制度」が設けられ、行政上の手続き(処分)のみに簡略化することで、行政機関やドライバーの負担を減らしています。
要するに上記のような「罰金:○○円以下、反則金:○○円」という記載がある場合、原則として反則金を支払えば、罰金の支払いの必要はありません。
【交通反則通告制度】行政にとってのメリット
役所・裁判所にとってのメリットは、反則者が反則金の納付をすると手続きが終わるため、裁判を開くこと等と比較し、業務を圧縮できる。
【交通反則通告制度】ドライバーにとってのメリット
ドライバーにとってのメリットは、本来は刑事罰にあたる交通違反も、反則金を納付すれば刑事罰にはならず前科も残らない点が挙げられます。
4・【罰金と反則金の違い】反則金とは…?
ということで、「罰金」と「交通反則通告制度」を理解して頂いたうえで「反則金」についての説明に移ります。
反則金とは、点数制度における6点未満の軽微な交通違反に対して課せられる金銭のことをさします。
■軽微な交通違反を犯したときに渡されるのは青切符
比較的軽微(6点未満)な交通違反の場合は、「交通反則通告書」(通称:青キップ)が渡されます。
先で説明をした「交通反則通告制度」により、反則金を納付すれば刑事罰にはあたらないため、罰金の支払いは必要ありません。
しかし、反則金を納付しない場合等は法に則り、刑事罰として処され罰金刑、懲役刑に移行します。
警視庁交通執行課では定期的に「交通違反長期未出頭者の追跡捜査の強化」を行っており、2016年6月1日~30日に掛けて実施された捜査強化の際は合計で516人の逮捕者が出ています。
長期未出頭者への追跡捜査は、各都道府県警察が独自に強化月間を定めて対応しています。
■違反内容毎の反則金の金額は?
反則金の金額は反則行為の内容と車両の種類によって異なりますが、普通車の場合は3,000円~35,000円が反則金として定められています。
詳しい反則内容と反則金の金額については下記URL、警視庁の反則行為の種別及び反則金一覧表をご参照下さい。
5・違反・反則金に不服がある場合、支払い拒否は可能?
また、反則金の支払いや違反としての扱いに対し不服がある場合は、「交通反則通告制度の拒否」を行うことが可能で、違反金の支払い拒否や、青切符等へのサインの拒否をすることは法的にも認められています。
■交通反則通告制度の拒否 その後の流れ
そうした場合、刑事事件としての手続きを踏むこととなり、書類送検後に検察からの出頭命令が下ります。
そこで聴取(終局処分)が行われ、起訴となるか不起訴となるかが決まります。
不起訴となった場合は、反則金の支払い等は生じずに終了となりますが、起訴となった場合は、裁判にて有罪か無罪かの判決が下される運びとなります。
多くの場合、交通違反の裁判は前述した「略式裁判」が提示されます。
先にも述べていますが略式裁判とするか、通常の正式裁判とするかは選択が可能です。
略式裁判を受けることは刑事罰となり、罰金処分が決定するという意味合いにほぼ等しいため、どうしても納得が出来ない違反(起訴)なのであれば、正式裁判を選択し公判を開き、裁判によって有罪か無罪かの判決を受けることになります。
しかしながら、正式裁判を開いたとしても「有罪」と判決が下ればもちろん刑事罰の対象で、刑事罰が下されるということは罰金の支払い、若しくは懲役が決定し、”前科”がつくこととなります。
ドライブレコーダーの録音、録画データ等、違反とならない根拠や理由が提示でき、且つその主張が正当なものなのであれば、上記のように「交通反則通告制度の拒否」をし、刑事手続きの上、正式裁判を選択しても良いと思いますが、自らに非を感じる部分があるのであれば、反則金を納め収束させた方が懸命と言えるでしょう。
反則金を支払いたくないという理由だけで交通反則通告制度の拒否をしたとしても、最終的に有罪と判決が下れば(もしくは略式裁判に移行すれば)、金銭の支払い以外にも先ほども記載したとおり”前科”が付くこととなるので、メリットは何一つありません。
まとめ
「罰金」と「反則金」は法律的意味合いも大きく異なり、罰金は刑事罰で前科もついてしまうことがお分かりいただけましたでしょうか。
重大な交通違反、軽微な交通違反どちらも違反ではあることには変わりません。
常に安全運転を心がけ、交通ルールを遵守し豊かなカーライフをおくりましょう。