ひき逃げ(轢き逃げ)の定義
ひき逃げの定義ですが、ひき逃げは「車やバイクなどで人をひいて死傷させてしまった際に、被害者の救護や道路の安全をすぐに確保しなかったこと」をさします。
事故を起こしてそのまま立ち去ってしまうと、道路交通法に定められている「救護義務違反」や「危険防止措置義務違反」に該当し、10年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されることになります。
さらに、事故を起こして「人を傷つけてしまった」という事実は、「過失運転致死傷罪」に該当し、7年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されることになります。
ひき逃げを起こしてしまった際には、上記が同時に起こる併合罪となりますので、15年以下の懲役が科されることになります。
もしも、飲酒運転やスピード違反などにより事故を起こしてしまったとなると、危険運転致死傷罪に該当しますので、より重い刑罰となってしまいます。
※情報は2018年現在のものです
ひき逃げを起こした場合の罰則・刑罰について
ひき逃げを起こしてしまった場合、以下の罰則や刑罰の何れかが科されることになります。
【ひき逃げを起こした場合の罰則・刑罰】
・過失運転致死傷罪: 15年以下の懲役
・危険運転致傷罪(負傷) :準酩酊等運転と病気運転 18年以下の懲役
・危険運転致傷罪(負傷) :上記以外 22年6か月以下の懲役
・危険運転致死罪(死亡) :準酩酊等運転と病気運転 22年6か月以下の懲役
・危険運転致死罪(死亡) :上記以外 30年以下の懲役
※無免許運転の場合に発生した事故の場合、重い刑が科される場合があります。
※死傷者数が多く、運転手の過失が甚大である判断されると「殺人罪」と判断される場合があります。
■事故を起こしたことに自分自身が気付かなかった場合は
もしも、事故を起こしてしまったことに自身が気づかなかった場合にはどうなるのでしょうか。
そもそも「ひき逃げ」は、人を死傷させるような交通事故を起こしてしまったにもかかわらず、その場から逃げ去ってしまうと成立します。
つまり、事故を起こしたことを認識して逃げ去っているという状態です。
ただ、事故を起こした事に気づかずに、その場を去ってしまうという場合も、もちろんありえます。
その場合には、ひき逃げは犯罪としては成立しませんが、交通事故によって人を死傷させたという事実に対しては、過失運転致死傷罪に問われることになります。
■死亡事故の場合は・・・
ひき逃げにより、死亡事故を起こしてしまった場合には、事故の内容によって左右されることもありますが、裁判にて懲役実刑が言い渡される可能性が高いです。
死亡事故を起こさないような普段からの安全運転と、事故を起こしてしまった後の対応をしっかりと行うことによって、救える命はありますので、迅速な対応を心がけてください。
ひき逃げの検挙率は何パーセント?
ひき逃げをしてしまった場合、そのまま逃げ切るということは現実的ではありません。
ひき逃げの検挙率は、約50%となっており、年々上昇傾向にあります。
さらに、ひき逃げによる死亡事故となった場合の検挙率は、約93%となっており、ひき逃げを起こした際に逃げ切ることほとんど不可能と言えます。
■目撃者がいない場合、黙っていれば捕まらないのか?
目撃者がいないからといって、黙っていれば捕まらないということなのでしょうか?
結論を述べると、そのような事はありません。警察の方では捜査が進みますし、目撃者情報や映像を確認し、事件解決までに道を進めていきます。
日々逮捕に怯えているよりも、警察へ出頭し、自首をした方が、更生への近道となります。
さらに、黙っていればいるだけ罪も重くなってしまいます。
事故を起こしてしまった際には、すぐに被害に遭ってしまった方の救護活動をして、警察へ連絡をしましょう。
■過去の逮捕事例を紹介
過去に実際にひき逃げ事故を起こして、逮捕事案となった事例をいくつかご紹介します。
横断歩道の自転車をひき逃げ、18歳少女を逮捕
概要:自転車に乗って横断歩道を渡っていた男性に対し、交差進行してきた乗用車が衝突する事故が起きた。男性は重傷を負ったが、乗用車は逃走。警察は後に防犯カメラ映像から容疑車両を特定し、運転者を逮捕している。
自宅近くでひき逃げされた高齢男性死亡、周辺捜索で容疑者を逮捕
概要:夜間の見通しが悪い市道に高齢男性が倒れているのを近隣住人が発見。消防へ通報した。男性は車にひき逃げされたことが原因で死亡。警察は周辺捜索から車両を特定し、容疑者として高齢の男を逮捕している。
飲酒ひき逃げで過重罰適用、裁判では有罪に
概要:国道で対向車線を逆走していた軽乗用車が、順走してきた乗用車と正面衝突。順走車を運転していた24歳の女性が軽傷を負ったが、逆走車を運転していた男は車両を放置して逃走した。飲酒運転を原因とするこの軽傷ひき逃げ事件を起こしたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(発覚免脱)の罪に問われていた41歳の男に対して裁判所は執行猶予付きの有罪を命じている。
逮捕→釈放→処罰までの流れ
もし実際にひき逃げの後に逮捕となった際には、どのような流れになるでしょうか。
一例ではありますが、逮捕から処罰までの流れをご紹介していきます。
もし逮捕された場合は、検察にて最大23日間(逮捕後72時間+勾留20日間)の身柄拘束となるケースがほとんどです。これを勾留と呼びます。
勾留が行われるのは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合に多いのですが、ひき逃げそのものが一度現場から逃げてしまっている以上、逃亡のおそれがあると判断されるのは致し方ありません。
勾留期間中は、一連の事件の流れを検察官から取り調べられます。
勾留期間の終了時に被疑者を起訴するかどうかが決定されます。ひき逃げという事件は悪質な犯罪です。
原則として公判請求という法廷にて刑罰を決める刑事裁判が行われ、懲役が求刑されるという流れになります。
ひき逃げ被害に遭った場合は・・・
もしもひき逃げの被害にあってしまった場合には、どのように対処すればよいでしょうか。
冷静な対処は難しいかもしれませんが、事前にどのように対処すべきかを覚えておいてください。
■警察へ通報し、事故証明を得る
ひき逃げの被害にあってしまった場合、まずは安全な場所に移動するとともに、警察へ連絡しましょう。ひき逃げ後の二次被害を受けてしまう恐れがあるので、まずは身の回りの安全確保です。そして、警察からは事故証明書を発行してもらいます。この事故証明書というのは、後々の処理を行っていく際に必ず必要になります。
■車両のナンバーを確認する
事故の当事者となり、冷静になれない状態かと思いますが、ひき逃げをして逃走を試みている車のナンバーや車種、色などをスマホのメモ機能などに残しておくようにしましょう。もしも、ひき逃げ後に逃走された場合であっても、ナンバーを覚えていれば警察が捜査を行うことが可能です。
■相手の連絡先を控える
軽い接触事故の場合、お互いの状況次第では連絡先を交換して警察を呼ばずに事後で対応していくこともあるようです。ただ、この点は注意すべきで、相手が嘘の連絡先を教えているというケースもあるので、事故に遭った際にはどんなに軽い事故だとしても警察を呼ぶようにしてください。
■救急車を呼ぶ/病院に行く
事故の直後では気づかない事もあるかもしれませんが、徐々に痛みが出てくる可能性もあります。悪ければ骨折などをしているかもしれません。本来このような場合には加害者が治療費を負担すべきですが、健康保険組合に申請すれば、3割負担とする事が当面は出来ます。
■防犯カメラや事故の現場が写っている映像や目撃者を探す
もしも、加害車の情報が全く分からない状況でも、ひき逃げの現場を目撃していた人が付近にいる可能性はもちろんあります。ひき逃げにあってしまった場合には周囲に目撃者がいないかを確認しましょう。また、事故現場付近の映像などがあれば、警察の協力のもと確認をしていきます。最終的に損害賠償の請求をするためにも重要な情報になります。
ちなみに、もし被害を受けた方が自動車保険に入っている場合には、自動車保険で補償を受けられるケースがありますので、確認をしてみてください。
■ひき逃げ相手がわからない場合
ひき逃げ被害にあった際に、事故の加害者が分からないということが非常に多くあります。
こうなると、事故の加害者からの損害賠償や相手の保険会社から支払いを受けることが出来ません。この場合には、国からの「政府保障事業」という補償を受けることが出来るので覚えておきましょう。
交通事故被害者の救済制度として国が行うこの「政府保障事業」ですが、これを利用すると、国から交通事故被害の際の最低限度の補償を受けることが可能です。
交通事故被害に遭った際には、被害者側が受ける損害はとても大きいです。ご自身で加入している保険の保険範囲でも負担仕切れないという事も少なくありませんので、様々な保証があるという理解をしておいてください。
ひき逃げを目撃したら
もしひき逃げの現場に居合わせた際には、被害者のためにも、加害者の今後のためにも、対応していただきたいことがあります。
■車両の特徴やナンバーのメモをする
車両の特徴を覚えておく事や、色や車種などの情報があれば、加害者を特定することに繋がりますので、警察の捜査の際にはも効率的な捜査が出来るようになります。
■警察に通報する
事故を目撃した際には、すぐに救急車を呼んで被害者の救護活動を行ってください。それと同時に警察へ通報し、ひき逃げをした車両の特徴を伝えましょう。
ひき逃げは、現行犯で加害者を捕まえないと、なかなか事件を解決まで進めることが難しいと言われています。そうなると被害者が一方的に被害を受けるだけの状態にもなってしまいかねません。状況次第では、自ら加害者を捕まえるという行動を取る事も出来ますが、無理をしないことが大切になります。
まとめ
本記事では、ひき逃げ事故が発生した際の被害者や加害者側の対応に関して掲載致しました。
ひき逃げ事故は、自分だけでなく周りを巻き込んでしまう重大な事故です。安全運転を行う事は前提ですが、事故を起こした後の対応をしっかりと行い、事故を起こしてしまった方も被害を受けた方も安心出来るような誠実な対応をしていきましょう。