大ヒットの日産「ノートe-PWER」
日本自動車販売協会連合会が発表によると2,016年11月の販売台数ランキングで、日産の新型『ノート』が前年同月比2.4倍増の1万5784台を販売し、初の1位を獲得しました。
2,016年11月2日に発売され約3週間を経過した11月23日には、月間販売目標の2倍となる2万台を突破する受注を獲得しするなど好調な売れ行きで、月間出荷台数ランキング1位の座を11ヶ月間首位を守っていたトヨタ『プリウス』をから奪いました。
内訳をみると、今回追加した新電動パワートレイン「e-POWER」搭載モデルが78%を占めており、ハイブリッドモデルの人気の高さがうかがえます。
そもそも「ハイブリッド」ってどういう意味?
ハイブリッドシステムは、エンジンと電気モーターを組み合わせて駆動させることで燃費を向上させるためのシステムです。ハイブリッドシステムには、エンジンと電気モーターを結合させる方式により、いくつかの種類があります。
シリーズ式:シリーズ式はガソリンエンジンで発電機を稼動し、得られた電気でモーターを駆動して走る仕組みです。
パラレル式:ガソリンエンジンとモーターの両方を駆動の動力源として併用し、クルマを走らせる仕組みです。この場合、モーターを稼動するための電力は、減速時にモーターを発電機として働かせて得られる回生により発電して、バッテリーに充電します。
シリーズ・パラレル式:シリーズ式とパラレル式の長所を引き出すよう組み合わせたハイブリッドカーです。モーターをつねに駆動の主役として使いながら、ガソリンエンジンは、駆動と、発電の両方に生かす方式です。
■シリーズ式ハイブリッド
シリーズ式
日産ノートe-POWERに採用される「シリーズ式ハイブリッド」はエンジンを発電専用に使い、駆動には電気モーターのみを使用する方式です。
燃費に悪影響を与える作動領域を使用しないことでエンジンの作動時間を短縮、燃費効率や静粛性の向上を実現しています。
日産はノートe-POWERをハイブリッド車ではなく“自ら発電する電気自動車”として位置づけを行っていますが、モーターのみで駆動を行うため走行性能などはまさに電気自動車と同じものとなっています。
■パラレル式ハイブリッド
パラレル式
パラレル式のハイブリッドはホンダのフィット ハイブリッドに搭載されている「IMA(Integrated Motor Assist=統合モーターアシスト)」などに代表される、エンジンを走行に用い、モーターが適宜それを補助するという方式です。
その特徴はシンプルさで、バッテリーや出力制御システムを含めたシステム全体の重量やサイズが小さく、コンパクトカーにも簡単に実装できるという強味があります。
パラレル式ハイブリッドを採用している、フィットハイブリッドは客室の広さがノーマルフィットと全く同じであるばかりでなく、ハイブリッドカーの泣き所となりやすい荷室についても床下のサブトランクが使えなくなっただけで、容量、使い勝手ともノーマルとほとんど変わらず、価格も押さえられています。
■シリーズ・パラレル式ハイブリッド
シリーズ・パラレル式
シリーズ・パラレル式ハイブリッドシステムの代表格はプリウスに搭載されている「THSII(トヨタ・ハイブリッド・システム Ⅱ)」です。
搭載されるモーターは、発電用と走行用の計2つ。エンジンのパワーは動力分割機構という装置を使って、直接車輪を駆動させる力と発電機を回して発電する力に適宜振り分けられます。
たとえばエンジンが出している力を全部で10とすると、うち9で車輪を回して1を発電に使ったり、反対に1で車輪を回して9を発電に…と自由自在。また、発電で得られた電力もバッテリーに溜めたり走行用モーターを回すのに直接使ったりと、これまた自由自在です。
これらの振り分けの割合を変化させることで、エンジンのエネルギー効率を普通のクルマに比べてはるかに高い状態に保つことを可能としています。また、エンジンを完全に停止させ、モーターだけで走ることも可能です。
エンジンのエネルギー効率の美味しいところを柔軟に使うことができるうえ、バッテリーが大きいために車輪でモーターを回し、その抵抗で減速する「回生ブレーキ」回収できる電力の量も大きく総合的なエネルギー効率の高さが特徴です。
また、走行用モーターと発電用モーターの両方を備えたプリウスは、モーターを使ったほうが効率が良い時にはエンジンパワーの大半を発電に使うという芸当ができるため走行性能も高くなっています。
ノートe-POWERに採用された「シリーズ式ハイブリッド」の特徴
■ガソリンで動く電気自動車
ノートe-POWERは外部電力からの充電(プラグイン)は不要で、通常のガソリンエンジン車やハイブリッド車と同様、ガソリンの給油のみで走行すします。
e-POWERに搭載されるエンジンは発電専用で、発電のために高効率な作動領域を保つように自動制御されます。
充電はバッテリーの充電残量や車速に応じてエンジンを始動、エンジン音が気にならない回転数に制御しながら行います。
急加速や登坂時などでは、バッテリーからの電力に加え、エンジンで発電した電力も直接モーターに供給を行い。減速時にはエンジンを停止し、回生発電した電力をバッテリーに充電、停止寸前まで回生が行なわれる。
開発者は「電気自動車(EV)はバッテリーを充電してバッテリーの電気で走らせる。それに対してe-POWERは外部充電機能がなく、ガソリンを給油してエンジンを回して発電しながら走るというシステム構成。いわばガソリンで走るEVになる」と表現をしています。
■最高クラスの燃費性能
ノートe-POWERの車両の駆動は電気自動車(EV)と同じでモーターのみで行い、電気はエンジンを発電機につないで得るほか、減速時の回生エネルギーも発電に使いバッテリー(リチウムイオン電池)に蓄えます。
注目の燃費は37.2km/リットル(JC08モード)で「このカテゴリーでは最も高い」(カルロス・ゴーン社長)性能を確保した。エンジンとモーターの両方を駆動に使う「パラレル式」を採用するトヨタ自動車『アクア』の37.0km/リットルを上回ります。
走行性能や乗り心地はどうなの?
■アクセルだけのワンペダル操作
ワンペダル感覚で走行することができる「e-POWER Drive」というモードを搭載しています。
通常のガソリン車のアクセルを戻した時の減速度は0.05G程度で、それに対してe-POWERは約3倍の減速度を造り込んでいるため、アクセルペダルを戻すだけでほとんど止まれるところまでいけるというのが特徴的です。
このため、アクセルペダルの踏み戻しだけで加速から減速までを行なえ、ブレーキペダルを踏む回数が減少します。加速度の違いにより、キビキビした走りの「Sモード」と、燃費に優しい「ECOモード」を選ぶことも可能です。
この仕組みは日産の電気自動車『リーフ』でも採用されていますが、「リーフはブレーキランプが付かない範囲でしかやっていない。今回は、リーフを超える減速度までやっている」とのことです。
ちなみに法規上、0.1G以上の減速度になるとブレーキランプを点灯しなければなりませんが。e-POWERのワンペダル操作でも「車が減速していることを知らせるのがブレーキランプなので、車がちゃんとGを発生したタイミングではほぼつけている」とのことことです。
■モーター駆動による走行性能
ノートe-POWERは日産リーフと同じモーターを使っており、モーターの馬力こそリーフの109馬力に対して95馬力に抑えられていますが、高い走行性は受け継いでいます。
最高出力は79馬力とエンジン仕様と同一で、モーターによる2.0Lターボエンジンに匹敵する高いトルクで、加速の力強さとレスポンスを実現しています。
一気に最大トルクを発生するというモーター特有の優れた瞬発力により、発進時やアクセルの踏み増しにレスポンスよく反応という電気自動車と同様の加速や操作性を体感することができます。
試乗記でもその走行性能は評価され
高速道路への流入や追い越しの際にフルスロットルをくれてやったときの加速はかなりのもの。トヨタ『アクア』に対しては明らかに優速。ホンダの『フィットハイブリッド』と比べると加速感ではやや落ちるが、低速でのスムーズネスや切れ目のない加速という点で優越していた。
リーフは端的に言ってCセグメントのモデルで、完全なEVだからバッテリー容量も大きく、ズバリ重い。車重は1.5トンを超える。これに対してノートはBセグメントだから一回り小さく、車重も一番重いメダリストで1220kgだから、リーフよりも300kgも軽い。その軽いクルマにリーフと同じモーターを使っているのだから、その性能は想像するだけで十分にパワフルであることが理解できる。
実際、 ノートe-Powerのパフォーマンスはクラスの最先端を行く。最大トルク254Nmは、およそBセグメントのクルマのものではなく、ほぼNAなら3リットル級といっても過言ではない。しかもモーターの特性上、走りはじめにこのトルクがドカ~ンとくるわけだから、感覚的にはまさにのけぞる加速感が堪能できるわけである。
と評価されている。
■シリーズ式ならではの静粛性
ノートe-POWERは通常の発進や走行時には、エンジンが停止したまま、高電圧バッテリーからの電力だけで発進します。
このため、夜間や早朝の住宅街でエンジン音を気にすることなく走行することが可能です。
発電用エンジンはロードノイズなどに紛れる車速域で作動します、またボディにも入念な遮音対策がされているため、高い静粛性を実現しています。
この静粛性も試乗記によると高い評価を与えられているポイントです。
発電用のエンジンがかなり頻繁に回る。電気で動くんだから静かだろう…と考えてEV車並みの静粛性を想像すると、そこは間違いである。もっとも、静粛性はやはりかなり高く、これもBセグメントの範疇を超えているといって差し支えないと思う。
高速走行になるとエンジンはずっと回ったままになる。ただ、エンジン音が静かなので感覚的にはガソリン車を走らせているのではなく、電気自動車を走らせている感じだ。
エンジンノイズのレベルは低めに抑えられている。また、3気筒エンジンは倍音成分が4気筒と大きく異なるため、音を聞いただけですぐにそれとわかるものが多いが、ノートe-POWERのエンジンは設計段階で音の成分に関するチューニングをよほど入念に受けたのか、3気筒を意識されられることはなかった。