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イグニッションコイルの全て|交換から点検、寿命や故障時について

イグニッションコイルの全て|交換から点検、寿命や故障時について

ガソリンエンジンの点火用コイルであるイグニッションコイル。今回は交換や必要な費用、点検方法や故障時の症状まで解説します。


イグニッションコイルとは?

BOSCH(ボッシュ) 国産車用イグニッションコイル

イグニッションコイルとは、ガソリンエンジンに点火を行うための高電圧を発生させる部品です。

ガソリンエンジンは「吸気」、「圧縮」、「燃焼」、「排気」の4サイクルを繰り返して動力を発生させます。圧縮行程ではガソリンと空気の混じり合った混合気が圧縮され、そこに火花による点火がなされてピストンが下方に押し下げられる力を得ます。

この時、混合気に点火する火花を発生させるには25,000V以上の高い電圧が必要になります。もちろん、自動車の12Vバッテリーから発生させられる電圧はそこまで高くないため、このような高い電圧を発生させることは一見不可能に思えます。

ここで使われるのがイグニッションコイルで、イグニッションコイルは電磁誘導という働きを使って低圧電流から高圧電流を生み出しています。電磁誘導とは、磁束(磁力の束)に乱れが起きた時に電子の流れも乱れ、その結果強い電流が発生する働きのことです。

電磁誘導を起こすためにイグニッションコイルは、「1次コイル」、「2次コイル」、「コア」という部品から成り立っています。

まず、車が始動されエンジンコントロールユニット(エンジンの動作を管理する電子回路、略称はECU)が始動すると、イグナイター(スイッチ)がONになり、1次コイルに電流が流れます。1次コイルに電流が流れると、コア内部に磁束が発生します。やがてエンジン点火の時期が来ると、エンジンコントロールユニットによって1次コイルに供給されていた電流が突然止まります。

こうなるとコア部分に発生していた磁束が乱れて電磁誘導が発生し、2次コイルからはスパークプラグを通じて火花を発生させられるほど強い電流が生まれます。

このように、イグニッションコイルが無ければ車は走れません。イグニッションコイルに故障があれば、車の調子も目に見えておかしくなってしまいます。

原理は以上に述べた通りですが、イグニッションコイルは構造によって「機械式(ディストリビュータ方式)」と「ダイレクトイグニッション式」の2つに分けられます。それぞれの主な違いは以下の通りです。

機械式

機械式(ディストリビュータ方式)とは、イグニッションコイルから発生した電流をディストリビュータ(配電器)を介してそれぞれの気筒に分電する方式のことです。

分電の工程にコンピューターが使われず、全て機械部品の動作で管理しているためその名前がついています。ディストリビュータはクランクシャフトの回転部分と同期しており、エンジンの点火時期に応じてそれぞれのシリンダーに点火するスパークプラグに電力を分配します。

この方式は旧式の技術であり、平成年間はじめの頃にはすでに機械式に代わる技術に交代しはじめていました。

機械式は長い間エンジンの点火技術として使われていましたが、主に3つの欠点がありました。
まず1つ目は、部品の消耗が激しかったことです。ディストリビュータがイグニッションコイルから生じた高圧電流を受け止めてから分配するため、高圧電流によって部品の寿命が縮まりがちでした。
2つ目の欠点は、電力のロスが発生してしまうことでした。

イグニッションコイルから発生した電流をディストリビュータをいったん通すため、どうしても電力の無駄が出てきます。電力の消費量が多いということは、電力を生み出すためにエンジンに高い負荷がかかっていることを意味するため、この欠点は燃費の悪化につながりがちでした。

3つ目の欠点として、高回転のエンジンには適さない点火方式だったことが挙げられます。機械式はディストリビュータが十分な電流を気筒に届けるまで、ある程度の時間を必要とします。

しかし、ディストリビュータはクランクシャフトを通してエンジンと同期しているため、エンジンが高回転になると電流を生み出すための時間が十分に取れず、不十分な電流をスパークプラグに送ってしまいます。結果として気筒内の不完全燃焼を引き起こしてしまい、様々な不具合を起こす原因となります。

これらの欠点により、機械式は次第に使われなくなりました。現在の車で主流となっている方式は以下に紹介する「ダイレクトイグニッション式」です。

ダイレクトイグニッション式

ダイレクトイグニッション式とはその名前の通り、スパークプラグとイグニッションコイルとの距離を縮めダイレクトに点火できるようにした形式です。

見た目としては、スパークプラグのちょうど真上にイグニッションコイルが乗っており、機械式のようなディストリビュータは必要なくなりました。

ダイレクトイグニッション式の画期的な点は、機械式の時に存在していた欠点を克服した点にあります。機械式と違ってディストリビュータを必要としなくなったため、高圧電流によって損傷する部品が極限まで少なくなりました。

さらに、イグニッションコイルとスパークプラグの距離が近くなったことにより電力のロスが減少しています。高回転のエンジンに対応できなかったという問題点も、クランクシャフトと同期するディストリビュータを廃し点火時期をセンサー制御することで解決しました。

結果として、ダイレクトイグニッション式は機械式と比べて燃費も良くなり、強いトルクも得られるようになっています。加えて、メンテナンス性も機械式と比べて向上したため、自動車の点火方式の主流を占めるようになりました。

寿命と故障の症状

イグニッションコイルも他の自動車部品と同じように、長く走っているとやがて寿命がきます。

その寿命は車種や使用状況なども関係してくるため一概には言えないのですが、目安としては走行距離10万kmと言われています。

イグニッションコイルに不調があらわれると、車の走り具合の調子も悪くなります。寿命がきたかどうかは、機器を使って計測をするか、車にあらわれた症状から判断するしかありません。もしも緊急時に車の不調が現れて困らないためにも、長く走った車は点検を定期的にしておきましょう。

イグニッションコイルが故障していると、エンジンの動作状況に異常が現れます。

まず、エンジン警告灯が点灯するようになるでしょう。さらに、エンジンがなかなかかかりにくかったり、アクセルを踏み込んでもなかなか加速しなかったりします。

その他、アイドリング時などにエンジンの音がばらつくという現象も見られます。これらの不具合は、イグニッションコイルの故障によって特定の気筒の点火がなされず、動いていない気筒が存在することを意味します。

まだ動いている気筒があるため何とか自走できる状況ですが、車の流れに乗れないほど速度が落ちることもあり危険です。エンジンの異常が表れた時は、早めに対処をしましょう。

イグニッションコイルの交換方法と掛かる費用

もしもイグニッションコイルが故障した時には、正常な部品と交換する必要があります。

イグニッションコイルの異常が起きた時は、基本的にディーラーか整備工場に交換を依頼しましょう。その理由は、車の調子が悪くなった時点では本当にイグニッションコイルだけに異常があるのかどうか分からず、他の可能性も考えられるためです。

ディーラーや整備工場にイグニッションコイルの修理を依頼する時には、エンジンの1気筒あたり10,000円~15,000円かかると見ておきましょう。この代金は部品代と工賃合わせてのものです。作業時間は2時間程度かかるでしょう。


イグニッションコイルは一般的に販売されているため、車の知識があれば自分で交換することもできます。イグニッションコイルの交換に必要な工具はメガネレンチだけです。余裕があればプラグレンチとマグネット付きドライバーもそろえてスパークプラグの点検もしておきましょう。

修理に先立って、まずどのイグニッションコイルが故障しているか見極める必要があります。故障しているイグニッションコイルを識別するためには、エンジンをかけている最中にボンネットを開け、イグニッションコイルに接続されているカプラを外せば分かります。

もしも問題のあるイグニッションコイルのカプラを外した場合はエンジン音に何の変化も起こりません。逆に、正常に動作しているイグニッションコイルのカプラーを外した場合はエンジン音にばらつきが出てくるなどの不具合が見られます。カプラーを外す作業をそれぞれの気筒ごとに繰り返して、問題のあるイグニッションコイルを特定してください。

イグニッションコイルを外すためには、まずイグニッションコイルを固定しているネジを外し、接続されているカプラを外します。その後でイグニッションコイルを引き出してください。

イグニッションコイルは4本セットで10,000円超で売られているものもあります。費用面で考えると、DIYで交換した方が圧倒的に安く済みます。ただ、エンジン不調の原因はイグニッションコイル以外にも隠れているかもしれないので、注意しましょう。

点検方法

突如イグニッションコイルに不調が起きると、日常生活の中で深刻なトラブルを招きかねません。定期的に点検をして、トラブルが起きる前にイグニッションコイルの不調に気づけるとベストです。

イグニッションコイルはトラブルが起きない限り異常が分かりにくいため、定期的な点検をあらかじめ行っておきましょう。イグニッションコイルの不調を調べる最も簡単な方法は、専用のテスターを使用することです。

装置の名称はメーカーによって違っており、「イグニッションコイルアナライザー」(ワーズインク)、「イグニッションテスター」(JTC)、「イグニッションコイルチェッカー」(株式会社日立)といったものがあります。

これらの計測装置はセンサー部分とそれにつながる計器部分から構成されており、センサー部をイグニッションコイルに接触させて数値を計測します。エンジン内の全てのイグニッションコイルを計測して、異常な数値が計測されたものは交換しましょう。

イグニッションコイルの状態を計測するセンサーは非常に便利ですが、唯一の難点は比較的高価である点です。安いものでも40,000円弱はするため、気軽に買いづらいかもしれません。もちろん、この金額はイグニッションコイルの修理1回分とほとんど同じであるため、今後も使い続けられる点で安いとも言えます。

さらに安価な方法としては、スパークギャップテスターとプラグコードリークテスターを使ってイグニッションコイルの点検する方法もあります。

スパークギャップテスターとは正常なスパークギャップ(点火プラグの放電の際に必要な空間の長さ)を測るためのもので、プラグコードリークテスターとはプラグコードやイグニッションコイルのリーク(電気もれ)を計測するための道具です。両方合わせても値段は15,000円くらいなので、安価にイグニッションコイルの診断ができます。

他の方法としては、ディーラーや整備工場にイグニッションコイルの点検を依頼する方法もあります。その際の工賃は業者によって違い、無料で点検してくれるディーラーもあれば5,000円程度かかるところもあります。

異常が見つかった場合はそのままイグニッションコイルの交換も行ってもらえるため、手間がかかりません。

もしもイグニッションコイルに異常が見つかった時は、たとえその他のイグニッションコイルが正常であってもなるべく全て取り替えるようにしましょう。イグニッションコイルは使用開始の時期が全て同じであるため、他のイグニッションコイルもいつ故障するか分からないためです。

時間や金銭の余裕がない時は問題のあるイグニッションコイルの交換だけで構いませんが、時期を見つけて残りのものも早めに交換してください。

まとめ

イグニッションコイルは重要な部分であるにも関わらず、普段あまり気にする機会はありません。

記事を読んで車の状態が気になった方は、なるべく早めに点検を行ってみてはいかがでしょうか。イグニッションコイルにもしものことがあれば、最悪の場合事故を招きかねません。愛車を気遣って長く乗り続けてあげてください。

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