レンジエクステンダーって何?
レンジエクステンダ―はEV(電気自動車)の航行距離を伸ばすために、補助としてガソリンで発電できる機能のことをいいます。
シリーズ方式のハイブリッドシステムの一部ともされ、違いは、シリーズ方式のハイブリッドよりも、レンジエクステンダ―EVの方がバッテリー容量が大きいことです。
「レンジ」は「距離」、「エクステンダー」は「拡張する装置」という意味です。2012年3月に米国「カルフォルニア州大気資源局(CARB)」から発表されたレジエクステンダーEVの定義は以下のようになっています。
①充電による走行距離が75mile(120.7km)以上であること
②補助動力装置(発電専用エンジン)を搭載し、これによって発生した電力での走行距離が、充電による走行距離を下回ること
③バッテリー電力が低くなるまで、補助動力装置は作動してはならない
BMWのi3には、EVとレンジエクステンダーEVの両方が揃っています。長距離ドライブは滅多にしないし、使ったらすぐに充電するという人であればEVだけでも大丈夫です。もしものときのことが心配なる人であれば、レンジエクステンダーEVを選択することもできます。
■PHVとの違いについて
レンジエクステンダーEVとPHVは何が違うのでしょうか。レンジエクステンダーEVとPHVは、どちらも電気とガソリンを使っています。ここでのポイントは「従来のガソリン車のように、ガソリンとエンジンで走行するかどうか」という点です。PHVはこれまでのガソリン車のように、ガソリンとエンジンを組み合わせて、直接車を動かしています。それに加えて、電気でも車を動かすことができます。
レンジエクステンダーEVにおいては、車内にあるガソリンとエンジンは発電に使われています。発電されたエネルギーはバッテリーに蓄えられます。そしてそのエネルギーを使ってモーターを動かし、車を発進させるわけです。PHVはガソリンでも電気でも動かせる車、レンジエクステンダーEVは電気が主役で、ガソリンとエンジンは補助的に使われる車であると覚えておけばいいでしょう。
レンジエクステンダーのメリット・デメリット
現在、車と環境の共存が世界的なテーマになっています。そのような時代に注目を集めているのがレンジエクステンダーです。ここではレンジエクステンダーのメリットとデメリットを紹介しましょう。
■メリット
レンジエクステンダーはEVとPHVの良いところを取り込んでいるといわれています。そのことが一体どのようなメリットになるのでしょうか。
メリット1 充電ステーションがなくてもガソリンスタンドで燃料補給ができる
レンジエクステンダーはバッテリーの残量が少なくなると、小型発電機で電気の供給ができます。つまり、走行中に充電ステーションが見つからなくても、通常のガソリンスタンドで燃料を補給さえすれば、エンジンの力で走り続けることができるのです。この仕組みによって「走行距離が増えるほど、充電時間が長くなる」というEVの弱点を見事にカバーすることができています。
メリット2 純EVと構造が似ているため、モデルチェンジしやすい
同じ車種のレンジエクステンダー搭載モデルと非搭載モデルとを比べると、構造が非常に似通っています。小型発電機を載せているか、電池を載せているかの違いだけです。そのため、新しい小型発電機やバッテリーが開発されたときは、比較的簡単にそれらに付け替えることができます。
■デメリット
次にレンジエクステンダーのデメリットを見ていきましょう。
デメリット1 PHVなどのように排熱を再利用しにくい
PHVやハイブリッド車は、ガソリンエンジンの排熱を取り込んで、それを再利用することができます。しかしレンジエクステンダーの場合は、エンジンを走行時に利用しないため、排熱の再利用が難しいといわれています。
デメリット2 長期間放置するとガソリンの劣化が起こる
ガソリンを放置すると、だんだん劣化していきます。定期的にエンジンを動かすことで、劣化を防げます。最低でも2~3ヶ月に1回はエンジンを動かしましょう。
発電機が搭載されている分、重量が増える
レンジエクステンダーには、小型とはいえ発電機が搭載されています。そのため非搭載モデルと比べると、重量が大きくなっています。例えばBMW i3の場合、レンジエクステンダー搭載モデルは非搭載モデルより約120kgも重くなっているのです。重くなるということは、その分燃費に影響が出ることになります。
発売予定!? レンジエクステンダー搭載の車【2選】
今後、レンジエクステンダーを搭載した車の販売が予定されています。その中から、注目すべき2つの車を紹介します。
■2020年発売 マツダの本格電動車
2018年10月に、マツダは「電動化とコネクティビティ技術戦略発表会」を実施しました。その中で、ロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーEVの開発を正式に発表しました。商品化の時期については、以前から公表されていたEVと同様、2020年になるのではないかといわれています。つまり、マツダ初の本格電動車はピュアEVとレンジエクステンダーEVの2本立てとなるのです。ここではロータリーエンジンを使用するメリットを見ていきます。
コンパクトさを活かしたパッケージング
ピュアEVとレンジエクステンダーEVの2種類をラインナップするとき、発電用エンジンをどこに搭載するかが問題になってきます。現在、同一パッケージでピュアEVとレンジエクステンダーEVの両方が用意されているのはBMW i3くらいですが、狭いスペースに無理矢理発電用エンジンを押し込んでいるので、手持ちのスクーター用600cc、2気筒エンジンを転用して凌いでいる状態です。
しかし、2気筒エンジンを使用すると、騒音が問題になります。レンジエクステンダー用エンジンを作動させると「ブーン」という音が鳴ってしまうのです。ロータリーエンジンを使用すると、こういったデメリットも解決できます。エンジン、ジェネレータ、燃料タンクなどが手際良くパッケージングされているロータリーエンジンは、非常にコンパクトになっています。2気筒エンジンを使用していないため、振動や騒音も抑えられており、快適にドライビングすることが可能なのです。
燃料の多様性
ロータリーエンジンはガソリンや軽油以外の燃料も使用できます。それゆえ、CO2排出量低減や排ガスのクリーン化、またそれ以外にも、非常用の電源インフラとして活用することが期待されています。CNGや水素で走行するロータリー実験車はずいぶん前からあるので、原理的には停電中でもガスインフラがあれば、ロータリーエンジンレンジエクステンダーによる発電が可能です。実際にはマルチフューエル用の燃料供給システムが必要となりますが、この点については技術的ハードルは低いとされています。
■発売予定 アウディ A1 e-トロン
アウディ A1 e-トロンには、マツダ車と同じく、発電専用のロータリーエンジンによるレンジエクステンダー機能が搭載されています。コンセプトカーとして初めて登場したのが、2010年のジュネーブモーターショーです。ロータリーエンジンが使われているため、小型でありながら、高出力を実現しています。今後マツダのレンジエクステンダーEVのライバルとなる可能性が非常に高い車です。
レンジエクステンダーで今イチオシ 「BMW i3」
現在販売されているレンジエクステンダーの中でイチオシなのが「BMW i3」です。ここでは詳しい性能や、価格を紹介していきます。
■性能はどうなのか
まずは性能面から「BMW i3」を見ていきます。
大容量バッテリーで航行距離を伸長
よく知られているように、EVの最大の弱点は航行距離です。エネルギー密度の高いガソリンに比べると、電池はかさばりますし、重量もあります。i3はレンジエクステンダーを装着することで、その弱点を補いました。さらに大容量バッテリーを搭載することで、従来よりも70%以上も航行距離を伸ばしています。(JC08モードで390kmを実現しています。)
電気制御システムと相性の良いモータードライブ
レンジエクステンダーEVはモーターによって車を動かします。これによりACCなどの電気制御システムと相性が良くなっています。エンジン車に比べて、各システムの反応スピードが速くなるのです。
ドライブモードが選べる
i3では2つのドライブモードを選ぶことができます。「最適効率走行」を意味する「ECO PRO」モードと、「エアコンなし&時速制限90km/hでの最大航続距離」を意味する「ECO PRO+」モードです。制限はありますが、「ECO PRO+」モードにすることで航続可能距離を伸ばすことができます。
回生ブレーキで電力の補給ができる
i3には回生ブレーキが付いているので、電力を補給しながら走行することもできます。上手く使えば、電池残量をだいたい10kmくらいに保つことができます。
■現在の価格はいくらくらい?
i3のレンジエクステンダーEVは、新車であれば約600万円前後で販売されています。中古車であれば、約250万円前後で販売されることが多いようです。
まとめ
レンジエクステンダーEVは高価な車です。それでいて、まだガソリン車より利便性がよくありません。しかし、レンジエクステンダーEVの本質的な価値は、未来を見据えた先進的なコンセプトを体現していることです。
興味のある方は、購入を検討してみてはいかがでしょうか。