三菱 デボネアとは?
デボネア=「高級乗用車」というイメージがある方も多くいるはずです。そもそもデボネアは、英語で「礼儀正しい」さらに「優雅な」「風格をもつ」「気品がある」などの意味があるため、風変りな印象をもった方も多くいたはずです。
デボネアでとくに目を引くのは独特の個性的なスタイルといえます。このデボネアが三世代にわたり高級車として製造され続けられた歴史を見ていくことで、三菱が車に何を求めていたのかが分かるでしょう。
■初代 デボネア ~通称走るシーラカンス~
初代デボネアは、東京オリンピックが開催された1964年に登場しました。初代デボネアは、モデルチェンジを行うまでの22年間(1964~1986年)ほとんど基本的な設計を変更せずに製造を続けたため、通称走るシーラカンスといわれています。
日本製のセダンで三菱の初代 デボネアほど長期にわたり製造された車は存在しない(トヨタ・センチュリーを除く)といえます。
初代デボネアは、60年代のアメ車風の角貼ったボディが特徴で、大きな印象を与えるようにボンネットとテール両側にエッジを立て、フロントグリルを広く取りアメ車のような迫力を演出しています。
現在の感覚で初代デボネアを見てみると、どこか懐かしさを感じるデザインです。この初代のモデルは、デボネアの中でとくに人気が高く程度が良いものだと現在でも高価で取引されています。
しかし、発売当初は、過去の車がタイムスリップして現れたような基本設計・デザインにより、一般ユーザーからの人気はほとんどありませんでした。当時はトヨタのクラウンが絶対的な人気があり、次に日産の高級乗用車が存在していました。
さらに1980年代になると初代デボネアの古さを隠すことはできず、一般的な需要は激変しました。
とくに、一般ユーザーからの人気がない理由の1つに三菱グループの重役の多用があり、そのことで三菱グループ以外の企業からは敬遠されたともいわれています。さらにクラウンやセドリックといった高級車よりも販売価格が高かったのも理由です。
しかし、初代デボネアが生産終了してからの数十年経過した後に、昔のアメ車風の基本設計・デザインが旧車好きに再評価されているのも事実です。
■二代目 デボネアV ~V6エンジンの供給~
三菱は1986年2月に初のモデルチェンジを受けて、二代目デボネアVが誕生しました。デボネアVの「V」は、VIP・V6エンジンなどを意味しており、本格高級乗用車としての作りこみを徹底しました。
デボネアVが誕生した背景は、当時提携していたヒュンダイでも同クラスの高級車を求めており、その国際戦略車開発の担当として三菱に設計・開発を指名した事情があります。
ヒュンダイと同じく提供関係にあったクライスラーもV6エンジンを日本国内向けに製造することを決めていたため、デボネアVのエンジンとして流用することが可能になりました。
こうしてヒュンダイ版「グレンジャー」と三菱版「デボネアV」が同時誕生することになります。エクステリアデザインは、決してスタイリッシュであるといえなかったのですが、初代デボネアと比べるとモダンになっています。
搭載されたエンジンは、
・2,000cc V型6気筒 SOHC(前期モデルは105PS、後期モデルは120PS)
・3,000cc DOHC 24バルブ(1989年~1992年)
のエンジンを横置き搭載しています。後に150PSに向上した2,000㏄のスーパーチャージャー(1987年~1989年)と200PSの3,000㏄ DOHC 24バルブ(1989年~1992年)が追加されています。
■三代目 デボネア ~大型ボディの高級車~
1992年に発売された三代目デボネアは、デボネアの中で最も大型なボディとなっています。デボネアのフルモデルチェンジは、三菱がバブル期の時期に上位モデルの大型化を進んだのに合わせて行いました。
さらに三代目デボネアは、現在では支流になりつつありますが、当時としては最高級の装備と高級感がありました。
例えば、当時ではまだ珍しい「車間距離自動制御システム」や「カーナビゲーション」さらに「バックカメラ」など充実しています。
さらにパワートレインが強力で3.0LのV型6気筒SOHCと、3.5LのV型6気筒DOHCというラインナップとなっています。
しかし、三代目デボネアはバブル崩壊の時期に発売が重なっていたため販売台数が伸び悩み、1999年12月で生産終了しています。
初代~三世目デボネアまでインテリアデザインはオシャレとはいい難いものがありますが、落ち着きがあり応接間のある雰囲気となっているといえるでしょう。
三菱の車「デボネア」に惹かれるポイントは、やはり信頼度の高さといえます。他の日本車メーカーであれば、同じモデルでも複数のエンジンを設定するものですが、三菱はしないのです。
このモデルにはこのエンジンというものはなかなか見つかるものではなく、三菱が開発の資源を集中し、改良を継続していく姿勢が信頼できるポイントです。
デボネアAMGもあった ~内装をオーナードライバー向けに~
デボネアAMGがあったことをご存知は少ないのではないでしょうか。AMGとは、メルセデス・ベンツのチューニング部門であり、ベンツの上級高性能モデルを生産するスポーツブランドのことをいいます。
デボネアAMGは二代目デボネアVをベースに、
・エアロパーツ
・アルミホイール
・ステアリング
・デュアルテールエキゾーストパイプ
などが装備されたモデルです。ノーマル車と見比べると違いが分かるのですが、どことなくメルセデス・ベンツに雰囲気が似ているのです。
AMGが動力部に手が入っているわけではないのですが、国産車でAMGを手に入れたものはそうあるものではありません。販売台数は300台となっており、現在ではなかなかお目にかかる機会はないとても希少な車となっています。
二代目デボネアでも記載した、ヒュンダイ・クライスラーが組み合わされた特異な車のデボネアは開発経緯から一般的な市場に受け入れにくいモデルになってしまったのも事実です。
しかし、挑戦的な三菱は、他との差別化を進めていくためAMG仕様やアクアスキュータム仕様(イギリスの高級被服老舗ブランドとのコラボ)を生み出し高級感をアピールしていきます。
さらに三菱は、内装をオーナードライバー向けにした「エクシード」や「ツーリング」などを設定しています。
デボネアV リムジンが存在した
リムジンは王室や大統領だけが使う車ではありません。とくにバブル期に一般人でもリムジンに乗る文化が花開くことになります。その先導役になったのが、日産のリムジン(セドリック/グロリア ロイヤルリムジン)といわれています。
この動きにトヨタが黙っているはずもなく、負けじと「センチュリー リムジン」で対抗しました。これには日産も負けてはいられないと「プレジデント ロイヤルリムジン」を発表していきます。
このようにリムジン界の意地の張り合いのような流れがあり、日産・トヨタがリムジンを出すのであれば、三菱だってリムジンを出したくなるものです。
そして、三菱もディーラー車(愛知三菱自動車)ではありますが、技術力があることを世に知らしめるために「デボネアV リムジン」を発表することになります。
このデボネアV リムジンはとても希少な高級車といわれており、現在の日本に存在している車両はほとんどないといわれています。
ごく稀ではありますが中古車市場にデボネアV リムジンが現れることがありますので気になる方はチェックするといいでしょう。
デボネアのスペック
三菱 デボネアは、初代のみFR駆動で、二代目と三代目からFF駆動となっており、三菱車の中では最高級のセダンといえるでしょう。主なデボネアのスペックは下記となります。
・初代デボネア(1964年~1986年)のスペック
全長:4,670㎜
全幅:1,690㎜
全高:1,465㎜
ホイールベース:2,735mm
車両重量:1,330kg
生産台数:2万1,703台
駆動方式:FR
エンジン:直列6気筒OHV
総排気量:1,991cc
最高出力:78kW(106PS)/5,000rpm
最大トルク:163N・m(120ft・lbf)/3,400rpm
・二代目デボネアV(1986年~1992年)のスペック
全長:4,690mm
全幅:1,695mm
全高:1,440mm
ホイールベース:2,735mm
車両重量:1,370kg
生産台数:2万8,007台
駆動方式:FF
エンジン:V型6気筒OHC
総排気量:1,998cc
最高出力:105PS(77kW)/5,000rpm
最大トルク:16.1kg・m(158N・m)/4,000rpm
・三代目デボネア(1992年~1999年)のスペック
全長:4,975mm
全幅:1,815mm
全高:1,440mm
ホイールベース:2,745mm
車両重量:1,590kg
生産台数:1万779台
駆動方式:FF
エンジン:V型6気筒SOHC12バルブ
総排気量:2,972cc
最高出力:170PS(125kW)/5,500rpm
最大トルク:25.3kg・m(248.1N・m)/3,000rpm
デボネア カスタムのおすすめ
カーライフを充実していくために三菱 デボネアをカスタムしていきましょう。思わず試したくなるようなホイール、LEDのカスタムパーツのおすすめを紹介します。
■ホイールカスタム
カスタムの王道といえば、ホイール交換です。自分好みのデザインを選んでインチアップ(カラー変更)などすることでデボネアのイメージが大きく変わります。
おすすめホイールのカスタムパーツは下記となります。
・三菱純正アルミホイール
・純正 AMG5 穴アルミ
・BBS RS
■ヘッドランプカスタム
ヘッドライトカスタムは、定番のHID・LED化だけではなくイカリング装着・インナーのブラックアウト化など、さまざまなカスタム方法があります。
おすすめのヘッドランプのカスタムパーツは下記となります。
・韓国ヒュンダイ 二代目グレンジャー用ヘッドランプレンズ
・BELLOF Spec LE MANS GT Spec EX
・RAYBRIG HYPER BULB SERIES
・BELLOF Super Wide LED Sirius REVO
さらに、デボネアのカーナビの取付や交換作業がもしできるのであれば、電装品カスタムに応用することができるようになります。中級レベル(難易度高め)のカスタムになりますので、知識がある方であればおすすめです。
デボネアの中古車価格
デボネアの平均価格は、48万円となっており当時の高級車の品質をこの価格で手に入れられるのは魅力的といえます。
しかし、デボネアは年式が古くなるほど、価値が上がるため例え1975年式のものであっても100万円を超える価格となっています。
初代デボネアの終わりとともに旧車デボネア需要の高まり
デボネアは幾多のマイナーチェンジをしたものの基本設計を変えることなく、22年間も生産を続けてきた車です。
1986年に二代目デボネアになったことで走るシーラカンスの生産は終了となりましたが、これからも三菱デボネアの歴史は語り継がれていくことでしょう。
デボネアが生産終了してからというもの「アメ車風のスタイル」を安価で手に入れられることもあり、旧車好きの間での需要の高まりがあります。
とくに人気があるのが1973年までのモデル(フロントドアの三角窓、Lテール仕様)となっており、高価で取引されています。
また、デボネアは法人の需要が高かったこともあり、黒カラーの個体が圧倒的に多くあります。上記でも記載したように、中古車市場でもそれなりに価格の選択肢がありますので、比較的オーナーになりやすい旧車といえるでしょう。
まとめ
デボネアの販売当時は、走るシーラカンスとまで呼ばれていた車ですが、現在では逆にアメ車風のルックスから多くの旧車好きに受けて愛されている車です。未だにデボネアが話題に上がるのは、22年間も生産されてきた歴史と過去にタイムスリップしたかのような「レトロなカッコ良さ」に親しみやすさを感じるからかも知れませんね。