高齢者講習とは?
高齢ドライバー
高齢者講習とは、満70歳以上の人が自動車運転免許の更新をおこなう際、受講が義務づけられている講習です。
高齢者講習は1980年代後半から、任意参加の形で始まりましたが、1998年に義務化されました。
2017年には高齢者講習制度の改正がおこなわれ、75歳以上には認知機能検査が強化されています。
受講しないと、運転免許証を更新できませんから、「更新前に」受ける必要があります。
高齢者講習が義務化された背景
高齢者講習が義務化された背景には、交通事故死者のうち、高齢者の占める割合が高いことがあげられます。
警視庁が発表している「高齢運転者交通事故発生状況」によれば、高齢ドライバー(原付以上を運転している65歳以上の方)が第1当事者となる事故の割合は、2010年に12.7%でしたが、2019年には18.1%にまで増加しました。
加齢に伴って、集中力や瞬間的な判断力の低下、動体視力の衰え、反応時間の遅れなどが生じてしまうためと考えられています。
そこで、高齢者本人に運転能力や技術水準を自覚してもらい、必要なアドバイスや指導を受けることを目的として、高齢者講習がおこなわれるようになりました。
ちなみにこの高齢者講習、年齢によって2つのタイプがあります。
70歳から74歳のドライバーの場合
高齢者による運転
70歳から74歳のドライバーは、「高齢者講習」のみ受講です。
東京都内にお住まいの方であれば、都内45カ所の教習所と一部の運転免許試験場で受講できます。受講場所はお住まいの地域によって異なりますので、通知はがきをご確認ください。
なお講習は、免許の有効期間満了日6か月前から受講可能です。
講習内容は、
・座学(30分)
・各種運転適性検査(30分)
・実車による運転指導(60分)
となっています。
座学では、基礎知識から安全運転の心がまえ、道路交通法の最新情報、交通ルールの再確認、といったことがおこなわれます。
各種適性検査は、視力、視野、動体視力、夜間視力です。
実車による運転指導では、実際に運転して、方向転換、一時停止、S字カーブ、といった課題のもと、運転状況を話し合います。高齢者のほとんどはベテランドライバーですが、長年の運転習慣が間違っている場合もあり、この機会に正しい運転方法に気がついてもらう講習です。
75歳以上のドライバーの場合
75歳以上のドライバーの場合、高齢者講習を受ける前に、まず「認知機能検査」を受ける必要があります。
この検査では、記憶力や判断力の測定がおこなわれます。内容は、
・時間の見当識
・手がかり再生
・時計描画
の3項目です。
「時間の見当識」では検査時の年月日、曜日、時間についての検査です。「手がかり再生」では16種類の絵を記憶して、描かれていたものを回答し、「時計描画」では、時計の文字盤を使った検査が行われます。
これらの検査結果によって、3種類の判定がおこなわれ、それぞれ別々の講習へ進みます。
・「記憶力・判断力に心配ありません」と判断された方は、70~74歳の方と同じ「2時間の高齢者講習」を受講します。
・「記憶力・判断力が少し低くなっています」と判定された方は、「3時間の高齢者講習」受講です。
・「記憶力・判断力が低くなっています」と判定された方は、認知症のおそれがあるため、臨時適性検査または診断書の提出が必要となります。
その診断結果で、認知症と判断された場合は、運転免許の停止または取消の対象となります。一方、認知症ではないと医師から判断された場合は、「3時間の高齢者講習」を受講することになります。
高齢者講習の受講時間や費用について
2019年09月現在
■2時間の高齢者講習
この講習は、70~74歳までのドライバーと、75歳以上で「記憶力・判断力に心配ありません」と判断された方が受講するものです。
・時間:2時間
・検査手数料:5,100円
持参するものは、
・通知はがき
・現在有効な運転免許証
・高齢者講習手数料
・筆記用具
・運転時に眼鏡が必要な人は、眼鏡
などです。
■3時間の高齢者講習
この講習は、75歳以上のドライバーで、「認知機能検査」において「記憶力・判断力が少し低くなっています」と判定された方、または「記憶力・判断力が低くなっています」と判定された後、医師の診断を受けて認知症ではないと判断された方が受講します。
・時間:3時間
・検査手数料:7,950円
受講内容は、座学と運転適性検査が120分、実際にハンドルを握っての検査が60分です。
持参するものは、
・通知はがき
・現在有効な運転免許証
・高齢者講習手数料
・筆記用具
・運転時に眼鏡が必要な人は、眼鏡
などです。
■認知機能検査
この検査は、75歳以上のドライバーが、高齢者講習の受講前に、受ける必要がある検査です。
・時間:30分
・検査手数料:750円
認知機能検査は基本的に予約制ですので、まずは届いた通知はがきを確認し、電話をかけて予約を取りましょう。
検査のときに持参するものは、
・通知はがき
・検査手数料
・筆記用具
・必要な方は眼鏡、補聴器など
となります。
免許更新時以外でも、検査が必要になる場合がある!
免許の更新時だけでなく、75歳以上の高齢運転者は、一定の違反(18項目)をした場合、「臨時認知機能検査」という別の検査を受ける必要があります。
対象となる違反の18項目には、「信号無視」や「通行禁止違反」、逆走や歩道走行を想定した「通行区分違反」、一時不停止が対象となる「指定場所一時不停止等」などが含まれています。いずれも認知機能が低下した場合におこしやすい違反です。
検査結果が、直近に受けた認知機能検査よりも悪くなっている場合、臨時高齢者講習の受講が求められます。
時間と費用は、
・時間:2時間
・費用:5,800円
です。
そして、検査結果が「記憶力・判断力が低くなっています」と判断された場合、臨時適性検査または診断書の提出が求められ、そこで認知症と判断された場合は、運転免許の停止または取消の対象となります。
そのほかの高齢者講習について
高齢者講習は全部で5種類あります。
ここでは残りの4つも取り上げますね。
■シニア運転者講習
高齢者講習と同じ内容・受講費用ですが、住所地以外でも受けることが可能です。
・受講時間:2時間以上
・費用:5,100円
■チャレンジ運転者講習
普通車を使って、コース内でおこなう講習です。
評価点が70点以上で合格。その場合、簡易講習を併せて受講することで、「高齢者講習」に代えられます。70点未満の場合、再チャレンジ、またはほかの講習を受講することになります。
・受講時間:1人約30分
・費用:2,650円
チャレンジ講習のメリットは、手数料が安いことですが、実施場所が少ないことと、不合格の場合は再受講が必要となるため、メリットを生かせるのかよく考慮する必要があるでしょう。
■特定任意高齢者講習(簡易講習)
チャレンジ講習で70点以上を取れた場合に受講できて、終えると「高齢者講習」に代えられます。
・受講時間:1時間以上
・費用:1,800円
■運転免許取得者教育
運転技術の向上などを目的にしており、受講すると高齢者講習が免除されます。
・受講時間:2時間以上
・費用:各教習所独自に設定
高齢者ご家族の運転が心配な場合は?
免許
個人差があるとはいえ、加齢によって車の運転に必要な能力が低下することは事実です。しかし、そうした高齢者ほど、車を必要としていることも、また事実かもしれません。
よほど交通手段が発達していない限り、日常の買い物、病院通いをするにも、車がなければ生活がままならないという地域にお住まいの方も多いことでしょう。
事故の心配と、生活に困ってしまう現実の狭間で、高齢者と一緒にお住いのご家族や離れて住むお子さまは、悩みどころかもしれません。
そこで、「相談できる窓口」、ベテランや高齢ドライバー向けの「スクール」についてご紹介します。
■安全運転相談窓口
安全運転相談窓口とは、高齢運転者など、運転に不安を覚える方もしくはそのご家族からの相談を受け付けている窓口です。
担当は、看護師などの医療系専門職員をはじめとした、専門知識を豊富にもつ職員が務めます。
電話でも相談できて、全国統一の専用ダイヤルが設けられています。
この専用ダイヤルは、発信場所を管轄する都道府県警察の安全運転相談窓口につながりますので、一度相談してみるとよいかもしれません。
・安全運転相談ダイヤル:♯8080
・受付時間:原則平日で、予約が必要な場合もあります
・通話料:利用者負担
■シニアドライバーズスクール
シニアドライバーズスクールは、JAFが開催している運転操作を再確認するための講習会です。
50歳以上のドライバーが対象で、自分の運転を見つめなおし、今後の安全運転に役立てることを目的としています。主なカリキュラムは、他のドライバーの運転を見て自分の運転を振り返る講座、急ブレーキ体験、見通しの悪い交差点での通過方法といったものです。
各都道府県の運転免許センターや自動車学校でおこなわれていますので、興味があればJAFのホームページでご確認ください。
まとめ
高齢者講習・認知機能検査
高齢者講習についてまとめました。
ご自分やご家族が免許更新の際、高齢者講習をしっかりと受けて、どうぞ安全運転にお役立てください。