車検時に新しい項目をチェック!OBD検査が始まります
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一般的な乗用車を乗り続けたいなら、新車登録から3年、それ以降は2年ごとに、車を細かくチェックしてその車が公道を走るのに適した状態か判断する「継続検査」を受け、合格する必要があります。
この検査は「車検」と呼ばれることが一般的で、車をお持ちの方ならカーライフにおけるお馴染みのイベントのひとつですよね。
車は正常に走ったり止まったり曲がったりするために数多くの複雑なメカニズムが正しく作動することが必要で、たったひとつの故障が重大な事故を引き起こす原因にもなりかねないだけに、車検の検査項目は多岐に渡り、検査基準が厳しく設定されています。
身近なところではワイパーの拭き取り具合や、タイヤの残り溝などもしっかりチェックされますし、日々の運転ではチェックの目が及ばない排気ガスの状態などもきちんと検査がされます。面倒な印象もある車検ですが、愛車が公道上を走るのに最低限の問題がないことを確認するよい機会ともいえます。
そんな車検に対して、小さくない変化が訪れようとしています。2024年からは、新たに「車載式故障診断装置(OBD)」を利用した検査が追加され、これまではチェックのできなかった不具合をあぶり出す試みが始まる予定なのです。
この記事では、どのような目的でOBDを利用した検査を始めるのか、どんな車がいつから影響を受けるのかなど、気になるポイントを詳しく解説していきます。
「OBD」ってそもそもなんだ。あなたの車にもついてるハズ?
■OBDは「車載式故障診断装置」と訳されます!
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「車載式故障診断装置」と聞くと難しい印象を覚えますが、カーアクセサリーなどを自分で取り付けたことのある方なら、略称の「OBD」という名前には聞き覚えがあるかもしれませんね。
OBDとは「On-Board Diagnostics」の略で、国内では「車載式故障診断装置」と訳されることもあります。
ご自分でOBDを利用した故障診断を行う一般ユーザーは稀とは思われますが、OBDコネクタからは車両のさまざまな情報が手に入ることもあり、後付けメーターなどのアフターマーケットパーツがOBDコネクタを利用して車両情報を表示したりする例も見られます。
■OBDの機能① 故障や不具合をその場で伝える
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近代の自動車は、機械制御だったさまざまな機能をコンピューターを使って電子制御することで、その性能を向上させてきました。しかしそんな電子制御は、故障の原因が掴みにくいという難点もあります。
例えば、機構的には問題がなく、電気信号による制御自体に不具合が発生している場合、外部からの目視ではその不具合の特定が難しい場合も。その場合、制御しているコンピューターを通して不具合の有無を確認する必要があります。
OBDは、車に搭載されたコンピューターの自己診断結果を、ドライバーに警告灯などを点灯させて伝えるほか、専用の機械を車に接続した際に診断結果を表示する機能を担っているシステムです。
■OBDの機能② 過去に発生した故障や不具合を記録する
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また、ご自分が運転している時には不具合が感じられるのに、いざディーラーや整備工場に入庫させると不具合が消えてしまった!なんていう経験のある方もいらっしゃることでしょう。
OBDには、過去の故障内容が記録されるようにもなっており、専用の機器で読み込むと、トラブルの原因となりうるような故障が過去に発生したかどうかを確認することもできます。
そのため、これまでは整備士さんの勘で直していたような電子制御関連の故障でも、実際にその故障が発生したかどうかをよりチェックしやすくなっており、整備の効率化に役立っています。
■OBD2は共通の規格、2008年以降の新型車には装着義務も
《画像提供:Response 》OBDコネクタ
電子制御がさまざまな機能を支えている現代の車を、支えているのがOBDというわけです。
当初は各自動車メーカーでコネクター形状や表示される情報がバラバラの規格となっていましたが、現在使われている「OBD2」は共通規格のコネクターが用いられています。
国内では、基本的に2008年10月以降の新型車に関してはOBD2の搭載が義務付けられているほか、それ以前にもOBDを搭載していた車もあるので、ここ10〜20年前後に製造された車なら、OBD機能が装備されていることでしょう。
OBD検査ってなに?どうして新しく始める必要があるの?
2021年10月1日以降に製造される国産車に対し、2024年以降の車検から「OBD検査」が検査項目に追加されるということで、最近にわかに注目を浴びるOBD。
ここからは、2024年からのOBD検査ではどんなことがチェックされるのか、一体なぜ新しくOBD検査を追加する必要があったのかなど、詳しい内容を確認していきましょう。
■OBD検査でチェックされるのは、「故障コード」の有無
《画像提供:Response 》OBD検査 イメージ
新しく検査内容が増えるとなると、なんとなく緊張してしまいそうなものですが、OBDを活用した自動車検査でチェックされるのは、一部の機能や機器に対する「特定故障コード(特定DTC)」の有無であり、一般のユーザーが検査のために特に準備をしたりする必要はありません。
具体的に現時点では、いわゆる自動ブレーキ機能などの「運転支援装置」や、アダプティブクルーズコントロールなどの「自動運転機能」、「排ガス関係装置」が検査の対象とされています。
今後、対象とされる機能や機器が追加されていくことが予想されており、より幅広い機能や機器の故障コードを確認できるようになる見込みです。
実際にOBD検査を行う場合、検査担当者は専用の端末やパソコンなどに検査する車両の型式などの情報を入力し、それらを車両のOBDコネクタに接続するだけで、あとはネットワークを介して自動で特定故障コードの有無がチェックされるような流れとなっています。
■OBD検査をなぜ行うの?現在は見抜けない不具合を見つけるため
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なぜOBD検査をこれから行うことが決定しているかというと、現代の車に満載の電子制御による数々の機能は、正常に作動するかどうか、不具合や故障がないかを、現状の車検基準ではチェックすることができない場合があるためです。
車検時には、メーター内に特定の警告灯が点灯している場合には不合格となるなどの措置はあるものの、近年普及が爆発的に進んでいる運転支援装置や自動運転機能の不具合や故障などは、チェックする体制が整っていませんでした。
そのため、それらの機能を使用中に重大な影響を及ぼしかねない不具合や故障が存在したとしても、車検時に検出することができない場合があるのです。
実際に近年、たとえば自動ブレーキ機能の制御に利用されるカメラの取り付けに不具合があり、突然急ブレーキが誤作動してしまうなど、目視によるチェックでは検知できないような不具合によるトラブルの発生も確認されているようです。
そのため、OBD検査によって車両の「特定故障コード」の有無を確認し、特定故障コードが確認された車は不合格とすることで、電子制御や電子機器の不具合や故障を原因とした事故などを未然に防ぐねらいがあるというわけですね。
■OBD検査の対象は、2021年10月以降に発売される国産新型車
《画像提供:Response 》日産 アリア(イメージ)
今お乗りの車もOBD検査の対象になるのかどうか気になっている方も多いのではないかと思われますが、対象となる車は、国産車の場合は『2021年10月1日以降に発売される新型車(乗用車・バス・トラック)で、2024年10月1日から検査開始』、輸入車の場合は『2022年10月1日以降に発売される新型車(乗用車・バス・トラック)で、2025年10月1日から検査開始』となっており、実際にOBD検査が開始されるのは数年先であることがわかります。
2024年からのOBD検査開始時に不具合の発生を防ぐためのプレテストとして、一部の運輸支局に持ち込まれる継続検査の車両を対象として、2021年10月からは希望者にOBD検査工程の一部を体験してもらうなどしているとのことです。
また、2021年10月1日からは、12ヶ月定期点検の項目に「車載式故障診断装置(OBD)の診断の結果」が追加されています。これは「OBD点検」と呼ばれており、対象車両や検査方法などはOBD検査と別物ですが、OBDを利用して不具合や故障を点検する点は共通しています。
■OBD検査の開始を前に、検査手数料が値上げされています
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2021年10月1日からは、自動車の新規検査や継続検査にかかる法定手数料に、OBD検査に伴う技術情報管理手数料として1台あたり400円が追加されています。
この400円は、車両の特定故障コードなどの情報を管理する情報システムの運用費などとして、独立行政法人自動車技術総合機構へ納付するもので、普通自動車・小型自動車・軽自動車において、これまでの検査手数料が単純に400円値上がりする形となります。
OBD検査の対象車両は2021年10月以降発売の新型車で、さらにOBD開始は早くとも2024年からということを考えると、現時点でOBD検査の対象でない車の検査手数料が値上がりする点は納得がいきにくい気も。
しかし、情報システムがOBD検査を可能にすることで、車社会全体の安全性が向上していくという観点から、自動車ユーザー全体で広く負担していくものとされています。
乗ってる車はOBD検査の対象外でラッキー?そうでもないかも
運転支援システム用カメラ イメージ
OBD検査は、国産車の場合は対象が2021年10月1日以降に発売される新型車となっているので、今お乗りの車が2024年に開始されるOBD検査の対象外と知ってホッとした方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、逆に考えてみると、今お乗りの車がOBD検査の対象でない場合、車の電子機器や運転支援機能などに不具合や故障が発生しても、車検時にそのことに気づきにくくなるということでもありますよね。
新たに義務化、といわれるとなんとなく面倒な印象を感じてしまいがちですが、実際の検査手順は車検時に車両のOBDコネクタに端末を接続するだけと増える手間はほんの少しですし、そもそも車検はディーラーや整備工場に全てお任せという方も多く、ユーザー側のデメリットとしては検査手数料が若干値上がりすること以外はないはずです。
ちょっとした電子機器の不具合であっても、重大な事故に繋がりかねないことを思えば、OBD検査を受けて合格することは、ドライブ中の安心感にもつながることが予想されます。
OBD検査の対象でない車にお乗りの方は、自分の車の運転支援装置などが正常に作動しているかどうか、ご自分でもしっかりと確認していくことが求められます。
まとめ
OBD検査に関して、現時点でわかっていることをご紹介してきました。
一般ユーザーにはあまり馴染みのない「OBD」が、これからの自動車に必要不可欠な検査を支えていくことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
OBD検査は、2024年の本格導入を前にプレテストが始まったばかり。今後どのように運用がされていくのか、しっかり注目していきたいところですね。
よくある質問
■OBDってなに?今乗ってる車にもついてるの?
OBDとは、「On-Board Diagnostics」の略で、「車載式故障診断装置」などと訳されます。名前は難しい印象ですが、電子制御が満載な現代自動車の故障や不具合を特定するのに重要な装置となっています。国産車では2008年から広くOBDの搭載が義務付けられるようになっています。
■OBD検査は全ての車が対象になるの?
2024年10月から開始が予定されている「OBD検査」は、国産車では2021年10月以降に発売される新型車を対象として行われます。対象外の車に対しては、現時点ではOBD検査は行われないこととなっています。
「OBD検査」(OBD車検)が2024年10月より開始! クルマのメンテナンスはどう変わる?【クルマの所有・メンテナンスに関わる新用語、その意味は?】|Motor-Fan[モーターファン]
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OBD点検とは 10月から車の点検項目に追加 検査手数料が400円増 | ツギノジダイ
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情報:10月から車の点検項目に追加されるOBD点検(検査手数料が400円増)について | ファインピース FINE PIECE
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国交省、OBD車検のプレテスト実施 21年10月から – 一般社団法人 日本自動車会議所
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/13269/自動車関連業者による団体 一般社団法人 日本自動車会議所のウェブサイトです。活動紹介や最新情報をお届けしています。