VC-Tの最大の特徴は「可変圧縮比」
圧縮比とはシリンダー内でピストンが吸気を圧縮する際に、どの程度まで圧縮するかという数値であり、これが高ければ高いほど多くの空気をシリンダー内で扱うことができるため、高効率(高レスポンス)のエンジンということになる。
では、どんどん圧縮比を高くすれば良いかというと、そうでもないのが難しいところ。
圧縮比を高くすると燃料や吸気温度といった燃調や、点火時期の兼ね合いにより、ノッキング(金属音)が発生しやすくなり、最悪の場合はエンジンブローに直結する事態となってしまう。
ターボエンジンのような高出力を追求したエンジンユニットなら尚更である。
ノッキングの最も基本的な対策は燃調を濃く取ること(リッチセッティング)だが、燃調をリッチにすると吹け上がり(レスポンス)が悪くなり、体感では「ダルいエンジン」になってしまう。
また、現代のようにエコが叫ばれる世の中では、出力効率を追求せざるを得ない。燃調が濃いエンジンなど、もっての他である。
つまりどうしても薄い燃調(リーンセッティング)が前提となってしまい、圧縮比を高くすればもっと効率的にエンジンを回すことができると分かっていながら、思うように上げることができないというジレンマに陥っている。
圧縮比と燃調によりどうすればノッキングを上手く抑え込みつつモアパワー・モアエコを実現できるか、各メーカーのエンジン開発陣共通の頭痛の種となっている。
■運転状態に合わせてピストン位置をコントロールする
そんな中、VC-Tは「ノッキングが発生する部分のみ圧縮比を可変」させることによりノッキングを回避することができ、ノッキングの心配がない部分は思いっきり圧縮比を上げパワーを出すことができる。
VC-Tの仕組みは「上死点を動かして圧縮比を下げる」ということだが、簡単に言えば「ピストンの位置を運転状態に合わせてコントロールする」という機能である。
タービンが稼働している(正圧~フルブースト=ノッキングが出やすい)状態では、圧縮比は最小で8.0まで下がり、低負荷(負圧・アクセルオフ・エコ走行時=ノッキングが出にくい)状態では圧縮比は最大14.0まで上げることができる。
今まで誰もやろうとしなかった(正確に言えばやろうとしてもできなかった)機構を実現した日産のエンジン開発陣には驚かされる。
このように、VC-Tエンジンはノッキングの不安を根本的なところから解決できる、ターボとNAエンジンの”いいとこ取り”を実現した夢のエンジンと言っていいだろう。
下記のリンクは、日産の公式ホームページ内のVC-Turboエンジンの技術論文。より詳しい情報や研究内容等を知りたい方は是非参考に確認して欲しい。
日産公式サイトのVC-Tエンジンについての技術論文への外部リンクです。
日産の直4ターボエンジン「VC-T」搭載車、搭載予定車は?
VC-Tエンジンは2018年から量産車へ搭載していくとしており、現時点(2017年10月)では、当エンジンを搭載している車種はありません。
デトロイトモーターショー2017にて出展されたインフィニティQX50コンセプト
インフィニティのクロスオーバーSUV『QX50』(日本名:日産 スカイラインクロスオーバー)新型に採用、搭載予定となっている。
VCターボは、量産型可変圧縮比エンジン。最大の特徴は走行状態によって、圧縮比を8から14の間で可変させる技術を採用した点。インフィニティは次世代の2.0リットル直列4気筒ガソリンターボに、このVCターボ技術を導入する。
インフィニティによると、VCターボ付きの2.0リットルガソリンターボは、高出力と燃費を両立。さらにノイズや振動も抑え、軽量コンパクト化も実現しているという。
【デトロイトモーターショー2017】インフィニティ QX50 次期型はVCターボ搭載へ | レスポンス(Response.jp)
https://response.jp/article/2017/01/10/288103.html日産自動車の海外向け高級車ブランド、インフィニティが1月9日、米国で開幕したデトロイトモーターショー2017で初公開した『QX50コンセプト』。パワートレインには、新世代の「VCターボ」が搭載される。
新型シルビア 予想CG
また、復活が噂されている日産のスペシャリティカー、「シルビア」にも搭載されるのではないかと噂されている。