いすゞ117クーペとは
いすゞ 117クーペXE
2018年に生誕50周年を迎え、いすゞのフラッグシップモデルとして看板を守り続けた車です。117は4ドアセダン「フローリアン」のコードネーム、イタリア車と日本車の融合したようなデザインは、国産自動車の中でも珍しく最も美しいデザインと評価されていました。
いすゞは日本国内の自動車部門から完全撤退し、商用車の開発に専念することになりましたが、117クーペは今でも車好きの中で長く愛され続けています。
■手にした人は手放さない車
117クーペには使えば使うほど味の出る、エイジングの進んだ革製品のような魅力があります。レストアを行うたびに愛着が沸くような、オーナーによって独自のカスタマイズが施されています。
殆どが手作り117クーペ
いすゞ 117クーペ
発売当初の117クーペは、ほとんどの工程がハンドメイドで一台一台こだわりをもって作られています。しかし、117クーペの美しい曲線を実現するには、当時のプレス技術では不可能だったという事情が背景にありました。
そのため初期は月50台という少ない生産数で、172万円(現代に換算すると約1,000万円)という高根の花の超高級車でした。
■117クーペのモデル・グレード
過去3度にわたるマイナーチェンジが行われており、前期型・中期型・後期型と呼ばれています。モデルごとに大きな特徴があり、それぞれ熱狂的なファンがついています。
初期型(1968~1973)
1966年ジュネーブショーで初お披露目が行われ、68年12月に初期型は発売されました。HM(ハンドメイド)シリーズとも呼ばれており、シャーシとホイールは中級セダンの「フローリアン」から流用しました。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがリジットアクスル/リーフ式と見た目より武骨な構成でした。
しかし、最高出力120ps/6,400rpm、最大トルク14.4kgm/5,000rpmという当時トップレベルの馬力を誇っており、2ドア使用でしたが後席の居住性も高く最大4人乗りが可能です。
1970年には国産車初になる電子制御燃料噴射DOHCを採用した、G161WE型エンジンを搭載した「EC」グレードが追加され、排気量は据え置きで最高出力は130ps/6,400rpm、最大トルクは14.4kgm/5,000rpmまでグレードアップしています。
同時期に廉価グレード「1800」も発売されており、軽量化することで価格を抑えつつ中低速のトルクエンジンで操作性も向上させることで独自の立ち位置を得ていました。
中期型(1973~1977)
1973年3月に大量生産を視野に入れ、生産工程を大幅に見直してプレス加工などオートメーション工程を増やすことでさらなる低価格化を実現しました。価格を抑えたことでインテリア・エクステリアにコストを割くことが可能になり、さらなるユーザー獲得へ繋がります。
PA90型が廃止され全グレード1,817ccのエンジンを搭載したPA95型に統一され、中期型のグレードは最上位の「XE」、ツインキャブDOHCの「XG」、ツインキャブSOHCの「XC」、シングルキャブSOHCの「XT」の4種類がラインナップされました。
「XE」159.4万円「XG」144.9万円「XC」108.6万円「XT」96.4万円というように、初期型と比べると価格がだいぶ手の届きやすい価格へと落ち着きました。
後期型(1977~1981)
1978年以降のモデルは「スターシリーズ」と呼ばれており、自動車排気ガス規制によるエンジン出力低下対策のためエンジン排気量を2.0Lに拡大したPA96型が採用されました。
ハイエンドモデルの「XE」、DOCHエンジン+5速MTのスポーツモデル「XG」、インテリアを「XE」レベルに充実させたXT-L等のモデルが人気を博しました。
年間17,000台という好調なセールスを達成し、後継モデル1985年5月に「ピアッツァ」登場前(1981年)に生産終了となりました。
■117クーペの動力性能
いすゞ 117クーペ
高級モデルだったこともあり、117クーペに搭載されたエンジンは旧車とは思えない走りを見せてくれます。前述したように、国産車初の試みである電子制御の燃料噴射装置を搭載したエンジンは最高速度時速190~200kmをたたき出します。
■117クーペのエクステリア
天才デザイナーとして名高い「ジョルジェット・ジウジアーロ」によってデザインされた117クーペの原型となる117スポルトは、1966年のジュネーブモーターショーにてコーンクール・デレガンス賞を獲得しています。
曲線美を極めたフォルム以外にも特徴的なヘッドライトやパワーウインドウと、見た目と実用性を兼ね備えたデザインになっています。
■117クーペのインテリア
117クーペの人気の理由は外装だけでなくインテリアにも力を入れていることが挙げられます。木目調のインパネにはスポーツカー定番の7連メーターが搭載されています。後部座席の居住性も高く、ファミリーカーとしてアピールしているモデルもありました。
117クーペの中古車価格
発売当時の物価と希少価値により新車価格より高額になっています。表示価格は車両本体価格になります。
117 クーペ 初期型 : 480万円台〜応談
117 クーペ 中期型:140万円台〜応談
117 クーペ 後期型:110万円台~応談
117クーペの中古車はビンテージカーというカテゴライズのため、状態により価格に大きな差があります。購入前は販売店に必ず詳細と試乗の可否について連絡を取っておきましょう。
■117クーペの中古車の探し方
サイト検索
すでに販売が終了しているモデルであり、中古市場には中々出回らないため普段から検索サイトでのコマメなチェックをおすすめします。
特にハンドメイドの初期型はプレミア価格で取引されていますので、コンディションとカスタマイズされた内容と相場をよく照らし合わせて検討しましょう。
テリー伊藤も憧れた117クーペ
テリー伊藤さんは登場時からいすゞ117クーペの美しさに注目しており、丸目の初期型を一押ししています。一世を風靡した名車に負けない大人の色気を持った方に選んでほしいと語っています。
117クーペのドレスアップ
1973年式 いすゞ 117クーペXE
クラシックカーということもあり、中古車市場に出ている車両の内装はオーナー独自の改造が施されていることが多いです。
レトロ調の雰囲気はそのままに上品な革製のシートや内張りにカスタマイズ、さらにカーナビを取り付けるといったハイテク仕様に仕上げるなど、オーナーによるこだわりが感じられる車でもあります。
■117クーペの口コミ・評判
乗り心地は現在のスポーツカーと比べ、後部座席がゆったりとして座りやすく広々としています。高燃費は仕方ないが、普段のドライビングに関しては街乗り・高速での乗り回しは共に問題なくクラシックカーとしては大健闘している評価と言えます。
まとめ
いすゞ 117クーペ
117クーペはいすゞの高級乗用車の金字塔を作り上げた伝説的な車です。ハンドメイドから生み出されたボディフォルムは、中・後期型のプレス加工に移行してからも失われることはなく、当時の最先端の技術がふんだんに盛り込まれていました。
117クーペの工業製品と芸術品としての評価は世界的にも高く、ジウジアーロが1969年に設立した「イタル・デザイン社」でもその美学や走りに関するノウハウが色濃く語り継がれています。
販売を終了し生誕50周年を迎えたいすゞ117クーペですが、これからも乗り手を魅了し続ける伝説として君臨し続けることでしょう。