新車販売台数の3台に1台は、軽自動車の時代!
ホンダ N-BOX
2020年は、新車販売全体に占める軽自動車の割合が、37%あまりとなりました。これは、日本で売れている新車の3台に1台が軽自動車という計算になります。軽自動車は引き続き、高い人気を誇っています。そして近年、軽自動車はさらなるレベルアップを遂げてきました。
スーパーハイトワゴンと呼ばれるカテゴリーの軽自動車の中には、普通自動車のコンパクトカーと比べても、室内空間や装備レベルの点でそん色ないどころか、上回っていると感じさせるものさえ登場してきています。
しかも、2017年秋から導入された「東京オリンピック&パラリンピック記念」の特別仕様ナンバープレートによって、軽自動車に普通車同様の「白いナンバープレート」を装着できるようになりました。今までは車種にあまり詳しくなくても、黄色いナンバープレートで軽自動車と判別できたのに、いっそう区別がつきにくくなってしまったかもしれません。
■新車販売台数に占める軽自動車比率
30年ほど前、新車販売台数に占める軽自動車比率は、25%ほどでした。ところが、2000年ごろには、この割合が30%ほどにまで上昇します。きっかけは、1998年におこなわれた「軽自動車規格の改定」でした。現在の軽自動車と同じ内容に改定されて、各メーカーも新基準に沿った軽自動車を次々に発売した結果、軽自動車の比率が上昇したのです。そして現在では、37%あまりとなり、新車販売台数の3台に1台は、軽自動車が占めるまでになりました。
この結果は、人気車種にもよく表れています。「日本自動車販売協会連合会」と「全国軽自動車協会連合会」が発表した速報値によれば、2020年1月~12月の国内新車販売台数トップは、ホンダの軽自動車「N-BOX」でした。4年連続のトップです。3位はスズキの軽自動車「スペーシア」、4位はダイハツの軽自動車「タント」、7位もダイハツの「ムーヴ」ですから、軽自動車がいかに人気を集めているかがよくわかります。
そもそも軽自動車って何?
軽自動車って?
そもそも「軽自動車」とは、何でしょうか。軽自動車というのは、日本が独自に定めた国内専用規格に当てはまるクルマのことです。そういうわけで、日本車は海外にたくさん輸出されていますが、一部の軽自動車を除いて、ほとんどが国内専用になっています。
軽自動車の具体的な定義は、「道路運送車両法」という法律によって定められており、
・全長3,400mm以下
・全幅1,480mm以下
・全高2.000mm以下
・エンジン排気量660cc以下
・定員4名以下
・貨物積載量350kg以下
という規格に当てはまる自動車のことを言います。
これらの条件を1つかそれ以上超えてしまうと、軽自動車とは認定されません。たとえば、Smart社から発売されていたベーシックな「スマート」という自動車は当初、排気量こそ600ccでしたが、全幅が1,515mmで、わずかながら軽自動車の規格をオーバーしていたため、普通車の登録でした。その後、リアフェンダーの変更がおこなわれて軽自動車として改めて発売された、という経緯があります。
■軽自動車規格の歴史
スバル 360
「軽自動車」という規格が最初に成立したのは、戦後間もない1949年のことです。その後、1955年に「国民車構想」が打ちだされ、国民が広く自動車を手に入れるための施策として、軽自動車の規格が用いられるようになりました。
この構想に沿った形で、1958年に富士重工業から発売されたのが「スバル 360」です。「てんとう虫」の愛称で親しまれたこのクルマは、軽自動車の歴史における金字塔となりました。とはいえ、当時の軽自動車の規格は、ボディサイズが全長3,000mm、全幅1,300mm、全高2,000mm、排気量が360ccであり、今の軽自動車と比べると、サイズはだいぶ小さく、エンジンの排気量は半分程度でした。
その後、1976年に軽自動車の規格が改定され、全長が3,200mm、全幅1,400mmに広がると共に、排気量が550ccにアップしました。さらにその14年後にはボディサイズの僅かな拡大と排気量の660cc化、そこから8年後にはボディサイズが全長・全幅ともに拡大されました。これが現行の軽自動車規格です。ちなみに2000年には、それまで軽自動車の高速道路における最高速度は80km/hまででしたが、この制限が撤廃されて小型車と同じ100km/hになりました。
軽自動車の特徴・メリットは?
《写真提供:ぱくたそ》
前述のSmart社が、リアフェンダーを変更してまで「軽自動車」の登録にこだわったのには、当然わけがあります。それは「軽自動車」にたくさんのメリットがあるから。では、軽自動車のメリットには、どんなものがあるでしょうか?
■税金が安い
自動車の維持費として、大きなウェイトを占めるものの中に「税金」があります。軽自動車は、普通車と比べて、税金がかなり安い。現在、軽自動車税は「乗用」の「自家用車」であれば、
・平成27年4月1日以降に新車として登録された軽自動車:10,800円
・平成27年3月31日までに新車として登録された軽自動車:7,200円
です。ただし、新車登録から13年が経過すると税率が上乗せされたり、グリーン化特例対象車であれば自動車税が軽減されたりしますので、この通りでない場合もあります。
排気量が2500ccを超える普通車の場合、自動車税は年間で5万円ほどになります。この比較だけでも大きな金額差ですが、たとえば5年乗り続けるとしたら、その差は19万円以上になります。自動車税だけで、これだけの金額差が生まれると考えると、軽自動車には大きなメリットがあると分かるでしょう。
■燃費がいい
一般的に、軽自動車は普通自動車と比べて、車体が軽く、排気量も小さいため、燃費が良くなります。
ただし、どんな場合でも、普通車と比べて燃費が勝るわけではありません。たとえば、人気のスーパーハイトワゴンは、車体が大きい軽自動車なので、その代償として燃費が悪くなります。また、ターボ搭載車はパワーと引き換えに、やはり燃費が悪くなりがちです。さらに、軽自動車の燃費は道路状況によってかなり左右されます。パワーがない分、坂道が続くようなところでは極端に燃費が悪くなってしまう傾向をもっています。
■高速道路料金が安い
軽自動車での高速道路運転
軽自動車は、普通車と比べて概ね20%程度、高速道路料金が安く設定されています。普通自動車や重量のある大型車と比べて、道路環境にさほど影響を与えないからです。パワーがないことや、風圧に弱いなどの理由で、軽自動車での高速道路運転は疲れるとされていますが、20%安いというのは大きな魅力でしょう。
■小回りが利き、使い勝手がいい
軽自動車は、小回りが利いて、運転しやすいこともメリットのひとつです。コンパクトなボディは、近所への買い物やちょっとしたお出かけに、ちょうどいいサイズ。狭い道や方向転換も苦にしません。それでいて、最近の軽自動車は、コンパクトカーにも負けないほどの車内空間を実現しています。
さらに、軽自動車であってもアウトドアに出かけることを念頭に置いた車種も登場しています。キャンプ用品などを楽々積めて、撥水加工シートなどが装備されている軽自動車は、新しい可能性を感じさせてくれます。
普通車の特徴・メリットは?
もちろん、普通自動車にもメリットはたくさんあります。軽自動車では得られない、普通自動車の特徴やメリットにはどんなものがあるでしょうか?
■走行性能
走りの違いを実感
普通自動車は、軽自動車と比べて走行性能が勝っています。とくに、坂道や山道においての加速は、軽自動車よりもかなり有利です。軽自動車で坂道を登れないわけではありませんが、たいていの場合、余裕がありません。一方、排気量の大きい普通自動車は、そもそもエンジンを高回転にする必要がなく、アクセルを踏み込まなくても十分加速してくれます。この安定したパワーは、軽自動車では得られないものです。
さらに、クルマの乗り心地も、普通自動車の方が勝っています。絶対的な重量からくる安定性や、エンジン排気量の高さからくる余裕は、静粛性を生み出し、ゆとりある走行を実現してくれます。こうした上質な走りを求める場合、普通自動車を選択することになるでしょう。
■室内空間・居住性
キャンプなどにも最適
最近の軽自動車がいかに広くなったとはいえ、ボディサイズが規格で定められており、上限があります。さらに、軽自動車は乗車人数が4名までと決まっていますから、大人数での旅行にはあまり向いていません。広くて大きいクルマで、荷物もいっぱい載せてお出かけしたい、といった場合には、やはり普通自動車が選択肢となるでしょう。
■選択肢の多さ
軽自動車にもたくさんの車種がありますが、規格があるものなので多様性には限界があります。その点、普通自動車にはより広い選択肢があります。コンパクトカーから、ファミリータイプのミニバン、荷物もいっぱい積めてアウトドアにも最適なSUV、街乗りも視野に入れたクロスオーバー、高い運動性能に重点を置いてスポーツドライビングを目的とするスポーツカーなど、選択肢の広さや深さは、普通自動車のほうが勝っているでしょう。
まとめ
軽自動車に見えない?!
今回は、軽自動車と普通自動車の違いについてまとめました。
普段からクルマに乗っておられる方は、ひと目で見分けがつくかと思いますが、あまりクルマに詳しくない方であれば、白ナンバーの軽自動車が増えてきた今、区別がつきにくくなったかもしれません。ぜひこの機会に、それぞれのメリットを確認して、今後のクルマ選びにお役立てください。