名義変更とは?
《写真提供:photoAC》名義変更ってなに?
名義変更とは、売買や相続などにより、クルマの所有者を変更する手続きのことです。新たな所有者となる者の住所を管轄する「運輸支局」または「自動車検査登録事務所」、軽自動車の場合は「軽自動車検査協会」で、この手続きをおこなえます。
とはいえ、クルマを購入した場合は販売店の方が助けてくれるので、名義変更を自分でおこなったことがないという方も少なくないでしょう。それでも、引っ越しや結婚など、クルマの売買が伴わなくても、名義変更が必要なケースは多数あります。
■名義変更は法律上の義務!
クルマの名義変更は、法律で定められた手続きです。道路運送車両法の第12条1項で、
自動車の所有者は、登録されている型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名若しくは名称若しくは住所又は使用の本拠の位置に変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う変更登録の申請をしなければならない。ただし、次条の規定による移転登録又は第十五条の規定による永久抹消登録の申請をすべき場合は、この限りでない。
と規定されています。
具体的には、「結婚で名字が変わった」、「家族や友人からクルマを譲り受けた」、「個人間の売買で取得した」などが当てはまるでしょう。この名義変更は、「15日以内」におこなわないと、道路運送車両法違反の状態となり、50万円以下の罰金になる可能性があります。
とくにクルマを購入が関係しない、結婚による名字変更、相続による所有者変更などは、注意が必要かもしれません。
■名義変更を知っているとお得になることがある?!
ディーラーや中古車販売店でクルマを購入した場合、名義変更も含めて、必要な手続きはおこなってもらえることが普通です。しかし、クルマの購入方法は多様化しつつあります。
たとえば、インターネットオークションの「ヤフオク!」には、自動車のカテゴリが専用にあって、部品・パーツ・アクセサリー類だけでなく、クルマそのものも売買されています。
こうしたサイトには業者も多く参加していますが、基本は個人間取引が前提です。そうなると、すべてをお任せ、というわけにはいきません。自分で名義変更をおこなう必要があります。
せっかく、安く気に入ったクルマを見つけても、名義変更などの手続きが分からないために購入を断念せざるを得ないとしたら残念ですよね。名義変更の手続きは、業者にしかできないハードルの高いものではありません。この機会に、ぜひ覚えてみるのはどうでしょうか。
名義変更していないと、トラブルの可能性が高まる!
《写真提供:photoAC》名義変更しないことで生じうるトラブルとは?
名義変更しないでいると、法律違反になるだけでなく、その他のトラブルに巻き込まれる可能性もあります。ここでは、代表的な例を取り上げてみたいと思います。
■税金関連のトラブル
《写真提供:response》クルマを所有すると様々な税金がかかります
名義変更していないと、税金関連、とくに「自動車税」でトラブルが生じる可能性があります。
自動車税および軽自動車税は、毎年4月1日現在の所有者に課税されます。つまり、名義変更の手続き漏れがあると、前所有者に課税通知される形となり、納税通知書は前所有者の住所宛に送付されてしまいます。
こうした行き違いは、どちらが納税するかといったトラブルに発展してしまう可能性がありますし、たとえ相手が友人や知人であったとしても、金銭問題から関係悪化につながるかもしれません。
さらに、納税通知書が届いていることを知らなかったために納税しないでいると、他の税金と同じように延滞金が加算されてしまいます。2021年度であれば、1ヵ月以内に納付した場合、本来の軽自動車税納付額に2.5%が加算されます。もしそれ以上延滞してしまうと、8.8%の加算となりますので、注意したいところです。
■交通違反のとき
《写真提供:photoAC》固定式オービス Hシステム(北海道芦別市)
名義変更しないままでいると、交通違反のときにトラブルになる可能性があります。
たとえば、オービス(速度違反自動取締装置)でスピード違反の取り締まりを受けると、撮影されたクルマのナンバーなどから、通知書はクルマの所有者宛に届きます。つまり名義変更していないと、前所有者に出頭通知が届くことになります。
とはいえ、スピード違反は運転者への行政処分ですから、運転者を割り出していくことになり、前所有者に迷惑をかけることになるでしょう。また、その過程で名義変更の手続き漏れが発覚し、規定の15日をオーバーしていることが発覚すると、道路運送車両法違反の指摘も受けるかもしれません。
こうしたデメリットを考えると、めんどくさがらず、名義変更をおこなったほうが得策ですね。
■任意の自動車保険
《写真提供:photoAC》自動車保険でも名義変更は大切!
任意の自動車保険
にも、名義変更が関係します。
車両の所有者が友人や知人といった他人である場合、名義変更せずにそのまま自動車保険に加入することは、通常不可能です。例外として、名義が配偶者や同居している親族の場合、自動車保険に加入できる保険会社もありますが、それでも別居の親といった場合は不可能なことがほとんどです。つまり名義変更しないと、任意保険に加入できない可能性が高く、事故の際のリスクが増大します。
なお、名義変更予定の場合や、ローンの返済が間もなく完了するといったタイミングでの保険加入については、各保険会社によって対応が異なります。詳細は各損害保険会社に問い合わせるとよいでしょう。
■廃車手続き
名義変更していないと、廃車手続きをするときにもトラブルになりかねません。
所有者が他人名義の場合、当然ながら、そのまま廃車手続きをおこなうことはできません。他人名義のクルマを廃車する場合、所有者の委任状、印鑑証明書、譲渡証明書などが必要となります。また、車検証記載の住所・氏名などが印鑑証明書と異なる場合、その変更のつながり・関連を証明する書類として、発行から3ヶ月以内の住民票等または登記事項証明書等が必要になります。
もし、車検証に記載の所有者と連絡が取れないなら、クルマの廃車手続きはいつまでたってもおこなえず、身動きが取れなくなってしまいます。
事前準備:「必要な書類」と「持ち物」
ではここからは、名義変更に必要な書類と持ち物をまとめていきます。
なお、今回は軽自動車の名義変更をおこなうときに必要な書類と持ち物です。普通自動車は、必要書類や手続きをおこなう場所が異なりますので、ご注意ください。
■自動車検査証
《写真提供:response》自動車検査証(車検証)は、必ず原本が必要!
名義変更では、自動車検査証の原本が必要になります。いわゆる車検証のことです。コピーは不可ですから、必ず原本を用意しましょう。「どこにあったかな?」と探す必要はなく、クルマに積まれているはずです。
というのも、道路運送車両法66条1項には、『車を運転するときは、必ず車検証を携帯しなければならない』旨が定められているからです。携帯するのは、原本と決まっています。違反した場合、2021年10月現在、50万円以下の罰金が科される可能性があります。というわけで、車検証の原本はクルマの中、通常はダッシュボードなどに入っているはずです。
なお、車検証の中央部分に記載されている「使用者」と「所有者」の部分を確認し、所有者が自動車販売会社やクレジット会社でないことも確認しておきましょう。所有権解除の必要があるかもしれません。
■使用者の住所を証する書面
《写真提供:photoAC》使用者の住所を証する書面が必要
個人が申請する場合、新しい使用者の住所を証する書面(発行されてから3ヶ月以内)が必要です。
「住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)」、もしくは「印鑑(登録)証明書」のいずれか1点となります。これらはコピー(複写)も使用可能ですが、写真で撮影したものは利用できません。
なお、法人が申請する場合にも、新しい使用者の住所を証する書面(発行されてから3ヶ月以内)が必要になりますが、該当書類が異なります。「商業登記簿謄(抄)本」、「登記事項証明書」、「印鑑(登録)証明書」のいずれか1点が必要となります。ただし、登記されていない営業所などが関係するため、これらの書面が存在しない場合、「公的機関が発行する事業証明書」、「営業証明書」、「課税証明書」、「電気・都市ガス・水道・固定電話料金の領収書」のいずれか1点でも可能です。
■ナンバープレート(変更がある場合)
ナンバープレートは、自動車検査証(車検証)に記載されている「使用の本拠の位置」の管轄に変更がなければ、必要とされません。
もし管轄が変更になる場合、ナンバープレートを新たに取り付ける必要が生じ、交換することになります。紛失などでナンバープレートがない場合は、「車両番号標未処分理由書」の提出が求められます。
なお、希望ナンバーがある場合、希望番号予約センターより発行された有効期限内の「予約済証」が必要です。また、字光式ナンバープレート、いわゆる光るナンバープレートを希望する方は「字光式車両番号指示願」が必要となります。
■自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)
自動車検査証記入申請書は、インターネットからダウンロードできるほか、軽自動車検査協会の事務所や支所窓口などで入手可能です。
事前に準備しておくと便利ですが、難しければ当日、現地で作成しても構いません。
■印鑑
《写真提供:response》丸印 ジムニーXC
令和3年1月4日より、規制改革実施計画に基づき、軽自動車検査協会における申請書・申請依頼書・譲渡証明書に求める押印が廃止され、所定の記載のみで申請できるようになっています。ただし、一部の支所において、また事情によっては、押印が必要になることもあるようです。二度手間はぜひとも避けたいところですから、念のため、持参することをお勧めします。
ここでは、上記事情も踏まえつつ、押印廃止前の情報もお伝えいたします。
押印廃止前は、印鑑が最大3種類必要でした。「新所有者の印鑑」、「新使用者の印鑑」、「旧所有者の印鑑」です。いずれも個人による申請の場合、認印で構いません。
新使用者の印鑑と、旧所有者の印鑑については、「自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)」を事前に作成しておくことで、持参は不要でしたが、新所有者の印鑑だけは「自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)」以外に、今後の納税者を変更するために提出する「軽自動車税(種別割)申告書(報告書)」や「軽自動車税(環境性能割)申告書(報告書)」で必要でした。
当日:名義変更の流れ
《写真提供:photoAC》いざ、軽自動車検査協会へ
■名義変更場所
軽自動車の名義変更手続きは、新しい使用者がクルマを使う場所、つまり車検証の「使用の本拠の位置」を管轄する、軽自動車検査協会の事務所・支所・分室でおこなえます。
どの軽自動車検査協会でも手続きがおこなえるわけではないので、注意しましょう。
■初めてであれば、まず総合案内窓口へ
もし名義変更が初めてであれば、軽自動車検査協会に着いたら、初めに「総合案内窓口」に立ち寄ると間違いないでしょう。名義変更手続きの流れを確認できます。
■必要書類の入手
軽自動車検査協会で、申請に必要な書類を入手します。
「軽自動車税申告書」、もし用意してこなかった場合は「自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)」の配布も受けて、必要事項を記入します。
ナンバー変更が伴い、しかも希望ナンバーの申請を事前におこなっていた場合は、軽自動車検査協会に隣接する希望番号予約センターで「希望番号予約済証」を受け取り、申請書に記入します。
■書類整備確認窓口に書類提出する
続けて、作成した書類を「書類整備確認窓口」に提出します。
ナンバーの変更を伴わない場合、続けて地方税申告窓口で、「軽自動車税の申告」と「軽自動車税環境性能割の算出」がなされますので、指示された金額の納税をおこないます。
■ナンバープレートの返却(ナンバー変更を伴う場合)
名義変更にナンバーの変更が伴う場合は、軽自動車検査協会に隣接するナンバー返納窓口に、これまでのナンバープレートを返納する必要があります。
ナンバーを外すのに必要なドライバーは、返納窓口に用意されています。軽自動車のナンバープレートには封印がありませんから、問題なく外せるでしょう。
■軽自動車検査協会窓口に書類の提出
書類一式を「軽自動車検査協会窓口」に提出し、新しい車検証が交付されるのを待ちます。
■地方税申告窓口で税金の申告(ナンバー変更を伴う場合)
ナンバーの変更を伴う場合、新しい車検証を受け取ったら、「地方税申告窓口」に「軽自動車税申告書」と「車検証」を提出し、指示された金額の納税をおこないます。
■新しいナンバーの交付(ナンバー変更を伴う場合)
軽自動車検査協会に隣接する「ナンバー交付窓口」で、新しいナンバープレートを購入します。
費用には地域差がありますが、概ね1,500円程度です。ただし、希望ナンバーや図柄ナンバー(例:オリンピック記念ナンバー)の場合、10,000円程度かかる場合もあります。
ナンバープレートと取り付けるためのビスを受け取り、軽自動車に取り付けて終了です。
名義変更でよくある質問
《写真提供:response》そのほか、名義変更にかかわるよくある質問
■名義変更にかかる費用は?
軽自動車の名義変更申請自体に、費用はかかりません。
しかし書類を準備する段階で、住民票などの取得のために費用が発生するでしょう。また、新しいナンバープレートを発行してもらう場合には、その費用(1,500円~10,000円程度/申請するナンバーによっても費用が異なる)が発生します。
さらに、「軽自動車税環境性能割」に応じた税金がかかります。
■車庫証明は必要?
名義変更に際して、軽自動車検査協会に提出する必要はありません。
軽自動車では、「自動車保管場所証明書」いわゆる「車庫証明書」は不要で、保管場所届出制度となっています。ただし、車検証に記載の「使用の本拠の位置」が「保管場所届出義務適用地域」に該当する場合、名義変更手続き後に保管場所を管轄している警察署へ「保管場所届出書」の届出が必要になります。
この交付手数料は都道府県によって差がありますが、500~600円程度です。
■所有者死亡の場合は?
所有者が死亡した場合は、所有者の親族によって名義変更が可能です。
■車検切れでも名義変更は可能か?
軽自動車については、車検切れでも名義変更が可能です。
まとめ
《写真提供:photoAC》名義変更は自分でおこなえる!
今回は軽自動車の名義変更についてまとめました。
名義変更は、法律上、求められている手続きであり、しかも「15日以内」という制約もあります。しかも違反すると50万円以下の罰金となる可能性もあり、注意が必要です。
それでも、名義変更手続きは決して難しい申請ではありません。順調に進めば、軽自動車検査協会での手続きも1時間以内には終わるかと思います。ぜひ今回のまとめを参考に、トライしてみてください。