ミニクーパーとは
《写真提供:response》撮影 島崎七生人 ミニ クーパーS
「ミニクーパー(MINI COOPER)」は、現在、BMWが提供している小型乗用車「ミニ(MINI)」のグレードのひとつです。
ただ、「ミニ」=「ミニクーパー」と認識されているケースが多く、ミニクーパーにあまり詳しくない方からはほとんど同一視されています。正しくは、ミニという車種に、クーパーというグレードが存在しています。なぜ同一視されるようになったのでしょうか。それにはミニと、ミニクーパーの歴史が関係しています。
「ミニ」の誕生は1959年で、現在のBMWではなく、イギリスのブリティッシュ・モーター・コーポレーション社(BMC)が製造・販売をしていました。当初は、「オースチン・セブン」と「モーリス・ミニ・マイナー」の車名でしたが、その後、ミニに名称が統一されました。
その名のとおり、コンパクトなボディながら、しっかりと居住性を確保する、家族・大衆向けの車として開発されましたが、1950年代にF1の名チューナーとして活躍していた「ジョン・クーパー」が、そのハンドリングの良さに目を付けます。
そして「サルーンカーレース(乗用車レース)」用にチューニングされ、1961年に発売されたのが「ミニクーパー」でした。お察しのとおり、「クーパー」という名称はジョン・クーパーの名前であり、彼が創設した「クーパー・カー・カンパニー」から取られたものです。
こうして誕生したミニクーパーは、瞬く間にレースでめざましい活躍を遂げていき、更なる高性能モデル「ミニクーパーS」を誕生させます。そして、ポルシェなど名立たるスポーツカーがエントリーするラリー・モンテカルロ(厳冬期のアルプスを走るレース)で1964年、1965年、1967年に優勝。1968年には「BSCC(ブリティッシュ・サルーン・カー・チャンピオンシップ)」において主要タイトルを総なめにするなど、圧倒的な成績を収めました。
ミニという車名が世間で広まる前に、チューニングカーであるミニクーパーのほうが鮮烈な活躍をしたため、ミニクーパーという名前のほうが世の中に浸透し、今に至るまで続く、「ミニ」=「ミニクーパー」の認識が確立されました。
伝説的な活躍をしたミニクーパーですが、1980年代には人気が徐々に下火となり、いったんカタログから姿を消します。それでも、1980年代後半にジョン・クーパーがチューニングを施したコンプリートキットが販売されたことで人気が再燃。日本での人気はとりわけ高く、イギリスよりも日本での登録台数が多いほどでした。
こうした過程のなかで、ミニを製造する会社も変遷を遂げます。当初はイギリスのブリティッシュ・モーター・コーポレーション社(BMC)が製造・販売していましたが、イギリス経済の停滞と共に企業合併などを繰り返し、幾度か社名を変更。1986年にはオースティン・ローバー・グループが「ローバー」という社名になると、ミニも「ローバーミニ」という名前になりました。
その後、ローバーからミニブランドを引き継いだBMWが、2001年からミニを製造・販売。ミニクーパーもグレード名として残り、現在に至ります。
なお、ミニの長い歴史と、製造する自動車会社が変更されていく背景から、現行のBMWが製造しているミニと区別するため、1959年にイギリスで誕生した元祖ミニは「クラシックミニ」と呼ばれています。
ミニクーパーがやめとけと言われる理由
《写真提供:response》嶽宮 三郎 1964年 モーリス ミニクーパー 970SMK1
インターネットでミニクーパーを検索すると、「ミニクーパーはやめとけ!」といった意見がたくさん出ています。どうしてなのでしょうか。
やめとけと言われる理由、つまりミニクーパーのデメリットについて解説します。
■小回りが利かない
「ミニクーパー」はその名前から小回りが利く車というイメージを持たれがちですが、実際のところは意外に小回りが利かない車です。
現行モデルのミニクーパーは、最小回転半径が5.4m。一方、日本の軽自動車の最小回転半径は4.4m前後で、軽自動車でも大きなタイヤを履いているジムニーやタフト、ホイールベースの長い軽スーパーハイトワゴンなどでも4.7~4.8m程度です。
比べると、ミニクーパーは日本の軽自動車より最小回転半径が1.0mほど大きく、期待するほど小回りが良くないと分かります。
■故障しやすい
ミニクーパーはやめとけと言われる2つめの理由は、故障のしやすさです。
ミニクーパーなどのヨーロッパ車は、日本車と比較すると、直しながら長く乗ることを前提に作られています。そういった背景を知らずに日本車のような故障しにくさを期待すると、がっかりすることになるでしょう。ただこれは裏を返せば、しっかりメンテナンスしていれば、長い期間乗り続けられる車ということでもあります。
ミニクーパーが故障しやすい別の原因は、製造されているドイツと日本の道路事情の違いです。ドイツは高速道路(アウトバーン)を中心とした車社会で、ある程度エンジンを回してスピードを出し、長距離移動が当たり前です。
一方で日本は、一般道の走行が多く、しかも渋滞が頻発し、1回の走行距離は短くなりがち。比べてみるとほとんど真逆の環境なので、コンディション管理が難しく、それだけ故障も多くなってしまうようです。
■維持費が高い
ミニクーパーはやめとけと言われる3つめの理由は、維持費が高いことです。
原因は、ミニクーパーの純正パーツや消耗品が比較的高価なため。もちろん、ミニクーパーに限らず多くの外国車にいえることですが、部品が海外からの取り寄せとなるため、どうしても純正パーツや消耗品が高価になりがちです。
さらにミニクーパーは、部品交換サイクルが早めともいわれており、劣化の早さも維持費の高さに直結しています。そして交換や整備は、ディーラーでしかできない対応もあるので、工賃や点検整備費がかさみます。
■後部座席がせまい
ミニクーパーはやめとけと言われる最後の理由は、後部座席が狭いことです。
クルマ系SNSサイトでも、「後部座席の居住性を求めるならミニはNG」とか、「女性でも、ドライブの長時間乗車はきつそう」といったコメントが散見されます。もちろん、ミニもグレードによって室内空間の広さに差はありますが、後部座席が狭いというのは共通の意見のようです。
単純な室内空間の比較では、N-BOXに代表される軽スーパーハイトワゴンのほうが広くて快適かもしれません。
ミニクーパーのメリット
《写真提供:response》撮影 島崎七生人 ミニ クーパー
それなりにデメリットがあるとしても、ミニクーパーは時代を通じて多くの人に支持されています。その理由は、他にない魅力がミニクーパーにはあるからです。
■内装・外装のデザイン
《写真提供:response》《写真撮影 宮崎壮人》 MINI クーパー(3ドア)
なんといってもミニクーパー最大の魅力は、そのクラシカルで愛らしいデザインにあります。
エクステリアは、だれもが一目でミニと分かる独特なフォルム。アイコンともいえる丸目のヘッドランプと丸みを帯びたボディは、時代を問わず、多くの老若男女に愛されているポイントでしょう。
現行のBMW ミニの内装は、5インチの「マルチディスプレイ・メーターパネル」と、中央の丸形ディスプレイが印象的。高級感がありながら、おしゃれな遊び心を忘れていないのもミニの魅力になっています。
■走行安定性
現行のミニクーパーは走りに定評のあるBMWが作っているだけあり、高いポテンシャルを持っています。
とくに、ドイツは制限速度無制限区間のある高速道路「アウトバーン」があるので走行安定性が必要不可欠。ミニクーパーもコンパクトなボディには似つかわしくないほどの安定性を持っており、走っていて楽しい車といえます。
■エンジン音
《写真提供:response》《写真撮影 宮崎壮人》 MINI クーパー(3ドア)
ミニクーパーはその可愛らしいデザインとは裏腹に、力強いエンジン音を有しています。そもそもミニクーパーの出発点は、「サルーンカーレース」ですから、当然かもしれません。
現行モデルのミニは特別仕様車を含め、非常に多くのグレードがありますが、そのなかでもレーシング・スピリットを特徴とするハイパフォーマンスモデル「ジョン クーパー ワークス」なら、より満足できるエンジン音を期待できるでしょう。
■カスタマイズしやすい
ミニクーパーは日本でも非常に人気が高いので、専用カスタムパーツが多数販売されており、容易に入手できます。これは現行のBMW ミニに限らず、販売終了から20年以上経つクラシックミニでも同様です。
種類も豊富で、足回りやフロントグリルから、エンブレムやグリルバッチといった細かいパーツまで、さまざまな製品があります。それらを組み合わせれば、無限の可能性を持つ、オリジナリティあふれる車に仕上がるでしょう。
ミニクーパーの中古車を購入する際のポイント
《写真提供:response》《撮影 宮崎壮人》 MINI クーペ ジョンクーパーワークス
ミニクーパーの中古車を購入する際、どこをポイントにしたらいいのでしょうか。
ある程度車に詳しい方でも、車両状態の見極めは難しいものですが、以下の項目をチェックしていくことで、良い車が見極めやすくなります。
■価格の確認
まずチェックしたいのは価格です。できれば購入検討前に、おおよその予算を決めておきましょう。
自動車は買って終わりではなく、車検代、駐車場代、税金、ガソリン代などのランニングコストがかかります。そのため、予算が曖昧なまま購入してしまうと、ランニングコストが家計を圧迫することにもなりかねません。購入後も見据えた予算を作成しておくと、本当の意味で良い車を見つけやすくなります。
さらに、予算が明確だとインターネットで車を探す際も絞り込みやすいだけでなく、中古車販売店での相談や交渉もしやすくなります。
■走行距離の確認
ミニクーパーを購入するうえで、走行距離もチェックしたい項目です。
基本的に、走行距離の少ないミニクーパーほど状態が良く高価で、多ければ多くなるほど故障のリスクが高まるため安価になります。
ただし例外もあり、年式の割りに極端に走行距離が少ない車は、長らく放置されていた可能性があります。その場合、エンジンなどの主要部品にサビが進行していることもあり、注意が必要です。
走行距離を考える目安は、1年で1万km前後なので、ほどよく走行されているかも確かめましょう。中古車の価格は3万km、5万km、10万kmといったいわゆる大台になると、価格が下落する傾向があり、その直後が狙い目かもしれません。
■内外装の確認
外装は、キズやへこみ、塗装の色あせなど、見た目で分かる範囲をチェックします。
意外に忘れがちなのは、ルーフの状態確認です。屋外保管などを考えるとある程度のダメージは仕方ありませんが、極端に塗装がはがれていたり、欠けたりしている場合には、注意が必要です。
内装は可能な限り、実際に運転席や後部座席に座って、シートや電装品の状態をチェックすることをおすすめします。
とくにタバコやペットのにおいといった、目に見えないけれど快適性に影響を及ぼす部分はしっかりチェックしましょう。
■整備記録簿の確認
整備記録簿は、正式名称「定期点検整備記録簿」で、12ヶ月点検や24ヶ月点検といった法定点検で必ず記入しなければならない記録書類です。
これを見れば、きちんと整備されているか、これまでどういった部品を交換したか、事故や故障の履歴などが一目瞭然なので、安心して車を購入できます。
もちろん、定期点検整備記録簿がないからといって必ず管理状態が悪いわけではありませんが、やはりしっかりと記録があれば安心でしょう。
■保証の確認
いざという時、保証が付いていれば安心です。中古車に関係する保証は、主に2種類あります。
まず、ディーラーが用意している「新車保証」です。一般的な国産車の場合、消耗品など除くほとんどの部品が新車登録時から3年または走行距離6万kmまで保証されます。さらに特別保証として、エンジンなど走行に関わる重要な箇所を5年または10万kmまで保証しています。
BMW ミニの場合、「新車保証」は走行距離無制限の3年保証になるのが一般的です。ただし、BMW ミニでは「MINI TLC.(TENDER LOVING CARE)」というサービス・パッケージが用意されており、新車購入時に加入料を支払うと3年間もしくは5年間、メンテナンスをサポートしてくれます。
ただ、中古車市場に出ているミニクーパーの多くは新車保証が切れている車でしょう。そうした場合、今度は中古車販売店が独自に付けている保証があるか、どんな内容かをチェックします。
多くの中古車販売店では、販売店独自のルールで保証条件や期間などを設定しています。無料で付いていることもあれば、保証料金を別途支払うことで付けるタイプのものもあります。
さらに、中古車販売店が自社で独自に保証するタイプ(自社保証)と、外部の保証会社が対応するタイプ(外部保証)の2パターンが存在しています。
こうした保証は付いていれば心強いですが、当然価格も上がってしまうので、そうしたメリット・デメリットも考慮するとよいでしょう。
■試乗してミッションの状態を確認
最後に、可能なら試乗してミッションの状態をチェックしましょう。
パワーステアリングなどの動作不良やルーフ塗装はがれは輸入車のよくあるトラブルですが、BMW ミニのいちばんのウィークポイントは「CVTトランスミッションのトラブル」です。とくにBMW ミニの第一世代といわれる、2007年1月にフルモデルチェンジされるまでのモデルで、このトラブルがよく聞かれます。
BMW ミニの第一世代では、「ワン」と「クーパー」の両モデルにZF製CVTが採用されており、このCVTでトラブルが多いようです。これらのモデルを狙っているなら、ぜひ試乗してミッションの状態をチェックしましょう。
また別の方法として、BMW ミニの第一世代を狙わないか、第一世代でも日本のアイシンAW製6速ATを採用している「クーパーS」を選ぶという方法もあります。
まとめ
《写真提供:response》【パリ・ショー速報 Vol. 2】ミニ『クーパー』……人、人、人
今回は、日本でも人気の高いミニクーパーについてまとめました。
誕生してから60年以上が経過していますが、その魅力はまったく衰えていません。クラシックミニも、BMW ミニも、クラシカルで愛らしいデザインが健在です。
日本ではとくに人気が高いため、程度のいい中古車も豊富に存在しています。ぜひこの機会に、購入を検討してみるのはいかがでしょうか。
よくある質問
■ミニクーパーはどこの国の車ですか?
ミニクーパーは、もともとイギリスの車でした。しかし現在はドイツの自動車メーカーであるBMWからラインアップされており、イギリス車ともドイツ車ともいえる状態です。
■ミニクーパーの税金(自動車税)はいくらですか?
BMW ミニの第一世代は、全グレードの自動車税が39,500円です。
第二世代はワンが34,500円、それ以外が39,500円です。
第三世代(加えて、2019年10月以降の登録)はワン、クーパー、クーパー D、クーパー SEが30,500円、それ以外が36,000円です。
なお、新規登録より11年が経過したディーゼル車、もしくは13年が経過したガソリン車は自動車税が約15%高くなるので注意が必要です。