国際運転免許(国際運転免許証)とは
海外旅行や出張など、海外で車を運転する必要が生じたときに取得しなければならないのが国際免許です。
国際免許とパスポートを合わせて携行することで、ジュネーブ条約に加盟国での運転が可能になります。本記事では、国際免許の定義から、国際免許の取得方法や費用、国際免許で運転が可能になる国をご紹介します。
■ジュネーブ条約とは?
ジュネーブ条約とは世界的な道路交通に関する条約で、加盟国同士であれば国際免許を取得することで加盟国内の運転を可能にした条約です。2023年1月現在、101カ国と12つの特別行政区が加盟しています。
また、ジュネーブ条約に加盟していない国であっても、2国間の条約や独自の法律で国際免許が不要な国や地域が存在します。
国際免許には道路交通法上、3つの用語がある?
国際免許は、道路交通法では便宜上3つの用語に分かれています。呼び方としてはまとめて正式名称を「国際運転免許証(International Driving Permit)」と呼びます。
道路交通法上の3つの用語を知っておくことで、国際免許の異なる用法と混同せずに済み、インターネットで正しい情報を検索することができます。まずは、国際免許の道路交通法上の3つの用語をご紹介します。
① 国外運転免許証
日本の運転免許証を元に発行される国際運転免許証は「国外運転免許証」と呼ばれます。一般的に国際免許と呼ぶ際にはこの「国外運転免許証」を示すことがほとんどです。
日本で免許を持つ方が海外旅行や出張などでジュネーブ条約加盟国内で運転する場合は「国外運転免許」を取得する必要があります。
② 国際運転免許証
外国の運転免許証を元に発行される免許証です。海外免許を持つ方が日本で運転する場合はこの「国際運転免許」を取得する必要があります。
例として、海外在住・留学などで海外免許を取得した方や、海外免許を持つ外国人の方がこの免許が必要な方にあたります。
③ 外国運転免許証
外国の運転免許証に日本語の翻訳文を添付したものです。
■海外旅行で必要なのは国外運転免許
海外旅行や出張の際に必要な免許証は、呼び方は国際運転免許証ですが道路交通法上は「国外運転免許証」であることがお分かりいただけたと思います。本記事では「国外運転免許証」の取得方法をご紹介します。
国際免許(国外運転免許)の取得方法と最短取得する方法
国際運転免許証(国外運転免許証)の取得はお住いの地域の
・各都道府県の警察署の運転免許課
・運転免許センター
・運転免許試験場
で受け付けています。
基本的には平日のみの受付ですが、施設によっては土日も受付している場合があります。お住いの地域の警察署や運転免許センターに事前に問い合わせてください。
国際免許(国外運転免許)の取得に必要な資格とは
国外運転免許の取得には下記の4つの条件があります。下記の4つの条件を満たさない場合は国外運転免許の取得はできないのでご注意ください。
1. 所持している免許が大型特殊、小型特殊、原付、仮免許のみでないこと
所持している免許が大型特殊、小型特殊、原付き、仮免許のみの場合は国外運転免許を取得することができません。
2. 運転免許の有効期限内であること
当然のことではありますが、日本国内で発行された運転免許が有効期限でないと、国外運転免許は取得することができません。
3. 免許停止処分を受ける、または免許停止中でないこと
免許停止処分を受けることが決まっている方や免許停止処分中の方は、国外運転免許を取得することができません。
4. 渡航の予定が証明できること
必要書類の1つとして渡航予定、または渡航済みであることを証明する書類が必要になります。渡航予定がないのに国外運転免許を取得することはできません。
国際免許(国外運転免許)の取得に必要な書類
国外運転免許の申請は基本的に本人が行わなくてはいけません。本人が海外渡航済みで申請ができない場合のみ、代理人申請が可能になります。
こちらでは国外運転免許証の取得に必要な書類をご紹介します。
■必要書類(本人が申請する場合)
国際免許(国外運転免許)を申請する場合の必要書類は基本的に同じですが各都道府県によっては印鑑などが必要な場合もあります。東京都で本人が国際免許(国外運転免許)を申請する際の必要書類は以下の通りです。
■日本の運転免許証(有効期限内のもの)
■写真1枚(縦5cm×横4cm、無帽、正面、上三分身、無背景、枠なし、申請前6か月以内に撮影したもの)
■古い国外運転免許証をお持ちの方は、その国外運転免許証
■海外渡航を証明するもの
パスポート、飛行機のチケット(予約表)、旅行会社から出されている日程表等
■必要書類(代理人が申請する場合)
代理人が申請する場合も必要書類が各都道府県によって異なる場合があります。東京都で代理人が国際免許(国外運転免許)を申請する際の必要書類は下記の通りです。
■運転免許証
■写真1枚(縦5cm×横4cm、無帽、正面、上三分身、無背景、枠なし、申請前6か月以内に撮影したもの)
■パスポートのコピー(未使用のページを含め、全ページが必要)
(出入国記録が押印されているパスポートで、未使用ページを含め全ページのコピーが必要。出入国の際、自動化ゲートを利用した場合は出入国記録が押印されないため、法務省から出入(帰)国記録を取得する必要があります)
■本人から代理人への委任状
■代理人の身分証明書(運転免許証等)
代理人申請ができるのは本人が渡航済みの場合のみ
代理人の申請は、本人が既に渡航済みの場合のみ可能です。
例えば「渡航先で車を運転するにも関わらず、事前に国外運転免許を取得せずに渡航してしまった」といった場合に代理人申請が可能になります。
本人申請より必要書類が増えるため、渡航先で車を運転する予定がある方は必ず本人申請を行ってから渡航しましょう。
代理人は誰に頼めばいい?
警視庁の公式サイトには「親族等」という記載がありますが、代理人申請ができるのは、渡航している本人との関係が明らかにできる親族、知人、友人、会社関係者などです。
国際免許(国外運転免許)の取得にかかる費用
手数料費用は、各都道府県によって異なりますが、3,000円以内のところがほとんどです。
国際免許(国外運転免許)の有効期限は1年!
国際免許の有効期間は1年です。有効期間が切れた国際運転免許証は、お近くの運転免許センターや試験場に返還することができます。
また日本の免許のように更新といった概念がないため、有効期間が切れた国際免許は再度取得が必要になります。
ジュネーブ条約の加盟国一覧
国際免許(国外運転免許)を取得することで運転可能な、ジュネーブ条約加盟国の一覧をエリア別にご紹介します。
※2023年3月現在の情報です。
北米・南米
アメリカ合衆国/カナダ/ペルー/キューバ/エクアドル/アルゼンチン/チリ/パラグアイ/バルバドス/ドミニカ共和国/グアテマラ/ハイチ/トリニダード・トバゴ/ベネズエラ/ジャマイカ
アジア
フィリピン/インド/タイ/バングラデシュ/マレーシア/ブルネイ/シンガポール/スリランカ/カンボジア/ラオス人民共和国/大韓民国/日本
ヨーロッパ
イギリス/ギリシャ/ノルウェー/デンマーク/スウェーデン/オランダ/フランス/イタリア/ロシア連邦
/セルビア/モンテネグロ/スペイン王国/フィンランド/ポルトガル/オーストリア/ベルギー/ポーランド/アイルランド/ハンガリー/ルーマニア/アイスランド/ブルガリア/マルタ/アルバニア/ルクセンブルク/モナコ/サンマリノ/バチカン/キルギスタン/ジョージア/チェコ共和国/スロバキア/スロベニア/リヒテンシュタイン/リトアニア/クロアチア/エストニア共和国
オセアニア
ニュージーランド/フィジー/オーストラリア/パプアニューギニア
中近東
トルコ/イスラエル/シリア/キプロス/ヨルダン/レバノン/アラブ首長国連邦
アフリカ
南アフリカ/中央アフリカ共和国/エジプト/ガーナ/アルジェリア/モロッコ/ボツワナ/コンゴ民主共和国/コンゴ/ベナン/コートジボワール/レソト/マダガスカル/マラウイ/マリ/ニジェール/ルワンダ/セネガル/シエラ・レオネ/トーゴ/チュニジア/ウガンダ/ジンバブエ/ナミビア/ブルキナファソ/ナイジェリア/シエラレオネ
行政地域
香港特別行政区/マカオ特別行政区/アメリカ合衆国の海外領土/フランスの海外領土/キュラソー島/ジブラルタル/アルバ/ケイマン諸島/ジャージー/ガーンジー/シント・マールテン/マン島
香港はイギリス、マカオはポルトガルが宗主国だった関係で、特別にジュネーブ条約の加盟地域として残っています。
ジュネーブ条約加盟国以外で運転可能な国一覧
ジュネーブ条約の加盟国以外でも運転が可能な国や地域があります。ジュネーブ条約の加盟国以外では、日本の運転免許証+大使館等が発行する翻訳証明書をセットで携帯することで運転が可能になることがほとんどです。
スイス/ドイツ/台湾
ジュネーブ条約の加盟国ではありませんが、上記の国は日本の免許で通常通り運転が可能です。国際免許(国外運転免許)の取得は不要ですが、大使館等が発行する翻訳証明書を携帯することでトラブルを避けられます。
アメリカ・ハワイ州
アメリカ・ハワイ州では入国後1年以内に限り、日本の運転免許証で運転が可能です。入国後1年以内であることを示すためにパスポートをセットで携帯するようにしましょう。
事故や違反で取締りを受けた際に、警官がこのルールを知らずに無免許運転と判断される場合があります。大使館では念のため国際免許の取得を推奨していますので、心配な方は国際免許を取得しておきましょう。
アメリカ・カリフォルニア州
アメリカ・カリフォルニア州も18歳以上の旅行者で、日本の運転免許証有効期限内であれば運転が可能です。
ハワイ州と同じくカリフォルニア州でも事故や違反で取締りを受けた歳のことを考えて念のため国際免許の取得が推奨されています。
海外で運転する際の注意点
国際運転免許を取得しても、海外で運転する際に注意しなければいけない点があります。それは、国によって交通ルールが違うためです。
日本では多くは右ハンドル、右側通行で距離やスピード表示はkmが当たり前ですが、海外では表示を含め、細かい点でルールや仕様が異なります。どのような点に注意したらいいのか、ひとつずつチェックしていきましょう。
■海外で車を運転する際に必要なもの
日本人が海外で車を運転するためには、ジュネーブ条約締約国に限れば、日本で取得した運転免許証のほかは、運転免許試験場・運転免許更新センター・指定警察署への申請で取得できる国際免許(国外運転免許)のみでOKです。ジュネーブ条約に加盟している国の一覧をご覧ください。
ジュネーブ条約に加盟していない国で運転する場合、現地の大使館で発行してもらえる翻訳証明書と運転免許証を携帯すれば運転が認められます。まずは、訪問する国がジュネーブ国際条約に加盟しているかどうかチェックしてみましょう。
■海外の交通ルールについて
日本では右側通行が基本ですが、海外では国によって交通ルールが違います。
代表的な例としては、日本と逆の左側通行や、縦に配列された信号機なども大きく違う点です。さらに、アメリカでは赤信号でも「NO TURN ON RED」の表示が無ければ右折が可能なことや、踏切での一時停止は不要など、国によって交通ルールが大きく異なります。
右側通行か左側通行かの基本を抑えた上で、渡航する国の代表的な交通ルールの把握と、標識を事前に確認した上で運転するようにしましょう。
■海外でのレンタカーの利用について
海外でレンタカーを利用する場合、予約から返却までに間に注意しなければいけない点があります。まずは、レンタカーを予約する際、会社によって価格やサービスの違いに差があります。口コミなどをチェックして、信頼できるレンタカー会社を選ぶようにしましょう。
また、価格については安過ぎる場合、返却時に追加請求されるケースもあるので、価格の妥当性のチェックも重要です。日本では、返却時にガソリンを満タンにして返すのが一般的ですが、借りる時にガソリンを入れてから出発するという国や場所もあります。
レンタカー会社を選び予約をしたら、当日は車の状態を念入りに確認しましょう。これは日本でも同じように行いますが、海外ではさらに念入りにチェックし、後に不当な請求をされないようにすることも重要なポイントです。
レンタカーを借りる時には、会社選びと値段、そして当日は車の状態をしっかりチェックした上で、保険にも加入し、もしもの時に備えましょう。
■海外保険について
保険については、海外でレンタカーを借りる場合、予約料金に基本的に「自車両損害補償制度(CDW)「第三者傷害保険」「盗難保険(TP)」が含まれます。それぞれの補償内容については以下をご覧ください。
保険名 | 補償内容 | |
---|---|---|
自車両損害補償制度(CDW) | 事故などにより車体が破損してしまった時に補償(上限設定あり) | |
第三者傷害保険 | 第三者を怪我させてしまった時に補償 | |
盗難保険(TP) | 盗難にあった場合に補償(上限設定あり) |
利用規約にこれらの補償が含まれているかどうか必ず確認しましょう。上記の保険は上限設定があるため、車両の状態や状況によっては自己負担が発生する場合もあります。上限金額を気にせず、安心して車を運転したいなら、上限金額が設定されていないオプションもチェックしてみましょう。
まとめ
本記事では、海外旅行や出張など、海外で車を運転する必要が生じたときに取得する国際免許(道路交通法上は国外運転免許)の取得方法や費用、資格、必要書類などをご紹介しました。
国際免許を事前に取得して海外でも安全なドライブを心がけましょう。
よくある質問
■国際免許(国外運転免許)は誰でも取れる?
国際免許は、渡航の予定があり日本の免許証を持っている人なら取得が可能です。運転免許証と写真(縦4.5cm×横3.5cm、無帽、正面、顔中心、無背景、申請前6か月以内に撮影したもの。パスポート用のものと同じサイズ。)1枚、パスポートを持って運転免許更新センター・運転免許試験場・指定警察署にて申請をします。
海外に行く予定がある人なら取得可能ですが、書類の準備や出向いて手続きをする必要があります。
■国際免許(国外運転免許)は何日で取れる?
国際免許は、書類の不備がなければ運転免許センター・運転免許試験場では即日交付が可能です。
指定警察署は、土日祝日は休みとなり、交付までに約2週間かかります。また、申請から交付までは、運転免許証は警察署に預けることになるため、その間の運転はできません。早く交付してもらいたい人は、運転免許センター・運転免許試験場で申請しましょう。
■国際免許(国外運転免許)の返却義務は?
国際免許は、日本の運転免許を海外向けに翻訳した証明書です。有効期限は発行日から1年間で、期限を過ぎると失効します。また、日本国内で行政処分を受けた場合も失効となる他、他の国の国際免許を取得する場合は返納しないと新しく申請ができません。
期限切れや行政処分を受けた場合の返納義務はありませんが、新しく別な国での国際免許を取得する場合、返却が必要となります。