愛車のエンジンから異音?「ノッキング」かも
ノッキングとは一般的に、エンジンから聞こえる異音全般のことを指します。ドアをノックするように「カンカン」「キンキン」といった打音が聞こえることからノッキングと呼ばれ、そのときの音をノッキング音と呼びます。
高圧縮比や高回転型、高出力のエンジンなどの性能を求める場合は、いかにノッキングを抑制しつつ性能を達成するかが課題になります。
また、内燃機関の分野において、異常燃焼(デトネーション)やプレイグニッション(早期着火)は厳密にはノッキングに含まれないようですが、それらについてもノッキングと総称されることが多いため、本記事ではノッキングとして扱い、ご説明したいと思います。
ノッキングとはどういう症状のこと?
■まずはエンジンの仕組みをおさらい
燃焼と言われても分からないという方のために、少しエンジンの仕組みについてご紹介します。
例えば、4サイクルエンジンは「吸入→圧縮→燃焼→排気」という行程を経てピストンが上下し、ピストンの動きがコンロッドからクランクシャフトへ伝わり、クランクシャフトの回転がミッションからタイヤへ伝わることで車を動かしています。
この先、圧縮や燃焼という単語が出てきたら、この説明を思い出してください。
■ノッキングがエンジンに与える悪影響は?
ノッキングは場合によって、ピストンやピストンリングの破損、バルブの破損、ガスケット抜けなどを引き起こすことがあります。
ノッキングが原因で、ピストン欠けや、コンロッドの歪みが→コンロッドに引っ張られたクランクシャフトがズレてクランクケースに穴が空く→エンジンオイルを撒き散らす。
など、腰下全体に大きなダメージ与えることがあります。
最悪の場合、車両火災になってしまうことも考えられます。
■愛車のノッキングをチェック
実は、ほんの少しの作業で「自分の車にノッキングが出ていないか」を、ある程度判別することが可能です。
まずは加速時にエンジンルームから「カラカラ+キンキン」というような異音がしないか耳を澄ましてみましょう。
上り坂やゼロ発進など、エンジンに負荷が掛かる状況でエンジン音に混ざる異音を聞き分けるのは慣れないと簡単ではありませんが、ハッと気付く方も居るかと思います。
エンジン始動直後のアイドリング時に「カラカラ」という音が聞こえてもそれはノッキング音ではなく、タペット音です。
ノッキングほど深刻ではありませんので、エンジンが暖まってから音が消える又は小さくなるのであれば問題ありません。
次にチェックしたいのが、”プラグの焼け”です。
焼け過ぎ(燃え過ぎ)が発生しているプラグは、電極部分が白くなっていたり、酷い場合は溶けてしまっていたりすることもあります。
その場合はしっかり番手の合ったプラグに早急に交換してください。
その後は、エアクリーナーからエアフロー、スロットル手前までのパイピングに「抜け」や「ひび割れ」が無いか、目視や触って調べましょう。
これらの作業が「難しそう」、「自信がない」という方は、自動車整備工場にお願いする方が確実です。
整備工場では不具合が見つかれば「点火時期の調整」や、「空燃比の調整(O2センサーやインジェクターが原因でズレている場合も)」まで即時対応してくれるところもあります。
■メーカーのノッキング対策
国内外の各自動車メーカーも、このエンジンの天敵とも言えるノッキングを防ぐために力を注いでいます。
吸気系のパイピングを見直したり、ダクトを設けて温度を下げたり、ラジエーターファンのシュラウドの形状を見直したり、ノッキングセンサーというノッキングを検出するセンサーを搭載し、点火タイミングを自動で最適化したり、日産の新しいエンジン「VC-T」では圧縮比を変更しノッキングを抑制したりと、様々なノッキング対策を行なっています。
また、ノッキングを防ぐためにECU(エンジンコントロールユニット)が進化し、精密な点火や燃料噴射量の制御を行うことが出来るようになりました。
電子制御されていないキャブ車(キャブレター搭載車)では、ジェットの変更や各種スクリューの調整、プラグの選定など、通常の使用でも気温などの環境によって常にノッキングを気にする必要がありましたが、今ではそうした調整をしている方はごく少数になりました。
ノッキングの種類別、症状や対策まとめ
一言でノッキングと言っても、
・ハイギヤでの低速走行時に起きやすい「カーノック又は低速ノッキング」
・何らかの原因で爆発的な燃焼が起こる「デトネーション」
・プラグの着火よりも早く着火してしまう「プレイグニッション」
・ディーゼルエンジン特有の「ディーゼルノック」
などがあります。
■カーノック・低速ノック
「カーノック」は機械的な不具合が原因ではなく、運転者自身の操作ミスやマウント類の劣化が原因で発生します。
MT車で間違えて1速以外で発進したり、交差点で4速や5速などの高いギアで右左折してしまったり、車速に対してエンジンの回転数が異常に低い場合に発生しやすい「ガクガク」という不快な揺れです。
古い車や大きなG(重力)が掛かり続けた車では、マウントが劣化してしまい、エンジンやミッションの揺れを吸収し切れずに振動や振動音が発生することもありますが、それも「カーノック」と呼びます。
ほとんどの場合、「カーノック」は故障ではなく、エンジンに深刻なダメージを与えることもありません。適切な運転を心掛けるだけで解決します。
■デトネーション(異常燃焼)
デトネーションは「シリンダー内で発生した意図しない超高圧・超高温な燃焼」のことを言います。
本来シリンダー内に噴射された燃料は、プラグから発せられた火花により、点火箇所から燃え広がっていきます。
デトネーションの原因は衝撃波を伴うレベルの異常燃焼です。異常燃焼の理由としては、
・圧縮前に何らかの原因で高温になった燃料へ自然着火してしまう
・燃焼時、未燃焼部分が燃焼する前に別方向から、圧縮等で高温になったシリンダー内の空気が火種
となる等で燃焼してしまう
などが挙げられます。
デトネーションの大きな爆発がピストンやシリンダーを想定外の圧力で襲い、大きなダメージを与えてしまうことがあります。デトネーションで発生する異音は、その衝撃波の音だったりします。
一般的にデトネーションは、「高過ぎる圧縮比」や「高過ぎる過給圧(ブースト圧)」、「薄い燃調(リーン)」、「仕様要求より低いオクタン価の燃料」の場合に発生しやすいです。
高レスポンス化を狙って圧縮比を上げたり、安易にブースト圧を上げたり、給排気系を改造してECU(コンピューター)を修正しないまま乗っていたり、ハイオク指定の車にレギュラーガソリンを入れている場合は注意が必要です。
デトネーション(異常燃焼)の対策
デトネーションの対策は、とにかく「意図しない燃焼」を防ぐということです。燃えないようにするためには、「燃焼室内の温度を下げ、着火し難くする」というのが最もシンプルです。
「燃焼室内の温度を下げるには吸気温度を下げる」、「圧縮比を下げる(空気は圧縮されるほど高温になる)」という対策が取られることが多いです。
具体的には、「インタークーラーを巨大化や前置化して空気を冷やす」、「ターボの過給圧(ブースト圧)を下げる」、「ラジエーターを2層式や3層式にして冷却水の温度を下げる」、「高オクタン価ガソリン(ハイオクは燃えにくい)を使用する」などです。
特に、自分でパーツを交換しただけのセルフチューニングをした改造車は、相当燃調が狂っていることがあり、ハッキリと分かるノッキング音が出ていることがあります。
マフラーを交換した、エアクリーナーを交換したというライトチューニングでも、ECUのセッティングを行うことでノッキングのリスクは解消されます。
なお、ECUセッティングは蓄積されたノウハウがモノを言う世界ですので、不慣れな方はプロに任せることを強く推奨します。
■プレイグニッション(早期着火)
プレ(pre=前の、以前の)イグニッション(ignition=点火)とは、その名の通り、「早い段階で点火する」ことで、デトネーションの一種でもあります。
エンジンは空気を圧縮し、最も効率の良いタイミングで点火して燃焼するようにできています。しかし最適なタイミングよりも早く火が着いてしまうことがあり、プレイグニッションと呼びます。言い換えれば、圧縮時に燃焼が始まってしまうデトネーションの一種です。
プレイグニッションの原因は、
・圧縮された空気の熱、熱を持ったプラグ
・燃焼室内に残留した真っ赤になるほど高熱になっているカーボンスラッジ(燃えカス)
などです。
普通の車で発生することはあまりありませんが、高レスポンスを狙った高圧縮比のエンジンや、プロ以外が改造をした車などで起こりやすくなります。
プレイグニッションは点火タイミングより前に燃焼が始まりますが、その直後に従来の点火タイミングでプラグも火花を飛ばすため、火種が2つになりほぼ2倍の力で爆発してしまうことになります。
精密なエンジンに想定の2倍の力が掛かるということは、その瞬間は問題が無くても後々大きなトラブルの原因となります。
プレイグニッション(早期着火)の対策
デトネーションの一種ですから、基本的な対策はデトネーションとほぼ同様です。
デトネーションとプレイグニッションは、共通点も多く、整備のプロでも見分けが難しいと言われていますが、きちんとした設備が整っている整備工場なら計測機器も充実していますので、見分けが可能です。
■チューニング車以外でもノッキングは起きる、修理費は?
ノッキングはチューニングエンジンなどで起こる場合もあるものの、純正仕様のエンジンでも何らかの不具合を原因として起こる可能性があります。
その場合、早めに修理ができれば不具合を起こしている部品を交換するだけでノッキングが収まる場合もありますが、場合によっては複数の部品を交換しなければならなかったり、最終的にはエンジン一式の交換につながってしまう場合もあるようです。
ノッキングは、点火プラグなど簡単な部品交換で直る場合もあれば、より大掛かりな整備が必要になる場合もあるなど現象に応じて対応策が異なり、修理費用は一概に言い難いものとなっています。
部品の不具合の他にも、電子制御でノッキングの発生を抑制する「ノックセンサー」が正常に作動していない場合も考えられ、この場合は部品代が10,000円程度、交換工賃が数万円程度となる場合が多いようです。
ディーゼル車もノッキングする!「ディーゼルノック」とは
ディーゼルエンジンで使用する軽油は、ガソリンと比較すると引火性が悪く、噴射された全ての燃料が燃え切るまでに時間が掛かります。
■ディーゼルエンジンでノッキングが起こりやすいタイミングとは
燃焼中に次の燃料が噴射されてしまうこともあり、後から噴射された燃料と同時に燃えることで、シリンダーの内圧が急激に上昇するのです。
つまり、「ガソリン車よりも遥かにノッキングが起こりやすい」のが大型トラックやバスなどで多く見られるディーゼルエンジンです。
信号待ちで横に並んだディーゼル車(トラックなど)から、「ガラガラ」と大きなエンジン音がしているのを聞いたことがある人は多いと思います。
あれはディーゼルエンジン特有のノッキング音で、言い換えれば「ディーゼル車は常にノッキングしながら走っている」ということになります。
■ディーゼルエンジンのノッキングはどうして起こりやすい?
ガソリンエンジンのノッキングはエンジンにとってダメージが大きく、場合によっては即ブローもありえますが、ディーゼルエンジンではその心配はほぼありません。
と言うより、軽油を使用するディーゼルエンジンは、ノッキングが起こることを前提に少々のノッキングでは壊れないような仕様になっているのです。
なぜディーゼルエンジンのノッキングは心配無いのか、それはディーゼルエンジンとガソリンの最大の違いである「燃焼方法」にあります。
ご存知の方も居るかと思いますが、実は、ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンには必要不可欠な「スパークプラグ」がありません。つまり、火花を飛ばして着火させている訳ではないのです。
ガソリンエンジンでは空気とガソリンが混ざった「混合気」を圧縮し、スパークプラグが点火し、燃焼を行いますが、ディーゼルエンジンではまず空気だけを非常に高い圧縮比で圧縮し、燃焼室を高温高圧状態にし、そのシリンダー内に軽油を噴射することで着火させています。
なお、軽油が発火可能なレベルまで空気を圧縮する必要がありますので、ディーゼルエンジンではほとんどがターボ車となり、ターボの過給により高圧縮状態にします。
噴射された軽油はシリンダー内のアチラコチラで燃焼を始めます。プラグで点火を管理しているガソリンエンジンはプラグの電極部分から燃焼しますから、全く違いますね。
シリンダー内のアチラコチラで燃焼が起こるということは、シリンダーを大きくしても効率よく燃焼が可能ということになり、簡単に排気量を大きくすることが出来るということになります。
船舶用のディーゼルエンジンではボア径(シリンダーの直径)が1mというバケモノのようなサイズも存在します。
ガソリンエンジンは一気に燃焼を起こす必要があるため、シリンダー容量を大きくするとノッキングの原因となってしまいシリンダー容量を大容量化は大変ですので、ディーゼルエンジンならではと言えます。
しかし、簡単にシリンダー容量を大きくする代償として、大型化、重量増加してしまったピストンを高速で動かすと振動が大きくなってしまいますので、ディーゼルエンジンは低回転を常用域(トルクバンド)とします。
■ディーゼルエンジンのノッキングは問題ないって本当?
結論から言うと、プラグが無いディーゼルエンジンでは、プレイグニッションの心配はありませんので、ノッキングを気にする必要はありません。
また、軽油は容量当たりの燃焼エネルギー量(カロリー)がガソリンよりも大きく、その大きなエネルギーのおかげで太いトルクを持ち、熱効率に優れているという特徴もあります。
重い物を運ぶ時、坂道や発進時などは「速度は出なくとも止まらずに確実に進むトルク(力)が必要」となりますので、ディーゼルエンジンを搭載する大型トラックは「極端にローギアードなミッション」と相まって、物を運ぶ力が非常に大きい車と言えます。
ローギアードにしている分、多くの変速が必要になり、大型トラックは6~7速、多いものではATで10段以上の変速となっている車がありますが、トルクバンドが低回転域で狭いディーゼルエンジンの宿命ですので、青信号になった時の大型トラックの加速が遅いのは許してあげてください…。
更に、トルクが太いディーゼルエンジンはその性質上、エンジン自体の重量もそれほど気にする必要が無く、ふんだんに材料を使用出来るので、大きくて頑丈なエンジンを作ることが出来ます。
ディーゼルエンジンでは100万km以上も走行しているエンジンがあるほどです。
また、燃料の軽油代もガソリンよりも遥かに安く済み、ディーゼルエンジンの熱効率の良さも高燃費につながるという点も、長距離を走る貨物自動車にとってはメリットです。
以上の理由から、大型トラックやバスなどはディーゼルエンジンが多く採用されているのです。
ディーゼルエンジンの革命、クリーンディーゼル
現在では環境保護の観点からも「クリーンディーゼル」という「ノッキングの少ない」、「黒煙が少なく環境に優しい」ディーゼルエンジンが開発されています。
従来のディーゼルエンジンでは、ポンプによって燃料を噴射していましたが、クリーンディーゼルエンジンでは「コモンレール」というシステムにより、燃料を高圧で噴射します。
高圧で燃料を噴射すると、「より細かく霧状に噴射することが可能」になり、空気と混ざりやすくなります。
その結果、燃焼効率が向上し完全燃焼を促すことができススが減少します。ススが減少すると排ガスの黒煙も減少するので、良い事だらけです。
またコモンレールシステムは、より柔軟に噴射をコントロールすることが可能で、ECUにより圧力や噴射量を精密に調整することで、従来のディーゼルエンジンでは成し得なかった環境性能や、出力特性、燃費の向上などを実現しています。
まとめ
高出力を目指すスポーツカーエンジンや改造車エンジンにとっての天敵とされてきたノッキング。
現在では様々な技術で対策されており、普通車に乗る分には通常の定期点検を受けていれば、まず心配無いというレベルまで解消されています。
しかし、愛車の状態は目で見て、匂いを嗅いで、耳で聞いて判断するのが基本です。エンジンから発するSOSに早い段階で気付くことが出来れば、修理代も安く済みます。
小さい異音に気付くかどうかが第一ですが、気付いたら放置せずにすぐに対応してあげてくださいね。
よくある質問
■ノッキングってどういう状態のこと?
ノッキングとは、自動車のエンジンから異常な振動音や振動が発せられている状態のことです。扉をノックするときのように、コツコツ、キンキン、カリカリといったような音が鳴ることからその名がつけられたようです。