なぜ、エンジンオイルが必要なのか
エンジンが正常に作動するのに不可欠なアイテムがエンジンオイル。どんなに進化したエンジンでもエンジンオイルなしでは正常に作動しません。
それはガソリンエンジンでも、ディーゼルエンジンでも、レシプロエンジンでも、ロータリーエンジンでも変わりません。
では、エンジンオイルはエンジンのなかでどんな役割をしているのだろうか? エンジンオイルが担っている5つの役割について説明していこう。
世界で7兆9122億円もの巨大市場
地味な存在に思われがちな「エンジンオイル」ですが、じつは世界で8兆円近い巨大な市場になっています。
富士経済による「潤滑剤関連市場の現状と将来展望 2016」によると2015年の潤滑剤世界市場は7兆9122億円。2016年には1.7%増の8兆0512億円、2025年には15.3%増の9兆1224億円に達すると見込んでいます。
では、なぜこれほどの巨大な市場が生まれるかというと、エンジンオイルがエンジンにおいて非常に重要な役割を担っているからなのです。
潤滑油の世界市場「潤滑剤関連市場の現状と将来展望 2016(富士経済)」
ちなみに長期的には電気自動車や水素自動車といったエンジンオイルを必要としない車種の普及が予想される、試乗の圧迫が懸念されていますが、当面は普及台数が小規模にとどまるため、2025年ごろまではガソリン車用エンジンオイルの市場は拡大することが予想されています。
エンジンオイルの役割1「潤滑」
まず1番にあげられるのが油のツルツル滑る性質を利用した「潤滑」という役割です。
エンジンの内部ではピストンやシリンダーのように金属と金属が接触し、擦れ合っているいますが、オイルがない状態で金属同士を擦り合わせると、摩擦熱であっという間に焼き付いてしまいます。
油には潤滑する性質があるため、金属と金属の間にオイルを介在させることで摩擦熱の発生を緩和できるのです。
エンジンオイルの役割2「冷却」
2番目の役割は熱を伝える性質を利用した「冷却」です。
エンジンのなかで発生した熱をオイルが吸収してエンジンの外に逃がして行きます。その際エンジンの熱をオイルが逃がすためには、オイルの温度(油温)はある程度のレベルまでに保たれる必要があります。
高性能なエンジンの場合は、オイルクーラーなどが追加されてオイルの温度が管理されているのです。
エンジンオイルの役割3「密閉」
エンジンオイル3番目の役割はオイルの粘りを利用した「密閉」です。
エンジンには「ピストン」と「シリンダー」という部品が使われています。エンジン内部の燃焼室で燃料を爆発させ、その燃焼ガスの圧力でピストンはシリンダーと呼ばれる筒の中を動き、その動きでエンジンは動いているのです。
その際、シリンダーの内壁とピストンの間に隙間があると圧力が逃げてしまうので、オイルの粘りを利用して密閉をしています。
ピストン
エンジンオイルの役割4「防錆」
4番目の役割は「防錆」(「ぼうせい」が正しい読みだが、わかりやすく「ぼうさび」と発音することもある)です。
普段の生活でも油が持つ「防錆」の性質を実感されているかたが多いかも知れません。オイルで錆を防げる仕組みとしては、オイルの被膜が金属表面を水分や酸性成分などと遮断することと、オイルが水分や酸性成分を取り込んで金属に影響を及ぼさないようにすることだと言われています。
エンジンオイルの役割5「洗浄」
最後の5番目は「清浄」です。
エンジンのなかで燃料が燃えると「スス」などの副産物が生まれます。洗浄性能の高いオイルはこの汚れをオイルが汚れを取り込んで放しません。
エンジンオイルが黒く変色するのはエンジン内が汚れる代わりに、エンジンオイルがススを取り込んでいるからと言えるでしょう。
最後に
記録によれば、人類は古代ピラミッド時代には石材を運ぶ際のオリーブオイルを潤滑剤として使用していたという。人類と潤滑油の歴史は機械文明が発生する以前から、連綿と続いてきました。
エンジンオイルの役割を知って、オイル選びやオイル交換の頻度などに役立てて行きたいですね。