リトラクタブルとは
リトラクタブルとは別名リトラクタブル・ヘッドライトともいい車体内部に格納できるライトのことを指します。主には80年代に流行し、特に多くのスポーツカーに採用されました。
なぜ普及したのかといえば、車体の前頭部に対してのライトを装備する基準に規制があったからであるということが大きく影響しています。
ちょうどその頃、スポーツカー市場では前頭部をスタイリッシュなデザインにするために低くしたいという考えがありました。
その一方でライトをつける位置がある程度高くなければならないという規制があったためにリトラクタブルライトは採用されることとなったのです。
さて、この項目ではそんなリトラクタブルについてもう少し詳しくみていきます。
■リトラクタブルはスポーツカーに多い!
前述でも触れていますが、リトラクタブルは多くのスポーツカーに採用されたといわれています。
日本では、最初にトヨタ2000GTで採用されました。
トヨタといえば日本国内でも有数の自動車メーカーでしたが、当時スポーツカーという分野においてはホンダや日産に大きくおくれをとっていました。
スポーツカーは企業イメージを良くするために当時、必要不可欠であったりしたのにも関わらずおくれていたのは意外といわざるを得ません。
ちょうどその頃、世界初の全アルミ製エンジンをヤマハ発動機が開発しようとしており、スポーツカーに採用しようとしていました。
しかし、莫大なお金がかかるのにも関わらず完成せずということが繰り返されたためにヤマハ側は撤退を余儀なくされます。
そして、日産自動車と提携してスポーツカーを作ろうとしますが、これも志半ばに頓挫してしまうなどしたのです。
その中で、ヤマハ発動機にとってもトヨタにとっても業務提携は必要でした。
最終的にはヤマハ発動機側がトヨタにお願いする形で業務提携をし、トヨタ2000GTが生まれることとなったのです。
さて、話は戻りますが2000GTが1967年に発表されたのをきっかけに以降1970年代には空前のスーパーカーブームとなりました。
マツダ・サバンナRX‐7などでもリトラクタブルが採用されたため、以降スポーツカーで使用されることが多くなり、リトラクタブルはスポーツカーというイメージが日本人に定着したといえるでしょう。
リトラクタブルヘッドライトとは
前述でもあげていますが、リトラクタブルヘッドライトとはリトラクタブルの別名で自働車の前頭部にある格納式のヘッドライトを指します。
日本語では格納式前照灯とも呼ばれていましたが、あまりにも言いにくいということもあり、あまり一般的にそう呼ばれることもなく略称のリトラなどとして親しまれていました。
この項目ではもう少しだけリトラクタブルヘッドライトについて触れていこうと思います。
■ポップアップ式ヘッドライトとは
ポップアップ式ヘッドライトというのも格納式のヘッドライトのひとつです。
別名はポップアップ式ヘッドランプともいいます。
ポップアップ式ヘッドライトは主にスポーツカーに採用されており、ライトの非点灯時は車体のフロントノーズに上向きで格納されているために張り付いているように見られることもあるそうです。
リトラクタブルヘッドライトとの違いはヒンジの位置が異なっていたり、格納方向が逆であったりとします。
あの有名なランボルギーニやポルシェでも採用されているので見たことがあるという方も多いといえるでしょう。
■リトラクタブルは車検に通るのか
結論からいえば通るが検査への準備が必要ということになります。
車検ではライトの検査項目において光軸検査というものがあります。
光軸というのは車のヘッドライトの光の中心線を指すのですが、この検査を通る条件としては夜間に自分と相手が光によって安全を害されることはないかということがチェックされます。
普段、私たちが運転しているとあまり光軸というものを意識することはないですが、光軸があがった車は意外と対向車からみて迷惑だったりもします。
一般車であっても検査にひっかかりやすいともいわれていますが、リトラクタブルヘッドライトは特に光軸がぶれやすいことで知られています。
ライトを動かしただけで光軸がぶれてしまうほどなので、リトラクタブルヘッドライトを搭載した車両に乗るドライバーは光軸を事前調整してから、車検に向かう必要があります。
ライトを動かさずに、また点灯させずに光軸を調整して開きっぱなしで車検に向かうことが大切だといえるのです。
リトラクタブルの維持費は高いの?
リトラクタブルヘッドライトのことは随分と分かっていただけたとは思いますが、導入するともなると気になるのは維持費のことです。
近年見かけないために部品やパーツなども少ないだろうし、何かあったとき交換できる整備士も少ないのではないかという心配すら感じてしまいます。
そこでこの項目ではリトラクタブルヘッドライトの維持費について具体的にどの程度のお金がかかるのかという部分について探っていきましょう。
■部品代は
部品代に関してはリトラクタブルヘッドライトの大部分に関しては特に大きくお金がかかるということはなさそうです。
ライトをぶつけたりだとか壊したりだとか事故を起こしたりなどをすれば当然かかってきますが、大事に使えば大半は壊れることはありません。
ただ、部品の多くについてはある程度、交換が可能であっても、モータ配線が故障してしまうというトラブルに出くわした場合は最悪の場合はモーターを新品に交換しなくてはならなくなります。
このモーターというのが、新品の場合3万円程度はするので、人によっては痛い出費となることが予想されるのではないでしょうか。
■交換方法は
リトラクタブルヘッドライトのモーター交換に関しては個人ですると壊してしまう危険性があるのでおすすめしません。
ただ、ヘッドライト内の球であれば、しっかりとした手順を踏めば個人でも交換することは可能です。
交換する際は側面のネジを外し、リトラカバーを外し、ふたを外し、ゴムカバーを外し、レンズと外していくのですが、外し方に注意をしないと壊してしまう危険性はこちらでももちろんあるので、外す際は詳しい外し方を確認の上で行ってください。
今のご時世なので外し方に関してはサイトなどを参考にするよりも、YOUTUBEなどに動画が存在しているので参考にしてみると良いでしょう。
リトラクタブルが廃止になったわけ
さて、現在ではほとんど見かけることのなくなったリトラクタブルヘッドライトですが、廃止される背景には一体何があったのでしょうか。
リトラクタブルヘッドライトには少なからず弱点が存在します。
例えば、開閉式のライトということは部品点数も多いために重くスポーツカーの走行には向かないということや、そもそもコストの面でかかりすぎてしまうなどもあります。
上記にあげた弱点はコスト面ですが、安全面でも突出したライトが事故の際に危険になったり、ライトがそもそも開閉しないといった事故もあることからコスト面でも安全面でも問題があったということになります。
そうした弱点がある中で世の中がライトの最低地上高規制が緩和する方向になったり、国によっては昼間でもライトをつけることが義務付けられたりとしました。
そうした世界の動きから徐々に、リトラクタブルヘッドライトが存在する意義が機能面でなくなってしまったために廃止されることになったのではないかと考えられるわけです。
■改造して良いの?
車両形式や類別区分番号が同じ場合は改造することが可能になるのですが、改造をすると車検に通らなくなる可能性は否定できません。
また、リトラクタブルヘッドライトを知らない警察官なども増えているので純正のものであっても改造車と疑われる可能性もあります。
改造は自己責任ですが、あまりおすすめできないというのが結論です。
リトラクタブルが採用されていた車は
さて、ここまでリトラクタブルヘッドライトについて語ってきましたが、これまでにどのような車にリトラクタブルヘッドライトが採用されてきたのかというのは気になるところです。
そこでこの項目ではリトラクタブルヘッドライトが採用されていた車について紹介していこうと思います。
■マツダロードスター
マツダロードスターでは初代からリトラクタブルヘッドライトが採用されていました。
初代は89年から97年にかけて発表されていたのですが、当時のデザインコンセプトはときめきでした。
マツダロードスターのデザインは日本の伝統をモチーフにしたものが多く、初代に関しては能面を意識していました。
そんなマツダロードスターは2000年代に入って米国のスポーツカー雑誌で90年代部門でベストスポーツカーとして選ばれるなど活躍したのです。
■セリカ
1970年から2006年まで製造されていたのがセリカです。
若い人はあまり聞きなれない車かもしれませんが、メーカーは天下のトヨタ自動車です。
初代のセリカはダルマセリカと呼ばれており、今でも親しまれています。
なぜ、ダルマセリカと呼ばれていたのかといえば、その姿や配色がダルマに似ていたからであるといわれています。
セリカは1980年代になって3代目がマイナーチェンジを行ってリトラクタブルヘッドライトを採用したことでも知られています。
まとめ
今回はリトラクタブルヘッドライトや採用されているスポーツカーに関する情報をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
リトラクタブルヘッドライトは時代の変化と共に必要性がなくなってしまったがために世の中から消えつつあることがわかりました。
しかし、スーパーカー世代と呼ばれる人たちにとっては憧れの象徴であることは間違いありませんので、これからも愛する方が大切にしてくれるのではないかと思います。