トヨタ アルファードが売れている!
《写真提供:response》アルファード
アルファードが売れています。日本自動車販売連合会がまとめた「2020年乗用車ブランド通称名別順位」で、アルファードは90,748台を売り上げて5位にランクインしました。
1〜4位までがヤリスやフィット等の比較的安価なコンパクトカーで占められているなかで、最低でも350万円以上もする高額車が年間9万台以上も売れるのは驚異的です。
なぜ、アルファードは高額車にも関わらず、これほど売れるのでしょうか?
トヨタ アルファードって、どんなクルマ?
《写真提供:response》初代アルファード
アルファードは、2002年にトヨタの高級ミニバンとしてデビューしました。当時、「Lクラスミニバン」と言われる高級ミニバン市場を開拓し、人気を集めていた日産 エルグランドへの対抗車種としてデビューしたのが、アルファードでした。
アルファードは、当時発売されていた2代目エスティマとプラットフォームを共有するFF車でした。エスティマが流線型のスタイリッシュなデザインだったのに対し、アルファードはスペース効率に優れる、角張ったデザインとなっていました。さらに、1,900mmを超える車高と相まって、アルファードは非常に広い室内空間を実現していました。
インテリアはトヨタの最上級ミニバンらしく、キッチリと作り込まれた豪華なもので、広いダッシュボードのウッド調パネルが目を引きました。また、広い室内空間を活かしたタップリとしたサイズのシートは、特等席の2列目だけでなく3列目でも十分快適に過ごせ、ライバルに対するアルファードの大きなアドバンテージとなりました。
その広い室内は、ファミリー向けの用途だけでなく、ハイヤーや社用車といった法人向けの需要にも注目されるようになりました。初代アルファードは、お客様を4名乗せて、さらに4人分のゴルフバックも搭載できるスペックが評価され、ハイヤー業界で大活躍しました。
そして、ハイヤーでアルファードの快適性を実感したVIPが、社用車を高級セダンからアルファードに乗り換える動きが始まりました。
《写真提供:response》2代目 アルファード
2代目では、増加する法人需要に答えるため、更に高級車路線が明確となり、スタイリングも高級感が増し、インテリアの質感や装備も大きくアップグレードされました。ただ、リアサスペンションが、初代と同じくスペース効率には優れるものの、乗り心地や走りの質感という面からは厳しいトーションビーム式のままで、動的質感と言う点からは高級ミニバンとしては厳しい評価とならざるをえませんでした。
2代目までは、路面のギャップを乗り越えた時に、サスペンションだけでは入力を吸収できず、剛性のゆるいボディ全体がブルブル震える事でショックを吸収していました。そのボディのブルブルは乗員に直接伝り、安っぽい乗り心地として感じさせてしまう事となり、高級車としての質感を大きく損なっていたのです。
《写真提供:response》アルファード
しかし、3代目、現行型のアルファードではリアサスペンションをトーションビームからダブルウイッシュボーンに一新。コストはアップするし、スペース効率も悪くなってしまうダブルウイッシュボーンをあえて採用したのは、高級車らしい乗り心地と運動性能の両立を図るためでした。
ダブルウイッシュボーン式リアサスペンション採用の効果は劇的で、大幅に強化されたボディ剛性と相まって、乗り心地が劇的に向上しました。ダブルウイッシュボーン式サスペンションと高剛性ボディの相乗効果で、大きなギャップを乗り越えても、ドン!と言う音が聞こえるだけで、乗員は何も感じなくなりました。
大きなFFミニバンから、本当の高級車に大きくジャンプアップしたのが、3代目アルファードなのです。
トヨタ アルファードはなぜそんなに売れるのか? 3つの要因で考える
《写真提供:response》3代目 アルファード
■21世紀に入って、ファミリーカーや高級車の概念が変わった?!
《写真提供:response》8代目トヨタ・クラウン ハードトップ
21世紀に入ってからの日本では、クルマに対する人々の認識が大きく変化しました。
1980年代までの日本では、クルマのメインストリームは伝統的なセダンで、「高級車と言えばセダン」という確固たる価値観が確立されていました。また、ファミリーカーの王道もセダンで、トヨタで言えば、頂点をクラウンとする、コロナ、カローラというセダンのヒエラルキーが確立していました。
ミニバンやSUVは、そのセダンのヒエラルキーから外れた、あくまでも派生車として扱われており、それぞれの用途では便利ではあるけれども、冠婚葬祭の様なフォーマルなシーンでは使えなない、という車種にとどまっていました。
《写真提供:response》2代目ミツビシ・パジェロ
しかし、1990年代のRVブームで、ミニバンやSUVがユーザーの間に広く受けいられるようになりました。オフロード車の大ブームを作った三菱 ジェロや、日本のファミリーカーをミニバンに置き換えてしまったホンダ・オデッセイなど、時代を変えるようなクルマがデビューし、クルマに対するユーザーの考え方も大きく変化していきました。
また、1990年代の不況を乗り越えるため、自動車メーカーも、従来のセダンに変わる新しい価値観や使い勝手をもったクルマを次々に投入し、ユーザーの購買意欲を刺激しようと必死になっていました。そのため、2000年代に日本車のラインナップは飛躍的に拡大し、様々なクルマがユーザーの提案されるようになりました。
アルファードが属するミニバンの市場では、従来は商用車ワンボックスカーであるハイエースから派生したハイエースワゴンや、同じくワンボックス車であるタウンエースが、多人数乗車が可能なファミリーカーとして人気を博していました。
《写真提供:response》初代 オデッセイ
その状況を根本的に変えてしまったのは、1994年にホンダが乗用車のアコードをベースとしたオデッセイと、同じシビックをベースとしたステップワゴンでした、オデッセイもステップワゴンも、ワンボックス車のプラットフォームを持っていないホンダが、苦渋の選択で乗用車ベースで開発したクルマでした。
しかし、乗用車ベースである事で、ワンボックス車にくらべて操縦性に優れ、乗用車と同じ感覚で運転できるという新しい価値観をもったクルマとして、オデッセイとステップワゴンは、大いにユーザーに受け入れられたのです。
このように、様々な新しいジャンルのクルマが次々と登場する事で、高級車=セダンでなければならない、という価値観は衰退していき、その用途に適したクルマをユーザーが自由に選択する時代へと、21世紀の日本は変化していったのです。
■アルファードは高級車へと劇的に進化した
《写真提供:response》アルファード モデリスタバージョン
時代の流れを受けて、保守的な高級車市場も次第に変化していきました。トヨタ・クラウンやレクサス LS等の高級セダンは依然として販売され続けていましたが、大型ミニバンの居住性に注目した人達が、VIPカーとしてアルファードを使い始めたのです。
多くのVIPがアルファードに注目した理由は、なんと言ってもその居住性の高さにあります。アルファードは、セダンとは比較にならない室内空間がありますので、飛行機のビジネスクラス用のシートのような、大きくて豪華なシートを余裕で搭載する事ができます。
《写真提供:response》アルファード ロイヤルラウンジ
その様な豪華なシートには、乗員の足を支えるオットマンも装備できるので、シートを倒せば、本当に飛行機のビジネスクラスのシートの様にフラットにする事も可能になります。もちろん、走行中にシートをフラットにする事はNGですが、撮影現場等でリラックスしたい芸能人が、アルファードを利用するシーンも増えてきました。
そうなると、テレビ等で有名人や芸能人がアルファードから颯爽と降りてくるシーンが流れるようになり、アルファード=セレブが愛用する高級車、というイメージが徐々に定着していきました。
《写真提供:response》アルファード
一般の自動車ユーザーの立場から見ても、アルファードの様な大型ミニバンは非常に使い勝手のよいクルマになります。いつもは、少人数でゆったり使え、いざという場合は、沢山の人や荷物を積み込む事ができます。
利便性から言えば、アルファードはセダンよりも圧倒的に上です。その一方で、一昔前はミニバンは商用車から派生した事もあり、クルマとしてのステータスは高いものではありませんでした。
しかし、セレブがアルファードを愛用する事で、アルファード=高級車というイメージが広がっていきました。そして、いままでアルファードの購入を躊躇していた、従来、セダンボディの高級車を購入していた顧客層も、アルファードを選択するようになってきたのです。
さらに、いままではクラウンに載っていたような会社役員さんたちの社用車も、やはり居住性の良さからアルファードが選ばれる機会が増えてきました。
結果、アルファードはミニバンではなくて、高級でフォーマルな「みんなの憧れのクルマ」、としてのステータスを確立したのです。
■高級車のアルファードは、リセールバリューがメチャ高い!
《写真提供:response》トヨタ認定中古車
今や、大きくのユーザーの憧れとなったアルファードですが、何と言ってもお高いクルマではあります。現行型のアルファードでも、一番安いグレードで350万円を超えます。それでも、アルファードの人気は根強いですから、「中古車でもいいからアルファードが欲しい!」と思う人が沢山いるのです。
中古車が欲しい人が沢山いるという事は中古車が高くても売れるという事ですから、アルファードの下取り価格はどんどん上昇していきました。そうなると、アルファードを新車で買う人は、実質的にアルファードが安くなったのと同じ効果があります。
特に、最近は新車購入時に「残価設定ローン」を選択するユーザーが増えている事が、アルファードの人気を更に高めていると言えます。
《写真提供:response》
ご存知の通り、残価設定ローンは3年後や5年後にディーラーが予め設定した価格=残価でクルマを引き取ってくれるローン商品です。そのため、ユーザーは残価が沢山残るクルマを買えば、その分、月々のローン支払額を減らす事ができて、大変オトクです。
ディーラーが高い価格で引き取ってくれるクルマは、当然、中古車の人気の高いクルマになりますから、その代表が、まさにアルファードなのです。
ディーラーがアルファードに設定する残価率は、グレードや駆動方式によって違いはありますが、3年後の引取で50%以上という高い水準になっていると言われています。つまり、400万円のアルファードを3年乗った後にディーラーに引き取りを依頼した場合、200万円で買い取ってくれるという事になります。
つまり、新車購入時の税金や諸費用を除くと、アルファードの価格は実質200万円になり、今どきの軽自動車の上級グレードとあまり変わらなくなってしまうのです。
《写真提供:response》アルファード
どうですか?同じ200万円を払うんだったら、軽自動車とミニバンのアルファード、あなたなら、どちらを買いますか?
実際、トヨタのディーラーでは、全然別のクルマを買いに来た人が、残価設定ローンでのアルファードの毎月の支払額の低さに驚いて、アルファードを購入するケースがあるそうです。
このアルファードの残価率の高さが、アルファード人気を支えている大きな原因になっているのは間違いないでしょう。
まとめ
《写真提供:response》アルファード
アルファードがなぜ売れるのか、ご理解いただけましたか?
3代目になって、アルファードはプラットフォームが変更され、乗り心地が本当によくなり、もはや乗用車としての死角はありません。
豪華で、快適で、そして、お得なアルファードを、是非、次期マイカーとして検討してみませんか?