転回の定義とは。えっ Uターンだけじゃないの?!
ヤマハ ナイケン
アルファベットのUの字を思い浮かべるとイメージのつきやすいUターンに対し、「転回」と言われてもあまりピンとこない方もいらっしゃるのでは。
転回とは、進む方向を180°変える行為を示します。それってつまりUターンでしょ?と思われるかもしれませんね。
実際、Uターンは転回の方法の一つではあるのですが、唯一の方法ではありません。
名古屋高裁での判例があるのですが、一旦停止してから車道左側の脇道などに後退しながら入り、その路地から右折で出るという「スイッチターン」という方法も、進行方向を逆方向に変えることには変わりないとして、転回に含まれることになっています。
スイッチターンの軌跡を想像してもらえば、Uターンとは程遠い方法であることがお分かりかと思いますが、それも転回に含まれるということは、転回禁止の場所ではUターンだけを禁止したいのではなく、その道で進行方向を180度変えること全体を危険視しているわけですね。
そのため、転回禁止の場所では、やや遠回りにはなってしまいますが周辺の道路を利用するなどして迂回する必要があります。
■【標識のない転回禁止に注意】転回に関する法律をチェックしよう
狭い道を進む
先ほどもチラッと言及した通り、転回に関する規制は、道路交通法にきちんと明記されています。
第25条の2によれば、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断し、転回し、または後退してはならないこと、道路標識等で横断、転回、または後退が禁止されている道路の部分では、当該禁止行為をしてはならないことが定められています。
法律らしく小難しい言い回しですのでもう少し噛み砕くと、転回禁止の標識がある場所では転回はできず、転回禁止の標識のない場所であっても、歩行者や他の車などの邪魔になってしまう場合には転回してはならないと定められているのです。
「正常な交通を妨害する」転回というとあまりはっきりとした定義ではありませんが、具体的には交通量の多いシーンや対向車から転回中に見つけてもらえないような高い植え込みのある中央分離帯などは、転回をすることで事故の危険性が高まります。
周囲に車が多く緊張してしまうような場面や、こちらから見通しが悪い場所は、相手にとっても同じ状況です。確実に安全に転回できることがはっきりしている場面に限って転回するようにしましょう。
高速道路
また、当然ではありますが、高速道路上での転回はかたく禁じられています。さらに言えばバックすることや中央分離帯を横切ることも禁止されています。
一方向に移動する、歩行者などがいない、などの条件のもと、制限速度が高い状況でも安全が担保されているのが高速道路ですので、その秩序を崩してしまうような動きは大事故を呼びかねません。
高速道路だけではありませんが、近年では逆走による恐ろしい映像をニュースで見かけることも増えてきているように思いますし、改めて肝に銘じておきたい基本ルールですね。
■転回禁止を違反した場合、点数は?反則金は?
栃木県警 日産 GT-R パトロールカー(左)、ホンダ NSX パトロールカー(右)
転回に関するルールとしては、先ほどご紹介したように転回禁止の標識や標示のある場所で転回をしてはならないことと、歩行者や他の車両等の正常な交通の妨げになる転回をしてはならないという2つがあります。それぞれ違反点数と反則金を確認していきましょう。
まず、転回禁止の標識や表示を無視して転回をしてしまった場合は、指定横断等禁止違反となり、違反点数は1点、反則金は大型車で7,000円、普通車と二輪車で6,000円、原付で5,000円となっています。
次に、歩行者や他の交通を妨げるような転回をしてしまった場合は、法定横断等禁止違反となり、違反点数は2点、反則金は大型車で9,000円、普通車で7,000円、二輪車で6,000円、原付で5,000円となっています。
どちらも原付までしっかりと反則金が設定されている点は注目ポイントで、小回りがきいて街中でもスイスイ走れるだけに、軽い気持ちで転回禁止の標識などを無視したりすると手痛い出費となってしまいますね。
■右折信号でUターンはNGだった?!実は法律が変わっている
交通量の多い交差点などでしばしば見られる矢印表示付きの信号。対向車線などが赤信号に切り替わってから安心して進めるので、運転に不慣れな方にもやさしい信号機ですよね。
そんな矢印信号ですが、意外に思われるかもしれませんが、2012年の道路交通法一部改正までは、右折矢印信号が出ている間に右方向にUターンをしてはいけない決まりになっていました。
右方向に進んでいいよの信号と思いきや、右折矢印信号は本来右折車が交差点に進入してもよいの信号ということで、Uターンをする車はメインの信号が青の間にUターンしなくてはならないことになっていました。
しかしこのルールでは、場面によってはより交通の流れを乱してしまうおそれもありますよね。
たとえば右折レーンでUターン待ち中に右折矢印信号が出たら、自分よりも前にいる車がどんどん右折した後も自分は交差点に進入できずに待つしかなく、後続車からはなんでこの車は動かないんだ?と思われていまいそう。
実際の感覚にそぐわないということもあってか、道路交通法の改正で右折矢印信号が出ている場合はUターンもできるようになっています。
もちろん転回禁止の標識や標示がある場合や、ご紹介してきている通り歩行者や他の交通の妨げとなってしまうような場面での転回は、この新しいルールに関係なくできませんのでご注意を。
転回してもよい場所で、スムーズに転回をする方法をご紹介
ここからは、転回してもよい場面でスムーズにUターンをする方法をご紹介していきます。
Uターンに苦手意識のある方も多いのでは。対向車が来ていないタイミングで意を決してUターンを始めても一回で回りきれず、焦って切り返している間に後続車が来ている!なんていうシーンは、ベテランの方でも緊張してしまうシーンかもしれません。
もちろん道の広さなどによってはどうしても切り返しが必要になる場合もありますが、コツを押さえてUターンすれば、もっとスムーズに回り切れる場合もあります。
■合図はしっかり早めに出す、安全確認も動き出す前にしっかり行う
《画像提供:Response 》ホンダ CR-V シーケンシャルターンシグナルランプ
何より大事なことは、周りの状況をしっかり把握して安全であると確認するとともに、周囲の他の車などにUターンの意思をしっかり伝えること。
直前になって右折合図を出したりすると、後続車の迷惑になってしまう可能性もありますし、追突事故などを招いてしまうおそれもありますよね。
安全に歩行者や他の車に迷惑をかけずに転回できそうな場所を見極めたら、早すぎる合図もあまりよくありませんが、なるべく早めに合図を出して進み、確認も早めから開始しておきましょう。道路交通法では30m手前から合図を出すことが定められているのは、教習所で習った通りです。
■いざ転回、ハンドルを切るタイミングと速さがポイント!
スマート フォーツー
交差点では右折レーンから、それ以外の場所ではなるべく中央線側に寄せた状況からUターンを始めますが、失敗しがちなポイントは、Uターンを始めてからハンドルをじっくり回してしまうこと。
道路幅が何車線もあってかなり広い場合にはそれでも回り切れるかもしれませんが、一般的なシーンでは、ハンドルをゆっくり回していると回りきれない場面も多いことでしょう。周囲の安全を確認したら、思い切って最初からハンドルを最大限回してUターンすると、1回で回りきれるチャンスが増します。
焦る気持ちもありますが、必要以上に速度を速める必要もありません。速めの速度でUターンを行なってしまうと、ハンドルをしっかり切る前に進んでしまう距離が長くなり、Uターンの半径も大きくなりがちです。
落ち着いて、それでいて大胆なハンドルさばきを意識してみましょう。
■進みたい方向が見えてきたら、ハンドルを戻すのを忘れずに
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリス ハンドル
先ほどハンドルを思い切って回すようおすすめしましたが、普段あまり道路上で回すことのない領域までハンドルを回すことになるかと思いますので、方向が変わってきたところでしっかりハンドルを戻す意識も必要です。
自動車は、ハンドルを切った状態で前に進むと、ハンドルが真ん中位置まで自動的に戻る力が働くように設計されています。それでもUターンのようにしっかりハンドルを切る場合では、戻るのを車任せにしているとUターンが終わった後でも右方向に進んでしまうおそれもあります。
焦っているとハンドルを何回回したのか覚えていないことも多そうですので、車が真っ直ぐに進み始めるまでは加速を控えましょう。最近の車では、ハンドル方向をメーター内に表示してくれるものもありますので、そのような機能を活用してもよいですね。
高速道路で「特別転回」?!降り口を間違った時の救済システム
料金所
先ほど高速道路ではUターンはおろか後退すら禁止とご紹介しましたが、降り口を逃してしまったり、ジャンクションで違う方向に進んでしまうミスは、誰しも起こし得るもの。特に都市部の高速道路は構造も複雑ですし、慣れていないと出口を見逃してしまう可能性も増します。
そんなとき、もちろんUターンはできないのですが、次の出口まで進めば「特別転回(回転)」という制度を利用することで、追加料金なしで目的のインターチェンジまで戻ることができる場合もあります。
降り口を間違えた、ジャンクションで進む方向を間違えた、と気付いたら、次のインターチェンジで降り、料金所で手続きをすることで、特別転回(回転)が認められる場合もあります。
注意が必要なのは、最近増えてきている無人ゲートしかないようなインターチェンジでは受付されていないほか、一般レーンがある料金所であっても、間違えたルートなどによっては特別転回(回転)が認められていない場合もある点です。
そのため、全てのケースで余計な料金負担なく目的地にまでたどり着けるとは限りませんが、その場合は一度そのインターチェンジで降り、もう一度乗り直せば、安全に目的地に到着できることでしょう。
くれぐれも、短距離だから、誰もいないからといった理由で、高速道路上でのUターンや後退などの危険行為はやめましょう。
まとめ
渋谷 スクランブル交差点
転回に関するルール、反則金、Uターンのコツなどをご紹介してきました。
さまざまなリスクの潜むUターンはできるだけしたくないものですが、コツをおさえれば比較的成功しやすくなります。
どうしても不安なら、左折して左折して左折するなど、ちょっと遠回りでも迂回してみる気持ちの余裕も大事かもしれませんね。