いざ燃え始めると大変なことに… 起こってほしくない「車両火災」
《画像提供:Response 》首都高速神奈川1号線での車両火災
時折ニュースで流れる、大きく火の手が上がった黒コゲの自動車の映像。起こってほしくはないことですが、車両火災は意外と人ごとではないかもしれませんよ。
普段、自動車を運転している時にはなかなか考えが及びにくい部分ではありますが、自動車は燃料にガソリンを使っていますし、電装部品はショートしてしまうなどすれば火花が飛ぶことも。
一度発火してしまうと、室内のカーペットやシートなどは難燃素材が用いられているとはいえあまりに火の手が激しいと燃え尽きてしまいますし、プラスチック製の部品は溶けてしまい、壮絶な車両火災の末、最後には愛車の骨組みしか残らなかった、なんて悲しすぎる結末を迎えてしまう可能性もあります。
そうならないためにも、車両火災はどんな原因で発生するのかを確認して注意するとともに、いざ発生してしまった時にどのように身を守ればいいのか、詳しく見ていきましょう。
車両火災にも種類がある!原因別で分けてみました
■車の故障や整備不良によるもの
整備工場
ある自動車保険会社の調査によれば、発生した自動車火災のうち、判明した原因のトップはなんと点検・整備ミスによるものとの結果があるそうです。
もちろん、車も機械ですので、人的要因は関係なく、突発的に故障してしまった結果に車両火災が起きてしまうこともあ流でしょう。しかし、もう少しメンテナンスに気を遣っていれば防げたかも…と後から後悔するなんて、やるせないですよね。
具体的には、かなり高温になるエンジンルーム内へ置き忘れたウエスなどが発火してしまったり、電装系部品や配線のショートによる発火、パンクしたまま走行を続けるなどが原因でタイヤが異常発熱したことによる発火など、たとえ小さな部品の故障であっても車全体に及ぶ火災の原因となりうることがわかりますね。
また近年ではゲリラ豪雨などによる冠水もしばしば発生します。エンジンの働きには影響のない程度の水深だから、と無理に冠水地帯を通り抜けてしまうと、電気系統がダメージを受けてしまう場合も。のちにそのダメージから腐食した部分がショートするなどして火花が散ってしまう場合もあるようです。
■ドライバーの誤操作によるもの
日産 サニー カタログ
ドライバーの対応が適切でなかった場合などにも、車両火災の危険があります。
たとえば、サイドブレーキの戻し忘れ。近年の車では警告音や分かりやすい表示でお知らせしてはくれますが、気づかずに走り続けてしまうとブレーキが過熱され、最終的には発火してしまうおそれもあります。
冷却水不足などで車がオーバーヒート状態になることはすでに重大な故障ですが、気づかずに走行を続けてしまうなどすると、最悪の場合ではエンジンにヒビが入るなどして漏れ出たオイルが高熱の部品に接触して発火、というケースもあるようです。
また、近年では装備されているところを見る場面も減ってきましたが、タバコを吸われる方ならお馴染みのシガーライターも意外と怖い部品。車内の荷物などがシガーライターに当たってしまい、シガーライターの押し込み状態が続くなどすると温度はみるみる上昇し、周りの可燃物を燃やしてしまうおそれもあります。
■四輪駆動車は注意が必要!システムごとに異なる注意点
4WD車の研究
近年SUVブームやキャンプブームで普及の広がる四輪駆動車。しかし、四輪駆動システムによっては乾燥した舗装路上を四輪駆動走行するようにできていないものもあります。
そのような車両で無理に四輪駆動走行を続けると、抵抗による駆動系の発熱で、最終的には火災に至ってしまうおそれもあります。
また、タイヤの摩耗状態や空気圧差が大きいだけでも、駆動系に大きな負担がかかって発熱してしまい、最悪のケースでは発火してしまう場合もあるそう。
意外と見落としがちな部分かもしれませんが、四輪駆動車は悪路でのトラクション性能が優れている分、特別に注意が必要な部分があるということですね。
■地面の枯れ草、野生生物の習性にも注意が必要
空き地
乾燥した枯れ草は、瞬く間に引火してしまう場合もあります。近年の自動車では非常に高温になる触媒などは車両下回りから離されている場合も多いようですが、それでも排気管やエンジン付近ではかなりの高温になっており、走行中は風で冷やされていたそれらの部品が、枯れ草や小枝の上で停車してしまうと一気に発火してしまうこともあるそうです。
また、鳥など小動物の習性によっては、エンジンルーム内などの狭い場所に枝や枯れ草を持ち込んでしまうものもいるそうで、その場合は走行中に温度が上がってくると発火してしまうおそれがあります。
長期間動かしていない車を久しぶりに運転する場合は、エンジンルームや下回りの確認をしてからエンジン始動したいところです。
■車内に放置したものから発火するケースも!
経済産業省によるライターの処分方法パンフレット
こちらは意外と見逃されがちなポイントかもしれませんが、車内に取り付けたアクセサリーや、放置していた荷物などが火種となってしまうケースもあります。
日差しのきつい夏場などでは、エアコンなしで窓を閉め切った車内はすでにかなりの高温となっていますが、ウィンドウにアクセサリーを取り付ける際に透明な吸盤を使ってしまうと直射日光をレンズのように集めてしまいさらなる高温を生み出してしまうこともあるそう。近くに可燃物があると発火させるおそれもあります。
他にも、ライターやスプレー缶といった、高温状態で放置してはならないものを車内に放置してしまうと、何らかのきっかけで限界まで高温に到達してしまい爆発したり発火したりしてしまうことも。
車内へ放置してはならないものなどは車両の取扱説明書に指示がある場合もありますので、一度説明書を読み直してみることをお勧めします。
あらかじめ知っておきたい、車両火災発生時の行動
シボレー SS
起きてほしくないことではありますが、一度車両火災が発生してしまった場合、その車のドライバーやパッセンジャーだけでなく、周囲を走る車にまで危険が迫ります。
できるだけ落ち着いて行動できるようにするためにも、車両火災が発生してしまった場合の行動の一例をご紹介します。
■異常に気付いたら、周囲に気を配りつつ安全に停車しよう
車両火災が発生してしまった際には、ハザードランプを点灯させ、周囲の車に緊急事態であることを知らせましょう。周囲の車からは傍目には火災が発生していることがわからないかもしれませんので、ハザードランプを利用して伝えることは非常に有用です。
安全に停車できる広々とした場所が進行方向にすぐ見つかればベターではありますが、広い場所を探している間に火の手が大きくなってしまっては危険です。周囲の車の動きを気にしつつ、急ハンドルや急ブレーキを避けながら、道路左側の路肩に車を寄せていきましょう。
状況によっては火の手が激しくすぐに停車せざるをえないかもしれませんが、高速道路上などでは、突然急ブレーキで車線上に停車してしまうと、今度は後続車から追突されるおそれもあります。可能な限り、左側の路肩に寄せて車を停止させればより安全でしょう。
■停車後はエンジンスイッチを切り、避難、通報
エンジンスイッチを操作して車をオフ状態にし、車外に避難しましょう。
この時に、車検証などを車外に持ち出しておけば、もし火災がひどくなって車両が全焼してしまうなどした場合に役立つ可能性もあります。避難する際に余裕がある場合に限り、意識しておくとよさそうです。
また、道路状況によっては、車外に出てから後続車によってはねられてしまうなどの危険性もあるかもしれません。十分に注意が必要です。
火の手が上がっているなら即座に119番通報ですが、焦げ臭さを感じたなど車両火災が疑割れる場合はまずは車両を確認してみて、火災と判断してから119番に通報しましょう。
■可能なら初期消火、無理なら身の安全を確保!
危険のない範囲内であれば、ご自身で初期消火を試みることもできますが、まず第一に優先すべきは身の安全です。危険を感じた場合は安全な場所まで避難しましょう。
状況に応じて初期消火を行う際には、上着やブランケットで火元を覆い込むことで鎮火させたり、飲んでいた飲料水などを利用して消火することもできるかもしれません。
さらに効果的な消火方法としては、自動車に搭載できる消化器などを前もって車に常備しておけば、より安心かもしれません。この場合注意が必要なのは、消化器によって対応できる火災が異なる点。
木材や紙、衣類などが燃える普通火災(A火災)、燃料や油脂類が燃える油火災(B火災)、電気器具などが燃える電気火災(C火災)と、燃える物質別に3パターンに分けられているので、お手持ちの消化器が発生している火災の消火に適したものかどうかは注意が必要です。
また、目視できる範囲内での火なら初期消火もしやすいものの、エンジンルーム内やトランクなど、ある程度密閉された場所で発火している場合は、消火目的でボンネットやトランクを開いたりすると逆に火の勢いが増してしまうことにもつながりかねず、注意が必要です。
火災が進んでいくと、火の手だけでなく爆発などのおそれもあります。くれぐれも身の安全を第一に行動しましょう。
まとめ
2008年に発生した首都高でのタンクローリー火災事故
車両火災の原因のまとめと、実際に車両火災が発生した際の対応一例をご紹介してきました。
愛車に絶対起こってほしくはないことではありますが、どれだけ気をつけていても火災の可能性をゼロにすることはできないでしょう。いざというときにできるだけ落ち着いて行動できるよう、心がけておきたいところですね。