エンジンオイルとは
《写真提供:response》高級エンジンオイルの性能調査
エンジンオイルは、車両やバイクなどのエンジンに使われている潤滑剤のことを指しています。車両の動力となるエンジンを動かすために重要な要素のひとつであり、エンジンオイルがなければエンジンは正常に動作することができません。
エンジンオイルは「オイルパン」と呼ばれる部品の中に溜められており、内部のポンプで吸い上げてエンジンの隅々まで行き渡らせる仕組みになっています。
エンジンオイルが果たす役割
どんな役割がある?
車両の心臓部ともいえるエンジンは、車両を動かすにあたって負荷がかかりやすい場所であり、少しでも負荷を軽減させるためにはエンジンオイルの力が必要不可欠です。
血液の役割を果たすエンジンオイルによって、エンジンは高いパフォーマンスを維持し続けられているといっても過言ではありません。定期的に新しいオイルに交換することが、エンジンの負荷を最小限に抑えて寿命を伸ばす上で重要であるといえるでしょう。
エンジンオイルの役割は「部品をスムーズに作動させる潤滑作用」「隙間を埋めてガス漏れを防ぐ密封作用」「高熱になった内部の熱を吸着する冷却作用」「燃えカスなどの汚れを絡めとってきれいに保つ清浄作用」「錆びつきを防ぐ防錆作用」の5種類あります。
すべての作用を正常に果たせる状態になければトラブルを引き起こしやすくなるため、古くなって正しく役割を果たせなくなったエンジンオイルは速やかな交換が必要です。オイルにも複数の種類があるため、愛車に適したオイルを選ぶことが長く愛車に乗り続ける秘訣になります。
エンジンオイルの種類
どんな種類がある?
代表的なエンジンオイルの種類は次の3つです。品質とコストの面で違いがあるため、予算と性能のバランスを見ながらどのオイルを使用するか決めると良いでしょう。
■化学合成油
原油を蒸留して精製した鉱物油を化学分解し、環境に優しく洗浄力の高い成分を合成したベースオイルです。
価格は他の2種類に比べて高くなりますが、高品質で安定性が高いのが特徴です。
■部分合成油
精製済みの鉱物油に化学合成油や水素化精製油を30%程度配合したオイルです。
価格と性能のバランスが良く扱いやすい点が魅力で、化学合成油に比べると耐熱性はやや落ちるものの、快適な走行に十分な機能は有しています。
■鉱物油
3種類の中では最も安価なオイルで、原油を蒸留して不純物を除去することで精製されています。
価格が安価であることから酸化・劣化しやすいという欠点はありますが、少しでも安価な製品を求めるのであれば便利です。
エンジンオイルの品質規格
規格についても知っておこう
エンジンオイルには品質規格が定められており、制定した機関によって2種類のグレードが存在します。
■API規格
アメリカ石油協会によって定められたグレード規格で、「American Petroleum Institute」の頭文字を取ってAPI規格と呼ばれています。ガソリンエンジン用とディーゼルエンジン用のオイルで規格が分かれており、前者は「SA」から「SP」まで、後者は「CA」から「CK-4」までのグレードが設定されています。
API規格を満たしているオイルには「ドーナツマーク」と称される認定マークが付与されるため、オイルを選ぶ際の参考になるでしょう。
■ILSAC規格
国際潤滑油標準化認定委員会が認定する規格で、API規格のガソリンエンジン用オイルが「SH」以上のグレードに相当する際に省燃費性を認めるものです。「International Lubricant Standardization Approval Committee」の頭文字からILSAC規格と呼ばれています。
ILSAC規格を満たすと「スターバーストマーク」と呼ばれる認定マークが付与されます。
エンジンオイルの粘度規格
エンジンオイルには粘度の規格もあります。オイルの粘度は状況に応じて使い分ける必要があるため、どのように定義されているのか知っておきましょう。
■SAE規格
アメリカ自動車技術者協会は、乗用車をはじめとして航空機やトラックなどエンジンを搭載して自分の力で走行する機械に関連した部品類の工業規格化や標準化で知られた機関のことです。オイルの粘度もそのひとつで、「Society of Automotive Engineers」の頭文字を取ってSAE規格と呼ばれています。
SAE規格の表し方は「5W-50」などであり、「低温時と高温時の粘度」を表しています。この例であれば「5W」が「冬(Winter)」の低温時の粘度を表し、右側の「50」が高温時の粘度を示します。
左側の数値が小さいほど「低温の状態でも柔らかさを保ったオイル」であり、寒い朝でもスムーズにエンジンを作動させられるなどの特徴があります。また、一般的に粘度が低いオイルは燃費性能が良いともいわれています。右側の数値が大きいほど「エンジンの回転数が高い状態でも硬度を維持できるオイル」であり、スポーツカーなどに適しています。
中には「0W-20」のように粘度が非常に低いオイルもありますが、極端に粘度が低いオイルはエコカーなど適している車種が限定されるため、使用する前に十分な確認が必要です。一般的に左側と右側の数値の差異が大きいほど、さまざまなシチュエーションで快適に走行できるといわれています。
エンジンオイルの選び方
選ぶポイントを知っておこう
エンジンオイルを選ぶためには、次の3つのステップが必要です。
■1. オイルの硬さを確かめる
新車購入時にメーカーが推奨するエンジンオイルが入れられているため、そのオイルの硬度がどのくらいなのかを調べましょう。新車・中古車に関わりなく取扱説明書などに記載されている基本情報で確かめられます。
車種によって適した粘度が大きく異なり、外気温や走行条件などによっても推奨される粘度は変わってきます。取扱説明書に気温別に望ましい粘度が紹介されているため、参考にして選ぶのも良いでしょう。
国産車では5W-20や5W-30が比較的広く使われており、外車であれば10W-40や5W-40が多くみられます。基本的に粘度が低いオイルはスムーズに始動しやすく、高粘度であるほど高速性能が高い傾向にあります。
■2. オイルの硬さを選ぶ
どのようなシチュエーションで走行するのかによって、適切なオイルの硬さは異なります。寒い地域などで朝方でもスムーズにエンジンを動作させたいのであれば、「10W」から「5W」のオイルに変更するなどの対応が考えられるでしょう。
また、「30」から「40」などのオイルに変更すると、高温になってもエンジンを保護する性能を保ち続けることが可能で、油膜切れなどを起こしにくくなります。
低粘度のオイルであればあるほど始動性が高く、燃費が良いといわれています。ただし、エンジンの保護力は高粘度オイルに比べると劣る傾向にあります。高粘度のオイルはエンジンの保護性能が高く静音性にも優れますが、やや燃費効率が悪いというデメリットがみられます。
■3. ベースオイルを決める
粘度が高ければ保護性能も高く、柔らかいオイルであるほど燃費効率が高いことをお伝えしましたが、粘度が硬ければ燃費が悪く柔らかいほど保護性能が低いということでもあります。このデメリットをカバーするためには、化学合成油のベースオイルを選ぶのがおすすめです。
ベースオイルには前述のとおり「化学合成油」「部分合成油」「鉱物油」の3種類がありますが、エンジンの性能を高めたいのであれば化学合成油を選びましょう。性能には劣りますが、価格重視であれば鉱物油を選ぶとコストを抑えられます。
エンジンオイルの交換時期
交換時期を把握!
エンジンオイルの交換に適した時期は車種によっても差がありますが、日本では比較的短距離走行が多いなどの事情もあり、メーカーが指示している目安よりもオイルの劣化が早まるケースが多い場合も見受けられます。
良好なコンディションを保って愛車に乗り続けたいのであれば、6ヶ月経過または5,000km走行した時点で交換することをおすすめします。運転を重ねるごとにエンジンオイルの経年劣化は進み、汚れを吸着する正常作用で黒ずんできます。
また、ほとんど乗らなかったとしても時間とともに劣化するため、半年に一回程度は必ず交換するように注意しましょう。
■オイルを交換しないとどうなる?
オイルを交換せずに乗り続けると潤滑作用が落ちて金属部品同士がこすれ合い劣化を早めたり、洗浄作用が上手く働かなくなって燃費効率が落ちたりする可能性があります。
時にはエンジンの故障を招くこともあるため、定期的な交換が重要です。
■シビアコンディションだとオイルの劣化は早まる
一般的にメーカーが想定している走行環境は平坦な公道であり、法定速度を守った安定的な速度を想定しています。そのような標準的な走行ではなく、エンジンへの負荷が高い運転をシビアコンディションと呼んでいます。
シビアコンディションで運転し続ける場合はオイルの劣化が通常よりも早く進むケースが多く、耐久性に優れたオイルを使用するか、6ヶ月よりも早いサイクルで交換することが推奨されます。
一般的にシビアコンディションに該当するのはドライバーに衝撃が伝わるような悪路や雪道での走行、年間の走行距離が20,000kmを上回っている、急斜面での走行が多く、頻繁にブレーキを使用するなどの走行を全走行距離の30%以上で行う場合が該当します。
また、1回あたり8~10km程度の短距離走行が多い場合や氷点下での走行、30km以下の低速走行などが多い場合もシビアコンディションに含まれます。
まとめ
こまめにメンテナンスしよう
エンジンオイルは車両の心臓部であるエンジンを快適に動作させるために必要不可欠です。一定の期間が経過したり走行距離が増えてきたりした際は速やかに新しいものに交換して、常に新しい状態を保ちましょう。
オイルはベースオイルの種類と硬度によって品質や特徴に大きく差が付きます。愛車の種類に合わせて適切なものを選ぶことで、耐久性や高速性などを高めて故障しにくい状態を維持することにもつながります。