運転技能講習は学科科目と実技科目に分かれており、基本的には学科科目11時間、実技科目24時間の合計35時間を修了することが必要です。
所持している免許により運転技能講習の科目が免除になるため、最短で2日最長でも5日で取得することができます。
所持免許 | 講習時間 |
---|---|
特になし | 35時間 |
自動車免許、大型特殊自動車(限定)免許所持者 | 31時間 |
1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後6ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 15 時間 |
大型特殊自動車免許(限定除く)、 自動車免許または大型特殊自動車(限定)免許所持者で 1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後3ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 11時間 |
運転技能講習 学科科目の内訳
運転技能講習の学科科目11時間の内訳は下記の通りです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 4時間 |
荷役に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識 | 4時間 |
運転に必要な力学に関する知識 | 2時間 |
関係法令 | 1時間 |
運転技能講習 実技科目の内訳
運転技能講習の実技科目24時間の内訳は下記の通りです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行の操作 | 20時間 |
荷役の操作 | 4時間 |
特別教育の実技科目の合計6時間に対して4倍の24時間をかけて実技を学びます。実技科目では実際に木製パレットなどを用いてより業務に近い内容を学びます。
【試験内容と採点基準は?】
フォークリフトの運転技能講習の学科試験と実技試験はどのような問題や採点基準があるかをご紹介します。
運転技能講習 学科試験の内容と採点基準
フォークリフトの運転技能講習の学科試験の採点方法や合格基準点は試験を受ける機関によって異なる場合があります。下記はあくまでも学科試験の配点と採点基準の参考の一例です。
《学科試験 配点の参考例》
フォークリフトの走行に関する装置の構造および取扱いの方法に関する知識(10問 配点30点)
フォークリフトの荷役に関する装置の構造および取扱いの方法に関する知識 (10問 配点30点)
フォークリフトの運転に必要な力学に関する知識(10問 配点20点)
法および規則中のフォークリフトについての規則に関する知識(10問 配点20点)
《学科試験 採点基準の参考例》
上記の40問100点満点中
それぞれの項目で
走行…30点中12点以上
荷役…30点中18点以上
力学…20点中8点以上
法とフォークリフトの規則…20点中8点以上
で合格と言われています。
運転技能講習 実技試験の内容と採点基準
フォークリフトの運転技能講習の実技の採点方法や合格基準点も、試験を受ける機関によって異なる場合もありますが、基本的には下記の例のような実技試験の内容と採点基準です。減点方式となっている点は、運転免許と同じですね。
■実技試験の内容
・乗車前の点検
・乗車
・発進
・走行
■実技試験 採点基準
持ち点100に対する減点方式。
最終的に70点以上残っていれば合格。
フォークリフトの資格を取得するまでの流れ
《画像提供:Response》《写真提供 豊田自動織機》豊田自動織機の自動運転フォークリフト
ではフォークリフトの資格は、どんな流れで取得できるでしょうか。ここでは、申し込みから各講習と試験内容までを解説します。
フォークリフトの免許は前述のとおり、最大積載荷重1トン未満を扱える「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」と、最大積載荷重1トン以上を扱える「フォークリフト運転技能講習」の2種類です。それぞれ必要となる教育科目と時間、費用、取得までの日数が異なります。
「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」は社内受講が可能な資格なので、ある程度大きな規模の会社であれば自社社員や関連会社社員向けに実施しています。そして「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」では修了試験がありません。
ここから先は、教習所に行って取得することの多い「フォークリフト運転技能講習」の流れを説明します。
■申し込み
「フォークリフト運転技能講習」は厚生労働省が管轄しており、各都道府県労働局に登録した教習機関に申し込みます。具体的には自動車教習所、クレーン教習所、建設機械メーカーの教習所などで実施しています。
申し込みに必要なものは、「申し込み用紙」、「本人確認書類」、「講習費用」です。教習所を直接訪問する方法もありますが、多くの教習所では公式ホームページがあり、申込書や予約フォームを準備していますので、それらを活用するといいでしょう。
申し込むコースは、どの免許を取得しているかで変わります。教習所によって講習時間や細かなカリキュラムは異なりますが、「大型特殊免許保持者及び普通・大型免許保持及び1トン未満のフォークリフトを3カ月以上経験した者」なら、学科と実技を合わせて約11時間(平均2日間)の講習です。
「自動車免許がなく、1トン未満のフォークリフトを6カ月以上経験した者」であれば約15時間(平均3日間)の講習、「普通自動車免許を持っている者」なら約31時間(平均5日間)の講習、「免許がなく、現場経験もない者」であれば約35時間(平均5日間)の講習コースとなります。
■学科講習・試験
学科講習は、「各種自動車免許を持っている者」なら約7時間、「自動車免許がない者」であれば約11時間です。
内容は、「走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識」、「荷役に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識」、「運転に必要な力学に関する知識」、「関係法令」の4科目で、それぞれ定めらえた時間の受講が必要です。
学科試験は講習で学んだ4科目の内容が、選択方式で出題されます。学科講習の4科目には難しい言葉が並んでいるので合格するか不安に感じるかもしれませんが、講習をしっかり聞いていればそれほど難しい試験ではありません。講師は試験問題に出やすい部分を中心に講義してくれますので、まずはしっかり講習を受けましょう。
試験の配点は「走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識」と「荷役に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識」がそれぞれ30点、「運転に必要な力学に関する知識」と「関係法令」がそれぞれ20点の100点満点で、合計60点以上が合格です。
もし仮に学科試験に落ちても、その場で再試験が可能です。再試験前に簡易的な講習を受け、追試が可能なのは心強いでしょう。
■実技講習・試験
実技講習は「走行の操作」と「荷役の操作」の2科目があります。通常24時間の受講が必要ですが、「大型特殊免許保持者および普通・大型免許保持及び1トン未満のフォークリフトを3カ月以上経験した者」と「自動車免許がなく、1トン未満のフォークリフトを6カ月以上経験した者」に該当すれば、4時間の受講に免除されます。
実技講習内容は「走行の操作」として、フォークリフト走行の基本操作、前進やバック走行、荷物を持った状態での走行などですまた「荷役の操作」として、フォークの抜き差しや積み重ねなどを実技します。
実技試験は、実技講習で学んだことを一通り行います。「乗車前の点検・安全確認」、「乗車」、「発進」、「走行」が審査項目で、100点からの減点方式で70点以上を取れれば合格です。
不合格になりやすいポイントは、シートベルトの着用忘れ、荷物(パレット)へのフォークの抜き差しミス、必要以上に荷物を高く上げて移動する、駐車位置がずれてしまう、といった重大な事故につながるものです。これらは1回のミスでも失格扱いになることがあるので注意しましょう。また実技試験には制限時間が設けられているので、時間オーバーにも注意が必要です。
実技試験は学科試験と同様、不合格の場合には再試験を行えます。再試験前には補講も受けられるので安心ですね。
運転者も会社も処罰対象!フォークリフト無資格運転の罰則・罰金
フォークリフトの運転資格がないまま、事業所内や私有地でフォークリフトを運転した場合には罰則や罰金が発生します。
何故ならフォークリフトの運転は労働安全衛生法第61条において、資格を持つ人しか運転することができないと定められているからです。第61条の内容は下記の通り。
第六十一条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
2 前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない。
■無資格運転を行った者…6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
フォークリフトの無資格運転を行うと、労働安全衛生法第119条を根拠として6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 (中略)第六十一条第一項(中略)の規定に違反した者
■無資格運転を行わせた法人または従業者…6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
また第119条にあたる無資格運転を行わせた法人や他の従業員に対しては、労働安全衛生法第122条を根拠として同じく6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
第百二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
フォークリフトを活用する主な業種
《画像提供:Response》《画像提供 トラストスミス》無人フォークリフト
まとめ
フォークリフトは物流現場でよく使われるので、倉庫業、製造業、運送業などの業種で活躍できる資格です。また、大型資材を運ぶ建設業や園芸サービス業、さらに頻繁な荷受けが発生する小売業でも活躍を期待できます。
さらに災害時の物資運搬や瓦礫の除去といった場面でも必要とされることが多く、ボランティア活動を念頭に置いて取得される人もいるようです。
いかがでしたか?本記事ではフォークリフト免許の取得方法や費用、さらに無資格運転を行った場合の罰則についてご紹介しました。
資格の中でも費用が安くて給付制度も設けられていたり、最大積載量が1トン未満か1トン以上なのか、または所有している免許の有無で受講時間が大きく変わるなど、わかりやすそうで実はわかりにくいとも言えます。
公道走行にはフォークリフトの大きさに応じて小型特殊自動車免許、または大型自動車免許が必要になりますのでご注意ください。
よくある質問
■私有地でのフォークリフト作業、免許は必要?
公道での運転をしなければ免許は必要ないでしょと考えがちですが、フォークリフトの作業は、私有地における作業であっても労働安全衛生法によって教育を受けたものしか行なってはいけないとされています。フォークリフトの積載荷重に応じて、適切な教育を受けているか資格を持っている人でなければ、作業はできません。
■フォークリフト免許は更新がないって本当?
フォークリフト作業に関する特別教育修了証や運転技能講習修了証には有効期限がないので、更新する必要はありません。ただし、労働安全衛生法によって、概ね5年に1回、安全衛生教育を改めて受講する義務が定められています。
■フォークリフト免許があれば公道でも運転できるの?
フォークリフト作業に関する特別教育修了証や運転技能講習修了証は、フォークリフトでの作業が可能となるだけであって、公道でのフォークリフトの運転ができるようになるわけではありません。フォークリフトのサイズや最高速度に応じて、大型特殊自動車免許などが別途必要になります。