意外と活躍場所がたくさん「フォークリフト」
「フォークリフト」といえば、鮮やかなボディカラーと前方に突き出した「フォーク(つめ)」が特徴的で、乗り物に詳しくない方でもすぐにイメージが浮かぶのではないかと思います。
人力では到底持ち上げられないような重さの荷物を、自分の車両高さよりも軽々と持ち上げることのできるフォークリフトは、大小さまざまなサイズがあり、いろんな場所で活躍しています。
主に工場や倉庫のイメージの強いフォークリフトではありますが、幅広い場所で働いているフォークリフト。実は作業には免許が必要ということは、あまり知られていないことかもしれませんね。
この記事では、フォークリフトの種類や作業時に必要となる資格について、詳しくご説明していきます。
フォークリフトの種類と特徴について
《画像提供:Response》《画像:三菱ロジスネクスト》三菱ロジスネクスト・アレシス
「フォークリフト」といっても、用途や使用場所に応じてたくさんの種類があります。ここでは6種類のフォークリフトについて解説します。
■カウンターバランスフォークリフト
「カウンターバランスフォークリフト」は、車両前方にフォークを持ち、作業者が座って乗るタイプのフォークリフトで、「カウンターフォークリフト」とも呼ばれます。あまりフォークリフトの種類を知らない人であれば、真っ先に思い浮かぶのはこのカウンターバランスフォークリフトの形でしょう。
「カウンター」とは逆や反対、「バランス」とは釣り合いという意味で、このフォークリフトの構造を伝えています。動力がエンジンの場合、純粋に重りの役割を果たす鉄がバランスに用いられますが、バッテリーが動力の場合、そのバッテリーが重りの役割を果たします。
カウンターバランスフォークリフトのメリットは、リーチタイプと比べて、横倒しに強く、安定しているところです。走行速度やフォーク上昇速度も速く、作業効率や安全性に優れています。一方、バランスの関係で全長が長い構造のため、回転半径が大きく、狭い倉庫などでの作業には難点があります。
■マルチディレクショナルフォークリフト
「マルチディレクショナルフォークリフト」は、狭い倉庫などで活躍する、前後・左右に走行可能なフォークリフトです。
通常のフォークリフトとは違って左右にも走行できるので、進行方向を切り替える必要がなく、限られたスペースにおける荷役作業に力を発揮します。
■リーチフォークリフト
「リーチフォークリフト」は、停まったままの状態でもフォークを前後に動かせる特徴を持つフォークリフトです。
リーチフォークリフトの多くは背が高く、作業者が立ったまま運転するタイプで、バッテリーにより駆動します。そのため十分な換気の難しい室内や狭い場所での使用に向いていますが、立ったままなので長時間の作業は負担になるでしょう。
■ウォーキーフォークリフト
「ウォーキーフォークリフト」は、車体に乗るタイプではなく、作業者が歩きながら操作するフォークリフトです。歩きながら操作するので移動速度は遅くなりますが、手軽に操作できる利便性を持っています。
作業者が歩くタイプとはいえ、ウォーキーフォークリフトの取り扱いには運転資格が必要です。後述しますが、最大荷重が1トン以上なら「フォークリフト技能講習」が、最大荷重が1トン未満なら「フォークリフト特別教育」の修了が必要になります。
■サイドフォークリフト
「サイドフォークリフト」は名前のとおり、車体の横部分にフォークがついたタイプのフォークリフトで、木材やパイプ管といった長尺物を運ぶのに適したリフトです。
ただし、フォークが車体の横についている構造上、フォークの位置がわかりづらく、荷役操作の修練にはある程度の時間が必要です。
■オーダーピッキングトラック
「オーダーピッキングトラック」は、「ピッキングフォークリフト」とも呼ばれ、フォークなどの荷役装置と一緒に運転台が移動するタイプのフォークリフトです。
小口の荷物を扱う現場に適しており、ピッキング作業に用いられることが多いので、この名前になりました。
フォークリフトで作業するには免許が必要!
物流倉庫や、港湾業務など様々な場所で使用されているフォークリフト。その運転には専用資格が必要です。本記事ではフォークリフト運転資格の取得方法や費用・時間数、さらに無資格でフォークリフトの運転をした場合の罰則や罰金についてご紹介します。
※本記事は、事業所内でのフォークリフト運転に必要なフォークリフト免許について記載しています。フォークリフトでの公道走行はフォークリフトの大きさに応じて、小型特殊自動車免許または大型自動車免許が必要です。
■フォークリフトの免許、重さ別に種類があります
一口に「フォークリフト免許」といっても、フォークリフトの運転に必要な資格及び資格取得方法は、「フォークリフトで運搬できる荷物の重さ(最大積載荷重)が、1トン以上 or 未満か?」によって2つに分けられます。
まずは2つのフォークリフト免許の全体的な違いをご紹介します。
2種類のフォークリフト免許の違いは?
最大積載荷重量が1トンか1トン未満かによってフォークリフト免許の取得方法について違いがあることは上述のとおりですが、本項では他に何が違うのかをご紹介します。
最大積載荷重1トン未満 | 最大積載荷重1トン以上 | |
---|---|---|
名称 | フォークリフトの運転の業務に係る特別教育 | フォークリフト運転技能講習 |
講習 | あり | あり |
修了試験 | なし | あり |
上記の表をご覧ください。
■「最大積載荷重1トン未満のフォークリフト」
最大積載荷重1トン未満のフォークリフトを運転するためには、「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」を受ける必要があります。この特別教育は6時間の学科と6時間の実技で構成されていて、試験はありません。特別教育受講後、最大積載荷重1トン未満のフォークリフトに限り運転が可能となります。
■「最大積載荷重1トン以上のフォークリフト」
最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転する方は、「フォークリフト運転技能講習」を受講してなおかつ修了する(試験に合格する)必要があります。修了した際に「フォークリフト運転技能講習修了証」が発行されます。
■フォークリフト免許は自動車免許と何が違う?
自動車免許とフォークリフトの免許は全く異なるモノと考えましょう。なぜなら管轄する省とそれぞれに適用されている法律が異なるからです。下記の表のように、自動車免許は国土交通省と道路交通法、フォークリフトの免許は厚生労働省と労働安全衛生法で管理・規定されています。
免許種類 | 自動車免許 | フォークリフト免許 |
---|---|---|
管轄する省 | 国土交通省 | 厚生労働省 |
免許に関する規定 | 道路交通法 | 労働安全衛生法 |
先ほど紹介した最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転するために必要な「フォークリフト運転技能講習」は、各都道府県労働局に登録されている教育機関で実施されています。この労働局が厚生労働省の地方組織に該当するのです。
運転免許取得のために通う自動車教習所は道路交通法第九十九条に基づいて各都道府県の公安委員会によって指定されています。
発行されるのは「免許証」ではなく「修了証」
管轄する省の違いは運転資格の証明書類にもあらわれています。フォークリフト免許と便宜上よばれるフォークリフトの運転資格を得たときに渡されるモノは免許証ではなく「修了証」なのです。
最大積載荷重1トン未満のフォークリフトであれば特別教育修了証を、最大積載荷重1トン以上のフォークリフトであれば技能講習修了証が発行されます。
中でも技能講習修了証に関しては、フォークリフト運転の際に常備することが義務付けられています。携帯する義務については自動車運転免許と同じですね。
受験資格、費用、受験場所… フォークリフト免許のギモンを解消!
■フォークリフト免許(最大積載荷重1トン未満)取得の詳細まとめ
こちらでは、最大積載荷重1トン未満のフォークリフトの運転に必要な特別教育についてご紹介します。
【受験資格は?】
「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」は18歳以上であれば自動車の運転免許証の有無や、その他の資格保有の条件など無く、誰でも受けることが出来ます。
【受験場所は?】
特別教育は、様々な事業者が提供しています。
例えば、コマツなどの大手フォークリフトメーカーや、一般社団法人などで特別教育を提供しています。
【受験費用は?】
フォークリフトの特別教育に必要な費用は、主にテキスト代金を合わせて1万5千円前後です。
【科目内容と時間目安は?】
特別教育は学科科目と実技科目に分かれており、学科科目6時間、実技科目6時間を修了することが必要です。
特別教育は最短で2日ほどで修了することが可能で、これらを修了すると特別教育修了証が発行され1トン未満のフォークリフトを事業所内で運転することが可能になります。
特別教育の学科科目と実技科目の内訳
特別教育の学科科目6時間と実技科目6時間の内訳は下記の通りです。フォークリフトの基本構造や動かし方に加え、運転するにあたって力学に関する知識が必要であることもわかります。実技については走行と荷役の2項目のみで至ってシンプルです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 2時間 |
荷役に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識 | 2時間 |
運転に必要な力学に関する知識 | 1時間 |
関係法令 | 1時間 |
科目 | 時間 |
---|---|
走行の操作 | 4時間 |
荷役の操作 | 2時間 |
■フォークリフト免許(最大積載荷重1トン以上)取得の詳細まとめ
【受験資格は?】
最大積載荷重1トン以上のフォークリフト免許取得にも年齢は関係ありません。受講者の年層は30代や40代が多いですが、受講するだけであれば年齢関係なく誰でも挑戦することができます。
ただし、フォークリフトを使って業務を行うためには18歳以上であることが条件となっているのです。18歳未満だと免許を取得できても業務で使えるわけではないということを覚えておきましょう。
【受験場所は?】
各都道府県の労働局に登録された教育機関で受講することが可能です。
自動車学校にコースが設定されていたり、クレーン免許などと合わせて専用の学校が併設されている場合も多いですし、地域によってはフォークリフトメーカーが講習を実施している場合もあります。
【受験費用は?】
フォークリフトの運転技能講習に必要な費用は、現在所持している免許によって異なり、約2万〜4万円前後です。まとめると下記の通りとなります。
所持免許 | 費用相場 |
---|---|
特になし | 45,000円前後 |
自動車免許、大型特殊自動車(限定)免許所持者 | 40,000円前後 |
大型特殊自動車免許(限定除く)、 自動車免許または大型特殊自動車(限定)免許所持者で 1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後3ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 15,000円前後 |
所持免許がない方は約4万5000円前後の費用がかかりますが、自動車免許や大型特殊(限定)免許を所持している方は4万円前後の費用がかかります。
さらに大型特殊免許または自動車免許を所持してる方で、1トン未満のフォークリフトの運転経験が3ヶ月以上ある方は1万5千円前後の費用で済みます。
※上記の方は、特別教育修了証のコピー、事業主による3ヶ月の運転が照明できる書類、機械の点検状況を示す特定自主検査記録の提出が必要です。
教育訓練給付制度の利用について
雇用の安定や再就職促進を目的とする雇用保険給付制度「教育訓練給付制度」があります。
条件を満たす在職者・離職者がフォークリフト免許(最大積載荷重1トン以上)の取得のために運転技能講習を受講すれば、講習費用の補助を受けることができるというものです。厚生労働大臣が指定する教育訓練に該当していることも条件となります。
教育訓練給付制度を利用することで、フォークリフト免許の運転技能講習にかかった費用の最大20%が給付されます。
フォークリフト免許の運転技能講習の費用は最大約45,000円ほどの費用がかかります。その20%つまり9000円が給付されるので、実質約36,000円にて受講することが可能となるのです。
また、教育訓練給付制度は教育訓練費用の20%が給付される仕組みですが4000円以下の費用は給付されませんのでご注意ください。教育訓練給付制度の対象者かどうかに関しては下記のURLで確認することができます。