フォークリフト免許
物流倉庫や、港湾業務など様々な場所で使用されているフォークリフト。その運転には専用資格が必要です。本記事ではフォークリフト運転資格の取得方法や費用・時間数、さらに無資格でフォークリフトの運転をした場合の罰則や罰金についてご紹介します。

※本記事は、事業所内でのフォークリフト運転に必要なフォークリフト免許について記載しています。フォークリフトでの公道走行はフォークリフトの大きさに応じて、小型特殊自動車免許または大型自動車免許が必要です。
2種類のフォークリフトの免許について
一口に「フォークリフト免許」といっても、フォークリフトの運転に必要な資格及び資格取得方法は、「フォークリフトで運搬できる荷物の重さ(最大積載荷重)が、1トン以上 or 未満か?」によって2つに分けられます。
まずは2つのフォークリフト免許の全体的な違いをご紹介します。
■2種類のフォークリフト免許の違いは?

最大積載荷重量が1トンか1トン未満かによってフォークリフト免許の取得方法について違いがあることは上述のとおりですが、本項では他に何が違うのかをご紹介します。
最大積載荷重1トン未満 | 最大積載荷重1トン以上 | |
---|---|---|
名称 | フォークリフトの運転の業務に係る特別教育 | フォークリフト運転技能講習 |
講習 | あり | あり |
修了試験 | なし | あり |
上記の表をご覧ください。
■「最大積載荷重1トン未満のフォークリフト」
最大積載荷重1トン未満のフォークリフトを運転するためには、「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」を受ける必要があります。この特別教育は6時間の学科と6時間の実技で構成されていて、試験はありません。特別教育受講後、最大積載荷重1トン未満のフォークリフトに限り運転が可能となります。
■「最大積載荷重1トン以上のフォークリフト」
最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転する方は、「フォークリフト運転技能講習」を受講してなおかつ修了する(試験に合格する)必要があります。修了した際に「フォークリフト運転技能講習修了証」が発行されます。
■フォークリフト免許は自動車免許と何が違う?
自動車免許とフォークリフトの免許は全く異なるモノと考えましょう。なぜなら管轄する省とそれぞれに適用されている法律が異なるからです。下記の表のように、自動車免許は国土交通省と道路交通法、フォークリフトの免許は厚生労働省と労働安全衛生法で管理・規定されています。
免許種類 | 自動車免許 | フォークリフト免許 |
---|---|---|
管轄する省 | 国土交通省 | 厚生労働省 |
免許に関する規定 | 道路交通法 | 労働安全衛生法 |
先ほど紹介した最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転するために必要な「フォークリフト運転技能講習」は、各都道府県労働局に登録されている教育機関で実施されています。この労働局が厚生労働省の地方組織に該当するのです。
運転免許取得のために通う自動車教習所は道路交通法第九十九条に基づいて各都道府県の公安委員会によって指定されています。
発行されるのは「免許証」ではなく「修了証」
管轄する省の違いは運転資格の証明書類にもあらわれています。フォークリフト免許と便宜上よばれるフォークリフトの運転資格を得たときに渡されるモノは免許証ではなく「修了証」なのです。
最大積載荷重1トン未満のフォークリフトであれば特別教育修了証を、最大積載荷重1トン以上のフォークリフトであれば技能講習修了証が発行されます。
中でも技能講習修了証に関しては、フォークリフト運転の際に常備することが義務付けられています。携帯する義務については自動車運転免許と同じですね。
特別教育修了証(最大積載荷重1トン未満)の取得方法と費用は?
こちらでは、最大積載荷重1トン未満のフォークリフトの運転に必要な特別教育についてご紹介します。
■【受験資格】フォークリフト免許(最大積載荷重1トン未満)
「フォークリフトの運転の業務に係る特別教育」は18歳以上であれば自動車の運転免許証の有無や、その他の資格保有の条件など無く、誰でも受けることが出来ます。
■【どこで受ける? 】フォークリフト免許(最大積載荷重1トン未満)
特別教育は、様々な事業者が提供しています。
例えば、コマツなどの大手フォークリフトメーカーや、一般社団法人などで特別教育を提供しています。
■【費用】フォークリフト免許(最大積載荷重1トン未満)

フォークリフトの特別教育に必要な費用は、主にテキスト代金を合わせて1万5千円前後です。
■【科目内容と時間】フォークリフト免許(最大積載荷重1トン未満)
特別教育は学科科目と実技科目に分かれており、学科科目6時間、実技科目6時間を修了することが必要です。
特別教育は最短で2日ほどで修了することが可能で、これらを修了すると特別教育修了証が発行され1トン未満のフォークリフトを事業所内で運転することが可能になります。
特別教育の学科科目と実技科目の内訳
特別教育の学科科目6時間と実技科目6時間の内訳は下記の通りです。フォークリフトの基本構造や動かし方に加え、運転するにあたって力学に関する知識が必要であることもわかります。実技については走行と荷役の2項目のみで至ってシンプルです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 2時間 |
荷役に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識 | 2時間 |
運転に必要な力学に関する知識 | 1時間 |
関係法令 | 1時間 |
科目 | 時間 |
---|---|
走行の操作 | 4時間 |
荷役の操作 | 2時間 |
フォークリフト免許(最大積載荷重1トン以上)の取得方法と費用
■受講するだけなら年齢は関係なし
最大積載荷重1トン以上のフォークリフト免許取得にも年齢は関係ありません。受講者の年層は30代や40代が多いですが、受講するだけであれば年齢関係なく誰でも挑戦することができます。
ただし、フォークリフトを使って業務を行うためには18歳以上であることが条件となっているのです。18歳未満だと免許を取得できても業務で使えるわけではないということを覚えておきましょう。
■受講費用

フォークリフトの運転技能講習に必要な費用は、現在所持している免許によって異なり、約2万〜4万円前後です。まとめると下記の通りとなります。
所持免許 | 費用相場 |
---|---|
特になし | 45,000円前後 |
自動車免許、大型特殊自動車(限定)免許所持者 | 40,000円前後 |
大型特殊自動車免許(限定除く)、 自動車免許または大型特殊自動車(限定)免許所持者で 1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後3ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 15,000円前後 |
所持免許がない方は約4万5000円前後の費用がかかりますが、自動車免許や大型特殊(限定)免許を所持している方は4万円前後の費用がかかります。
さらに大型特殊免許または自動車免許を所持してる方で、1トン未満のフォークリフトの運転経験が3ヶ月以上ある方は1万5千円前後の費用で済みます。
※上記の方は、特別教育修了証のコピー、事業主による3ヶ月の運転が照明できる書類、機械の点検状況を示す特定自主検査記録の提出が必要です。
教育訓練給付制度の利用について
雇用の安定や再就職促進を目的とする雇用保険給付制度「教育訓練給付制度」があります。
条件を満たす在職者・離職者がフォークリフト免許(最大積載荷重1トン以上)の取得のために運転技能講習を受講すれば、講習費用の補助を受けることができるというものです。厚生労働大臣が指定する教育訓練に該当していることも条件となります。

教育訓練給付制度を利用することで、フォークリフト免許の運転技能講習にかかった費用の最大20%が給付されます。
フォークリフト免許の運転技能講習の費用は最大約45,000円ほどの費用がかかります。その20%つまり9000円が給付されるので、実質約36,000円にて受講することが可能となるのです。
また、教育訓練給付制度は教育訓練費用の20%が給付される仕組みですが4000円以下の費用は給付されませんのでご注意ください。教育訓練給付制度の対象者かどうかに関しては下記のURLで確認することができます。
■科目内容と時間

運転技能講習は学科科目と実技科目に分かれており、基本的には学科科目11時間、実技科目24時間の合計35時間を修了することが必要です。
所持している免許により運転技能講習の科目が免除になるため、最短で2日最長でも5日で取得することができます。
所持免許 | 講習時間 |
---|---|
特になし | 35時間 |
自動車免許、大型特殊自動車(限定)免許所持者 | 31時間 |
1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後6ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 15 時間 |
大型特殊自動車免許(限定除く)、 自動車免許または大型特殊自動車(限定)免許所持者で 1トン未満のフォークリフトの特別教育受講後3ヶ月以上の運転経験者 ※特別教育修了証のコピー 事業主による3ヶ月以上の運転経験が証明できるもの 特定自主検査記録表の添付が必要 | 11時間 |
運転技能講習 学科科目の内訳
運転技能講習の学科科目11時間の内訳は下記の通りです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 4時間 |
荷役に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識 | 4時間 |
運転に必要な力学に関する知識 | 2時間 |
関係法令 | 1時間 |
運転技能講習 実技科目の内訳
運転技能講習の実技科目24時間の内訳は下記の通りです。
科目 | 時間 |
---|---|
走行の操作 | 20時間 |
荷役の操作 | 4時間 |
特別教育の実技科目の合計6時間に対して4倍の24時間をかけて実技を学びます。実技科目では実際に木製パレットなどを用いてより業務に近い内容を学びます。
■【試験内容と採点基準】フォークリフト免許(最大積載荷重1トン以上)
フォークリフトの運転技能講習の学科試験と実技試験はどのような問題や採点基準があるかをご紹介します。
運転技能講習 学科試験
フォークリフトの運転技能講習の学科試験の採点方法や合格基準点は試験を受ける機関によって異なる場合があります。下記はあくまでも学科試験の配点と採点基準の参考の一例です。
《学科試験 配点の参考例》
フォークリフトの走行に関する装置の構造および取扱いの方法に関する知識(10問 配点30点)
フォークリフトの荷役に関する装置の構造および取扱いの方法に関する知識 (10問 配点30点)
フォークリフトの運転に必要な力学に関する知識(10問 配点20点)
法および規則中のフォークリフトについての規則に関する知識(10問 配点20点)
《学科試験 採点基準の参考例》
上記の40問100点満点中
それぞれの項目で
走行…30点中12点以上
荷役…30点中18点以上
力学…20点中8点以上
法とフォークリフトの規則…20点中8点以上
で合格と言われています。
運転技能講習 実技試験の内容
フォークリフトの運転技能講習の実技の採点方法や合格基準点も、試験を受ける機関によって異なる場合もありますが、基本的には下記の例のような実技試験の内容と採点基準です。減点方式となっている点は、運転免許と同じですね。
■実技試験の内容
・乗車前の点検
・乗車
・発進
・走行
■実技試験 採点基準
持ち点100に対する減点方式。
最終的に70点以上残っていれば合格。
フォークリフトの無資格運転の罰則・罰金

フォークリフトの運転資格がないまま、事業所内や私有地でフォークリフトを運転した場合には罰則や罰金が発生します。
何故ならフォークリフトの運転は労働安全衛生法第61条において、資格を持つ人しか運転することができないと定められているからです。第61条の内容は下記の通り。