キャブレターとは?仕組みを説明
キャプレターはエンジンに接続されていて、ガソリンと空気を混ぜて気化させる事で混合気を作り、エンジン内部に送りこむ燃料供給装置の名前です。
通常、エンジンはガソリンと空気を走行状況(低速〜高速)に応じて最適な量を混ぜ合わせて気化させることでパワーを生み出すのですが、その作業を運転車自らアナログ制御するタイプのものが「キャプレター」です。
ちなみに、最近はこのアナログ作業をデジタルで制御する「インジェクション」という方式が主流になってきています。
キャブレターの簡単な仕組みの説明ですが、キャブレターは、アクセル・スロットルを開ける際の負圧(気圧の低下)を利用して、ジェットと呼ばれる細いノズルを通して燃料タンクからガソリンを吸い上げます。
その途中でガソリンと空気が混ざり、混合気となりエンジン内部に供給されるという仕組みになっています。
運転者がスロットルを開く度合いというのは、走行スピードによって変わってきますので、その都度、発生する負圧が変わり、吸い込まれる空気の量とガソリンの量も変わるのでスピードが変化するという構造です。その開く度合いによって、適宜使用されるノズルのタイプも変わってきます。
全開時のメインジェット、安定走行時のニードルジェット、アイドリング用のスロージェットと、その時々に合わせたジェットを使い分けるようになっています。
■過去のもので今は使われていない?
このキャプレターですが、現在では過去のものとなりつつあり、使用される事が少なくなってきました。
というのも、キャプレターが走行場面に応じて適宜アナログで調整しなくてはいけないということや、環境変化(気温や湿度といった天候要因)によって燃料生成がうまくいかず、エンジンの調子を崩してしまう事も少なくないからです。
その代わりとして登場してきたのがインジェクション方式です。
スズキ デュアルジェットエンジンのインジェクターと燃焼室
キャプレター方式がアナログな手法をとっているのに対し、機器の各所に設置されているセンサーから微細な情報を汲み取り、その情報をコンピュータ解析することによって、その場面において最も適切とされる燃料の混合気を供給するというシステムになっています。
昨今問題視されている排気ガスの問題や、エンジンの燃費の問題などによって、キャブレター方式よりもインジェクション方式を取り入れる車やバイクがほとんどになってきているのが現状です。
この点は、使用するユーザー層によって変わってくるのですが、通勤手段や高頻度で使用するという方にとっては、常に安定した走行が出来るという観点でインジェクション方式が良い選択です。
ただ、一方で趣味としてのバイクであったり、自分で調整して動かすという行為そのものに愛着ある方にとっては、キャブレター方式を好む方もいらっしゃいます。
使用目的などに合わせて使用するのがより良い選択になります。
キャブレターの調整とセッティング
ここからは、キャブレターの調整方法やセッティングを行う大切さに関して解説していきます。
実際にマシンに乗る方にとって、調整方法を正しく理解し、セッティングの難しさをしっかりと把握しておくことが長く乗り続ける為の秘訣になります。
■調整方法は?
キャブレターの調整を行う際には、以下のやり方で行う事ができます。調整の際には、事前に工具を用意してください。
【必要な工具】
・キャブレター専用の工具(マイナスドライバーでも可)
・バイスグリップ(ペンチでも可)
・油を拭き取るための紙タオル
・消火器具
※調整の際には、エンジン付近での作業になりますので、火災には十分気をつけてください。
①エアフィルターの取り外し
キャブレターを使用している大半の車は、キャブレターの真上にエアフィルターが据え付けられています。
ですので、エアフィルターを取り外した後にキャブレターを露出させて調整をするのが基本的な流れとなります。エンジンが完全に停止していることを確認してからボンネットを開け、エアフィルターを探し、ユニットごと取り外していきます。
※車種やエンジンの種類によっては、エアフィルターの取り付け位置が異なる事がありますので、事前に車の修理ガイド(マニュアル等)を参照してから実施してください。
②キャブレターの調整ねじを確認
空気とガソリンの混ざる量の調整を行うためのねじが、キャブレターの前に2つあるかと思います。
通常であれば、平ねじタイプのねじですので、ドライバーで回す事が出来ますが、特殊タイプのクアドラジェット(ゼネラルモーターズ製の車には基本装着)などの場合には、特殊ねじになっていますので、専用工具が必要です。
これ以外のタイプもありますので、工具を用いての調整を行います。
③エンジンを始動し、通常運転温度での調整を実施
エンジンを始動させて、適正な走行温度になっていることを確認してから、必要な調整をエンジン音を確認しながら行います。
混合気が薄いままでエンジン稼動をすると、高回転時にノッキングを起こしますので、その際には燃料比を上げる調整を行います。その反対に、混合気が濃すぎてもノッキングが起きますが、薄い際と比較して少し匂いが気になってきますので、その場合は燃料比を下げる調整を行います。
④適切な混合比になるよう、両方のねじを回して混合比を調整
キャブレターの調整を行う際には、ねじを同量ずつ回して適当なポイントを見つけます。エンジンの混合気が薄いか濃いかに関わらず、はじめに両方のねじを最も薄い状態までもっていった後に少しずつ戻していきます。
混合気の調整は正解が見つからないものです。エンジン音を調整の都度確認し、ねじをゆっくり元に戻しつつ、スムーズにエンジンが回転するよう調整します。エンジン音がしっくりとくるまで調整を続けましょう。
⑤元に戻す
キャブレターの調整が終わったら、エアフィルターを元に戻して、調整完了です。
キャブレターをベストな状態に調整するには、前提としてエンジンの状態を正確に把握する高い観察力とエンジンの知識が必要です。
経験の無い方や自信の無い方は、カーショップやディーラーなどで調整してもらうようにするのがベストといえるでしょう。
■セッティングの大切さ
適切なセッティングを行うことで、結果としてエンジンの寿命を延ばすことが出来ます。
ですので、エンジンが思っている通りの動きをしない場合には混合比を調整し、正しいアイドリング回転設定をして、エンジンにストレスがかかり過ぎないようにしましょう。
このセッティングが適切に出来ないと、燃費性能も落ちてしまいますし、自分の大事なマシンに大きなダメージを与えてしまいかねません。
運転時に適切なセッティングの判断が出来るようになるには、経験を重ねることでしか身につきません。自分の理想の運転が実現出来るまでなんども試行錯誤を重ねていきましょう。
オーバーホールはどうやるの?
愛車を長期間運転し続けていく中で、「アクセルが少し重いな」「なんだか、燃料調整がうまくいかない」という事態が高頻度で発生するようになったら、オーバーホールをしましょう。
ただ、このオーバーホール作業は、ガソリンを取り扱うので、火気を使用していない空調がしっかりとしている環境を整備して、安全対策を事前に講じてください。
オーバーホールの際には、キャプレターを分解し、クリーナーなどで洗浄するとともに、消耗部品を新品に交換することでマシンを理想の走行性能に戻します。
燃料が固形化して取りづらくなっていたり、ジェットなどの真鍮部品にサビが出ている事もあるので、専用の洗浄液や汚れ落としなどを利用して綺麗にしていきましょう。
キャブレターのオーバーホールで注意すべき点は、空気と燃料の通り道であるジェットが綺麗になっているかという点です。
外側の汚れが取れていても、ガソリンと空気の通る内部の道に汚れが溜まってしまっていれば、高性能な状態に戻すことが出来ませんので注意してください。
自分でできない場合は、カーショップやディーラーに依頼す事ももちろん可能です。
マシンの状態にもよりますが、相場としては、およそ20,000円~30,000円+部品代でオーバーホールが可能です。事前に調べて工賃を確認したり、予約をしてからお店に行くようにしてください。
まとめ
キャブレターの仕組みやセッティングに関して簡単にまとめてきました。最近では表舞台から影を潜めてきているキャブレターですが、まだまだライダーの中には根強い人気があります。
昨今登場しているインジェクションの良さというはもちろんあるものの、自分でマシンを操るという実感が欲しいという場合出れば、今後もまだまだ現役で活躍する機会は多いはずです。
仕組みをしっかりと理解して、長く愛車と一緒にいられるよう、大事に乗り続けてください。