脱輪とは?
そもそも脱輪とはどのような状態のことをいうのでしょうか。定義は2つあります。ひとつは単純にタイヤが車体から外れてしまうことです。これは滅多に見られません。もう一方の一般的な脱輪の定義は、走行中にタイヤが側溝などにはまってしまうことをいいます。以下では、まず先に一般的な定義の方の脱輪を解説をしていきます。もう一方はのちにご説明します。
脱輪した(タイヤが側溝などにハマった)時の対処法
もし脱輪してしまったらどうすればいいのでしょうか。いくつかのパターンがあるので、紹介していきます。
■自力で脱出する
車種が4WD車やFF車である場合、自力で脱出できる確率は高くなります。これらの車にはパワーがあるので、うまくタイヤの位置を調整し、アクセルを踏み込めば脱出できます。また有効なのが、ジャッキを使う手段です。ジャッキはスノータイヤを交換する際に使いますが、脱輪時にも利用可能です。タイヤを持ち上げ、地面との間にしっかりとした板を挟み込みます。こうすることで脱輪を解消できます。あとはアクセルを徐々に踏み込んで、車を前進させていきましょう。
■人の手を借りる
これは周りの人と協力して車を持ち上げることを意味します。軽い車ならこれで大丈夫なことがあります。車の全ての部分を持ち上げる必要はなく、要点となる部分だけ持ち上げれば十分です。また持ち上げるのが難しければ、牽引ロープを使って、他の車に引っ張ってもらいましょう。これは他の車と一緒にドライブをしているときに有効な手段です。ロープで引っ張っても大丈夫な車なのかどうかだけ確認してください。
自力や人の手を借りることで脱輪状態を解消することもできますが、ひとつ覚えておいてほしいのが「どちらも素人のすることなので失敗することが多い」という点です。「抜け出せたらラッキー」くらいに思っておいたほうがいいでしょう。
■プロに依頼する
ロードサービスを利用すれば、脱輪状態を解消できる確率がぐっと高まります。任意保険の特典としてロードサービスがついているところなら、無料で対応してくれることもあります。しかしその場合、ロードサービスはあくまで特典ですので、手厚いサービスが受けられないこともあります。またある程度のところまでは無料で、それ以上のサービスは有料になるパターンも見られます。例えば「落ちた距離が1メートル以内であれば無料だが、それ以上は有料」などです。任意保険の対象になっている車しかサービスを受けられないのも特徴です。
任意保険の特典以外にも、ロードサービスを専門にしている会社もありますので、より安心したい人はそちらに申し込むのも良いでしょう。ロードサービスを専門にしている会社でしたら、申込者に対してサービスが提供されることが多いです。任意保険の特典の場合と異なり、申込者が利用している車ならどれでも対応してくれることがあります。またサービスの範囲も広いです。費用はかかりますが、検討してもいいのではないでしょうか。詳しい内容は各会社に問い合わせをして確認しましょう。
■出した後は、車にダメージがないか確認
脱出後は、必ず車に異常がないか確かめてください。もしかしたら脱出する際、下回りをぶつけてオイルや冷却水が漏れているかもしれません。またパーツが破損している可能性もあります。特にタイヤに引っかき傷のようなものはないか、ホイールは歪んでいないかを入念にチェックしましょう。一番良いのは近くの整備工場へ持って行くことです。重大な事故につながるかも知れないので、ここに関しては特に抜かりなく確認しましょう。
脱輪した時の罰金などは?
脱輪した際は、周囲に損害が発生してしまうことがあります。決して「迷惑がかかるのは自分だけ」ではないのです。もし脱輪して周囲に損害を与えてしまった場合、罰金は発生するのでしょうか。
■物損事故であれば罰金なし?
物損事故扱いになると、罰金は発生しませんが、さまざまな不利益が生じます。
物損事故では刑事処分や行政処分を受けない
脱輪してしまった際に周囲に損害を与えた場合、物損事故扱いになります。物損事故扱いでは、刑事処分や行政処分はありません。つまり、違反点数をつけられることはないのです。しかし、もし任意保険に入っていなければ、多額の費用が発生することがあります。刑事罰はありませんが、被害者に対して損害賠償を支払う義務が生じるからです。
自賠責保険が使えない
物損事故扱いになると、自賠責保険が適用できません。人に対する事故ではないからです。任意保険に入っていないと、損害賠償は自腹で払うことになります。ときには賠償額が1億円を超えることもありますので、対物保険の補償額は無制限にしておいたほうが良いでしょう。
■踏切内で脱輪したらどうなる?
踏切内で脱輪し、電車を遅延させてしまった場合はどうなるのでしょうか。実は多額の賠償が発生する可能性があります。対物賠償責任保険が適用されないことが多いからです。対物賠償責任保険は「他人の財物を損壊させる」ことが絶対条件となります。踏切内で立ち往生しただけでは、何も損壊していません。なので、対物賠償責任保険が働かないことがあるのです。緊急停止ボタンを押してトラブルを伝えたのにも関わらず、損害賠償を請求してくるかはわかりませんが、それは鉄道会社の裁量に委ねられているというのが実情です。十分に気を付けて踏切を渡ってください。
仮免での脱輪は「タイヤがコースから外れてしまうこと」
自動車教習所では側溝はありません。しかし、脱輪と呼ばれる現象はあります。教習所においてそれは「タイヤがコースから外れてしまうこと」をいいます。脱輪はS字コースやクランクで起こりやすく、対応を間違えてしまうと検定が中止になることがあります。ではどの程度の脱輪を起こすと検定が中止になってしまうのでしょうか。
■大中小などで対応は変わる?
教習所での脱輪の程度には3種類あります。それぞれの度合いによって減点のされ方が変わります。
脱輪(小)の場合
脱輪(小)と判断されるのは、縁石にタイヤを軽く擦りつけた場合です。教習所場内では5点、路上では10点の減点となります。段差に乗り上げなくても減点されます。
脱輪(中) の場合
脱輪(中)は、タイヤが縁石に乗り上がり、停止してしまっている状態をいいます。20点の減点となりますが、これだけで検定は中止になりません。冷静になって一旦後ろに下がりましょう。
脱輪(大) の場合
脱輪(大)は、タイヤがコースを出て、そのまま前進してしまった場合に認定されます。これをしてしまうと、その時点で検定は中止になります。縁石に乗り上げてしまった場合は、一旦停止することを忘れないでください。
■卒検で脱輪は即失格?
卒検で一度脱輪しても、その後冷静に対処することができれば、即中止にはなりにくいです。冷静に対応しましょう。しかし点数は大きく引かれているので、脱輪してしまったあとは慎重に運転しましょう。
落輪はときに大きな事故につながる?
脱輪には2つの定義があることは前述しました。タイヤが側溝にはまってしまうという意味と、タイヤ自体が車体から離れてしまうという意味です。ここでは後者、落輪の危険性について解説していきます。
■過去にあった事故例
一番多い事故例はホイール・ボルトの折損による車輪の脱落です。この事故は平成15年から平成29年の間に523件発生しています。平成20年にはホイール・ボルトの折損により車体から外れたタイヤが、バスに衝突する事故が起こりました。この事故で運転手が死亡しています。 事故の発生時期は夏と冬に集中しています。夏用タイヤと冬用タイヤを交換する時期です。タイヤを脱着したあとの短期間で事故が発生しています。 この事故の原因は、ホイール・ナットの締付力が弱い、一定の距離を走行後に増締をしていない、日常点検整備で確認をしていない、スチールホイールにアルミホイール用のボルトを設置するなどの設置などが挙げられます。
■責任の所在
タイヤが外れてしまった場合、それは誰の責任になるのでしょうか。 整備工場で作業を行った後に事故が起こった場合は、整備工場に責任があります。しかし、もし自分の手でタイヤ交換をした場合は、自己責任ということになります。自分で交換作業をする際には、十分気をつけましょう。
落輪事故を防ぐために
事故を防ぐためには日頃の点検が必要です。特に次の4点に注意しましょう。
■確実に締めつけられているか
タイヤにボルトがしっかりと締め付けられているか確認しましょう。締め付け方法にはJIS方式とISO方式があります。必ず規定のトルクで作業をしてください。
■増締をしよう
ボルトを装着後、初期なじみによってホイール・ナットの締付力が弱くなります。50km~100kmごとに増締をして、調整をしておきましょう。
■毎日点検しよう
1日1回はボルトやナットを触って、点検をしましょう。何か異変を感じたら整備工場に持っていきます。
■ホイールの履き替え
ホイールの履き替えをする際には、適切なボルトやナットを使用しましょう。スチールホイールもアルミホイールもそれぞれ適合するボルト、ナットがあります。
まとめ
ここまで脱輪に関することを解説してきましたがいかがでしたか。脱輪してしまった際は、冷静な対応が必要ですので、慌てることなく落ち着いて行動しましょう。また落輪を防ぐために、日頃からホイールの点検も怠らないように、日々の点検からしっかり行うようにしましょう。