ホンダのハイブリッドの支流 2モーター式
ホンダは、2019年3月のジュネーブモーターショーで2025年までに欧州で販売する4輪車は全て電動化を目指すとしました。
ホンダは既に、2030年でグローバル販売の2/3を電動化車とする目標があります。
その主力を担うのは、ハイブリッド「SPORT HYBRID」シリーズでEVではありません。2019年1月~2月の国内販売においてもハイブリッド車は全体の55%となっています。
ホンダのハイブリッドには以下のように3タイプが存在しています。
・DCT(1モーターにデュアル・クラッチ・トランスミッションを組みわせたもの)
・i-MMD(インサイトやオデッセイなどに搭載されている2モーター)
・SH-AWD(NSXのホンダフラッグシップ向け3モーターとDCTの高性能4WDシステム)
この中でも今後、ホンダハイブリッドの主力といわれているのが、i-MMDの2モーターです。なぜなら、2019年2月にホンダはi-MMDを主役にしたメディア向けの勉強会を実施しており、小型車にi-MMDを搭載することを想定していることが、技術ディスカッションを通して見えてきたからです。
■「i-MMD」とは?作りは?
i-MMDとは、Intelligent Multi-Mode Driveの略です。
この名前の通り、3つある走行モードをマルチに使いこなすことによって、効率の良い走行を実現するシステムになっています。
i-MMDの構造を見ていくと、
・エンジン
・モーター(発電用と走行用)
・リチウムイオンバッテリー
・制御システム
で構成されており、トランスミッションを持たないことが特徴としてあります。
走行モードは基本「EVドライブモード(バッテリーからの電力供給)」と「ハイブリッドモード(エンジンでは発電した電力供給)」としており、発電がエンジンの主な役割です。
この2つであれば、日産のe-POWER同様「シリーズハイブリッド」となりますが、i-MMDには「エンジンドライブモード」という走行モードが存在しています。
このモードは、エンジンが主体(駆動軸とエンジンをクラッチで直結)で走行するのですが、状況によってはモーターアシストも加わるため、パラレル式のハイブリッド車に近いといえるでしょう。
シーン別に走行状況を紹介すると、
・EV走行 = 発進時や街中
・ハイブリッド走行 = 加速時やパワーが必要なとき
・エンジン走行 = 高速巡行など燃費が有利
となります。
この3つのモードを使い分けることでハイブリッドシステムの良い点を最大に活用しようとしています。
■ホンダ ハイブリッドはなぜモーターだけで走らない? 燃費は?
モーターの発電量が大きくなる原因は、高速走行時において大きなエネルギーが必要となるからです。これに比例して電気変換ロスも増えていくため、燃費が悪化します。そこでエンジンを直結にすることでエネルギーのロスを低減します。
同時に、エンジンの効率を高めるためにモーターアシストと回生を組みあわせる徹底ぶりです。
例えば、EV及びハイブリッド走行できるように丁寧なアクセルワークを心掛ける走行をする方と、高速走行時にエンジンモードを多用した方との低燃費との差を検証した結果、後者に軍配が上がりました。
このことから、i-MMDシステムが理想論ではなく、実用的であることがわかります。
エコカーだからといって意識をしてエコ運転をしなくても、道路環境に合ったバランスが良い走りをすれば、自然と低燃費になるということです。
■ホンダ i-MMDの良さとは?
ホンダのi-MMDのライバルといえば、日産のe-POWERの存在があります。どちらが日本で有利かといえば、EV感覚を上手にアピールしたe-POWERといわれています。しかし、e-POWERに弱点がないわけではありません。
トヨタ ノアハイブリッドと日産 セレナ(e-POWER)の市街地の走行と高速走行の燃費の比較をした結果、高速走行でノア ハイブリッドに燃費が負けたことがあるのです。この結果は、i-MMDの必要性に結びつきます。
i-MMDは、ドライブフィールを高めるために、エンジンの回転数と加速感をリンクする協調制御に取り入れてドライバーの操作に対する違和感をなくしているのですが、e-MMDはエンジン効率を重視しており、協調制御は盛り込まれていません。
さらにe-POWERが構造において、エンジン出力がモーター出力になるのに対して、i-MMDは「エンジン」+「モーターの合わせ技」が可能であるため、高性能化ができるでしょう。
また、コスト面でもフィットなどの小型車に見合うようにすることが十分できるといわれています。これは、i-DCDの7速DCTのような高価トランスミッションを持たないことと、i-MMD自体の量産結果によるコスト低減を踏まえてのことです。
ホンダ フィット ハイブリッド「S」と「L」の違いとは?
2017年、フィットのマイナーチェンジでさまざまな変更が下記のように行われました。
・モノコックの強化
・板厚アップ
・ステアリングベアリング強化
・ブレーキフィーリング向上
・メルシートの防振・防音材を3㎜
さらに、1.5リットルとハイブリッドSはダッシュボードの遮音層を厚くしています。さらにハイブリッドSは、
・エンジンマウントの改良
・シンサレート厚のアップ
・フロアアンダーカバーの吸音タイプへ変更
・遮音ガラス化
・フロントコーナーガラスの板厚アップ
まで行っており、圧倒的な効果(より静かで快適なドライビング)があります。さらにいえば、ハイブリッドSとハイブリッドLの大きな違いはタイヤではないでしょうか。
・ハイブリッドSのタイヤ:185/55RサイズのダンロップSPスポーツ2030
・ハイブリッドLのタイヤ:ブリヂストンのエコピアep150の185/60R15
動力性能は、ハイブリッドSとハイブリッドLの差は感じられませんが、乗り心地やハンドリングには差があります。
どちらも上下に動きがある特徴があるのですが、その傾向が強いのがハイブリッドLです。とはいえ、このクラスのレーンキープアシストは高性能であるため、ゆるいコーナーであればアシストしながら上手にコーナーをクリアします。
ハイブリッドよりも燃費が2.2km/h程度良いことと、価格も12万円程度安いことを考慮するとSとLの差を埋められるでしょう。
ホンダ フィット ハイブリッドの4WD性能
フィットにはガソリン車とハイブリッド車があるのですが、どちらのモデルにも4WDが設定されています。この4WDの走行性能と実燃費がどの程度の水準であるのか見ていきましょう。
フィット ハイブリッドの2WDと4WDの価格差は、20万円程度なのですが4WDがプリミティブなものであること考えると2WDよりも割高に感じる方もいるでしょう。しかし、リアシートにおいては4WDの方が上級です。
フィット ハイブリッド2WDと4WDのボディスペックを比較すると、4WDの方が最低地上高が15㎜、全高が25㎜高く設定されています。さらに車両重量は、ガソリン車と比べてハイブリッドの場合、100kg重くなっています。
ハイブリッド車2WDと4WDのエクステリアを比較すると、4WDにはフラットアンダーカバーが最低地上高を稼ぐために付いていません。
また、ガソリン車とハイブリッド車ともに、4WDのCVT後退減速比が2WDとは異なっています。
さらに、リア・サスペンション形式が2WD車は「車軸式でスタビライザーがない」のに対して、4WD車は「ド・ディオン式+スタビライザー付」となるもの違いです。
4WDのインテリアは、2WDが一体可倒式(ヘッドレストが左右席2人)であるのに対し、4WDはチップアップ&ダイブダウン機構付6:4割可倒式「ウルトラシート」が採用されており、ヘッドレストも3人分備わっています。
フィット ハイブリッド4WDの燃費は、カタログでは29.4㎞/Ⅼとありますが実燃費は21.7㎞/Ⅼといわれています。フィット2WDの実燃費が23.3㎞/Ⅼということを考えると若干劣っていますが、性能がアップしてこれだけの差しかないともいえます。
この4WDのシステムは、ホンダ独自の「リアルタイム4WD」ではなく、ビスカスカップリング式を採用していますが、ハンプレ構造の採用をして小型軽量化を実現したことが特徴です。
この4WDの制御は、通常は前輪駆動で走行して滑りやすい路面などで前輪に空転が生じると、後輪に最大50%のトルク配分が行われます。
さらに一般的なビスカスカップリング式よりもVSA(車両安定化制御システム)との協調制御により優れた走行安定性を実現しているのです。
確かにフィット ハイブリッドの4WD走行性能は、車全体の中では低い部類にあります。しかし、2WD車よりも優れていることは間違いなく、無理をしない限りは生活4駆としての役割を十分に果たしてくれるでしょう。
ホンダ 現行フィット ハイブリッドのスペック
2017年モデルのフィットは、内装と外装のデザインを大幅に改良しています。例えば、外装においてはグリルとヘッドランプに一体感を持たせており、前後ともにバンパー下側の形状を変えてワイド感を出しています。
さらにテールランプも以前のデザインとは違うため全く違う印象のデザインといえるでしょう。ハイブリッドSホンダセンシングと、1.5リットルのガソリンエンジン搭載のフィットRSホンダセンシングは、バンパーがスポーティな形状であり、大型のテールゲートスポイラーを備えています。
さらに、エクステリアでSUV風にアレンジするオプションパーツがディーラーで用意されていることも注目といえるでしょう。インテリアでは、内装全体の質感を高めメーターパネルの視認性の向上もしています。
新しくメーカーオプションとして追加している「プレミアムブラウン」は、シートにウルトラスエードを採用し、ドアパネルパッドなどにブラウンをあしらい、本革巻きの専用ステアリングホイールで高級感を演出しています。
フィット ハイブリッドのマイナーチェンジで燃焼効率も改善し、燃焼時のタンブル流の最適化により燃焼を安定させノッキング制御しており、ボディの空力特性も1.5%向上させています。
この相乗効果により、フィット ハイブリッドの売れ筋グレード(JC08モード燃費)が33.6㎞/Ⅼから34.0㎞/Ⅼになっており、最も燃費が優れている標準仕様では、36.4㎞/Ⅼから37.2㎞/Ⅼに向上しています。
ホンダ フィットのマイナーチェンジで最も注目されているのは、ホンダセンシングの採用です。
これは、ホンダで既に幅広い車種に搭載されてる安全装備で、ミリ波レーダーと単眼カメラが常に前方を監視することを基本としている「8つの先進安全機能」の総称で、具体的には下記となります。
・衝突軽減ブレーキ(CNBS)
・歩行者事故低減ステアリング
・路外逸脱制御機能
・誤発進抑制機能
・マルチインフォメーションディスプレイ
・ミリ波レーダーと単眼カメラの併用
・アダプティブクルーズコントロール
・車線維持支援システム
今後の課題は、後方を並走する車両を検地する機能を充実させることです。後方は、前方に比べて安全確保が手薄になっているためです。さらにボディ補強も挙げられます。
最上級グレード「ハイブリッドSホンダセンシング」は、マスダンパーをエンジンマウントに装着して、直接エンジンの振動が伝わるのを制御しています。
また、遮音ガラスも採用し、ブレーキペダルの操作感など全てのグレードで向上しています。
■ホンダ フィット ハイブリッドの内装
基本的にガソリン車とハイブリッド車の内装デザイン(インパネ・タッチパネル方式の空調パネルのデザイン)は同じになっています。しかし、細かい装備やパーツを確認すると、外装と同様に内装・インテリアにもさまざまな違いがあります。
■インパネのデザイン
ハイブリッド車は、電子気のシフトレバーを採用しています。シフトレバーにピアノブラック調のパネルが施されスタイリッシュなデザインとなっており、先代モデルよりも高級感のあるデザインになっています。
インパネ装飾にも違いがあり、ハイブリッドはガソリン車よりも上質感や高級感を演出しています。例えば、ドットプリントやデザインの高輝度シルバー塗装が助手席側のインパネに用いられています。
ハイブリッド車の助手席側にあるインパネには、ソフトパッドが施されており、肌触りや見た目の質感が良くなっています。
■メーターのデザイン
ハイブリッド車とガソリン車のメーターデザインも大きな違いの1つです。双方と大きなスピードメーターを配置したデザインとなっていますが、左側にあるメーターデザインが異なっています。
ガソリン車は、タコメーターを搭載しているのに対してハイブリッド車は、エネルギー出力や回生状況を表示するパワー/チャージメーターを搭載しています。
・ドア内側パネルのデザイン
ガソリン車は、プラスチック感のあるドアハンドルを装備していますが、ハイブリッド車は高級感のある高輝度シルバー塗装が施されてたドアハンドルを標準装備しています。
■スマートキー
ガソリン車は、ブラックカラーのシンプルなデザインになっているのですが、ハイブリッド車は、ロゴがある面をオシャレなブルー色で彩ったスタイリッシュなデザインとなっています。
■シートデザイン
ガソリン車は全てのグレードでファブリックシートを採用しています。一方、ハイブリッド車のLパッケージでは、内装やインテリアの高級感にこだわっています。
例えば、シートサイド部分に合成レザーのような質感のプライムスムースを施しており上質で高級感のあるコンビシートを採用しています。
ガソリン車とハイブリッド車を比べてしまうと、シートのデザイン性が全く異なりハイブリッド車の方がワンランク上に感じるのではないでしょうか。
ホンダ フィット ハイブリッドのリアルな口コミ
■ポジティブ
1. 乗り心地、静粛性が劇的に向上した
2. クルマの動きがしなやかになった
3. ハイブリッドシステムのギクシャクが消えた
4. 渋滞追従機能はないが先進安全システムがついた
5. サブコンパクトとしては相変わらず圧倒的な室内ユーティリティ
■ネガティブ
1. ツボにはまった時のDCTハイブリッドの驚異的な切れ味が消えた
2. Lとのタイヤの差を勘案してもなお実効燃費が少なからず下がった
3. いささか退屈なドライブフィール
4. 新型のLEDヘッドランプの照射範囲が狭く、夜間走行は不安
5. 全長が4mを超え、フェリー料金が上がった(今回は実害なし)
次にパワートレイン。まず、デビュー後5回ものリコールを出してしまったいわくつきのDCT(デュアルクラッチ自動変速機)ハイブリッドだが、今回の改良で変な動きはほぼ完全に封じ込められたと言っていい。普通に運転しているかぎりは、市街地、高速、山岳路とも終始、動きは滑らかだった。苦手だった低速域でのEV走行からハイブリッド走行への移行もスムーズ。
スロットルをわざとパカパカ開け閉めしたりすると若干のスナッチ(前後方向のガクガク)が発生することもあるが、MTや直結型ATでは普通にあるレベルで、気にするほどのものではなかった。少なくともスムーズネスについては、先に出たミニバン『フリード』に続き、ようやくDCTハイブリッドの完成形に近づいたと言ってよさそうだった。
スムーズネスと引き換えに失ったものもある。それは前期型が持っていたレーシングDCTを思わせるような変速の切れ味だ。試乗車にはパドルシフトが装備されていたが、変速時に次の段と回転をぴたりと合わせてスパッと変速するのではなく、半クラッチを多用するヌルッとしたフィールになり、シフトチェンジの楽しさは失われた。
ホンダ フィット ハイブリッドの中古車情報
フィット ハイブリッドはコンパクトカーの中でとても人気がある車種です。
平均年式は23年(2011年)で中古の平均価格は62.8万円となっていますが、グレードや状態によっても価格は異なります。
新型フィット ハイブリッド「i-MMD」の期待
フィットへi-MMDが搭載するという名言は避けられてはいますが、新しいi-MMD開発が進められており、燃費・走行性能は魅力的といえます。
e-POWERの良さはもちろんありますが、車好きの心に刺さるのは圧倒的にi-MMDとなるのではないでしょうか。
現行のi-DCDを積んでいるフィット ハイブリッドも当初は燃費重視だったのですが、マイナーチェンジ後に走る楽しさを重視した楽しいハイブリッド車へと生まれ変わっています。
ホンダ技術者が強い自信を見せている小型車向けi-MMDは、それを超える存在となっていきます。i-MMDへの期待を抱いているのは私だけではなく、車好きは新しい方向性を示すホンダの技術に心が躍っていることでしょう。
早くて今年(秋ごろ)から来年には、登場するといわれている新型i-MMD搭載のフィット ハイブリッドは今から待ち遠しいですね。さらに同車をベースにした時期フリードなど、さまざまなi-MMDの展開も気になります。
まとめ
フィット ハイブリッドの大きな魅力は、人とものを載せる能力の高さと走行性能や燃費です。フルモデルチェンジでは、大幅な性能アップが期待されており、今まで以上に利便性の高い車へと進化していくことでしょう。安全装備であるホンダセンシングや、国内初となる「1.0Lダウンサイジングターボエンジン」搭載は魅力的といえるでしょう。