どんどん勢力が広がるカーシェアリングサービス。概要をご説明
カーシェアサービス「Patto」
都市部のコイン駐車場などに、同じ車が複数台並んで駐車してある場面をご覧になったことはありませんか。また、前を走るレンタカーのリヤウィンドウに、カード読み取り部分があることや、「シェア」といったステッカーが貼ってあることも最近増えてきていますよね。
これらの車両こそ、カーシェアリングで利用されている車なのです。
自動車を利用したいけど、駐車場代や税金・保険料などの負担が大きくて… という方にこそぴったりなカーシェアは、利用したい時間帯と利用したいカーシェアステーション、それに車種を選ぶだけで、格安に車を利用できる画期的なサービスなのです。
《写真提供:Response》オリックスカーシェア カードでの解錠
それってレンタカーと一緒じゃないの?とお思いかもしれませんが、カーシェアはもっと気軽に利用できる工夫がたくさん。
まず、利用時間が10分や15分と短時間から設定されていることがほとんどで、ちょっと大きな荷物をそこまで運びたいだけ!といったシチュエーションでも気軽にお得に利用ができます。
さらに請求される料金は「利用時間」の分だけとなるので、予定より早く返却できちゃった、という場合は料金がお得になる点もレンタカーよりも柔軟な部分ですね。
また、車の利用開始も利用終了もセルフサービスで、基本的には借りたカーシェアステーションに戻すだけ。レンタカー利用時のように営業所に赴いて書類にサインしたり、プランの説明を受けたりといった手間がなく、思い立ったらすぐに利用することができます。
また地域にもよりますが、カーシェアステーションは非常にきめ細やかに配置されていることが多く、レンタカーの営業所が遠くて行くのが大変!といった心配もカーシェアでは無用です。徒歩圏内で複数ステーションが配置されている場合もあるので、車両の確保もしやすい点は嬉しいポイントですね。
これらの魅力から、主に都市圏でどんどん利用者が増えているのがカーシェアなのです。
■カーシェアってどうやって始めるの? 登録を済ませてしまえば簡単!
OTA keys カーシェア向けスマートフォン仮想キー
実際に車を利用する際に手続きが簡単なだけに、最初の会員登録時にはちょっと手間がかかります。
免許証や支払いに利用するクレジットカードを登録するなどすれば、長いサービスでは登録から1週間後、短いものでは即日で、カーシェアが利用できるようになります。
この登録期間の差は、車両のロック解除方法の違いによるもの。カーシェアで一般的なのはICカードをかざす方式となっており、この場合は個人情報をネットで登録したのちにカードが郵送されるのを待たなければいけないため、タイムラグが発生します。
しかし最近ではスマホのIC機能を用いてロック解除ができるようにしたサービスもあり、この場合は登録完了と同時にすぐに利用が開始できます。今すぐカーシェアを使ってみたい!とお思いの方なら、このようなサービスを選べばすぐに体験ができそうですね。
■カーシェアで使える車両はこんなに豊富!楽々な軽から高級車まで
オリックス カーシェア
もちろんお近くのステーションの状況次第ではありますが、カーシェアとして利用できる車種は意外とバリエーションが豊富。ちょっとした試乗感覚で借りてみるのも面白そうですね。
レンタカーでもお馴染みの軽自動車なら、狭い道でも楽々運転ができますし、近年の軽自動車は室内空間も余裕たっぷり。動力性能もしっかり確保されていますので、都市部だけでなく、高速道路を使った移動などでも安心となっています。
またもう少し大きなコンパクトカークラスのシェア車両も充実しています。カーシェア利用中のガソリン代は利用料金に含まれている場合もあり低燃費のメリットは薄いとはいえ、ハイブリッド車が配備されているステーションもありますし、なんと最新の燃料電池車まで配備されているステーションも少ないながら存在するので、未来的なパワートレインをしっかり体験することもできますね。
また、大人数で移動する際にゆとりが嬉しいミニバンも配備されているステーションもあるほか、サービスによってはなんとスポーツカーや輸入車まで利用できるものも。
もちろん利用料金はそれらの大型車種・高級車種では高めになってしまいますが、それでも実際に購入することを考えれば破格の安さで利用ができますし、乗り換え検討中の車をじっくり試乗したい…なんてケースにもぴったりかもしれませんね。
便利なカーシェア、乗り捨てはできるの? これからに期待?!
タイムズカープラス
そんな便利なカーシェアですが、自動車を利用した目的地は出発地と一緒とは限りませんよね。乗り捨て利用、ワンウェイ利用と呼ばれる利用方法はレンタカーでは可能なことが多く、使い勝手を大きく向上させてくれるサービスとなっています。
公共交通機関の駅近くのステーションで車を借りて移動、移動中は車ならではの柔軟な観光が可能なので目一杯楽しんで、目的地からは別の交通手段で帰宅、なんてことができれば、お得な料金設定や気軽な予約利用ができるカーシェアの魅力はさらに向上しそうです。
しかし残念ながら、2021年1月現在では大々的に乗り捨て利用ができるサービスはありません。一部地域に限って乗り捨てができるサービスも登場していますが、あらゆるステーション間でのワンウェイ利用が可能というシステムにはなっていないのが現状です。
カーシェア導入当初は規制がかなり厳しく、無人での車両受け渡しすらできなかったのですが、デジタル技術の発展に伴って規制が緩められ、現在のような無人駐車場を活用した利用体系が可能になった経緯があります。
さらに2014年には乗り捨てサービスによって移動した別の場所を使用本拠地として認める通達が国土交通省から出されていることで、制度面では実現可能な乗り捨てですが、まだ大規模には実現されていません。
タイムズカープラス トヨタ i-ROADを使用した実証実験(現在終了済)
これには、乗り捨てをする際の保管場所の問題が大きく影響していそう。人気の目的地には多数の出発地からカーシェア車両が集中してしまうおそれがあり、そうなるとカーシェアステーションのキャパシティを超えてしまうこともあるでしょう。1台のシェア車両に対してあらゆる駐車場にスペースを確保しておくのは無駄が多く、現実的ではなさそうです。
また反対に、出発地として人気となりそうな駅周辺や空港周辺のカーシェアステーションではシェア車両がどんどん出ていってしまうばかりで、利用者が利用したい時間に予約ができず困ってしまうケースもありそうですね。
そのためこのようなケースが発生すると、カーシェアサービスのスタッフによる車両の回送が必要になってくると思われるので、いざ乗り捨てが可能になってもオプション料金が高くなってしまうかもしれません。
これらの課題を解決すべく、軽自動車よりも小型な「小型モビリティ」を活用することで駐車場の問題を解決したり、一定区域内に限った乗り捨てを可能としたりなど、さまざまな実証実験が実施されてきているので、カーシェアの認知度向上に伴って、乗り捨ても近い将来に可能になりそうな機運が感じられます。
海外ではどうなの?乗り捨て方式が成功している事例も!
カーシェア 「car2go(現・SHARE NOW)」 スマート EQフォーツー
日本ではカーシェアの乗り捨てサービスはまだまだ道半ばとお伝えしてきましたが、海外の事例を見ると、安定した運営に成功している事例も見受けられます。
特に欧州域で気を吐いているのが、メルセデスベンツの親会社であるダイムラーとBMWによるジョイントベンチャー、「SHARE NOW(シェアナウ)」です。ダイムラーとBMWがそれぞれ独自に運営していた別サービスを2018年に合併させ登場した同社のカーシェアサービスは、アプリを活用する点がポイントの一つで、2人乗り小型車のスマートやコンパクトなメルセデスベンツ AクラスやMINIを中心としたラインナップとなっています。
特徴的なのは、指定エリア内であれば基本的にどこでも乗り捨てが可能という柔軟さで、無料・有料を問わず路上駐車スペースに乗り捨てが可能なほか、公営駐車場にも料金支払いなしで乗り捨てが可能という点は、ユーザーの利便性を大きく広げる部分となっています。
残念ながら2019年で北米から撤退、欧州域での展開に専念しているシェアナウですが、路上駐車が日本の都市部と比べて容易に可能という違いはあるものの、サービスの方向性としては日本の各社も参考にできるところがありそう。
ここまで便利になってしまうと、もはや車を所有する必要性はさらに一段階減ってしまいそうですね。
まとめ
タイムズカーシェア
カーシェアサービスの基本情報と、乗り捨てができないこと、その理由についてご紹介してきました。
人気とはいえ課題もまだまだ多くあるカーシェアサービス。これからもどんどん便利になっていってくれれば、文字通りに「利用したいときに利用したいだけ車を使う」という理想のカーライフにもっと近づけそうですね。