もらい事故とは?
事故《写真AC》イメージ
もらい事故とは、停車しているときに一方的にぶつかってきたなど、被害者に過失がない事故のことを意味します。
停車している状態で、追突されたなどの例です。追突された側は停車しているので、全く過失がありません。これらの事故は、その後の対応方法が一般的な事故とは異なる部分もあります。
■被害者に過失がない
当事者双方が走行している状態で発生した事故では、双方にある程度の責任があるとみなされます。不注意によって引き起こされた事故では、「20:80」のように過失の大きさによって、過失割合を決定します。
そして過失割合によって損害賠償額が決定されるのです。しかし完全に停車中に追突されたり、駐車しているときにぶつけられるなど、停車・駐車時の事故はもらい事故になります。
もちろんその他の要因も考慮されてから過失割合が決定されますが、停車時に追突されたなどでは被害者側は過失がゼロです。このような事故は、事故をいわば「もらってしまった」といえるので、「もらい事故」と呼びます。
■もらい事故と判断される事例
典型的なもらい事故は、追突事故でしょう。停車中に後ろから追突されるのは、よくあるもらい事故です。渋滞の最後尾で停車しているときに追突されるのも含まれます。
また停車しているときに、センターラインをオーバーしてきた車と正面衝突なども考えられるでしょう。
駐車しているときに、バックなどでぶつかってきたような場合ももらい事故となります。基本的には停車状態であれば、被害者側に過失がないことが多いです。
もらい事故の特徴
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一般的な事故との違いを見ていきます。
■保険会社が示談できない
通常の交通事故は、示談交渉で解決されます。双方の任意保険の担当者が示談交渉を行うのがほとんどですが、もらい事故の場合には自身が加入する保険会社の担当者は示談交渉ができません。つまり自身で示談交渉しなければいけないのです。
示談交渉は保険会社が支払う賠償金を決めるための工程。もらい事故の場合には、被害者側の過失がゼロですので、加入する保険会社が相手側に支払う賠償金はありません。
保険会社が支払う金銭がないのに、示談交渉をすると弁護士法違反になってしまうので、保険者に代わって示談交渉はできないのです。弁護士法では、弁護士以外のものが報酬をもらって他人の法律事務を代行できないと定められているからです。
過失がゼロで賠償金を支払わないのに、示談交渉していることは法律事務を代行していることになるので、犯罪となります。
つまり被害者側に過失がないと分かっている事故では、被害者自身で相手側の保険会社と示談交渉しなければいけません。
■もらい事故のリスク
もらい事故では、保険会社が示談交渉できないので、自身で相手側と示談交渉しなければいけません。通常被害者は法律の素人ですので、賠償金の計算方法や過失割合を決定する考え方を知りません。
しかし相手側の保険担当者は、日常的に事故処理をしているので交渉のプロです。主張するときのポイントや経験も豊富にあるでしょう。相手からこちらの不利になる主張をされたときでも、言い分が正しいのか、正しい割合になるようにどのように主張するのか分からないでしょう。
これらの交渉をすると、大きなストレスともなります。むち打ちなどの症状が出ているのであれば身体的な負担があるにもかかわらず、交渉をする手続きだけでも手間がかかり、不安やストレスを増加させるでしょう。
交渉できたしても、相手に有利になるように話が進められるリスクもあります。このように、自身で示談交渉をすることには一定のリスクがあるのです。
もらい事故の初期対応方法
交通事故《写真AC》イメージ
もらい事故にあったときには、まず負傷者の救護活動を行います。その後警察への通報を忘れないようにします。
具体的には、以下の手順です。
1:負傷者の救護
119番通報、可能な場合、安全な場所への移動
2:車の移動
車が自走可能なら、交通の妨げにならないようにする
3:警察への通報
4:加害者の連絡先などを確認
氏名や住所、さらに任意保険や自賠責保険会社の確認
5:任意保険会社に連絡
6:通院
すぐには症状が出ていないくても、後からむち打ちの症状が出ることもあります。念のために医師の診断を受けるようにしましょう。
■警察にすぐに連絡する
軽い物損事故だった場合などなら警察に連絡しなくてもよいと感じるかもしれませんが、警察への通報は義務付けられています。相手が示談を交渉してきても、応じてはいけません。
被害者側の過失がゼロとなるもらい事故では、被害者の免許の点数に影響は全くありません。慌てずに事故状況を保存できるようにしたり、写真を撮ったりして、証拠を残すようにします。
人身事故となるなら、実況見分が行われます。過失割合の争いになったときに、警察によって作成された「実況見分調書」が重要です。警察へ通報しないなら、交渉の際に不利になることも考えられます。
また人身事故でなくても、「物損事故報告書」が作成されますので、もらい事故が起きたなら警察への通報は速やかに行いましょう。
もらい事故による補償について
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もらい事故の場合の補償を把握しておきましょう。物損事故や人身事故に分けて考えていきます。
■物損に対する補償
停車しているなどして、被害者側の過失がゼロであれば、0:10となり加害者側の保険会社から全額賠償されます。車の修理代は、見積書をとってから協議します。
車両の時価額によっては、全損扱いになるのは注意点です。さらに加害者側が保険に加入していないなら、車両無過失事故に関する特約を利用できます。加入している保険に含まれているか、確認しておくとよいでしょう。
■怪我などへの補償
怪我をして通院する費用は、原則全額が補償されます。相手の保険会社が支払ってくれるので、立て替えや費用の支払いを気にする必要はありません。
後から症状が出る可能性もあるので、まずは病院で診察してもらいましょう。医師による診断で事故によって引き起こされた症状を確定させます。これらの通院期間などが、慰謝料の請求につながります。
通院のための交通費なども請求できるので、領収書などを忘れずに残しておくようにしましょう。
■加入している保険会社の補償
加入している保険を使うことができます。たとえば弁護士特約がついているなら、事故対応を弁護士に依頼して、費用を保険会社に負担してもらえます。
ストレスとなる示談交渉を任せることができるので、心理的な負担を避けられます。また車両保険に入っているなら、修理費用の補償を依頼できるでしょう。
もらい事故では弁護士を立てるとよい
弁護士《写真AC》イメージ
弁護士特約がついているなら、弁護士費用を支払ってもらえます。そこで、もらい事故なら弁護士に依頼したいことを伝えて、弁護士を立てるとよいでしょう。
■「弁護士特約」を利用できる
既述しましたが、もらい事故の場合には保険会社は示談交渉できません。過失割合についての争いは起こらないとしても、被害の有無や程度、さらに慰謝料に関しては相手側の保険会社と争いになりやすいものです。
弁護士特約がついているなら、示談交渉のための費用を負担してもらえるので、すぐに利用しましょう。
■慰謝料の交渉もしてもらえる
過失がゼロであれば正当な慰謝料を請求できます。不利な条件を主張されないためにも弁護士を立てるメリットは大きいでしょう。
入通院に応じた慰謝料や後遺症が残ってしまった場合には後遺障害慰謝料が請求できます。むち打ちでどの程度の慰謝料がもらえるのか、また後遺障害等級認定を受けられるのかはケースによって異なるでしょう。どのような方法で請求できるのか、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
もらい事故は経験したくないものですが、安全運転を心掛けていても遭ってしまうこともあるでしょう。一般的な事故とは少し異なる点があるので、適切に対処しなければいけません。事故に遭ってしまったときには落ち着いて対処して、必要な補償が受けられるようにしましょう。