ステップワゴンの歴史
ステップワゴンが登場したのは1996年ですが、自動車界に大きな影響を与えた初代モデルから、2022年5月にフルモデルチェンジした現行型で6代目になりました。
今に至るまでのステップワゴンの歴史を振り返ります。
■ミニバンブームの先駆け
《画像提供:Response 》初代ホンダ・ステップワゴン
ステップワゴンの登場まで「ワンボックスカー=商用車」というイメージが強く、乗用タイプを謳う車種もあったものの、商用車がベースで一概に乗用車とは言い切れませんでした。当時のワンボックスはエンジンの上に運転席のあるキャブオーバー型が一般的だったのです。
1996年に登場した初代ステップワゴンは、今では当たり前になったFFレイアウトのボンネットタイプのミニバンで、優れたパッケージと実用性の高さから大ヒットとなりました。初代ステップワゴンの成功は、その後のミニバンブームの先駆けといえるでしょう。
■ライバルからの圧迫
ステップワゴンの大成功から、他社もミニバン市場の将来性を確信し、対抗車種を続々と開発。トヨタが1996年の「タウンエース・ノア」を経て2001年に「ヴォクシー・ノア」を、日産は「バネットセレナ」から1999年に「セレナ」と、次々にライバル車がデビューし、ミニバン市場は激しい競争になりました。
ホンダの悪癖なのかもしれませんが、好調だったステップワゴンに3代目で大胆な変更を加えた結果、セールスも下降を続け、4代目で一時復活したものの5代目で失速するという、厳しい時代が続きました。
■磨き上げた商品力
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴン新型(スパーダ)
今回デビューした新型ステップワゴンは、原点に立ち返ったコンセプトで、徹底的に商品力を磨きあげたことが分かります。
尖ったような部分は削ぎ落し、人の暮らしに寄り添うようなステップワゴンに。ホンダの先進技術が惜しげもなく投入され、非常に高い商品力を実現しています。
新型ステップワゴンの特徴
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴンスパーダ(左)&ステップワゴン・エアー
7年ぶりにフルモデルチェンジされデビューした新型ステップワゴンは、ライバルのミニバンを研究し、先代モデルの反省点を活かして生まれ変わりました。簡単にいえば「原点回帰と先端機能」です。
■歴代最高レベルの静粛性
ミニバンに限ったことではありませんが、室内の静粛性はドライバーだけではなく、同乗者にとっても快適性を左右する重要な要素。とくにミニバンは箱型のボディ形状のため、さまざまな要因で発生する「こもり音」がウィークポイントです。
「こもり音」とは車内騒音のひとつで、周波数20~300Hz帯域の純音に近い耳を圧するような音です。エンジン系、駆動系、懸架系の曲げあるいはねじり振動や、各部位の共振を誘発して車室に伝わるものなど、複雑な要因によって引き起こされます。
新型ステップワゴンでは、開発陣が「走り、車内の静かさではライバルに負けない」というほど、騒音対策は徹底されています。
音が発生する原因である「コンポーネントの振動」を抑えるため、フロント&リヤウインドウに振動や振幅低減のための重りを付け、ボディにおいてもドア下の敷居部分にあたるサイドシル断面の大型化や、センターピラー、スライドドアまわりに構造用接着剤を用いるなど、高剛性化を実現。
さらにバックドアやボンネットの見直し、エンジン振動の低減など総合的な対策で、このクラスのミニバンでは最高レベルの静粛性を実現しています。
■内装も大幅に質感アップ
《画像提供:Response 》ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ インパネ
車選びにおいて内装の質感や収納などは、居心地の良さや使い勝手においては大事なチェックポイントです。ミニバンは大人数での利用も多いので、フロント席ばかりではなく後席周りも気になるところ。
新型ステップワゴンのフロント周りは、ドライバーが操作するスイッチ類が自然に手の伸ばした先にレイアウトされており、ホンダの「瞬間認知・直観操作」という設計思想が反映されています。また e:HEV車限定ですが、「エレクトリックギアセレクター」いわゆるボタン式シフトを初めて採用したことも注目です。
ユーザーに配慮された収納は質感の高さも両立し、身のまわりの物を置いておくインパネトレーは滑り止めマットが付いて荷物が落ちにくくなっているほか、買い物袋をかけられるフックはポップアップ式で、見た目も自然な作りに。また乗員が手を振れる部分にはファブリックが貼られ、質感の高さが実感できます。
後部座席の方も前席シートバックの収納ポケットや、折りたたみ式のテーブルが設置されています。2列目シートは、先代ステップワゴンまで弱点といわれていたシートアレンジを大幅に見直し、前後のロングスライドと中寄せの横スライドが可能になりました。これによりウォークスルーや乗降がよりしやすくなっています。
■3列シートの使い心地も向上
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴン・エアー
「ホンダ史上最大空間」を謳う広大な室内空間も特徴のひとつ。その効果が現れているのが、使い勝手の向上した3列シートです。
これまでの3列シートは補助イスのような存在で、座り心地が良いとはいえない席でした。しかし新型ステップワゴンでは、3列シートを大きく改善。収納性を維持しながら座り心地が良くなるようシートのクッション厚を増し、シートバックも長くして、自宅のソファで寛ぐ感覚で座れるように工夫しています。
ホンダの開発陣が「誰もが座りたくなる3列目を目指したかった」というとおり、全席での快適性が確保され、座り心地だけではなく収納やUSBコネクタまで配慮された「使いたくなる3列シート」になっています。
■最先端の安全支援システム
近年は搭載されていて当たり前ともいえる予防安全機能ですが、新型ステップワゴンでは最新の「Honda SENSING」を全車標準装備とし、機能も大幅に強化しました。
「Honda SENSING」はミリ波レーダーとフロント単眼カメラ、そして車載ソナーによって危険を検知しますが、フロントワイドビューカメラに高速画像処理チップを新採用。車両前後に装着された計8つのソナーセンサーとの組み合わせで、旧型よりも大幅に検知機能を強化しました。
従来からの衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能などに加え、後方誤発進抑制機能や近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビーム、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)が新たに追加されています。
またACC(アダプティブクルーズコントロール)は、全タイプで渋滞追従機能付きへと進化し、マルチビューカメラシステムやブラインドスポットインフォメーションも新たに採用されました。
あわせて、新世代コネクテッド技術を搭載した車載通信モジュール「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」を通じて、より安心・快適なカーライフが楽しめるコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム」を提供しています。これにより事故などの緊急時、クルマ自体が緊急サポートセンターに繋がり、迅速で的確な対応が可能となりました。
新型のスペックと先代との違い
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴンスパーダ旧型/新型
フルモデルチェンジにより進化した新型ステップワゴンは、これまでの路線から「原点回帰」といえる変化を遂げています。その原点とは、パッケージングの良さから成功を収めた初代ステップワゴンです。
ここからは新型ステップワゴンがどのような変化を遂げたのか、先代モデルとの違いを中心に解説します。
■わくわくゲートは廃止
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴン従来型のわくわくゲート
先代ステップワゴンの大きな特徴として「わくわくゲート」の採用がありました。
ミニバンはバックドアを全開にするのは1m前後のスペースが必要でしたが、第5のドアといわれた横開きドアのサブゲートを備えたわくわくゲートでは、400mm~760mmに収まり、後方に余裕がない場所でも荷物を出し入れできました。なにより「わくわくゲート」という名前が示すとおり、今までにない新機軸だったのです。
ところが新型ステップワゴンではわくわくゲートは廃止され、オーソドックスなバックドアが採用されました。なぜ採用されなかったかを簡単にいえば「拒否反応を示すユーザーが多かった」という点でした。とくにデザイン面でバックドアに縦に入る線が不評だったようです。
■原点回帰のシンプルなエクステリア
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴンエアー(新型)
フルモデルチェンジで新型となったステップワゴンを一目見ただけで、2代目モデルとの近似性を感じるでしょう。
6代目となる新型ステップワゴンでは「#素敵な暮らし」をコンセプトに、あえてライバル車で見られる「ド派手なデザイン」へ背を向けた、ナチュラルで優しさの伝わるデザインに。あえて箱型を強調したデザインで、存在を強調しすぎない控えめで優しいエクステリアとなりました。
市場の受け止め方は好意的なようで、販売と同時に好評なセールスを記録しています。
■ついに3ナンバーサイズ
《画像提供:Response 》ホンダ ステップワゴン e:HEV エアー インテリア
新型ステップワゴンは6代目でついに全車3ナンバーとなりました。
先にフルモデルチェンジをしたライバル車の「ヴォクシー・ノア」も3ナンバーとなりましたが、ステップワゴンの大型化の理由はライバル車と同じく、従来から売れ筋は3ナンバーモデルだったことです。
先代のステップワゴンでも、売れていたのはエアロパーツを装着し3ナンバーモデルの「SPADA(スパーダ)」だったので、ユーザー的には違和感がないのかもしれません。しかし大型化の一番の理由は「広い室内空間の実現」であり、とくに大きかったのは「3列シートを特等席に」という設計です。
利便性を高めるためには5ナンバーでは限界があり、最上位ミニバン「オデッセイ」が引退した今のホンダにとっては、どうしても避けられない3ナンバー化だったのでしょう。
■新型ステップワゴンのラインアップ
《画像提供:Response 》ホンダ・ステップワゴン新型
新型ステップワゴンには、スタンダードモデルといえる「AIR(エア)」と、力強さを表現した「SPADA(スパーダ)」の2種類が基本になり、SPADAには上級仕様の「プレミアムライン」も設定されました。
タイプ | 乗車定員 | 新車価格(税込) | ||
---|---|---|---|---|
AIR | 1.5L | FF | 定員7名 | 2,998,600円 |
定員8名 | 3,020,600円 | |||
4WD | 定員7名 | 3,240,600円 | ||
定員8名 | 3,262,600円 | |||
PEV | FF | 定員7名 | 3,382,500円 | |
定員8名 | 3,404,500円 | |||
SPADA | 1.5L | FF | 定員7名 | 3,257,100円 |
定員8名 | 3,279,100円 | |||
4WD | 定員7名 | 3,477,100円 | ||
定員8名 | 3,499,100円 | |||
PEV | FF | 定員7名 | 3,641,000円 | |
定員8名 | 3,663,000円 | |||
SPADA PREMIUM LINE | 1.5L | FF | 定員7名 | 3,462,800円 |
4WD | 3,653,100円 | |||
PEV | FF | 3,846,700円 |
パワートレーンは、1.5L直列4気筒DOHCターボと、2.0L直列4気筒DOHC+モーターの e:HEV車の2種類で、前者のみ4WDモデルが選択できます。
ボディサイズは、全長4,800~4,830mm、全幅1,750mm、全高1,840~1,855mmと、先代より一回り大きくなりました。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,800mm×1,750mm×1,840mm |
---|---|
ホイールベース | 2,890mm |
最大乗車定員 | 7名 |
車両重量 | 1,810kg |
燃費(WLTCモード) | 13.9km/L |
エンジン種類 | 直列4気筒ガソリンターボ 1,496cc |
エンジン最高出力 | 110kw(150ps)/5,500rpm |
エンジン最大トルク | 203N・m(20.7kgf・m)/1,600-5,500rpm |
モーター種類 | - |
モーター最高出力 | - |
モーター最大トルク | - |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) |
トランスミッション | 無段階変速オートマチック(トルクコンバーター付) |
新車価格 | 2,998,600円(税込) |
まとめ
《画像提供:Response 》ホンダ ステップワゴン e:HEV SPADAコンセプト(東京オートサロン2022)
2022年5月27日に発売開始した新型ステップワゴンですが、紆余曲折をへて初代モデルの持っていた本来のステップワゴンへ回帰したようです。
かつてないほど基本に忠実に、商品力を磨き上げて登場し、ミニバン市場をリードする一台として注目です。