落雷の際は車内にいれば安全?
車は金属製の外殻で囲まれており、雷が直撃した場合でも、この金属製の外殻が「ファラデーの檻(ファラデーケージ)」として機能します。
ファラデーの檻(ファラデーケージ)とは、電気の通り道となる金属製のケージのことを指し、このケージの内部には電場が生じないという特性のこと。車が雷に直撃された場合、電気は車体の外側を流れて地面に向かうため、車内にいる人は直接的な危険から守られます。
このように、車内は落雷時の安全な場所とは言われていますが、100%の安全を保証するものではありません。しかし、本当に安全なのか、車体に与える影響はどんなものなのか、JAFは人工的に雷を発生させる装置を使用して、車や車内の人に与える影響について実験しました。
【検証】車に落雷した場合、走行は可能なのか、また車にはどんな影響があるか
車の直上に雷を落とした後、車は走行が可能なのか、またカーナビや灯火類、エアコンなどの電装品が問題なく機能するのか、JAFロードサービス隊員が確認・検証しました。
■【結果】エンジンやEVシステムが始動せず、タイヤにも放電痕が残った
電子制御系機器を診断したところ、HVはエンジンECU通信異常やHV/EV系回生異常、HV/EV系異常などの診断が出ました。一方、EVはEV-HEVシステムや高電圧バッテリシステム、電動型制御ブレーキ機能故障などといった診断が出ました。
また、パワーウィンドウや、灯火類は問題なく作動しましたが、タイヤに雷の痕跡が見られました。
放電痕が見られたタイヤ
車と雷の関係に詳しい中部大学・電気電子システム工学科の山本教授の解説
エンジンやEVシステムが始動しなかったのは、ECU(クルマの電子制御をする装置)が壊れたり、異常な電流を検知してセーフティシステムが作動した可能性が考えられる。タイヤに関しては痕がついただけではあったが、パンクする可能性もある。
【検証】車に雷が落ちた場合、車内にいる人への影響は?
車の直上に雷を落とし、車内にいる人に影響があるのかをアルミホイルを全身に巻き付けたマネキンを使用し、「すべてのドア・窓を閉じた状態」と「運転席の窓を少し空けた状態」で検証しました。
車の直上に雷を落とし、車内にいる人に影響があるのかをアルミホイルを全身に巻き付けたマネキンを使用し、「すべてのドア・窓を閉じた状態」と「運転席の窓を少し空けた状態」で検証しました。
■【結果】雷が車内に入り込んだ様子は見られず、マネキンに焦げ痕なども見られなかった
「すべてのドア・窓を閉じた状態」と「運転席の窓を少し空けた状態」のどちらでも、雷が車内に入り込んだ様子は見られず、車内のマネキンに焦げ痕なども見られませんでした。
車内の様子
車と雷の関係に詳しい中部大学・電気電子システム工学科の山本教授の解説
クルマに落雷するとクルマの金属部分を通り、タイヤから放電するため、車内へ電流は流れにくい。ただし、車内でもピラーなどボディの金属部分へ接触すると安全とは言い切れないため、金属部分には触らないでほしい。
■JAFユーザーテストの内容を動画で見る
落雷時には車内は車外より安全性が高い!ただし無理せず、屋内の駐車場など安全な場所に避難を
今回の実験結果から、車に落雷した場合、車内の人体への影響はほぼ見られなかったため、車内は車外より安全性が高いことがわかりました。ただし、機器の故障などで走行ができなくなる可能性が高いため、運転中に急な雷雨や雷に遭遇した場合は無理せず、屋内の駐車場など安全な場所に避難したほうがよいでしょう。
外出する際は、あらかじめ気象情報を確認し、大雨や雷雨の予報が出たら、なるべく外出を控え、やむを得ず運転する場合には、より安全な経路や時間を選択するなど、危険を回避する対策を取るようにしましょう。
【引用元】
落雷で車が故障したら保険はおりる?
落雷によって車体に穴が開いたり、窓ガラスが割れるといった損害があった際は自動車保険の車両保険で補償が可能です。車両保険は任意での加入がほとんどなので、現在契約中の自動車保険やこれから契約する自動車保険で落雷などの自然災害での故障が補償対象か確認するのがよいでしょう。