サブウーファーの取り付け方とボックスが必要な理由
カーオーディオの取り付けには、さまざまなノウハウが存在しています。今回のテーマは「サブウーファーの取り付け方」についてです。まずは「ボックスが必要な理由」を解説していきます。
ひとえにサブウーファーと言っても、タイプがいくつかあります。今回は、本格ユニットサブウーファーにスポットを当てて紹介していきます。サブウーファーユニットが“単体”で販売されているタイプです。
ビーウィズ・A-180ll(税抜価格:8万円)
これを用いて音を出そうとするとき、絶対に必要なものが2つあります。1つがパワーアンプ、そしてもう1つが「ボックス」です。さて、ではなぜ「ボックス」が必要なのか、理由は下記になります。
スピーカーは、振動板を前後に動かすことで空気を震わせて音を伝えます。実は、これと同じことが振動板の裏側でも起こっているのです。振動板が動くことで、裏側からも音が発せられているのです。
もしも「ボックス」がなかったら、表側から発せられた音と裏側から発せられた音が空気中で混ざりあうことになります。そうなると、とてもやっかいな問題が引き起こされます。"キャンセリング"という現象が起こってしまうのです。キャンセリングとは「音の打ち消し合い」が起こる現象です。
表側の音と裏側の音は、耳で聴く分には同じ音ですが、音波で表すと真逆の状態となっています。表側で振動板が前に出たとき、裏側では振動板は引っ込んだ状態になっていて、表側と裏側では、振動板の動きは常に逆の状態になっている。振動板の動きが逆なので、音波としても、真逆の波形となっているのです。
そして、真逆の波形の音波が混ざり合うと、音の“打ち消し合い”=“キャンセリング“が引き起こされてしまうのです。
「ボックス」が必要な理由は、まさにここにあります。スピーカーユニットを「ボックス」に取り付けることで、裏側の音を閉じ込めることが可能となるのです。これにより、表側の音と裏側の音が混ざり合うことを阻止できるのです。
サブウーファー ボックスのタイプ
先ほどはサブウーファーボックスの必要性を解説しましたが、それを踏まえて今回は、“箱”のタイプ解説を行っていきます。
サブウーファーボックスは、大きく分けて、以下の3タイプに分類できます。
1・シールド・ボックス
2・バスレフ・ボックス
3・バンドパス・ボックス
もっともスタンダードなタイプが、1の「シールド・ボックス」です。密閉型のボックスであり、3つの中ではもっとも容量を小さくでき、かつ、締まった、レスポンスの良い低音を出しやすいのが特徴です。
先ほども解説したように、スピーカーユニットは、裏側からも音を発します。それを閉じ込めるためにボックスが必要となるわけで、「シールド・ボックス」は、その役目をシンプルに担ってくれます。
なお、箱の中の空気は、スピーカーにとってのサスペンション的な効力も発揮します。容量を小さくすればサスペンションは硬くなり、容量を大きくすればサスペンションは柔らかくなります。それを調節することで、サウンドをコントロールすることが可能です。
それに対して2の「バスレフ・ボックス」とは、スピーカーユニットの裏側から発せられる音を直接的に利用しようとするもの。
サブウーファーボックスの例。このボックスの場合、左側の網になっている部分が“ポート”になっている。
ボックスの内部で裏側の音を反転させ、“ポート”と呼ばれる穴からそれを表側に放出。ホームオーディオのスピーカーでも、表側に穴が空いているものがありますが、それも「バスレフ・ボックス」です。
このようにすることで低音を増強することが可能となり、且つ“ポート”の長さや大きさ等々を計算することで、増強する周波数帯をコントロールすることも可能となります。
そして3つ目の「バンドパス・ボックス」とは、“ポート”の内部にサブウーファーを閉じ込めた作りをしているボックスです。箱の中に箱がある、といった構造となっています。
最近は、“バンドパス・ボックス”が用いられるケースはかなり減ってきています。理由としては、サウンドのコントロールが難しく、かつ、ボックスも大きくなりがちなため、搭載するには難易度が高いという理由が主だったところでしょうか。
サブウーファーボックスのタイプ解説は以上となります。
サブウーファー取り付け ボックス製作においての注意点 その1
「サブウーファーボックス」の製作の際に考えるべきこと。1つ目は、“容量”です。ボックスの内部の容量をどのくらいにするか、まずはそこが熟慮されます。
なお、サブウーファーユニットには、その製品の性能を引き出すための適切な“ボックス容量”が定められています。メーカーが適した容量を“推奨容量”として、取説等に明記しています。
容量120Lにも及ぶバスレフボックスを採用したサブウーファー。
ちなみに“推奨容量”とは、ある程度の範囲を持って指示されていてい、上限と下限を示し「その範囲に入っていればOK」、というような表記の仕方がされています。
そして次には、どのような低音がほしいのかを考えながら容量を決めていきます。容量を多めに取ると深みのある低音になり、容量を小さめにすると、レスポンスの良いタイトな低音になる傾向があります。
適切な範囲の中で、欲しい低音のタイプも考えながら、“ボックスの容量”が考え抜かれるのです。
その次に考えるべき点が“形”です。搭載するスペースに合わせることがもっとも重要ですが、それと同時に、サブウーファーユニットがストレスなく仕事ができるように、といったことや、内部での音の反射の影響も考慮しながら“形”が決められていきます。
なお、内部に吸音材を入れることでも、鳴り方をコントロールすることが可能になります。
例えば容量は小さめに作りつつ、吸音材を入れることで擬似的に容量を大きくしたような効果が得られます。ボックス内の空気は、サブウーファーユニットにとっての“サスペンション”の役目を果たすのですが、吸音材の効果で“サスペンション”の堅さがコントロールできる、というわけです。
サブウーファー取り付け ボックス製作においての注意点 その2
次はボックスを組み上げる際の注意点について考えていきます。
「サブウーファーボックス」を組み上げる際にもっとも重視すべきことはズバリ、“強度”です。「サブウーファー」自体が重いため、箱が軟弱だった場合、これを取り付けた際に支えきれなくなってしまいます。
また、支えきれたとしても、鳴らしたときに箱がビビってしまっては元も子もありません。低音を届けるためのユニットが、ノイズの発生源となってしまうのでは意味がありません。
それに対しては、さまざまな対策を施します。まずは、「厚めの木材を用いる」ことが1つ目、それを「正確に切り出して、きっちり組み上げる」ことが2つ目。その基本に加え「内部に“補強”を入れる」ことが3つ目の対策となります。
“補強”には、さまざまなやり方が存在しています。リブ的な意味合いで、内部の平らな面に添え木をあてがったり、コーナー部分に三角形にカットした木材をあてがったりするのがスタンダードな方法です。さらには、重量級のサブウーファーユニットを使う場合には、鉄でフレームが組まれる場合もあれば、内部にFRPが流し込まれることもあります。
なお、このFRPを流すという方法は、“強度”を上げるためともう1つの役割をになっています。“気密性を高める”という役割です。「サブウーファーボックス」を作るにあたっては、“強度”と同等に、“気密性”も非常に重要なファクターになります。それを確保するため、シーリング材等を継ぎ目に注入するなどの対策が施されます。
サブウーファー取り付け ボックス製作においての注意点 その3
サブウーファーのボックス政策の注意点として、最後にあげるのは「設置方法」についてです。
サブウーファーボックスをワンオフする場合、ボックスの設置の仕方には2つの選択肢が存在しています。1つが、トランクフロア等に ポン と置く方法、もう1つが、トランクフロア等に一体化させる方法、の2つです。
前者はボックスの形状をシンプルに仕上げられ、車両側の加工も最小で済むため、比較的に製作コストがかかりません。そして、荷物をたくさん積む際は、ボックスを降ろすことも可能なので、その点においては使い勝手が良いと言えます。
サブウーファーボックスの設置例。写真は、リアシートの後ろ側にボックスを設定した一例。
対して、トランクフロア等に一体化させる場合には、車両側の加工も必要となるケースがほとんどです。しかもボックスの形状も設置箇所のボディ形状に追従させる必要が出てくるため、工賃はそれなりにかかります。
しかし、スペースを有効利用でき、積載性を確保することなども可能となるので、予算さえ許せば車両に一体化させる取り付け方のほうが便がいいのは確かです。
なお、サウンドコンペのようなイベントに出場するようなクルマに多く見られるのは、リアシートの後ろ側(トランクからみて奥のウォール側)にサブウーファーボックスを設定する設置方法です。そうして、トランクスルー部分にサブウーファーの振動板がくるように取り付け、サブウーファーからのサウンドを、ダイレクトに車室内に届けようとするのです。
これらの中からどれを選ぶかは、予算と使い勝手を鑑みて考えたい所です。ちなみに、音的な有利不利は多少ありつつも、プロショップならばどこに設置しても、調整でなんとかできるでしょう。
シビアに音を優先させて考えるのも1つのやり方ですが、通常は費用・使用感を含めて総合的に判断すれば良いでしょう。自分にとっての優先事項をショップ店員と相談の上、ベストポジションを探していきましょう。