ダイハツミゼットの歴史
ダイハツ ミゼットMPA
ミゼットは戦後の高度経済成長期、1957年10月から1972年1月までの間、ダイハツ工業から販売されていた軽自動車規格のオート三輪トラックです。ミゼットとは英語で「超小型のもの」を意味します。
誕生のいきさつは、普通規格のオート三輪需要に翳りが見え始めたことです。1954年になると、トヨタが四輪トラックを発売開始します。ダイハツをはじめ、多くのメーカーは四輪トラックへの移行を余儀なくされます。
一方で自転車やオートバイで事業展開する零細企業や個人事業主も多く、安価で小回りの利く小型のオート三輪の需要には根強いものがありました。ダイハツは四輪自動車の開発を進めながらも、軽オート三輪のミゼットを発表します。
自社一貫生産による低コストの実現、そして人気タレントを起用したテレビコマーシャルが功を奏し、ミゼットは爆発的なヒット商品となりました。
他社も追随し、1960年くらいまで軽オート三輪のブームが続きます。その後、軽オート三輪車が市場から姿を消していく中、ミゼットだけは根強いファンに支えられ、1972年まで販売されました。
初期のミゼットはオートバイのようなバーハンドルで1人乗りです。DK型が1959年まで、DS型には2人乗りタイプもあり、1962年まで活躍します。
丸ハンドルのMP型が登場するのは1959年。北米向けに先行発売された後、国内デビューを飾ります。当時米国の統治下だった沖縄にも輸出、東南アジア方面にも大量の輸出実績があります。
タイでは「トゥクトゥク」と呼ばれるタクシー業界をけん引する活躍をしました。しかしながら時代の主流は四輪、ダイハツも四輪のハイゼットへの移行・統合を図り、1972年1月31日をもって、ミゼットの生産を終了します。
■ミゼットの基本性能
初期のDK型は249cc単気筒、最高出力は8馬力〜10馬力で最大積載量は300kgとなっています。キャビンには風防こそあれ、ドアもなく屋根は幌でした。丸ハンドルのMP型になるとドアと屋根が付きキャビンは密閉した空間に。
そのため車重はDK型より100kg増の415kgとなります。これにより一部ユーザーから走行へのクレームが噴出したため、エンジンもZAエンジンからZDエンジンへ。305cc単気筒となり最大積載量も350kgにアップしました。
ミゼットの魅力はフロントフェイスです。キャビンと一体化したフロントマスクはくちばしのような形状で独創的。生産終了から半世紀近く経つ今、なお新鮮さを感じさせるデザインです。
■ミゼットIIの発売
ダイハツ ミゼットII
ミゼットの生産終了から26年、ダイハツは1996年4月に四輪のミゼット2の発売を開始します。
小口配達などをターゲットに、自転車やオートバイのように手軽に乗り回せる軽貨物車にと2001年3月まで生産を続けます。初めからターゲットを絞っていたこともあり、小口配達に特化させた少数生産。
660ccで33馬力直列6気筒とパワフルになったとはいえ、サイズは360cc時代とほぼ同じです。基本的に1人乗りですが、ライトバンタイプや2人乗りも追加発表されました。スペアタイヤをフロントマスクに配したデザインは画期的でキュート。
初代から受け継ぐデザインセンスはいささかも衰えることなく、多くのファンを持ちます。
1999年に発表されたモデルではスペアタイヤを荷台や荷室へ移動し、フロントマスクはタイヤカバーのみに。ダイハツICマークがついて愛嬌のある顔立ちになっています。特化したコンセプトから、時代を象徴する車としてメディアに登場することが少なくありません。
ミゼットII Bタイプ(1996年4月)のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 2,790mm×1,295mm×1,650mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 1,840mm | |
最大乗車定員 | 1名 | |
車両重量 | 550kg | |
燃費 | - | |
エンジン種類 | 水冷直列3気筒OHC | |
最高出力 | 23kW(31PS)/4,900rpm | |
最大トルク | 50N・m(5.1kg・m)/3,200rpm | |
駆動方式 | FR | |
トランスミッション | 4MT |
■遂に発売か、ミゼット3
ダイハツ コンセプトカーDNプロカーゴ
2017年の東京モーターショー出品された「DN PRO CARGO」。
ミゼットの実用性と、そしてキュートなデザインを継承した車として話題になっています。一部ではミゼット3との噂も。
働く車としての軽自動車の利便性を徹底的に追及。低床フラットフロアによる車内空間の拡大と用途に応じた荷室の確保しています。
フロントマスクも可愛らしいミゼット。EV車として市中を軽快に走る日が待たれます。
ミゼットは現在でも購入できる?
個性的な車程、古くなればなるほど価値が上がるものです。
中古車の市場価格はミゼット2で約20万円~90万円(消費税抜き)、初代になると150万円前後(消費税抜き)が相場となっています。
市場でミゼットを見かけることは稀ですが、その中でも走行可能車はわずかです。古いミゼットを購入し、レストアして楽しむ方も少なくありません。
■米国でも販売されていたミゼット
ダイハツ ミゼット
1960年代の米国をはじめ、東南アジアでも販売されていたミゼット。特に大型車の多い米国では、小回りの利く軽貨物車は農作業などに重宝されました。
その後、輸入規制により市場は狭まりますが、輸入車に関する25年ルールが適用され始めた昨今、日本の軽トラックや軽バンが注目を集めています。
というのは、1990年以降に生産された輸入車で、25年を経過したものは米国の保安基準から除外されるからです。つまり、輸入規制から外れることにより、輸入しやすくなったのです。
働き者の日本の軽トラックや軽バンは、米国で再びブームとなっています。
■旧車としてのミゼットの価値
ダイハツ ミゼットMPA
200万円を超す中古車価格が示す通り、カーマニアにとって垂涎もののミゼット。カーマニアのみならずレトロ趣味な方にも観光スポットとしても人気で、ミゼットの前で記念撮影する観光客は少なくありません。
もちろん実用できるに越したことはありませんが、車庫に保管してときどき鑑賞するだけでも癒されます。特異な外観と時代を背負った活躍、映画への起用頻度の高さ、魅力を語るとキリがありません。
昭和という時代を代表する車、ひとつの時代を象徴する車として、ミゼットの価値が、今後もますます上がっていくことが予想されます。
時代を超えて語られるミゼット
ダイハツ ミゼット
ミゼットの人気の一番目に挙げられるのは初代から変わらないキュートな外観です。ひと目見てファンになる方も多いでしょう。
映画によく登場することでも知られています。「ALWAYS三丁目の夕日」やジブリの「コクリコ坂から」「となりのトトロ」、さらに「クレヨンしんちゃん」にも登場します。
個性的な外観はスクリーンの中でもいっそう映え、映画を観終わった後も残像が焼き付いていることでしょう。ミゼットは古き良き時代を懐かしむとき、必ず思い起こされる車なのです。
まとめ
ダイハツ ミゼットMPA
日本を代表する昭和の名車、ミゼットについてはいくら言葉を尽くしても語りつくせません。外観と仕事ぶり、映画やCMの効果もあって、昭和=ミゼットと想像されます。
いつまでもミゼットが現存するよう、所有・保管されている方々に敬意を表します。令和の時代に合った、ミゼットを継承する車の登場も待ち遠しいものです。