【予習】トヨタヤリスについて
トヨタ・ヤリス
トヨタヤリスとは、日本を代表する自動車メーカーのトヨタが生産・発売しているBセグメントのコンパクトカーです。
1999年の発売当初から3代目まで、日本ではヴィッツという名で売り出され、手軽で高性能なコンパクトカーとして人気を博しました。
2020年に発売20周年を迎えると同時に4代目よりフルモデルチェンジし、名称もヴィッツからヤリスへ変更したのです。
ヴィッツについて詳しく知りたい方はこちら
2019年ドライバーズ・チャンピオンに輝いたオット・タナック選手のヤリスWRC
2017年からトヨタが復帰しているWRCでは、参戦車両として海外仕様車名の「ヤリスWRC」を使用しています。
フルモデルチェンジを機に、日本においても世界的知名度の「ヤリス」に名称を統一し、新たな戦略展開を図る目的があるとされています。
GRヤリスとは?WRC参戦ホモロゲマシン!
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス・ファーストエディション エモーショナルレッドII
GRヤリスとはトヨタ独自のスポーツカーとして、トヨタが世界のレースで勝つために創り出した車です。
これまでのトヨタはレース参戦の際、一般市販車をレース用に仕立てるのが普通でした。しかし、このGRヤリスはレースで勝つことを前提に創られた車です。これまでとはコンセプトがまったく異なります。
トヨタの中でスポーツ性の高い車の開発を手掛ける社内カンパニーTOYOTAGAZOORacingが、世界のレースで勝てる車をモチーフとし、一般に市販できるように創られた車がGRヤリスなのです。
世界のレースとはWRCこと世界ラリー選手権であり、そのホモロゲーション・モデルがGRヤリスです。
ホモロゲーションとはギリシャ語に由来する認可・承認の意で、FIA(国際自動車連盟)が定める車両公認を指します。
WRCに参戦する車には、連続する12か月間に25,000台以上の生産される車種シリーズの一部であり、かつ2,500台以上生産されるグレードであることが必要とされます。
GRヤリスのエクステリアとインテリア
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス・ファーストエディション エモーショナルレッドII
まずはその精悍なエクステリアが目を引きます。
大型のディフューザーやスポイラーを装着しスポーティな外観を演出します。
鍛え抜かれたアスリートを思わせるワイド&ローなフォルムなど、どこから見ても走るために創られた車という印象です。
ルーフはカーボン素材を、ドアパネルやエンジンフードにアルミを使用し、高度な軽量化を実現。どこまでも走りにこだわったエクステリアとなっています。
もちろんインテリアも同様、無駄な装飾を排したコクピットはシンプルで機能的。スモークシルバーの加飾がクールに光ります。
プレミアムスポーツシートやJBLサウンドシステムなどの専用装備も用意され、スポーティなインテリアです。
■専用ボディはカーボンとアルミで軽量化
GRヤリス生産のそもそもの目的はWRCで勝つことです。その目的のために最善を尽くすのは当然と言えます。
WRCへの参戦にはあらゆる規定があります。そのひとつが「ボディモノコックの素材はベース車と同一でなければならない」という規定です。
モータースポーツにおいて低重心と空力のバランスは重要な要素。特にルーフを軽量化できれば低重心が可能になります。そこでトヨタが着目したのがルーフのカーボン化です。
市販されるベースモデルの時点で、すでに軽量化を図ることでした。さらにドアパネル、ボンネット、リアハッチに至るまですべてアルミ製です。
徹底した軽量化で、戦略的に開発されたGRヤリスは、元々のヤリスとはまったく異なる車となっています。
■後端で下げられたルーフは空力最優先の証
GRヤリスのルーフは後端を可能な限り低く設定していますが、これは見栄えのためではなく、WRC参戦車両として装着できるリアウィング高さの規定に対応するためのものです。
ヤリスよりも後端を下げることでリアウィングにしっかりと風を当てることを織り込んだ設計になっており、既に目撃されているWRC仕様GRヤリスのテストカーの画像からはリアウイングの下段部分に繋がっています。そのため、リアウイングの空力効果を存分に発揮することが可能。
ウイングレッドの幅やバーチカルフィンの形状など、空力最優先の細部にわたるこだわりが見て取れます。
そのひとつがリアウイングとのバランスをとるために改良されたフロントバンパー付近。上段のカナードは幅広、下段カナードはフェンダーに接続され、後端に向かって跳ね上がる構造になっています。
さらに、フェンダー付近にリップが立てられており、積極的な空力コントロールに存分な効果を発揮。空力調整へのこだわりは微に入り細に入り、完璧です。
■ヤリスの快適性を引き継ぐインテリア
スポーツカーとして機能性重視の観点からシンプルなインテリアになっています。しかしながら、スタンダートヤリスの標準装備を引き継いでいるため快適性と操作性は、他に類を見ない出来栄えです。
ナビシステムの充実とステアリングスイッチの豊富さはその一環でしょう。6速MTを搭載し、タコメーターのレッドゾーンは7000rpmからと余裕のポテンシャルを誇ります。
フロントシートはヘッドレスト一体型のスポーツタイプ、リアシートは二人掛けとなっています。どこまでも走りを追求したインテリアにまったく無駄は見当たりません。
GRヤリスの性能
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス・ファーストエディション エモーショナルレッドII
レースを目的に開発されただけあって、ノーマルヤリスとGRヤリスと共有する部分はプラットフォームや灯火類、内装関係ぐらいで、ほぼGR専用の開発によって手掛けられています。
1.6リッターの直噴ターボエンジンは最高出力272psを誇り、最大トルクは370Nm。駆動方式は4WD、電子制御クラッチで前後トルク配分を可変制御するスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を搭載しています。
■GRヤリス専用開発!1.6リッター直3ターボエンジン
直列3気筒インタークーラーターボ、しかも1.6リッターというエンジンはこれまでのトヨタにはなかった型式です。
1.6リッターの選択は紛れもないWRCのレギュレーション。1618ccの排気量と3気筒という選択は、軽量コンパクト化とトルクの豊かさ、さらにレスポンスの高さまでも実現しています。
WRCの本番に照準を合わせて開発されたエンジンが、公道を思うがままに疾走する姿が想像できます。
■トヨタの伝統を受け継ぐスポーツ4WD「GR-FOUR」
GRヤリスのターボエンジンと4WDシステムの組み合わせは、言わばセリカ GT-Fourからカローラまで続いたトヨタのラリーカーの伝統を受け継ぐものといえるでしょう。
「GR-FOUR」は、驚異的なスペックを誇るG16E-GTS型エンジンに対応するだけの性能を装備しています。
モードスイッチにより、前後のトルク配分を切り替えることが可能。すなわち、ノーマルモードにおいてフロント60:リア40、30:70のスポーツモード、さらに50:50のトラックモードの3つの選択ができます。
可変する4WDモードにより、路面状況や好みに合わせた走行性能を得ることができるのです。
まとめ
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス・ファーストエディション エモーショナルレッドII
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス・ファーストエディション エモーショナルレッドII
逆転の発想に驚きを隠せないと共に、さすがトヨタと唸らざるを得ない、それがGRヤリスのです。
どこまでも走りを極め、それを日常生活に可能な限り近づけていくことは、カーマニアを自負する豊田社長ならではの発想と言えます。
自動運転車の開発を進めながら、ドライバー主体の車を運転する醍醐味も忘れていない、トヨタの今後の展開と、GRヤリスの世界ラリー選手権での活躍から目が離せません。