クロカン軽の先駆者「ジムニー」、ここまでの人気沸騰は稀!
スズキ ジムニーシエラ(左)、ジムニー(右)
1970年に初代が発売されたスズキ ジムニーは、その50年にわたる長い歴史の中で、コンパクトサイズながら本格的な悪路走破性を備えた車を求めるニーズに堅実に応えてきました。
そのニーズは、たとえば一般的な軽乗用車の販売規模とは比べ物にならないほど小さかったかもしれませんが、豪雪地帯にお住まいの方や林業に従事される方など、ジムニーでなきゃ困る!というシチュエーションも多数あったはず。軽随一のクロカン四駆として、ジムニーのという車の重要性は非常に高かったのです。
もちろん、オフロード走行を趣味として行うオーナーからも、標準状態でも充分に高い走破性能と、カスタムを柔軟に受け止める基本性能の高さは好評を得ていましたが、そんな一種の「ニッチ商品」と思われていたジムニーを取り巻く状況が一変したのは2018年、四代目ジムニーがデビューしてから。
スズキ ジムニー
当初より量販を見込んだ生産計画ではなかったとされていますが、その供給量を大きく上回る需要が爆発的に発生してしまい、長期の納車待ちが発生するという、本格クロカン四駆として異例の人気が出てしまったのです。
これにはスズキも嬉しい悲鳴をあげている状況の様子。日本だけでなく、世界的な人気を獲得してしまったこともあり、安易に国内向けジムニーの生産規模を拡張することもできず、現在でもジムニーでは1年程度の納車待ち期間が発生するとされています。
一体なぜ四代目にしてそこまでの人気を獲得したのか、なぜジムニーが今でも愛され続けるのか。一緒に探っていきましょう。
ジムニー/ジムニーシエラの注目ポイントとスペックをまず確認
■その1:選択肢少なめ!コンパクトサイズでSUV
スズキ ジムニー INNO ルーフデッキ装着車
なんといってもジムニーのポイントは、そのコンパクトなサイズ。
特に本格的なクロカン車では、かさばる四輪駆動システムや大排気量のエンジンを収めるべく、全長や全幅が大きくなりがちなのですが、軽乗用車登録のジムニーでは全長3,395mmに全幅1,475mm、小型車登録のジムニーシエラでも全長3,550mmに全幅1,645mmと、非常にコンパクトなサイズを維持。
このボディサイズは、ややずんぐりむっくりした見た目のキュートさという副次的魅力を生みつつも、他の車では分け入れないような狭隘な山間路や、タイトなオフロードコースでもガンガン攻められるという、ジムニーならではの独自の能力を生み出しているのです。
ジムニーでスタックしてしまうとジムニーでしか助けられない、道が狭すぎて他の車はたどり着けないから、なんてジョークも生まれるほどに、日本国内の事情に非常にマッチした大きさが特徴の一つです。
■その2:ザ・本格の四駆性能で高すぎる悪路走破性
スズキ ジムニー
もちろん、ボディサイズが小さいだけなら軽自動車全体に共通すること。ジムニーをジムニーたらしめる特徴の一つは、その本格的な四輪駆動システムと足回りによる走破性能の高さです。
強固なラダーフレームにローレンジ付きの副変速機を備えたトラクション性能の高さは、伝統のリジッドアクスル式サスペンションにも支えられ、もっと大型の兄貴分クロカン車たちにも引け目を感じないほどの走破性能を実現しています。
205mmとしっかり確保された最低地上高と余裕のアプローチ/デパーチャーアングルは、どんな悪路でもなんのその。ブレーキLSDトラクションコントロールやヒルディセントコントロールなど、先進的な電子制御機能まで備わっているので、安心感を持って運転できそうです。
■その3:意外?!しっかり充実の安全装備群
スズキ ジムニー デュアルセンサーブレーキサポート イメージ
武骨な見た目を持つことや、用途が特殊な車だけに見逃されがちですが、もちろん最新の車らしい安全装備も充実しているジムニー。
上位グレードおよびメーカーオプション装着車に備わる「スズキセーフティサポート」は、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などの予防安全機能をパックにしたもので、スズキの軽乗用車群と同等の性能を実現。
全車でSRSカーテンエアバッグやフロントシートSRSサイドエアバッグを標準装備するなど、充実した安全装備も特徴的です。
スズキ ジムニーのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,725mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,250mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 1,030kg | |
燃費 | WLTCモード:16.2km/L | |
エンジン種類 | 直列3気筒ガソリンターボ 658cc | |
エンジン最高出力 | 47kW(64PS)/6,000rpm | |
エンジン最大トルク | 96N・m(9.8kg・m)/3,500rpm | |
駆動方式 | 四輪駆動(パートタイム4WD) | |
トランスミッション | 5速MT | |
新車価格 | 1,615,000円(消費税抜き) |
スズキ ジムニーシエラのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,550mm×1,645mm×1,730mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,250mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 1,070kg | |
燃費 | WLTCモード:15.0km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ガソリン 1,460cc | |
エンジン最高出力 | 75kW(102PS)/6,000rpm | |
エンジン最大トルク | 130N・m(13.3kg・m)/4,000rpm | |
駆動方式 | 四輪駆動(パートタイム4WD) | |
トランスミッション | 5速MT | |
新車価格 | 1,780,000円(消費税抜き) |
まだまだ納車待ち1年も?! ジムニーの人気の秘訣はこれだ
スズキ ジムニー(海外仕様車 日本名:ジムニーシエラ) イタリア警察カラビニエリ仕様
ジムニーの注目ポイントをサクッとご紹介してきましたので、魅力的なことは分かったけど、まだまだ爆発的人気の理由がピンと来ていない方もいらっしゃるかも。特に走破性能などは、先代モデルなどでもしっかり実現されてきた部分ですよね。
そこで、現行モデルになってからの人気の理由を、5点にまとめて分析してみました。
■ちょっぴりレトロでキュートなエクステリアデザイン
スズキ ジムニーシエラ
巷ではSUVブームが巻き起こっており、各メーカーからクロスオーバーSUVがどんどんデビューしている現代において、ジムニーの角張ったスタンスは一周回って新鮮さを感じさせる部分。
先代モデルではより丸みを帯びて乗用車的な高級感を追求していたのですが、現行モデルでは初代や二代目ジムニーに立ち返ったかのような、レトロとも呼べそうなスタイルに転換。これによって、丸目のつぶらなヘッドライトや、シンプルながらも存在感のあるフォルムを手に入れました。
このスタイルこそ、もしかすると現行型ジムニーの人気の最も大きな一因かもしれませんね。単なるクロカン車としてではなく、ファッションステートメントとしても利用できるほどにキュートなデザインは、よりユーザー層を広げることに貢献しています。
■本格派ゆえに醸し出されるクロカン四駆のオーラ
スズキ ジムニーシエラ
そんなちょっとかわいいデザインではありつつも、ジムニーはやはり本格派の四駆。醸し出されるオーラは、軟派なシティ向けクロスオーバー車とは違う、迫力と本気度が感じられますよね。
より立てられたフロントおよびサイドウィンドウの角度や、雪溜まりを防止するカウルトップのカバーなど、実用性や信頼性を重視したディテールを備えるジムニーは、たとえその機能を知らなくても普通のハッチバック車とは違う個性が感じられるはず。
山道を踏破する際に、木の枝や飛び出した岩などでダメージを与えないようより内側に寄せられたヘッドライトなど、アドベンチャーを支える道具としての必然的デザインが、ジムニーの個性を生み出しているのです。
■庶民の味方! リーズナブルな価格設定
スズキ ジムニーシエラ インテリア
ジムニーならではの魅力、四代目で加わった独自の魅力を備えつつも、そのお値段のリーズナブルさも人気の要因といえそう。
単純に価格だけみれば、よりベーシックな軽セダン系や、抜群のユーティリティを誇る軽トールワゴン系にはかなわないのですが、その走破性能を考慮に入れればもはやバーゲンと思えるほどの150万円以下からの税込新車価格は、ちょっとオシャレなセカンドカーを探している方にも十分にヒットする低価格ですよね。
無論、ローレンジを備えるような本格クロカン車としては最安クラスに該当するジムニー。小型車登録のジムニーシエラでは1.5リッターという大きめのエンジンを搭載しつつも、こちらも180万円以下からというリーズナブルさです。
■稀少性による優越感もちょびっと?
スズキ ジムニー ラダーフレーム
今や50年という歴史を持つジムニーですので、現行型にモデルチェンジする際は、発売前からその注目度が非常に高かった点もポイントかもしれませんね。
いざお披露目されると、新鮮かつ誰しもに好かれる秀逸なデザインを備えることもあり、一気にファッションアイテムとしての需要も爆発したのではないでしょうか。
SUVが溢れる現代だからこそ、軽なのに本格クロカンという唯一無二の存在という稀少性を持つジムニーを求める需要が高まったのかもしれません。
■カスタムの魅力もバッチリ!
スズキ ジムニーシエラ(左)、ジムニー(右) ダムド little G.装着車
こちらは歴代ジムニーでも共通する部分ではありますが、オーナーによるカスタムをしっかり受け入れる懐の深さも、ジムニーの魅力の一つ。
特に四代目ではややレトロ感のある、そして海外の伝統的クロカン車の息吹を感じさせるようなデザインであったこともあり、外装カスタム熱が過熱した点もポイントかもしれません。
フルエアロで往年の名車を完コピするもよし、車高を上げてよりオフロード向けのスペックを追求してもよし、車高短でホットハッチに変貌させてもよし?! オーナーの個性をしっかり反映できる点は、ジムニーが注目され続ける理由の一つでしょう。
スズキ ジムニー
スズキ ジムニー(左から初代、二代目、三代目)
まとめ
スズキ ジムニーシエラ
スズキ ジムニーの人気が四代目モデルで爆発している理由を探ってきました。
2018年のデビューからしばらくは、大人気なのに供給数が少なくて街中で見かけることも稀だったかと思いますが、最近ではトコトコと走っている姿をちょくちょく見かけるようになってきていますね。
スペース効率最優先の車選びが主流になってきている現代、趣味車だってまだまだ存在しているぞとホッとできるようなジムニーを、スズキにはこれからも末長く作り続けてもらいたいところです。