高齢者ドライバー、自分の運転に自信!
全日本交通安全協会によれば、平成27年中の交通事故死者数は4,117人。
15年ぶりに増加という結果になっています。
特に、気を付けたいのが高齢者の方の自動車事故。
年齢を重ねるにつて、ドライバーとしてもやはり判断が鈍ってしまいますし、身体能力も落ちてくるので、高齢になってきてからの運転は、身内かどうか関係なく心配になりますね。
そんな中、MS&AD基礎研究所は、全国のドライバー1000人を対象に「自動車運転と事故」をテーマとするアンケート調査を実施しました。
高齢者の自動車運転と事故に関する実態と意識、事故防止対策などをまとめました。
■80歳以上、運転に自信アリ。72%
【調査結果】
■運転に対して「自信がある」
20~29歳:49.3%
30~59歳:40.0%
60~64歳:38.0%
65~69歳:51.3%
70~74歳:60.7%
75~79歳:67.3%
80歳以上:72.0%
調査結果を見ると、20代から60代前半にかけては徐々に減少しています。
その一方で、65歳から運転に自信を持つドライバーの割合は急カーブを描いて上昇。
80歳以上では72.0%が「運転に自信あり」という結果になっています。
■75歳以上のドライバー。ヒヤリハット経験が多い危機種類1位は
【調査結果】
■75歳以上のドライバーが遭遇したヒヤリハット経験が多い危機種類
1位 運転中の注意散漫:34.8%
2位 (見通しの問題で)信号や車、歩行者が見えなかった:31.0%
3位 左折・右折時の歩行者や自転車との接触(巻き込み):17.4%
■事故につながったケースが多い危機種類
1位 ハンドル操作ミス:24.2%
2位 運転中の注意散漫:21.2%
3位 追突(玉突き):18.2%
という結果に。
また、近年クローズアップされているアクセルとブレーキの踏み間違えについては、事故ケースとしては4番目、ヒヤリハット経験としては7番目でした。
■運転免許の年齢上限制度、若者の意見はいかに?
運転免許の年齢上限制度については、若年・中堅層は賛成が多く、高齢層は反対が多いという結果が出ました。
しかしながら、65~74歳の約4割が「上限制に賛成」と回答していました。
70歳前後では「たとえ実施されても、もう少し上の年代」という意識がある可能性もあります。
また、高齢者の運転事故対策については、「自動ブレーキ装備車のみ運転許可(71.3%)」が有効であるとの回答が最多で、続く「免許更新を1年ごとに(54.4%)」、「道路標識や信号を見やすいものに(52.1%)」となっています。
高齢者の交通事故問題、各所の対応策とは
■2017年3月12日、改正道路交通法がスタート
3月12日から、改正道路交通法がスタートしています。
この法により、75歳以上の運転免許保持者が「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為(18基準行為)」で、臨時の認知機能検査を受けることなどが義務づけられました。
これまで、75歳以上のドライバーは、3年に1回の免許証更新時に「30分ほどで終わる簡易な」認知機能検査を受けていました。
この検査結果で、「認知症のおそれあり(第1分類)」「認知機能低下のおそれあり(第2分類)」「認知機能低下のおそれなし(第3分類)」の3種に分類し、運転適性検査・講義・実車指導の合計2時間半の高齢者講習を受講することで更新できていました。
この検査で、第1分類と判定されたドライバーが、一定期間内に18の違反行為(下記、18基準行為)をしたとき、都道府県の公安委員会が行う臨時適性検査を受けなければなりません。
また、そこで認知症と判断された場合は免許取り消しなどの対象になりました。
今回の改正道路交通法では、第1分類に入るドライバーは、違反の有無にかかわらず全員、臨時適性検査(医師の診断)を受けるか、主治医などの診断を受け、その診断書の提出が義務づけられることとなります。
さらに、第1分類・第2分類に入るドライバーに関しては、運転適性検査・双方向型講義・実車指導・個別指導の合計3時間の高度化講習を経て更新することになります。
このときの実車指導では、運転の様子をドライブレコーダーで記録し、その映像にもとづいて個人指導を行うなどのプログラムが組まれます。
前出の「臨時認知機能検査の対象となる違反行為」の18基準行為は下記のとおり(道路交通法施行令第37条の7)。
01 信号無視(例:赤信号を無視した場合)
02 通行禁止違反(例:通行が禁止されている道路を通行した場合)
03 通行区分違反(例:歩道を通行した場合、逆走をした場合)
04 横断等禁止違反(例:転回が禁止されている道路で転回をした場合)
05 進路変更禁止違反(例:黄の線で区画されている車道において、黄の線を越えて進路を変更した場合)
06 しゃ断踏切立入り等(例:踏切の遮断機が閉じている間に踏切内に進入した場合)
07 交差点右左折方法違反(例:徐行せずに左折した場合)
08 指定通行区分違反(例:直進レーンを通行しているにもかかわらず、交差点で右折した場合)
09 環状交差点左折等方法違反(例:徐行をせずに環状交差点で左折した場合)
10 優先道路通行車妨害等(例:交差道路が優先道路であるのにもかかわらず、優先道路を通行中の車両の進行を妨害した場合)
11 交差点優先車妨害(例:対向して交差点を直進する車両があるのにもかかわらず、それを妨害して交差点を右折した場合)
12 環状交差点通行車妨害等(例:環状交差点内を通行する他の車両の進行を妨害した場合)
13 横断歩道等における横断歩行者等妨害等(例:歩行者が横断歩道を通行しているにもかかわらず、一時停止することなく横断歩道を通行した場合)
14 横断歩道のない交差点における横断歩行者等妨害等(例:横断歩道のない交差点を歩行者が通行しているにもかかわらず、交差点に進入して、歩行者を妨害した場合)
15 徐行場所違反 (例:徐行すべき場所で徐行しなかった場合)
16 指定場所一時不停止等 (例:一時停止をせずに交差点に進入した場合)
17 合図不履行 (例:右折をするときに合図を出さなかった場合)
18 安全運転義務違反 (例:ハンドル操作を誤った場合、必要な注意をすることなく漫然と運転した場合)
■警察庁の対策:高齢者に最高速度制限などの限定免許制度の導入を検討
警察庁の「高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議」は、高齢者の特性に応じたきめ細かな対策に向けた運転免許制度のあり方などの調査研究について、提言をまとめました。
提言では、高齢運転者の安全運転を継続しながら最終的に運転免許証の自主返納などにより、本人が納得した上で運転を終えることができるようにする必要があると想定。各人の運転能力に応じて運転可能な車両を自動ブレーキなど、先進安全技術が搭載された自動車、最高速度の制限、高齢者が操作しやすい自動車限定や運転可能な地域や道路を制限するなどの限定条件付免許の導入の可否を検討すべきとした。
また、それぞれの高齢者が抱える運転リスクに応じたきめ細かな対応が実施できるよう、運転リスクが特に高い人に対して、実車試験の導入の可否を含め運転免許制度のあり方について調査研究を実施すべきとした。
さらに、自主返納や運転免許取り消しなどの処分で運転免許を持たない高齢者が増えることが予想される。公共交通の確保・充実、自家用有償運送の活用、貨客混載などの促進、介護保険制度によって行われる輸送サービスの活用など、きめ細かな生活の支援によって、運転免許がなくても高齢者が安心して暮らせる環境の整備を推進すべきとした。
このほか、自動運転が高齢者の移動手段の確保にも貢献することから、法制度面を含む各種課題を検討するなど、自動運転の実現に向けた取り組みを推進すべきとしている。
■国土交通省:高齢者が安心して移動できる社会を目指す
国土交通省では、高齢者が安心して移動できる環境整備に向けての方策を検討しています。
高齢運転者による重大な交通死亡事故が相次いでおり、交通死亡事故における高齢運転者の割合も上昇している。3月には、免許証更新時に認知症のおそれのある運転手に診断が義務付けとなるなど、高齢運転者の交通安全対策を強化する改正道路交通法が施行される。今後も更なる高齢化が進む中、自動車の運転に不安を感じる高齢者が、自家用車に依存しなくても生活の質を維持していくことが課題となっている。
加えて、昨年11月15日に開催された「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」でも「自動車の運転に不安を感じる高齢者の移動手段の確保など、社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備を着実に進める」との総理指示が出された。
このため、国土交通省では、関係省庁の協力を得て、高齢者が安心して移動できる環境の整備についての方策を幅広く検討する。
今後は、有識者やタクシー、バスの業界団体関係者で構成する「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」を新設して、高齢者の移動手段となる公共交通などについても検討していく方針です。
車が使えない、となると、より重要になってくる交通機関や公共機関。
設備の充実をはかることで、自分が運転しなくても住みよい環境になるといいですね。
■大半の自動車メーカーが言う「高齢者の事故防止に有効な技術はコレ」
「安全運転サポート車」の普及啓発に関する関係省庁副大臣等会議で、国内自動車メーカー8社が高齢運転者の安全運転に貢献する先進安全技術として自動ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置を挙げました。
会議では、高齢運転者の安全運転に資する先進安全技術について聞き取り調査を実行。
聞き取り調査した全社が自動ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置を挙げていました。
また、8社中7社が自動切替型前照灯や自動防眩型前照灯などの先進ライトについても高齢運転者の安全運転に貢献する技術に挙げるという結果に。
このほか、先進安全技術以外にも、高齢運転者に特徴的な事故類型への対応を中心として、各社から実用化済みの技術が挙げられていました。
いかがでしたか。
今、対象の年齢ではなかったとしても、自分の大切な人たち、そしてゆくゆくは自分の問題として降りかかってくるこの問題。
早急に対策がなされ、少しでも高齢者の方の自動車事故が減ることを切に願っています。