回生ブレーキとは
自動車が進むために車輪が回転するにはモーターに電力を供給し発生した電気エネルギーを
を、モーターで運動エネルギーに変換し回転させる必要があります。回生ブレーキというのはこれのほぼ逆で動いた車両や内部の機器が発生させる運動エネルギーを、利用して電磁誘導によってモーターで発電します。その発電時の回転抵抗を自動車を減速して停止させようとする力として利用するため回生ブレーキと言います。
■回生ブレーキの仕組みは
モーターは上記の説明のとおりに、電磁誘導によって運動エネルギーを電気エネルギーに変換することができます。自動車の車輪が回転するときに発生する運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変換し、発生した電力は一度コンデンサに充電され、車が加速・減速するときや、エアコン、オーディオなどの各種機器など、必要時に使用する電力になります。
運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、さらにその電機エネルギーをまた他のエネルギーに変換するため、使用できるエネルギーの総量は少々少なめですが、摩擦ブレーキであれば使うことができずに放出されるだけのエネルギー使えることを考えると非常に良いシステムと言えます。
この電力が発生するときに回転抵抗を制動力として使用するため回生ブレーキというわけです。
■回生ブレーキが使われている車種は
回生ブレーキが使用されている車種はHV(ハイブリッドカー)、PHV(プラグインハイブリッドカー)、EV(電気自動車)の主に3種類です。この3種類はモーターを備え、駆動には電力を使用します。回生ブレーキは車のバッテリーへの充電に利用されています。
さらに回生ブレーキは自動車だけではなく、電車、エレベーター、電動アシスト自転車などさまざまなものにすでに利用されています。
回生ブレーキの効率は
回生ブレーキの効率の詳しい数字は公に発表はされていません。しかし、回生ブレーキはブレーキ制御システムや使用しているバッテリーの種類や車両の速度などの運転の仕方などさまざまな要素で大きく効率が変わるといわれています。
例えば、急ブレーキでは補助ブレーキでありブレーキ力の弱い回生ブレーキは使用されず、摩擦ブレーキが使用される仕組みになっています。さらに、上り坂の場合電力が発生するときの回転抵抗が増えるため、下り坂を走るより電気エネルギーへの変換効率は落ちます。このように回生ブレーキは常に100%の効率で使用できるものではないわけです。ですので回生ブレーキの効率はいくつとは一概には言えないわけです。
なのであくまで目安としてですが、回生ブレーキの実装当初は7~10%の燃費向上が目標でした。実装から時間がたった今ではこの数値を越しているのではないかと考えられています。
回生ブレーキのメリットは
回生ブレーキの仕組みは上記の通りで理解できたと思います。では回生ブレーキは従来の摩擦ブレーキと比べてなにが違うのか、メリットとデメリットは何なのかについて説明していきます。
まずメリットですが主に3点あります、燃費が良い、エンジンの発電が少ない、ブレーキパッドの寿命は延びるという3つです。
■燃費がいい
回生ブレーキのメリットとしてひとつ目に燃費がいいことが挙げられます。では、なぜ燃費が良くなるのでしょうか。
まず摩擦ブレーキは自転車の前タイヤについてるブレーキと構造がほぼ同じです。自転車はブレーキパッドでタイヤを挟んで止めます。これは自転車の止まるときに発生する運動エネルギーを摩擦の熱エネルギーに変換してタイヤを止めているということです。摩擦ブレーキでは、このときに発生する運動エネルギーは、摩擦熱にすべてを変換できるわけではなく、余剰エネルギーは捨てているのです。
回生ブレーキではモーターが回転し、発電した電気は一度コンデンサーにためられます。車がまた動き出すときなどにはためた電気を使用して動かすので、捨てるエネルギー、無駄になるエネルギーが少ないのです。無駄になるエネルギーが少ないということは燃費が良くなるということですね。
ですが回生ブレーキを使っているハイブリッドに乗っていても、ガソリン車と同じ運転の仕方をしていてはそこまで燃費はよくならないので、回生ブレーキを使うということを意識して運転する必要はあります。
ただ、回生ブレーキでもエネルギーを変換する回数が多いためロスも発生しますし、今まで捨てていたエネルギーをすべて変換できるというわけではなく、捨てられてしまうエネルギーもまだあります。
■エンジンの発電が少ない
2つ目にエンジンが発電する量が減るということです。自動車が発電する際は、普通はオルタネーターという発電機でエンジンを利用して発電します。ですがオルタネーターでの発電にはエンジンを使うので当然燃料の消費は多くなります。
回生エネルギーを使用した場合に発生した電力はコンデンサーに蓄電されるため、モーターを動かすことやライト、エアコンなどを使用するのに使う電力にも当然利用できます。回生エネルギーを使用した分だけオルタネーターが発電する量は減るので、エンジンへの負担が減少します。エンジンへの負担が減少すれば消費される燃料は当然減ります。そのため、回生ブレーキは燃費が良いとされるわけです。
■ブレーキパットの寿命は延びる
3つ目にブレーキパッドなどの消耗品の寿命が延びることです。回生ブレーキというのは、摩擦ブレーキとは違いブレーキパッドやブレーキディスクなどの消耗品を使用しません。使用しなければ寿命が減ることもないので、回生ブレーキを使う分だけブレーキパッドやブレーキディスクの寿命も延びるといえます。消耗品を使用しないとは書きましたが、回生ブレーキで使用するバッテリーやモーターは劣化していくので消耗品の使用できる期間が長いという言い方が正しいかもしれません。
回生ブレーキのデメリットは
回生ブレーキのデメリットはそこまで大きなものではありませんが、メリットがあれば当然デメリットもあります。主にブレーキとしての力が弱い、ブレーキから変な音がする、バッテリー満タン時には作動できないといった3点になります。
■ブレーキとしての力が弱い
回生ブレーキの役割は補助ブレーキです。ですのでブレーキをかけて最終的に停車するとき、または急ブレーキの際には摩擦ブレーキに頼らざるを得なくなります。
回生ブレーキはエネルギーの変換率も悪いです。車が動くときの運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変換し貯め、貯めた電気エネルギーを運動エネルギーに変換しモーターを回します。
運動エネルギーが電気エネルギーになり、また運動エネルギーに戻るという行程でエネルギーは少しロスが発生します。今までの摩擦ブレーキでは捨ててしまっているエネルギーを使用しているため、燃費が良くなっていることは間違いないのですが、エネルギーの変換率は悪いと言わざるを得ません。
■ブレーキから変な音がする
回生ブレーキはよく異音がすると言われます。これは別に故障箇所があるとか、商品の不備だとかそういう話ではありません。回生ブレーキはモーターを使用するため、回生ブレーキが使用されている間はモーターが回る音がする、というだけです。回生ブレーキがよく使われているハイブリッドカー自体はとても静かな、音が出にくい車であるため、よりモーターも音が響くのが気になる方もいらっしゃると思います。
もちろん本当に故障している部分がある可能性はあるので、これはどう考えてもモータの音ではないだろうと思う場合はメンテナンスに出してみる必要が出てきます。
■バッテリー満タン時は作動できない
回生ブレーキは作動するときに発電します。つまり逆に言えば、発電できない場合は作動できないということです。この発電できない場合というのが、バッテリー満タン時のことになります。バッテリーが満タンの状態で発電しようとした場合バッテリーがパンクし壊れてしまう可能性があります。ですので回生ブレーキにはバッテリーが満タンの時には作動しないという機能がついているわけです。ですのでバッテリーが満タンなことに気づかないと、車の減速が足りずに危険な場面が出る可能性があります。
回生ブレーキは使わないほうが良い?
回生ブレーキを使用していても車が動くときに発生する運動エネルギーはすべてを電気エネルギーに変換できるわけではありません。回生ブレーキを使用していてもどうしても無駄になるエネルギーはでてきます。
ですが、摩擦ブレーキのみでは回収できなかったエネルギーを使用できているため、回生ブレーキを使ったほうが燃費が悪くなる、といったことはありえません。回生ブレーキを使用している中で登り坂をたくさん進むと少しエネルギーの変換効率が落ちる、といったことはありますが、それでも回生ブレーキを使用しなければ使うことのできなかったエネルギーなので、使用しないほうがいいということはありません。
まとめ
回生ブレーキがある車を使う上で実際に常時気になる回生ブレーキのデメリットとしては、モーターの音だけということになります。バッテリーの量は確認しておけば困りませんし、ブレーキの力が弱いことも知っていれば気になりません。今なお回生ブレーキの効率は進化を続けていますし、今後はモーターの音を減らす方向にも進化していく可能性もあります。回生ブレーキは運転方法によって燃費が大きく変わってくるので早めに使い始め、回生ブレーキを使用することを意識した、効率の良い運転の仕方やモーターの音に慣れていくことが重要かもしれません。