電気自動車とは?
電気自動車とその仕組みについて知ろう
そもそも自動車とは、かなり大まかに言えば、車輪を回転させて路上を走行する搭乗型機械、ということになるでしょう。さらに付け加えると、自動車というワードの由縁が示す通り、車輪の回転は自動で行われるとも言えます。
では、自動車の走行方法である車輪の回転はどのように自動でなされているのでしょうか?
物体が運動を行うにはエネルギーが必要であり、自動車の車輪の回転にもまたエネルギー源に相当するものが存在するのです。
ガソリンと言う化石燃料を消費して稼働する自動車、すなわちガソリン車の場合、言葉の示す通りエネルギー源となるのはガソリンです。 同じように、今回ご紹介する電気自動車については、電気をエネルギー源として動く自動車、ということになります。
■電気自動車の仕組みと構成
電気自動車のしくみを確認して行く前にまず、引き続き自動車全般の仕組みと照らし合わせながら見て行きたいと思います。
自動車が動くにはエネルギー源が必要と述べましたが、車の中にそれだけがあっても仕方ありません。ガソリンタンクに燃料が入っていようが、蓄電しているバッテリーを積んでいようが、それだけでは稼働不可能です。
エネルギー源だけではなく、それを動力へと変換する装置が不可欠となります。そこから生み出された動力を車輪へと伝達し、ようやく自動車は動くことになるわけです。
その動力を生み出す装置が、従来のガソリン車の場合では「エンジン」にあたります。化石燃料を燃焼させて生じる爆発力をエンジンによって動力へと変換します。
電気自動車において、このような動力機関に相当するものは「モーター」です。これにより、モーターに送られた電気を自動車の動力へと変換するわけです。
エネルギー源となる電気の特性に根ざしたものでもあるため、電気自動車の構造はガソリン車のそれと異なります。その点を踏まえつつ、以下、電気自動車の仕組みと構成について見ていきたいと思います。
駆動用バッテリー
電気自動車のエネルギー源である「電気」は、車内内蔵の「駆動用バッテリー」に蓄えられています。駆動用バッテリーはいくつかのモジュールに分かれており、さらにその中に最小単位のセルという位置づけで電池が入っているという構造となっています。
そのため駆動用バッテリーの大きさは、モジュールが○○個・バッテリー内にセルが総数××個、という意味合いで、「○○モジュール××セル」と表されます。
タイプによっては、モジュールとセルの間にセルのまとまりであるグループが設けられ、バッテリー内にグループが総数△△個という意味の表記が入るものもあります。この場合は、「○○モジュール△△グループ××セル」と表されます。
バッテリーマネジメントユニット
駆動バッテリーの接続先の一つとして「バッテリーマネジメントユニット」があり、これには安全かつ効率的に電気状態を制御・管理する働きがあります。
コンダクター
駆動バッテリーには電気回路の開閉を行う「コンダクター」が内蔵されており、これが電気自動車のスイッチに相当すると言ってもよいでしょう。
電気自動車に乗り込むとコンダクターが作動し、これがガソリン車で言うエンジン起動に相当します。
インバーター
コンダクターの切り替わりで駆動バッテリーに蓄積された直流電流は、高電圧ジャンクボックスを経由して「インバーター」へと至ります。このインバーターで電気は直流から交流へと変換され、これがモーターを稼働させることにより動力が生み出されるのです。
この動力が、上記で少し触れたように、トランスミッションおよびギアを介して車輪に繋がる車軸に伝わり、電気自動車は走行可能となります。
■電気自動車のインバーターとは?
電気自動車の仕組みを見て行くうえで、駆動力を生み出すモーターに接続しているインバーターも重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
掻い摘んで言えば、インバーターは直流の電流を交流へと変換する装置です。
電流を常に一定に流れる直流から周波数をもった波形をなす交流へと変えれば、周波数を変化させることでインバーターに連なるモーターの働きを調整できるようになります。
主に磁石とコイルで構成されるモーターは、コイルを通る電流と磁力の向きの関連性で回転動力を作り出します。電流を調整可能な交流とすることで、モーターの回転すなわち動力も調整できる、というわけです。
自動車の駆動力はアクセルの踏み具合でコントロールされますが、電気自動車ではそのアクセル開度に応じてインバーターが機能し、車の加速・減速がなされることになります。電気自動車搭載のインバーターにはもう一つ、車が減速するときのモーターが作り出す電気を駆動バッテリー側に戻して充電させるという役割もあります。
車が減速する、すなわちアクセルを離した状態のとき、モーターではコイルに電気が送られず回転が惰性で行われています。この場合、モーターは発電機と同じ働きをなします。
つまり、惰性で回転する力と磁力の関連性により電気が発生するわけです。モーターの構造上、発生する電気は交流電流となり、これがインバーターへ送られると交流から直流へと変換され、さらに駆動バッテリーへと送られて充電されることになります。
電気自動車のエネルギー効率をさらに向上させる仕組みと言えるでしょう。
各社の電気自動車の特徴
日産 リーフ
ガソリン車に燃料補給を行うガソリンスタンドがあるように、電気自動車にも燃料に相当する電気を貯めるための充電スポットが各所に存在します。自宅や公共施設を充電スポットとすることも可能です。
電気自動車には、スマホと同じリチウムイオン電池が使用されています。しかし、自動車の動力に利用するとなると、スマホとは比較にならないくらい多くの電気を消費します。
どれだけ多くの容量の電池を積み込めるかという「容積密度」、またいかに速く充電可能かという「充電速度」が、電気自動車の性能を左右すると言っても過言ではありません。
下記以外にもにも、海外では大手メーカーのみならずさまざまな新興企業が電気自動車産業に参入し、それぞれの特徴を打ち出した電気自動車の制作に邁進している状況です。
では、バッテリーの性能という観点から、各メーカーの特徴を見てみましょう。
■トヨタの電気自動車
国内メーカーの代表とも言えるトヨタですが、電気のみで走行する純電気自動車(=BEV)については未だ製品ラインナップにあがっていません。
ガソリンを燃料とするエンジン機構と駆動バッテリー&モーター機構を併用したプラグインハイブリッド車(=PHVおよびPHEV)であるプリウスを取り扱っています。
■日産の電気自動車
国産の電気自動車の牽引役として挙げられるのは日産と言えるでしょう。
主力である「リーフ」は2010年の発売当初、バッテリー容量が24kWhであったものがマイナーチェンジ・フルモデルチェンジを経て、2017年10月には容量40kWhのバッテリーを搭載した2代目リーフが発表されています。
発売から全世界で20万台以上が販売されており、世界で最も普及しているタイプの電気自動車です。
バッテリー容量40kWhタイプの航続距離はJC08モードで400kmとなり、長距離運転をしないユーザーに適していると言えるでしょう。
■三菱の電気自動車
三菱もまた、電気自動車に力を注いでいる国産メーカーです。
三菱のBEVである「ミーブ」のバッテリーは10.5kWhと16kWhの2種類があります。特に10.5kWhタイプは通常のリチウムイオン電池より充放電性能に優れた東芝製SCiBが用いられ、15分の充電で容量80%の蓄電が可能であり、充電速度を重視した方向性であると言えるでしょう。
バッテリー容量による航続距離は約60kWhとみなされ、充電の容易さと併せて鑑みれば、1日の走行距離が50km未満のユーザーに適しているでしょう。
■テスラの電気自動車
アメリカのテスラはBEV専門のメーカーです。
初作品である「テスラモデルS」は、1回の充電で航続距離500kmであったことが示す通り、長距離用BEVを志向したメーカーと言えます。
国土が広く、長距離運転のユーザーが多いという背景があるためでしょう。
電気自動車とハイブリッド車との違いは?
ハイブリット車であるトヨタ プリウス
「電気のみ」をエネルギー源とする純電気自動車(=BEV)と違い、プリウスなどのハイブリッド車(=PHVおよびPHEV)は「電気とガソリンの両方」をエネルギー源とします。
初期のハイブリッド車は、走行開始1~2kmは電気で動き、その後エンジンが始動しガソリン走行となるしくみで、電気の使用は限定的でした。
しかし、今では航続距離40kmまで電気のみで走行するタイプがリリースされています。
電気自動車の今後の課題とは?
東京モーターショー2019 「FUTURE EXPO」の様子
電気自動車の今後はどうなって行くのでしょうか?
現在、国際的に地球環境保全への対策が重視されており、各国は排出ガス規制を設けるなど、環境に悪影響を及ぼす化石燃料の使用を抑制する方向で働きかけている状況です。
これに応じて、自動車業界もEVシフトという言葉が示すように、従来のガソリン車から電気自動車へと移行して行く流れが年々強まって行く傾向にあると言えます。
まとめ
超小型EVを活用したカーシェアリング「チョイモビヨコハマ」
今回は、電気自動車の基本的な構造について振り返りつつ、電気自動車とハイブリッド車の違いや電気自動車の今後についてもお伝えして参りました。
世界的に自動車のEV化が促進されている状況を背景に、今後、日を追うごとに電気自動車がより身近なものとなっていくと言えるでしょう。