走行税って何?
車にまつわる税金
従来の自動車の所有やガソリンなどに対しての課税ではなく、車が走行する距離に応じて課せられる税金のことです。日本国内では2018年の年末頃に政府与党の法改正案の1つとして急浮上しました。
現在導入されている税制は燃料や所有物に対してのものばかりでしたが、走行距離に応じて課せられる走行税が議題にあがったのは、車自体の販売台数の減少が理由としてあげられます。
若者の自動車離れというワードが話題になってからある程度時期が過ぎ、自動車業界の消費の冷え込みが一段と深刻化しています。
バブル全盛期のように高級な自動車を持つことや一家に一台といった概念はもはや薄れ、都市部の交通機関の発達や駐車場の値上がりなども関係して、車を持たない人々が増えています。
レンタカーやカーシェアを利用し、実際に所有しなくても暮らしていけると感じる人が増加したのが原因です。これにより自動車を購入する代金やその際に発生する税金、また所持する上で発生する税金の額が減っていきます。
加えて、電気自動車やハイブリッドカーの増加により、ガソリン車が減少したことも税収減少の一端です。
走行距離による課税が導入されれば、これまでエコカー優遇制度により免税もしくは減税対象だった電気自動車・ハイブリッドカーからも、税収を得られる仕組みです。
自動車にまつわる税金が総じて減ったこと、これが走行税導入案が持ち上がった要因と言えます。
走行税の現状
現状を把握しよう
政府により法改正案の1つとして2018年の年末頃にあげられた走行税ですが、2019年度の3月末の税制改正大綱では見送りという扱いになりました。
そして、翌年の2020年度の税制改正大綱でも再び注目が集まりましたが、この時も同様に見送られています。その理由としては前回と同様で、課税のあり方は中長期的な視点に立って行うと述べられました。
ただし、電気・燃料電池自動車やハイブリッドカーが今後普及していくこともあって、石油にまつわる税収はさらに減少していくことは免れられません。目立った動きこそないものの、今後も議論がなされていくと予想されます。
■日本でも走行税は導入されるのか?
日本でも導入される日が来る?
現行の自動車税を、走行税へと変更するというのが政府によって検討されている改正法案です。以前より話題になっていた若者の自動車離れに加えて、カーシェアやレンタカーの利用者の増加による自動車の保有者の減少は、税収の減額における深刻な問題となっています。
さらには地球環境温暖化対策のための電気自動車普及の促進計画によって、ガソリン税の減少も拍車をかけているのが現状です。
これにより、自動車税の税収は年々減少していくことは回避できません。その対策として打ち出された案であり、他の案や対策によって税収減少が解消されない限りは導入案が毎年議論にのぼることは間違いないでしょう。
反対され続けている走行税のメリット・デメリット
実はメリットもがある人も・・・
税制法案が改正されることに対して、反対意見は非常に多いです。まず走行距離に応じた課税となった場合、その影響で電気自動車をはじめとするエコカーの税額が増えることに関してです。
普通車は排気量に応じて税金がかかり、排気量が0ccの電気自動車であっても1000cc以下に分類されています。しかし現状はエコカー優遇制度によって、免税もしくは減税対象となっています。
もし走行距離に応じた税金に法改正されれば、電気自動車やハイブリッドカーにも同様に税金が課せられるという訳です。加えて生活エリアによる、走行距離の差が考慮されていない点も多くの人々が気にしています。
都心とは異なり車での移動距離の多い地方在住者は、通勤や日常生活において自動車に依存している割合が高いです。ガソリンや排気量ではなく、走行距離による課税となれば負担は大きくなってしまいます。
さらには一般車両の他に、運送業界・流通業界にも大きな影響を及ぼします。商品の流通や運搬は、現状陸運業に頼っているため今後の価格にも影響し、生活を圧迫することに繋がりかねません。
■走行税のメリット
走行税を導入することで、私たちにメリットがあるケースを見ていきましょう。利点となるケースとして、自動車を所有してはいるもののあまり乗らないという人があげられます。
都市部や市街地に在住していて、電車やバスなど交通機関を併用している場合はほとんど影響がないばかりか、支払う税金が減る可能性もあるからです。
■走行税のデメリット
メリットに反して、走行税が導入された際のデメリットは多いです。現在でもかなりの種類が存在する自動車税ですが、さらに自動車に対しての税金が増えてしまうことがあげられます。普段遠出をすることが多かったり、通勤などの移動距離が多い人は大きな損額となるでしょう。
加えて自動車しか移動する手段がない、地方在住者にとっても大きな負担がかかるというデメリットがあります。運送業者にも負担がかかり、その分配送料や物価にも影響が出ることも大きなデメリットです。
これに加えて、現在以上の車離れが進む可能性も高いです。走行した距離をどのように申告するのか、という問題も解決していません。
GPSを搭載して走行距離を計測するという案もあるものの、個人のプライバシーを侵害する恐れがありこちらも課題が残っています。
走行税の対象車両は?
エコカーはどうなる?
現状では全ての車両に課税されるのか、ドイツのように一部の種類の車両にのみ適用されるのかは明確になっていません。これまでに打ち出している政府のエコカー減税が、現在の問題へと繋がっています。
もし、その政策がなければガソリン車に対しての税制になったかもしれませんが、自動車そのものに対する税をはじめ自動車税全体が減少している現在、あらゆる車両に対して課せられる可能性があります。
二酸化炭素の排出量を減らすという世界的な課題があるため、従来のガソリン車に対してこれまで通り税金をかけていくという姿勢は変わりないでしょう。
■現在、車にかかる税金は?
走行税に関して見てきましたが、ここで現在の車にかけられている税金に関してもおさらいしていきます。自動車の購入時に発生する消費税を皮切りに、揮発油および石油ガス税などの税金があげられます。
ほかにも、自動車重量税や自動車税も忘れてはいけません。全国各地の都道府県が管轄しており、毎年4月1日の時点で自動車を所有していれば等しく課せられる税金です。
金額は軽自動車の場合は10,800円で、普通車の場合は排気量によって異なり最小であれば29,500円から、最大で111,000円となっています。
まとめ
クルマにまつわる様々な税金を知っておこう
走行税は化石燃料の問題と、新しい車社会の形を問いかける課税の形の1つになる可能性を秘めています。
一方で地方在住者と都市部在住者とのギャップや、エコカーとガソリン車との格差を埋める必要があるなど課題も多いです。
他にも走行距離の正確な測定や、対象となる車両の選定など未だ議論されており注目を集めています。