そもそもピラーとは?
トヨタ ラウム
車の部分的な名称については、耳にした事があっても実際はどの部分を指しているのか?どの部分の事を指しているのか?などわからない方も多いのではないでしょうか。そもそもピラーとはどこを指すのかと言うと、英語のPILLAR=支柱・柱を意味します。
車で言うところの車体と屋根をつなぐ、柱の事をピラーと呼んでいます。また、柱としての役割だけでなく安全性に直接かかわる大事な部分となっており、その場所によって呼び方が異なります。車の前方からA、B、C、…とアルファベット順でそれぞれのピラーを呼ぶのが一般的です。
Aピラーの必要性は何?
Aピラーの必要性は何?
先ほども述べた通り、ピラーの役割は車の車体と屋根をつなぎ支えることです。これ以外にも、前面衝突時の衝撃吸収構造の一部であったり、フロントガラスの保持をするといった大切な役目を担っています。
衝突時に車体が変形すると、キャビンスペースを圧迫し、乗員の生存空間が減少します。そのような状況を防止するために、車体の衝撃吸収構造の一部であるAピラーは、キャビンの変形を抑える役割を果たします。
また、万が一車が横転し逆さになったとしてもピラーが支えてくれるので屋根が潰れるといったことが軽減され、乗っている人を守る事ができます。
■もちろん車体剛性のため!
剛性とは、変形しにくい事を示す強さの事です。車の車体には、剛性が重要なポイントとなっています。
走行中の車体は、路面から受ける衝撃を受け続ける状態となりサスペンションやタイヤが吸収できない振動は車体に伝わります。
この状態の場合、剛性が低いと車体は震えてしまうため乗り心地が悪くなってしまいます。逆に剛性が高ければ、衝撃を受け止めて外へと逃がすため振動が伝わりにくくなり、固さが同じサスペンションであっても足の動きが良くなり乗り心地は良くなるという事につながります。
■近年ではエアバッグの設置場所にも
現在、日本でのエアバッグの主流となっているのはフロントに設置される「SRSエアバッグ」です。シートベルトを着用している場合の補助として衝突の衝撃を和らげます。
しかし、フロントエアバッグでカバーできるのは衝突の一部に限られているため正面からの衝撃には反応しますが横からの衝撃には対応できません。
最近では「サイドエアバッグ」や「カーテンエアバッグ」などのシートのドア側に搭載されるものが出ており標準装備している車種も増え始めています。特徴としては、フロントと同じくシートベルトを併用し横からの衝撃を軽減します。
カーテンエアバッグの場合はドア上部のルーフラインに搭載されるもので、衝撃を感知したらドアとシートの間にブラインドがブラインドのようにエアバッグが下り瞬時に開きます。
交差点やカーブでAピラーが邪魔で見通しにくい?こんな変わり種も!
ダイハツ ミラ
様々な形のAピラーがありますが、やはり交差点や右折や左折をする際に歩行者や外界の状況を確認するには見えにくいという声が良く聞かれます。しかし、前述した通り支柱としての役割があるためAピラーを無くすという事が難しいのです。
そこで、ピラーの形を遠くしたり・細くしたりしたり・角度を変えてみたりと様々な形が存在します。では、次項ではその一部をご紹介していきましょう。
■Aピラーを細くした車
死角を最小にするためや、はたまた車のデザインとしての個性を引き立てるために各メーカーの特徴を色濃く醸し出すピラーですがそれぞれの開発技術の進歩によって、さらに進化しています。
極細ピラーのホンダ フィット(2020年から)
ホンダ フィット ネス
新型フィットのAピラーはドライバーから見えるピラーの太さが先代と比べ116mmから55mmと極細となっています。構造としては、極細のAピラーはフロントガラスを支えることに専念し、衝突安全性はその後ろにある「Aダッシュピラー」を太くすることで担保しています。
そのため、ホンダ調べで先代の前方視界が69度だったのに対して、新型では90度に広げることができ、コーナーなどでも先が見通しやすく対向車も見つけやすくなっています。
フィットについて詳しく知りたい方はこちら
見え方を薄くしたホンダ N-BOX(2018年から)
ホンダ N-BOX
現行N-BOXでは、上に挙げた新型フィットに先んじて、Aピラーを細くして視界を広げる設計が行われていますが、開発中に「細すぎるAピラーは安全性への不安を感じさせかねない」ことが分かったそうです。
そのことから、視界の広さと安心感のバランスをとるために、Aピラーの太さをmm単位で調整し、量産車では細さが55mmに設定されています。
また、車左前方の死角を写すサブミラーがAピラーに埋め込まれていることも特徴的です。これは室内側のミラーとドアミラー外側のミラーの組み合わせによるもので、スマートな見た目を実現しています。
N-BOXについて詳しく知りたい方はこちら
■Aピラーのない車
Aピラーがない車とは、どういったものか?実際、ピラーがないとなると窓枠もない事になるのですがオープンカーなどといった車でも窓枠と一体化したピラーが使用されています。では、該当する車とは次でご紹介するアリエル アトムという車種になります。
アリエル アトム
アリエル・アトム4
アリエル アトムとは、アリエル・モーター・カンパニーという会社の代表的な車の事です。特徴は、屋根もドアもなくタイヤは剥き出しという外観でぱっと見はF1のような見た目となっています。
そもそも公道を走行できるのか?という疑問も生じますがこれが走る事ができるのです。いうなれば、公道を走れるフォーミュラカーというところです。
■早く実用化して!Aピラーを透明にする未来技術
トヨタの米国子会社TEMAはAピラーを光学的に消してしまう技術を考案しこれを特許出願しました。
この技術をAピラーに適用する事ができれば、死角となる歩行者や対向車などがさえぎられる事なく見える状態になります。
しかし、現在のところコストが高く複雑で消費者向けの実用化は難しいと言われています。
コンチネンタル バーチャルAピラー
コンチネンタルのバーチャルAピラー
コンチネンタル社が開発したAピラーは、簡単に説明すると外部のライブ映像と運転者の動きからバーチャルで映像を投影させるものです。まず、運転者の動きをステアリングホイールの上に取り付けられたインテリアカメラで動きを追跡します。
同時に車両の外側に取り付けられたカメラで捉えた外部の映像をAピラーに埋め込んだOLEDディスプレイに投影する仕組みです。外部の画像と運転者の頭部の動きによって視点を提供し、ウィンドウを見ているような体感をする事ができます。
キア GT4スティンガー コンセプト
キアGT4 スティンガー
デトロイト・モーターショーで発表されたキアの2+2のRWDモデルです。
サーキットでも一般道でも楽しめる車だとされ、デザインはキアのトレードマークと言われるタイガーノーズと垂直のLEDランプが特徴とされています。また、フロント・スプリッターと20インチのホイールを持っています。
この車のAピラーは、フロントドア直前という車体後方側に寄せられた位置に設置されドライバーの死角を減らしているほか、ピラー自体が格子状になっており、強度を確保しながらこれまで遮られていたピラーの向こうを見ることができるという提案がされていました。
まとめ
キア GT4 スティンガー
Aピラーが進化する事で、死角となる部分が減っていけば歩行者や対向車に限らず外部の状況が見やすくなる事で事故や接触が軽減されていくでしょう。
車体の剛性を失う事なく安全性も同様に叶えられるAピラーの実用化が求められています。