FFライトウェイトスポーツの元祖、CR-Xの魅力とは
ホンダ バラードスポーツCR-X(1983年)カタログ
全長4m以内の超コンパクトなボディによる軽量さと低重心さ、それによってターボなしのエンジンでも痛快なパフォーマンスと、ライトウェイトスポーツの鑑のようなスポーツクーペが、ホンダ CR-Xでした。
ただコンパクトなだけでなく、ホンダらしいボンネットの低さと、初代や2代目ではキャビン後部をスパッと断ち切った大胆なボディデザインは、後席の居住性などの実用性を思い切って捨てて実現したものです。
もとより小排気量エンジンでも運転の楽しさを持ち合わせていたCR-Xですが、後にホンダのスポーツグレードとしても有名になる「SiR」が2代目から設定されるなど、より走りを極めたグレードが設定されていた点も特徴的です。
CR-Xとしては3世代続いたのですが、クーペ市場の縮小と、軽量コンパクトな低燃費車を作る必要が薄れたこともあり、1999年に惜しまれながら生産が終了してしまいます。
■後継車はCR-Z、生産が終了していますが今後に期待!?
ホンダ CR-Z(2012年型)
2000年代ではCR-Xは不在のままでしたが、2010年に車名が変わった事実上の後継車、CR-Zが登場しました。
軽量なボディを活かしてガソリンエンジン車ながら低燃費を絞り出していた先代たちとは異なり、CR-Zは、1.5リッターの低燃費エンジンに「IMA」ハイブリッドシステムを組み合わせたハイブリッド車になりました。
CR-X譲りのスポーティなルックスと、2.0リッターガソリンエンジン並みの加速性能を持ち合わせるハイブリッドシステム、そしてハイブリッドながら6速MTも用意されるなど、スペックは文句なしだったのですが、もはや存在しないに近しい小型クーペの市場規模が災いし、2017年に生産終了しました。
もはや復活はあり得ないと思われていましたが、なんと2020年7月、ホンダが米国にてCR-Zの商標登録を申請していたことが報道されています。
権利保持のための申請の可能性もありますが、もしかして?!に期待して、続報を待ちたいところですね。
CR-Xの歴史、カミソリハンドリングと高回転エンジンの融合
今や初代のデビュー時期は30年以上も前のこと。その間ホンダは、自動車メーカーとしても企業としてもどんどん拡大路線を突き進み、現代ではこれぞホンダだよね!と胸を張って自慢できる車種がどれほどあるでしょう。
今でも継続した人気を誇る80〜90年代のホンダ車の華の一つ、CR-Xの歴史を紐解いていきましょう。
■初代「バラードスポーツCR-X」(1983〜1987年)
ホンダ バラードスポーツCR-X(1983年)
近年ではめっきり見なくなったボディ下部を塗り分けるツートンも眩しいこちらが、初代CR-X。
正式には、ホンダの小型車、シビックの姉妹車であるバラードの派生車種として誕生したため、「バラードスポーツCR-X」という長めの車名です。バラード同様、シビックと似たスラントノーズなフロントフェイスながら、一部が迫り上がるセミリトラクタブルヘッドライトを装備していました。
バラードより低められたルーフ高や、あまりにショートホイールベースなため、登録上は4人乗りなのですが、実質リアシートは荷物置き専用。
強めにスラントされたテールゲートのリアガラスが頭上に迫っていることも相まって、小柄な方であっても後部座席に座ると頭上空間はほぼ存在せず、事実北米輸出仕様では潔く2シーターとして販売されていました。
そんな貴重な頭上空間を確保しつつ豪華装備であるサンルーフを追加するため、アウタースライド式のサンルーフが採用されました。
これは一般的に、サンルーフを収納する場所はルーフ内側のため、サンルーフ装備車では天井高が低くなるのが通例なのですが、そんな余裕のないCR-Xにはぴったりの方式。同様のボディスタイルを採用した2代目にあっても採用されたこのサンルーフは、CR-Xの特徴のひとつともなりました。
ホンダ バラードスポーツCR-X(1983年)
横から見れば分かるとおり、極端に短い全長は、まるでチョロQを思わせるようなおもちゃのようなルックスに。
スパッと切り落とされたテール部は、カムバック等と呼ばれる技法で、往年の欧州クーペにも見られた美しいスタイルを実現しています。
全長はわずか3.7m、ホイールベースに至っては2.2mと、スマート・フォーツーのようにより起き上がった姿勢で座る車両を除けば、異様なほどに短いその寸法は、実用性としても、運動性能としても、CR-Xの特徴を作り上げたものでした。
特に短いホイールベースによるクイックなハンドリングは、CR-Xをただのコンパクトクーペではなく、スポーツクーペとして特徴付けた部分でしょう。
普段使いにも、たまに峠道を走っても様になったCR-Xは、FFライトウェイトスポーツというジャンルを自ら切り拓いた革新的な車でした。
ホンダ CR-X(初代)のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,675mm×1,625m×1,290mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,200mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 860kg | |
燃費 | 10モード:14.8km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒 1,590cc | |
エンジン最高出力 | 135PS/6,500rpm | |
エンジン最大トルク | 15.5kg・m/5,000rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 5速MT |
■2代目「CR-X」(1987〜1992年)
ホンダ CR-X(1987年)
先代のヒットを受け、同一路線ながらグッと洗練されて登場したのが2代目CR-X。バラードが1986年に消滅していたこともあり、サブネームは付かなくなりました。
先代よりも長く、幅広くしつつも全高を下げた結果、やや腰高感もあった初代とは違い、低く構えたワイドなスタンスで、よりスポーツ感が増した戦闘的なルックスを手に入れました。
ボディ下部がグルリと車体一周に渡ってブラックアウトされていたことも、よりボディの薄さを強調していますね。
現代においてもトヨタ プリウスなどのボディ後部が分厚めの車に採用されている、リアガラスよりも下側に設置される「エクストラウインドウ」は2代目の外観上の特徴。
初代ではかなり劣悪だった後方視界を大幅に改善しつつ、車両後方から見た時にCR-Xだと一瞬でわかる、独特の表情を手に入れました。
ホンダ CR-X(1987年)
先代で用いられたアウタースライドサンルーフも引き続き採用されたのですが、2代目CR-XではUVカットガラスをルーフ部に装着する「グラストップ」も用意されていました。
屋根の低い小型クーペながら、開放感のあるサンルーフやガラスルーフを積極的にラインナップしていたのは、ホンダの配慮が行き届いた部分でした。
2代目の大きな特徴は、モデルライフ途中で設定されたグレード、「SiR」。それまでも設定されていたSiとは違って新たにVTECを備えた1.6リッター 直列4気筒DOHCエンジンを搭載したSiRは、名前こそ違えども後年のタイプRのようなカリカリのスポーツグレードでした。
最高出力は、1.6リッターの自然吸気エンジンながら160PSと、超ハイパフォーマンスエンジンの基準の一つとも言われるリッター100馬力を達成。1.0トン以下の車重というコンパクトボディをグイグイ加速させるのには十分すぎる高性能でした。
ホンダ CR-X(2代目)のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,800mm×1,675m×1,270mm | |
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ホイールベース | 2,300mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 970kg | |
燃費 | 10モード:13.4km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒 1,595cc | |
エンジン最高出力 | 160PS/7,600rpm | |
エンジン最大トルク | 15.5kg・m/7,000rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 5速MT |
■3代目「CR-Xデルソル」(1992〜1999年)
ホンダ CR-Xデルソル(1992年)
誰が言ったか、ホンダ車は初代は爆発的に大ヒットしても、2代目や3代目では失速しがち。
CR-Xの場合は、同様のコンセプトでどんどん先鋭化が進んだ初代と2代目はヒットしましたが、あえて別のコンセプトに挑戦した3代目、CR-Xデルソルは、国内クーペ市場規模の縮小も追い打ちをかけてしまい、あまり好調な販売実績を残せませんでした。
3代目の特徴はなんと言っても、先代までの申し訳程度のリア2席を無くして完全な2シーターとしたことと、タルガトップ形式のオープンカーとなったことでしょう。手動取り外し式ルーフ仕様も用意されていましたが、このモデルの花形は「トランストップ」と呼ばれたルーフ自動格納メカニズム。
トランクリッドがルーフ以上の高さまで持ち上がり、ルーフが電動で後方にスライドしていってトランクリッド下に収納されるというトランストップは、動きを見ていれば興味深いし面白いですし、手間なく気軽にオープンにできる点はメリットですが、必要以上に複雑な機構だったのかもしれませんね。
ちなみにデルソルというサブネームはスペイン語で「太陽の」という意味とのこと。オープンカーへの転換を名前からもしっかりアピールしていたというわけですね。
ホンダ CR-Xデルソル(1992年)
フロントフードの低さはCR-Xの伝統ですが、車体後部のデザインも相まって、まるでミッドシップ車のような独特なフォルム。どことなく、同様の時期に発売されていたミッドシップ軽オープンカー、ビートとの関連性も感じられるかもしれません。
先代よりもさらに長く、広く、低くなってはいるのですが、スポーティ感というよりは親しみやすさ、キュートさの方が際立って感じられるのでは。睨みの効いていた先代までとは異なり、楕円形のヘッドライトも、ややファニーな表情を作り出していました。
とはいえ、先代から引き続き設定されたSiRは排気量そのままに最高出力が170PSに向上。大型化もあってやや重くなったとはいえ約1.1トンの軽量ボディは、CR-Xデルソルならではのドライビングフィールをドライバーに提供してくれました。
映画ワイルドスピードなどでの登場もあり、新車販売が終了した2000年代に入ってから再評価が進み、近年では市場でも稀少性が上がってきている、シリーズ中でも異色の存在です。
ホンダ CR-Xデルソルのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,005mm×1,695m×1,255mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,370mm | |
最大乗車定員 | 2名 | |
車両重量 | 1,150kg | |
燃費 | 10・15モード:13.6km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒 1,595cc | |
エンジン最高出力 | 170PS/7,800rpm | |
エンジン最大トルク | 16.0kg・m/7,300rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 5速MT |
■後継車「CR-Z」(2010〜2017年)
ホンダ CR-Z(2013年型)
かなりのタイムラグを経て、その上ハイブリッドシステム搭載という飛び道具を得て登場したのが、事実上の後継車であるCR-Z。
CR-Xの後継車であることを具体的にアピールしてはいなかったのですが、見ればわかるとおり、初代と2代目のCR-Xへの愛を感じるコンパクトでローアンドワイドなボディとカムバック形状の車体後部は、まさにCR-Xの血統にふさわしいですよね。
CR-Z独自の魅力としては張り出したリアフェンダーが挙げられるでしょう。短めのリアオーバーハングと組み合わさって、かなりマッチョで力強い印象を与えていますよね。
初代・2代目のサンルーフ、3代目では屋根ごと取り外せてしまうという開放感へのこだわりは3代目でも健在。前席頭上をカバーする大きめのガラスルーフ「スカイルーフ」が用意され、暗くなりがちな室内に開放感をもたらしていました。
ホンダ CR-Z(2012年型)
先代までのSiRのようなホットグレードがない点や、2.0リッターエンジン相当の加速性能とはいえ高回転まで回して楽しめるスポーティなエンジンではなかった点など、CR-X譲りのスタイリングに反して性格はあくまで「スポーティ」に留まった事もあり、CR-Xのファンからは厳しめの意見も多く見られたCR-Z。
ハイブリッドシステム搭載のMT車という特異性故か、クラッチを切るとエンジン回転数がドライバーの意図しない動きをする場合があったり、バッテリーの充電を使い切ってしまうと一気にただの低燃費エンジン車に変貌してしまう点も、あの名車CR-Xの再来か!という高い期待を持って触れた人にはやや拍子抜けだったのかもしれませんね。
しかし、そのスタイリングの魅力と、ハイブリッドシステム搭載という先進性は、普段乗りの速度域であっても楽しめる貴重なスポーツクーペとして魅力的なものでもありました。
惜しまれながら2017年に生産終了してしまいますが、リチウムイオン電池搭載などで完成度の高まった後期型では特に、中古車でも高値安定で推移しています。
ホンダ CR-Zのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,105mm×1,740mm×1,395mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,435mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 1,150kg | |
燃費 | JC08モード:20.6km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒 1,496cc | |
エンジン最高出力 | 88kW(120PS)/6,600rpm | |
エンジン最大トルク | 145N・m(14.8kg・m)/4,800rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 15kW(20PS)/2,000rpm | |
モーター最大トルク | 78N・m(8.0kgf・m)/1,000rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 6速MT |
世代別、CR-Xの中古車相場まとめ|古くても高値安定!
ホンダ バラードスポーツCR-X ラリー仕様(1985年)
もはや販売初期のものでは40年近い車齢となっているCR−Xは、中古車市場でもどんどん稀少性が増しています。2020年9月現在の中古車市場では、CR-Xはデルソルまでの3世代合わせてたったの23台。もはや程度の良し悪しで選ぶような贅沢が言える状況ではなくなってきています。
中でも貴重なのは初代のバラードスポーツCR-X。なんと現在たったの3台しか在庫はなく、平均価格は約141万円と高値。在庫数的には3世代のCR-Xで最多の12台がある2代目でも平均価格は158.2万円とどちらも旧車としてのステータス性が加わり始めている様子です。
まだ価格的に選びやすい3代目のCR-Xデルソルでも平均価格は101.9万円。これら3世代は、これからも車両価格が下がることはなさそうな雰囲気を感じさせます。
そこでおすすめしたいのが、在庫台数も豊富で価格もこなれてきているCR-Z。中古車平均価格は73.4万円と、新車価格を考えればかなり落ち着いていますし、欲しい色やグレードなども選びやすいです。
CR-Zの中でも特におすすめなのが、2012年の改良以降のモデル。ハイブリッド用バッテリーがより電圧の高められたリチウムイオンバッテリーに換装されて動力性能が向上しているほか、長期的な視点で見てもバッテリー容量の低下が少ないことが見込まれています。
逆に2010〜2012年の初期モデルは、価格的にはかなり落ち着いているのですが、ハイブリッド用バッテリーの容量に不安のあるものもありそう。ご購入前にはきちんと確認しておきたいところですね。
※価格は2020年現在のものです
まとめ
ホンダ バラードスポーツCR-X(右)、バラード(左)カタログ
やっぱり、ホンダには走って楽しめる、お手頃な値段の車を作って欲しいと思うのは筆者だけでしょうか。NSXやシビック タイプRはもはや大衆車とはいえず、どちらもターボエンジン車。
高回転までギュンギュン回してこそのエンジンと、軽量コンパクトボディによるスーパーハンドリングを持って、庶民でも購入できるようなトータルパッケージの車はもう今後は登場しないかもしれず、残されたCR-XやCR-Zを大事に大事に愛でていきたいところですね。