車間距離とは
車間距離について詳しく知ろう
車間距離とは、「車を運転している際に先行車との間に維持する距離」のことです。
道路交通法第26条に規定されている「車間距離の維持」によれば、車間距離について次のように記載されています。
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
このように、「前の車が急停車した場合でも追突しないための距離を確保する」というのが車間距離を保つ目的のひとつです。
ただし、車間距離をどのくらい空けなければならないのかについての明確な規定は今のところありません。大まかな目安は一般道と高速道路、路面状況、走行スピードによってさまざまですが、後ほど解説します。
車間距離の詰めすぎは事故のリスクを増大させる
事故に繋がることも・・・
高速道路でドライバーが検挙される理由の上位に、車間距離の不保持が含まれています。令和元年度における1位は「最高速度違反」、2位は「通行帯違反」、3位が「携帯電話等使用」、4位が「車間距離の不保持」であり、高い頻度で適切な車間距離を確保しないドライバーが居ることが見てとれます。
もちろん意図的に先行車との距離を詰めすぎるケースもありますが、前述のとおり明確な距離が規定されていないこともあり、「このくらいなら大丈夫だろう」と考えたドライバーが先行車に先行しすぎて摘発されるケースも少なくありません。
交通事故においては追突の発生率も非常に高く、車間距離を保たないことにより急停車に対応できず、結果的に追突事故を招いてしまうパターンが多いといえるでしょう。
車間距離不保持で課される罰則
罰則に課されることも?!
平成21年までは道路交通法で規定される高速道路等での車間距離保持義務違反による罰則は今よりも軽く、「5万円以下の罰金」とされていました。しかし道路交通法が同年の10月1日に改正となってからは罰則も重くなり、交通違反による減点と罰金もより厳しいものとなっています。
現在は「3ヶ月以下の懲役または5万円の罰金」となり、懲役刑を科せられる可能性があることを覚えておきましょう。ここでは一般道と高速道路に分けて、それぞれの具体的な違反点数と罰金について解説します。
■一般道
一般道で車間距離不保持に違反した場合、大型車、普通車、二輪車、原付によって罰金の金額が異なります。大型車は7,000円、普通車と二輪車が6,000円、原付が5,000円であり、大型の車であるほど罰則は重いといえるでしょう。
違反点数はどの車であっても共通して1点となります。ただし、車間距離の不保持と同時にあおり運転などを行った場合は即時運転免許の取り消し措置が実施される可能性もあるため、先行車との距離を詰めてあおる行為は厳禁です。
■高速道路
高速道路で車間距離不保持に違反した場合の車両の区分は大型車、普通車、二輪車の3種類となります。大型車は12,000円、普通車が9,000円、二輪車が7,000円であり、一般道に比べると罰金が高くなるので注意が必要です。
違反点数はどの車であっても共通して2点となり、こちらも一般道より重い罰則が適用されます。高速道路の方が危険性が高く、事故が起こった際に重大化するリスクが大きいための措置ともいえるでしょう。
あおり問題が社会問題化した経緯もあり、あおり運転についての罰則も以前に比べて強化されています。令和2年6月からあおり運転には「妨害運転罪」が適用され、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が課せられるようになりました。
先行車だけでなく、周囲を走行する車を明らかに妨害したりプレッシャーを与えたりする意図であおると酒気帯び運転と同等の違反点数が減点される可能性もあるので、車間距離の保持は大切です。
適正な車間距離はどのくらい?
適正な距離をしておこう
走行中の車はブレーキをかけてすぐに止まることは難しく、空走距離と呼ばれる「ドライバーが危険を認知してからブレーキが効き始めるまでに進む距離」と、制動距離と呼ばれる「ブレーキによって減速し始めてから停止が完了するまでに進む距離」が発生します。
空走距離はドライバーが「ブレーキペダルを踏まなければ」と判断するまでの時間の後にブレーキペダルを踏み込むまでの時間となるため、ドライバーがどれだけ迅速に判断を下せるかによっても大きく左右されます。体調が悪かったり、他のことに気を取られたりしていると長くなりやすいでしょう。
一方で、制動距離は人間の判断とは関係なく車体の重量やブレーキの精度、タイヤや路面の状態などによって変化します。速度の2乗に比例して距離が延び、走行中のスピードが速ければ速いほど停止するために長い距離が必要です。
一般的には路面が雨で濡れていたり、凍結していたりすると滑る分だけ制動距離は長くなるでしょう。タイヤが摩耗している状態で雨に濡れた路面を走行すると、乾燥時の2倍ほど停止距離が長くなるケースもあります。
以上のことから、停止距離を考慮した上で適切な車間距離を取ることが重要になります。先行車がトラックで積み荷が落下しても対処できる程度の安全な距離が望ましいでしょう。
ここまでの情報を踏まえた上で、一般道と高速道路の適切な車間距離の目安をご紹介します。
■一般道
一般的に、乾燥していて舗装されている道路であれば「速度計の走行速度 - 15(m)」が適切とされています。例えば40km/hなら25m以上の車間距離となります。ただし、60km/hを超える速度で走行している場合は速度と同じだけの車間距離を取るのが良いとされています。例えば80km/hなら80mです。
前述のとおり雨や雪などで路面が濡れている場合は、乾燥時の計算式で求めた距離の2倍を目安に車間距離を取ると良いでしょう。
■高速道路
高速道路でも基本的には一般道と同様に「走行速度と同じだけの車間距離を維持する」ことが望ましいといわれています。時速120km/hなら120m、時速90km/hなら90mであり、路面が濡れている場合の考え方も一般道と同様です。
高速道路には「車間距離確認表示板」と呼ばれる車間距離を測るためのボードが設置されているため、先行車との車間距離が適切に保たれているかを定期的に確認すると良いでしょう。
一般道でも車間距離が詰まりすぎている状態は望ましくありませんが、高速道路ではさらに危険が伴います。非常に速い速度で走行するため、追突事故が命の危険につながるケースも少なくありません。車間距離にはいつも以上に気を配り、万が一のリスクに備えることが大切です。
車間距離を「2秒ルール」で測る方法もある
2秒ルールって何?
車間距離を走行速度を基準にして測る方法について紹介しましたが、高速道路の車間距離確認表示板などがないと正確な距離を測るのは難しく、車種やドライバーの感覚によっても誤差が出やすいという側面もあります。
また、「100km/hで高速道路を走行しているときに速度と同じ100mの車間距離を保つと、割り込みのリスクが上がって危険性が高まるおそれもある」とする説もあるため、一概に車間距離を広く取ることが正しいと言い切るのは危険だといえるでしょう。
そこで、車間距離を時間で測る「2秒ルール」という考え方を採用しているドライバーも居ます。先行車が標識などの指標となりやすいものを通過した瞬間から、自分がその指標を通過するまでの時間を計測することで、車間距離が適切かどうか判断する方法です。
例えば電柱を先行車が通過した瞬間を「0」とすると、自分が電柱を通り過ぎる際に2秒以上経過していれば安全な車間距離を維持できていると判断できます。
路上が混雑している場合は2秒程度、スムーズに流れていれば2秒以上、停止距離が比較的長い大型車は3秒以上を目安にするのが良いといわれています。全国の警察署でも2秒ルールに基づいた安全運動が実施されている地域もあるため、距離で測る方法と併せて取り入れてみると良いでしょう。
埼玉県警の「0102運動」においては、2秒を数える際に「0、1、0、2」と数えることでより正確な秒数を測れると指摘しています。
まとめ
車間距離をあけてドライブを楽しもう!
車間距離を適切に維持するための目安についてお伝えしてきました。毎年数多く起こる交通事故の中でも車間距離の不保持が原因の追突事故は件数が多く、先行車と距離を詰めすぎることのリスクの高さを物語っています。
車間距離の測り方には距離を基準にした方法と時間を基準にした方法の2種類あるため、状況に応じて2つの方法を使い分けると良いでしょう。常に一定の車間距離を維持することで、不慮の事故に対するリスクを大幅に軽減できます。