パドルシフトとは
パドルシフト付きのステアリング
時代とともに変化するのは車のデザインやエンジンなどの動力だけではありません。近年では、運転をサポートしてくれる機能の進歩が注目されるようになっています。
特に、運転の方法は時代とともに変化し続けています。一昔前であればMT車が主流でシフト操作が必須でしたが、現在ではAT車が一般的になり、アクセルとブレーキの操作だけでも加減速の基本的な操作が可能となりました。近年では自動運転機能なども実用化されるようになったこともあって、運転スタイルは常に変化し続けているのです。
そんな進化している運転操作の中でも近年多くの車に採用されるようになっているのがパドルシフトで、ハンドルから手を離すことなくシフト操作ができる機能です。
前述の通りAT車が主流になったとはいえ、シフト操作を必要としているケースも少なくありません。そんな方にとってパドルシフトは魅力的な機能であると言えます。
■パドルシフトの仕組みと使い方
パドルシフトにもいくつかのタイプがありますが、現在一般的になっているのが「ハンドルの左右の裏側付近に備えられたレバーによってシフト操作を行うことができる」というものです。モデルによっても異なりますが、ほとんどの場合は右側のレバーにシフトアップ、左側のレバーにシフトダウンが割り当てられています。
基本的にAT車は自動でギアが切り替わる仕組みになっていますので、ドライバー自身が操作しなくても適切なギアでの走行が可能となっています。しかし道路状況などによってはシフトダウンなどの操作が必要となるケースもあり、ほとんどのAT車ではシフトノブである程度の操作ができるようになっています。
シフトノブによってギアチェンジを行う場合、当然片手をハンドルから離して操作を行う必要があります。それに対してパドルシフトであればハンドルから手を離す必要がありませんので効率的ですし、安全性も高まります。
■最初にパドルシフトを搭載したのはフェラーリ?
近年ではさまざまな車種にパドルシフトが搭載されていますが、最初に市販車に導入したのはイタリアを代表する高級車として知られるフェラーリだと言われています。フェラーリでは1989年にこの技術をF1カーに用い、その後1997年には「F1マチック」という名称でF355というモデルに採用しました。これがパドルシフトを搭載した最初の市販車と言われています。
それ以降、パドルシフトはスポーツカーや高級車などを中心に採用され、多くのユーザーの支持を集めることになりました。
■パドルシフトのメリット
AT車の場合はあまりシフト操作をする必要がないため、メリットを感じないという方も多いかもしれません。実際にAT車に乗っている方の中には、シフトノブで変速操作をしたことがないという方もいるでしょう。
しかし指先だけで簡単にシフト操作を行うことができるのであれば、下り坂などでシフトダウンを行って有効にエンジンブレーキを活用することができます。
エンジンブレーキの活用はMT車においては一般的ですが、AT車ではフットブレーキに頼りきりであまり使うことがないという方も多いでしょう。しかしフットブレーキに頼りすぎると当然ブレーキパッドの摩耗が早くなりますし、長い坂道などではブレーキの摩擦熱によって一時的に効きが悪くなるフェード現象などが引き起こされ、危険です。
パドルシフトによってエンジンブレーキをうまく活用できれば、こういった問題が解消されやすいというメリットがあります。
しかしエンジンブレーキを使用する際には注意も必要となり、エンジンブレーキを使ってスピードを落とすためにはシフトを1段階ずつ下げていく必要があります。一気にシフトダウンすると急激に回転数が上がってしまいますので、車に悪影響を及ぼします。
そのため、パドルシフトが搭載されたAT車の多くでは急激なギアチェンジはできないようになっています。つまり、操作したからといって必ずすぐにギアが切り替わるわけではなく、過信はできません。
さらにシフトを操作することによってより「車を自分で操っている」という感覚になり、単純に「走り」を楽しみやすくなるという点もメリットです。実際にパドルシフトは、スポーツ走行を楽しみやすいスポーツカーなどを中心に採用されています。
■パドルシフトのデメリット
パドルシフトはメリットばかりではなく、もちろんデメリットもあります。
モデルによってはパドルシフトが標準装備されている場合もあります。手動でのギアチェンジを必要としないドライバーなら、パドルシフトはいらないからその分価格を下げてほしいと思う方もいることでしょう。。慣れの問題ではありますが、人によってはストレスに感じてしまうかもしれません。
加えて、AT車の中でも近年増えているCVT車の場合、パドルシフトをあまり頻繁に使用すると車に悪影響を及ぼすケースがあります。実際に、パドルシフトが搭載されているモデルであっても頻繁な使用が推奨されていないケースもありますので、事前に説明書などを確認しておく必要があります。
パドルシフトの上手な使い方
使い方は?
近年ではパドルシフトを搭載した車も多くなっています。標準装備になっているケースも増えていることから、搭載されていてもあまり使用しないという方もいるようです。
使うことがあっても、どのように活用すればいいのかわからないというケースもあるでしょう。続いてはパドルシフトの上手な使い方をご紹介します。
■こまめなシフト操作に
前述の通り、パドルシフトの最大のメリットはこまめにシフト操作を行えることです。そのため、この機能を活かす上で重要となるのは文字通りうまくシフトチェンジを行うことです。
うまくシフトチェンジを行えば上り坂などもよりパワフルに上ることができますし、長い下り坂などでも自然とエンジンブレーキを使用することができます。慣れてくれば、走行時のストレスを大幅に軽減することができます。
シフトチェンジを過剰に行う必要はありませんが、うまく活用することによってよりドライブを快適なものにすることができるでしょう。
■よりエコなドライブが可能?
前述のこまめなシフトチェンジと関連しますが、うまくシフトを切り替えることができればよりエコな運転も可能となります。常に適切なエンジン回転数でドライブをすることができれば、当然燃費は向上します。
もちろん、シフト操作をうまく行えなければ逆に燃費が悪化してしまうケースもあります。
今日のAT車はとても優れていますので、特別に操作しなくてもエコドライブが可能となっています。そのため極端にシフトチェンジにこだわる必要はありませんが、必要性を感じる時にシフト操作を行うことによってさらなるエコドライブの実現が可能となるケースもあります。
■気軽にスポーティな走りを楽しめる
この点は先ほども触れましたが、気軽にシフトチェンジを行えることからよりスポーティな走行を楽しめるという点もパドルシフトの魅力です。
一昔前までスポーツ走行を楽しむのであればMT車を選ぶのが一般的でした。しかしパドルシフトによってシフト操作が可能であれば、普段はAT車として使用し、スポーティな走行を楽しみたい時のみシフトチェンジしながら車を操作することができます。
パドルシフト搭載車が増えている?
搭載車は?
パドルシフトが登場したばかりの頃は、それほど多くの車種に搭載される機能というわけではありませんでした。
しかし、近年ではパドルシフト搭載車が増えています。
■高級車だけのオプションではなくなった?
前述の通り、パドルシフトを市販車にはじめて搭載したのは高級車で知られるフェラーリでした。その後、この機能は多くのメーカーで採用されるようになりましたが、高級車が中心となっていたようです。
現在ではパドルシフトは高級車だけのものではなくなっています。高いグレードのモデルのみでなく、大衆車などに標準装備されているというケースも増えています。パドルシフト搭載車の人気は高く、運転者にとってのメリットも大きいことから今後も増えていくことが予想されます。
■軽自動車にもパドルシフトは必要?
パドルシフト搭載車は普通車というイメージがもたれがちですが、現在では軽自動車にも採用されるようになりました。軽自動車の場合はあまりスポーティな走行をするというイメージがなく、必要性に疑問視を抱く方もいるかもしれません。
しかし前述の通りパドルシフトによってエンジンブレーキなどをうまく使用することができれば、フットブレーキに頼りきった運転になりづらいといったメリットがいくつもあります。そのため、軽自動車においてもパドルシフトは有効なオプションであると言えるでしょう。
■パドルシフトの後付けは可能?
パドルシフトが付いていない車に、後付けをしたいと考えている方もいるかもしれません。もともとマニュアルモードが搭載されたAT車であればパドルシフトの後付けは可能です。
実際に後付けするためのキットなども販売されていますが、取り付けは決して簡単ではありませんので、自動車整備工場やカーショップなどに相談してみましょう。工賃には幅がありますが、キット代は別で1〜3万円程度で取り付け可能なケースもあります。
まとめ
パドルシフトを使った運転を楽しもう
パドルシフトは、近年ではさまざまな車種に採用されるようになった機能のひとつです。ハンドルから手を離すことなくシフト操作をすることが可能なため、さまざまなメリットがあります。
パドルシフトをうまく活用することができればよりエコなドライブも可能となりますし、より運転を楽しむことも可能です。
これから車を購入することを考えているのであれば、パドルシフトの有無をチェックしてみてはいかがでしょうか。