ホンダ、挑戦と失敗の歴史を彩る「これっきりカー」達!
《写真提供:response》ホンダ・F-1と本田宗一郎
ホンダの歴史は、挑戦の歴史!そう、ホンダは世界で最もチャレンジングなメーカーとして、会社創業時から、オートバイの世界選手権や、F-1に果敢に挑戦してきました。
そのチャレンジングな歴史のなかから、N360やシビック、アコードといった画期的なクルマの数々が生み出され、ホンダを世界有数の自動車メーカーに押し上げてきました。そう、「失敗を恐れずにチャレンジする!」というのが、ホンダの企業文化なのです。
一方で、「失敗を恐れない」と言うことは、失敗を沢山しているかもしれない、という事ですよね。そう、ホンダの挑戦の歴史には、一代だけで消えてしまった数々の「これっきりカー」達が・・・。
■ホンダ Z
《写真提供:response》ホンダ Z
例えば、「ホンダ Z」は、1998年10月に発売され、わずか3年後の2002年には生産中止になってしまいました。当然、モデルチェンジもされずに「これっきりカー」に。
ホンダ Zは、軽自動車なのにミッドシップにターボエンジンを積んだ、フルタイム4WDという、スペックだけは2代目NSXも真っ青なスーパーカーでした。でも、そんな凝ったメカニズム故に、普通車とそう変わらない高額な軽自動車となってしまい、販売が伸びませんでした。
ミッドシップ+ターボエンジン+4WDがもたらす安定感の高い走りや、ミッドシップゆえの広い室内等、多くの特徴をもった面白いクルマでしたが、一般の軽自動車ユーザーをからは、「ただ高いだけ」と思われてしまったんですね・・・。残念!
■ホンダ エディックス
《写真提供:response》ホンダ・エディックス
ホンダ エディックスは、フロントシートもリアシートも3人掛けで、2列シートなのに合計6人乗れるという「ミニバンの新しいカタチ」としてデビューしました。エディックスは、6人乗れる割には全長が4,285mmと非常に短く、コンパクトで取り回しのいいミニバンとなっていました。
また、4人乗っても6人乗ってもシートアレンジが変わらないため、6名乗車時でもラゲッジスペースをフルに活用できると言う、非常に合理的なデザインになっています。
《写真提供:response》ホンダ・エディックス
しかし、当時は3列シートのミニバンの全盛期で、同じホンダのラインナップでも3列シート7人乗りの「ストリーム」が設定されており、普通のお客様はそちらを選んでしまうのでした。
結果、エディックスの販売はなかなか伸びず、販売期間は約5年と健闘したものの、遂に生産が終了。モデルチェンジもなく、「これっきりカー」になってしまったのでした。本当に、コンセプトは面白いんですけどね・・・。
「これっきりカー」クロスロードって、どんなクルマ!?
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
ホンダ・クロスロードは、登場が早すぎたのかもしれません。実は2代目となるクロスロード(初代はランドローバー・ディスカバリーのOEMモデルでした)が登場したのは、2007年の事。
2007年といえば、アメリカでは初代iPhoneが発売され、日本では安倍晋三首相が参議院選挙で大敗した責任をとって退陣し、第一期安倍内閣が終焉した年。自動車業界では第40回の東京モーターショーが開催され、復活した日産GT-R(R35)が初公開。大いに話題となってお客さんを集めました。
また、三菱はランサー・エボリューションXを発売し、スバルはインプレッサWRX STIをモデルチェンジと、国産ハイパフォーマンスカーの黄金時代とも言える時期でもありました。
そんな2007年の国内の自動車マーケットは、まだまだ3列シートミニバンの全盛期でした。2007年の年間新車販売ランキングの第5位は日産・セレナ。6位がトヨタ・エスティマ、7位はトヨタ・ヴォクシーで10位が兄弟車のノアと、ミニバンが売れている時代でした。
2021年の今からみれば信じられないかもしれませんが、2007年当時はSUVという言葉も一般的では無く、販売されていた車種も、トヨタではハリアーやランドクルーザー、日産ではエクストレイル、ホンダではCR-V、スバルではフォレスター等、限られたものでした。
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
今とは大きく環境の違う2007年の自動車マーケットに投入されたクロスロードは、ある意味、2021年の今に販売されているSUVに非常に近いコンセプトをもっていました。
そのコンセプトとは、「あまり四駆っぽくない、乗用車に近いSUV」というものです。今どきでは「クロスオーバー」と呼ばれるジャンルのSUVで、「普通の乗用車の車高を上げて、背を高くしました」というぐらいの、ライトな感覚のSUVです。
最近発売されるSUVは、多くがクロスオーバーのコンセプトを持つモデルとなっていて、今、一番はやっている車種と言っても過言ではありません。
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
2007年発売にも関わらず、クロスロードはそんな最新の「クロスオーバー」に極めて近いコンセプトを持っていました。クロスロードは、一見すると「なんか乗用車っぽい」という印象を受けます。
確かに、踏ん張ったオーバーフェンダーや立体感のあるドアロアーガーニッシュ等、力強さをアピールするデザイン上のポイントは散りばめられているものの、同じ2007年に発売された2代目エクストレイルほど、分かりやすい「四駆のカタチ」はしていませんでした。
2021年の今から見れば、そんな乗用車っぽいSUVなんてごく普通に思えてしまいますが、14年前はそうではありませんでした。やっぱり、四駆は四駆らしいカタチをしていたクルマが好まれる時代だったのです。
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
また、クロスロードはコンパクトボディながら、3列シートで7人乗れるSUVというコンセプトでした。
しかし、2007年当時は同じホンダのストリームや、そのライバルであるトヨタのウィッシュが全盛期の時代で、それらのミニ・ミニバンと比較をすれば、相対的に居住性の劣るクロスロードは、「中途半端」とも思われるクルマになってしまいました。
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
でも、そんな「乗用車っぽいSUV」というコンセプトのおかげで、クロスロードは今見てもデザイン上の古さを感じさせません。どこかのメーカーが、クロスロードそっくりなクルマを今発売しても、「ああ、最近流行りのクロスオーバーね」と思えてしまう、タイムレスなデザインだと言えます。
と言う事は、今、クロスロードを中古車で買っても、「なんであんな古いクルマに乗ってるの?」と思われないと言うにもなります。
クロスロードは、時代を先取りしすぎた故に、マーケットの理解を得られず、販売が振るわないクルマとなってしまいましたが、それ故に、コンセプトやデザインは今でも十分に通用するクルマなのです。
クロスロードのスペックは?
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
クロスロードは、比較的コンパクトなSUVとなっています。全長は4,285mm、全幅は1,755mm、全高は1,670mmと、日本の道路状況にジャストフィットするサイズと言えるでしょう。
全長が4.3mに満たない短いボディに、3列シートを詰め込んだホンダのパッケージングの技術はなかなかスゴいと思います。
エンジンは、2Lと1.8Lのi-VTECの二種類。2L版は150PS/190N・mを、1.8L版は140PSと174N・mをそれぞれ発揮。2Lと1.8Lのエンジン出力がそれほど無いのが特徴です。
FFと4WDモデルが用意されており、4WDは必要に応じて後輪にトルクを伝達するオンデマンド型となっていました。また、車体の横滑りを防止するVSAが、4WDモデルにのみ標準で装備されています。4WDモデルには、坂道発進をアシストするヒルスタートアシスト機能も標準で装備されており、FFモデルとの装備差が意外に大きいモデルとなっています。
2007年当時の販売価格は、売れ筋の1.8Lエンジン搭載のFFモデルの18Lで184万円。4WDモデルは18Xと言うグレードになり、約30万円アップの215万円でした。
最上級グレードの20Xiの4WDモデルは278万円に設定されていて、かなり高額ではありますが、当時はまだ貴重だったミリ波レーダー付きのアダプティブクルーズコントロールや、普及が始まった時期のサイドカーテンエアバッグ等の装備が備わっているてんこ盛りモデルとなっていました。
クロスロードの中古車は買いなのか!?
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード 無限仕様
クロスロードの中古車は200台前後が登録されており、価格帯は19.8万円〜178万円、平均価格は85.8万円となっています。
低価格車は、やはり走行距離が10万キロを大きく超えた過走行車になります。車齢も10年以上の個体が多いので、安いからと飛びつくとあとあとメンテナンス費用がかかってくるかもしれません。
平均価格帯の85万円前後では、走行距離が6〜10万キロ程度の個体が多く登録されています。個体の中心は、1.8LのFFモデルとなっていて、たまに走行距離のかさんだ2Lモデルが混ざっている状態です。
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード 無限仕様
100万円以上になると、新車時の車両価格が高かった2Lの4WDモデルが出てくるようになる一方、前のオーナーさんが様々なカスタムを施した個体が多数登録されています。
タイヤを大径のオフロードタイヤに変えて車高をアップしたり、ルーフキャリアを取り付けていたりと、クロスロードを本格的な四駆に見せるためのカスタムが目立ちます。
中には、クロスロードをあの超巨大四駆のHUMMERそっくりにカスタムしたモデルもあり、なかなか多彩です。カスタムは、自分でやろうとすれば結構なパーツ代や工賃がかかりますので、最初からカスタムされたモデルを狙うのも手かもしれません。
ただ、カスタムパーツは車検に非対応だったり、耐久性に問題があるものもあるので、買う時によく確認する事をオススメします。
いや、人がやったカスタムじゃなくて、やっぱり自分の手で世界で1台だけのクロスロードを仕上げたいんだ!と言う方は、価格のこなれたノーマルの個体を仕入れて、自分好みにカスタムして行くのもいいでしょう。
まとめ
《写真提供:response》ホンダ・クロスロード
残念ながら、一代きりで販売が終了してしまった「これっきりカー」のホンダ・クロスロード。
しかし、そのコンセプトやエクステリアのデザインは、今でも十分に通用するものがあります。
登場するのが早すぎたクロスロードですが、比較的、中古車も流通していますので、購入を検討してみるのもいいかもしれません。
ホンダの「挑戦の歴史」の1ページを、あなたも体験してみてはいかがですか?