低迷するセダン人気、その影響でお買い得な車が多い
《画像提供:Response》〈写真撮影:平原克彦〉トヨタ クラウン セダン
「セダン」という自動車カテゴリは、近年では悪路走破性の高い「SUV」や乗車人数の多い「ミニバン」、経済性の高い「軽自動車」などに押されて人気が陰りつつありますが、元々は自動車の形状における最も基礎的な存在です。
そして現在でも、セダンはただの伝統的な形状というわけではなく、「車体の剛性を高くしやすいため乗り心地が良い」「揺れが少なく長距離・長時間乗車しても疲労が少ない」「エンジンルームやトランクなど、乗員の前後に広いスペースが確保できるので衝突安全性が高い」という、セダン特有のメリットは残っており、そのどれもが魅力的な性能だといえます。
そんなセダンですが新車の人気と販売台数が伸び悩む中で、中古車市場でも随一の値落ちの激しいカテゴリとなっています。
しかしこれは中古でセダンの購入を検討している方にとってはむしろ嬉しい話。
これまでセダンに関心を持たなかった方にも向けて、セダンに秘められた魅力とともに驚きのお買い得さを知っていただくため、厳選したコスパ最強のセダンを5車種紹介します。
人気がない?だからこそチャンス!コスパ最強の中古セダン5選
■レクサス GS
《画像提供:Response》レクサスGS430
レクサスのラインナップから消えたミドルサイズセダン
トヨタの高級ブランド「レクサス」。2005年に日本国内にも導入されておよそ17年経った現在ではすっかりその認知も進み、海外の高級自動車ブランドにも堂々と肩を並べる日本の誇るプレミアムカーになったと言っても過言ではないのではないでしょうか。
そのレクサスの中でも、上位モデルとなる中型セダン「GS」がお買い得という話は、もしかしたら意外に思われるかもしれません。
GSはレクサスブランドに導入される以前は「アリスト」の名でトヨタにて販売されていた中型かつハイパワーの高級セダンで、レクサス内でセダンの最上位に位置する「LS」の直下となる重要なポジションを担っていました。
しかし、世界的にSUVというボディ形状の人気が高まる昨今、その煽りをうけたセダンの人気は低迷。これはレクサスというブランド力をもってしても避けられるものではありませんでした。
さらに同ブランド内ではフラッグシップセダンの「LS」とエントリークラスセダンの「IS」に挟まれたGSはどんどん存在感が薄れていき、ついに2020年には生産が終了してしまったのです。
LSに次ぐ高級セダンの基本性能はもちろん高い
《画像提供:Response》レクサスGS430
しかしGSはLSに次ぐ高級セダンであり、たとえ市場での人気が下がろうともその性能や快適性、安全性は極めて高いものであることは不変のもの。
しかも基本的にGSは高級セダンのセオリーに則った「FR(後輪駆動)」を採用しています。つまり前述した快適性一辺倒の車ではなく、力強いパワーを路面にしっかり伝えながら走りとハンドリングの気持ち良さも楽しむことができます。
驚くほどお買い得な高級中型セダンという不遇な立場となったGSですが、むしろセダンを好むユーザーにとってはこれをチャンスと捉えて、GSを存分に楽しんで頂きたいと思います。
またレクサスは2012年頃から「スピンドルグリル」を採用した迫力のあるフロントマスクにブランド全体で統一していきましたが、このデザインが反映される以前のモデルの方がより市場価格が抑えめとなっています。
スピンドルグリルでないシンプルなデザインもまた上品で美しい個性を纏っておりますので、GSをよりお得かつスマートに乗りこなしたい方に向けてはこちらを強くおすすめします。
GSの新車時価格は、552万~775万円ほどでしたが、現在の中古平均価格は66.4万円です。中古GSは40万円~70万円ほどの価格帯に集中しており、31万円台の車体も存在しています。
■ホンダ レジェンド(4代目)
全長5mクラスのホンダ最上級セダン
《画像提供:Response》ホンダ レジェンド
ホンダの最上級セダンである「レジェンド」。海外市場ではホンダの高級車ブランド「アキュラ」にて「RL」という車名で販売されていました。
その全長は約5mにもなる、大型のセダンです。
このレジェンドも例に漏れずセダン不人気の煽りを受けてかなりお買い得になっていますが、そこには日本国内でのホンダというブランドにカジュアルな印象が強く、高級車のイメージが薄いことも影響していました。
しかしこのレジェンド、地味な存在かと思われがちですが、実は非常に革新的な車となっています。こちらではとくに見所の多さとお買い得感の高い4代目モデルを紹介します。
2004年に登場した4代目レジェンドは、国産車を長年縛りつけていた「280馬力自主規制」を最初に突破し、300馬力もの高出力にて発売された歴史的なモデルです。
今では珍しくない出力に感じられるかもしれませんが、この車を皮切りに国産車が海外勢に負けないパワーを備えるようになりました。
さらに4代目レジェンドはその駆動方式に歴代モデルで初めて「AWD(四輪駆動)」を採用。しかもこの四輪駆動は前後左右全ての車輪の回転を電子的に制御することで走破性のみならずコーナリング性能まで高めた非常に高性能かつスポーティなもので、ホンダの誇るスーパースポーツカー「NSX(2代目)」にも後に同様のシステムが搭載される画期的な技術でした。
このハイパワーさとハンドリングの良さ、そして安定性を備え持つレジェンドは大型セダンのボディを持ちながらもその乗り味はスポーツカーそのもの。同カテゴリにおいてかなり個性的な存在で、いわゆる保守的な大型セダンを求める一般的なユーザー層にはとても理解しがたいものでもあり、売上が伸び悩むことになりました。
今では珍しくないハイパワー高級セダンでもかなりお買い得に
《画像提供:Response》ホンダ レジェンド 純正アクセサリー装着インテリアイメージ
2022年の現在においてはハイパワーでスポーティな高級セダンという存在は珍しいものでは無く、当時のホンダの考えがあまりにも先進的すぎたのかもしれません。
そんな背景を持つこのレジェンド、新車価格から想像できないくらい中古車市場では大変お買い得な価格で流通しています。
しかし今こそホンダの威信を込めて開発されたこの車の真髄を味わういい機会なのではないでしょうか。
レジェンドの新車時価格は、525万円~665万円ほどでしたが、現在の中古平均価格は64.6万円です。中古レジェンドは30万円~60万円ほどの価格帯に集中しており、最低価格では34万円台の車体も存在しています。
■アルファロメオ アルファ159
《画像提供:Response》アルファロメオ アルファ159
美しいスタイリングとドライバビリティが魅力
イタリアの自動車メーカー「アルファロメオ」。お洒落かつ走りを楽しめる官能的なモデルが多いことで名のしれたメーカーですが、このアルファロメオの中古車にも魅力的かつお買い得に購入できるモデルが存在します。
それがスポーツセダンの「アルファ159」です。
2006年に日本市場での発売が開始されたアルファ159は先代にあたる人気モデル「アルファ156」をさらに進化させ、そのスタイリングもグッと現代的なものになりました。
フロントフェイスに鎮座する盾型のラジエーターグリルはより大型化され、アルファロメオの伝統を力強く主張しています。
また、左右それぞれに配された3連のヘッドライトは先進性とクラシカルさという相反する要素を両立した個性的な形状で、それらを見事にまとめ上げたボディは直線的で一見シンプルに思えながらも繊細で逞しく、素直にカッコいいと感じられます。
もちろんアルファ159の魅力はその美しいスタイリングやお洒落なインテリアの仕上げだけではありません。
スポーツセダンたるアルファ159は、大きすぎないボディの中にアルファロメオらしく元気に回るエンジンを搭載しており、トランスミッションはATにくわえてMTも選択できます。これがまたアルファ159ならではの希少なポイントで、実用的なセダンでありながら「運転を楽しめるスポーツカー」という顔も持ち合わせています。
ハンドリングは前輪駆動(FF)でありながらシャープそのもの。目指した操舵角度を瞬時に進行方向に反映させ、思うがままのドライビングを味わうことができます。
硬めのシートも相まってアルファ159の乗り心地は少々ハードさもありますが、それは先代の156とも共通したスポーツセダンらしさでもあり、現在の路面の状況を正確にドライバーに伝えてくれます。
故障頻度が高い可能性さえ心得ておけば驚きのお買い得さ
《画像提供:Response》アルファロメオ アルファ159
カッコよくてお洒落で運転も楽しい、しかも路上にありふれていないイタリア車。こんな素敵なアルファ159も中古となれば驚きのお買い得なモデルになるから面白いものです。
国産車と比べてしまうと修理などの頻度が増えるであろうことは心得ておく必要はありますが、ぜひ一度飛び込んでみて欲しいおすすめのモデルであることは間違いありません。
アルファ159の新車時価格は、399万~585万円ほどでしたが、現在の中古平均価格は84万円です。中古アルファ159は40万円~90万円ほどの価格帯に集中しており、19万円台の車体も存在しています。
■日産 ティアナ
《画像提供:Response》〈撮影:中村孝仁〉日産・ティアナ XV
圧倒的コスパの高さを誇る車
「ティアナ」は日本国内では3世代にわたって販売されたモデルで、歴代ともに全長は約4.8m~4.9mという堂々としたボディサイズを備える中型セダンです。
ティアナが持つ最大の優位性は、コストパフォーマンス。それもそのはずで、新車で販売されている時点でもティアナはコストパフォーマンスに優れていたことで知られていたモデルでした。
日産にはトヨタの「レクサス」やホンダの「アキュラ」に並ぶ高級ブランド「インフィニティ」があり、日産のスカイラインやシーマなどはインフィニティブランド内で販売されているモデルです。
しかし、ティアナはそれらとは異なり海外でも日産ブランド内で販売される、比較的一般層に向けて開発されたモデル。つまり車体サイズは大きいもののあくまでもベーシックカーと言える存在です。
さらに駆動方式も基本的には前輪駆動(FF)で、そこにはスポーティな味付けや飛び道具のようなティアナならではの最新装備などもありません。
それゆえに、ティアナは前述したレクサスGSやホンダのレジェンド、アルファロメオのアルファ159のような「この車じゃないといけない」という要素が薄く、熱狂的に求められることが少ないモデルです。
しかし、これが逆にティアナの強さにもなります。
凝った駆動方式でなく一般的なFFを採用することで車内空間は拡大され、しかも大きいボディサイズも加わり室内はとても広く快適です。
素直でベーシックな味付けのハンドリングとサスペンション、柔らかいシートはその全てが快適な乗り心地に繋がります。
それでいて前述した大型の車体とセダンというボディ形状は、走行中の横揺れや風の影響も受けにくく、衝突時にはフロント・リヤともにクラッシャブルゾーンが確保されるために安全性も高いと、まさに良いこと尽くめ。
さらにデザインにおいてもティアナは国内では上級クラスに位置するモデルであり、各所にメッキを配した高級感のある装飾が施されています。
初代モデルがお買い得
《画像提供:Response》日産 ティアナ
こんなメリット満載の車が中古車市場でお買い得というのであれば、ティアナは中古車市場における中型セダンカテゴリにおいて、最もおすすめできる1台と言っても過言ではないかもしれません。
また、最初に記載したようにティアナには歴代で3つのモデルが存在しますが、インテリアを「モダンリビング」風に演出した初代ティアナが最も個性の強かったモデル。
中古車市場において在庫台数も豊富で、車両価格の安く、よりコストパフォーマンスを重視する方にはこちらの初代モデルがとくにおすすめです。
ティアナの新車時価格は、225万円~479万円ほどでしたが、現在の中古平均価格は84.0万円です。中古ティアナは20万円~90万円ほどの価格帯に集中しており、15万円台の車体も存在しています。
■マセラティ クアトロポルテ(5代目)
《画像提供:Response》〈撮影:瓜生洋明〉マセラティ・クアトロポルテ スポーツ GT S ビアンコフジ
「フェラーリ」のエンジンを搭載したセダン
最後に紹介するモデルがマセラティの「クアトロポルテ(5代目)」です。
マセラティは戦前からスポーツカーを製作・販売しているイタリアの高級自動車メーカーです。数々の名車を世に生み出しつつも、その歴史は幾度もの経営難を繰り返した苦悩の連続で、その度に様々な資本や大手自動車メーカーの傘下を渡り歩きました。
1997年にマセラティは、かの「フェラーリ」の子会社になったのですが、当時の体制下で開発・発売された大型高級セダン「クアトロポルテ」が魅力的かつ中古車でお買い得なモデルになっているのです。
クアトロポルテという名はイタリア語で「四つの扉」を意味し、まさにセダンを表す驚くほどシンプルな名称です。
その外装デザインはマセラティと同じくイタリアに身を置く自動車デザイン・エンジニアリングの専門企業「ピニンファリーナ」によるもので、同社は多くのフェラーリのデザインも行った名門中の名門。
しかもそのデザインを担当したのが、当時ピニンファリーナに所属していた日本人デザイナー奥山清行氏ということもあり、日本人のデザインしたイタリア高級車という面白い経歴を持った車です。
クアトロポルテはまずこのデザインが非常に魅力的で、メッキなどの分かりやすい装飾は控えめなのに異質的な高級感が漂っています。
これに類似する車は他に無く、明らかに国産車や他の海外の車とも異なる唯一無二な個性です。
また、内外装デザインのみならず走行性能に関わる箇所までフェラーリの技術がふんだんに盛り込まれたクアトロポルテは、そのエンジンにもフェラーリのスーパーカー「F430」に搭載されたユニットとベースを同じとする4.2リッターのV型8気筒エンジンを採用。
最高出力は400馬力にも達する出力を絞り出すこのエンジンは、F430とは完全に同じものではないものの、その俊敏さとエグゾーストノートはまさに「スーパーカー」さながら。
クアトロポルテの全長は5mを超える大柄なボディのセダンにも関わらずアクセルをひと踏みするだけで、見た目にそぐわぬ爆発的な高音を周囲に響かせながら猛烈な加速感をドライバーに味あわせてくれます。
維持費が高額になる可能性はあるがそれを見込んでも破格
《画像提供:Response》〈撮影:瓜生洋明〉マセラティ・クアトロポルテ スポーツ GT S ビアンコフジ
このようなとてつもないスペシャルモデルということもあり、クアトロポルテ(5代目)は新車当時は約1,300万円~1,900万円という高額にて販売されていましたが、なんと現在の中古車市場では約半数が120万円~270万円という驚きの値段で流通しています。
いくら時間が経過したとはいえ1,000万円以上の値落ちはまさに「コスパ最強」。
維持費も衝撃的であることは間違いありませんが、人生を変えるほどの魅力も備えている車です。
クアトロポルテ(5代目)の新車時価格は、1,344万円~1,850万円ほどでしたが、現在の中古平均価格は356.6万円です。中古クアトロポルテ(5代目)は300万円~500万円ほどが多いものの、なんと約半数が120万円~270万円ほどの価格帯にあり、安いものでは99万円台の車体も存在しています。
大型セダンの値落ちは特に激しい…だからこそお得で満足感が高い
《画像提供:Response》S63 AMG
極めて常識的なものから個性の塊のようなものまで、コスパ最強なおすすめのセダンを5車種紹介しました。
セダン、とくに大型のものは現在の自動車市場において最も中古車価格の下落が激しいカテゴリでありますが、それだけに中古で購入した際の満足度は極めて高くなる傾向にあります。
ただし、再び中古で販売しようとするとやはり値段はつきにくいため、思い切って乗り潰す方向での使用を考え、気になる一台を探していただけると非常に満足の行くカーライフが送れることでしょう。