そもそもパドルシフトとは?
パドルシフトとは、シフトの形式名称であり、メジャーなものではフロアシフトが一般的なものとして挙げられます。
古いタクシーなどでは、コラムシフトが採用されていましたが、最近ではまずお目にかかる事はなくなってしまいました。
そんな中でもパドルシフトが導入されて話題になったのが、日産のスカイライン、フェアレディZ、ステージアなどでしょう。シフトチェンジ時の動力伝達の遅延など、いささか粗削りの雰囲気重視のものでしたが、F1気分でワクワクしながら運転をした記憶があります。
少々話が逸脱してしまいましたが、そもそもパドルシフトとはF1から生まれました。
1989年にスクーデリア・フェラーリが、操舵の安全性向上やシフト操作に要する時間を短縮するためにフェラーリ640に初めて搭載したのがはじまりです。
V12・3.5リッターのトルクの細いエンジンの対策として7段変速を採用。そのシフトミスを防ぐ目的での導入でパドルシフトが採用されました。オフのテスト走行ではセミATにトラブルが続出しましたが、実戦では見事に優勝するという輝かしい記録を残しました。
そして、これを皮切りに一気にパドルシフトが主流となり現在に至ります。
パドルシフトの仕組み・構造
パドルシフトの構造、仕組みは市販車で現在主流となっているものは、セミオートマチックトランスミッションと呼ばれるものが一般的となっています。
種類として、トルクコンバーター式AT・DCT・CVTなどが挙げられ、要約すると、通常時はオートマチックミッションにより変速タイミングとクラッチ操作が不要で運転ができますが、任意のタイミングでもシフトチェンジを操作する事も可能となっているという事です。
マニュアル車のように常時変速を強いられる事はなく、またクラッチ操作も必要が無い事から運転免許のマニュアル車の定義に該当しませんので、AT限定の運転免許でも運転する事が可能となっています。
パドルシフトの使い方とメリット・デメリットについて
今までパドルシフトが搭載された車に乗った事が無い人にとって、特に必要性を感じない人が多いでしょう。確かに、一昔前のパドルシフトは実用性があると言えないものや、雰囲気を楽しむ趣旨で導入されている車も数多くありました。
しかし昨今開発が進み、本格的なスポーツ走行にも対応できるパドルシフトであったり、燃費向上目的による導入であったりと、実用性の高いパドルシフト搭載車が増えてきて注目されています。
【スポーツ性能での活躍】
では、どのような場面で活躍するのでしょうか。まず、スポーツ走行目的でのパドルシフトが活躍する場面をご紹介しましょう。スポーツカーとして最先端の技術を投じた車として知られるGT-R(R35)にはDCTが採用されています。
そしてR34型スカイランGT-Rに採用されていたHパターンシフトの3ペダルミッション車の採用は惜しくも無くなりました。不採用にはコストダウンや高速域でクラッチを切った場合の挙動による危険性を危惧した理由がありますが、DCTが実用的なものに進化した事も要因のひとつと推察できます。
このDCTはシフトアップ時のロスも極限まで抑えられ、スムーズ且つ迅速にシフトアップが可能になっています。
また、加速時のロスを抑えるだけでなく、減速時にはヒール&トゥをも凌駕するシフトダウンによる減速も可能となっています。性能面では評価できますが、スカイラインを乗り継いできたGT-RファンにとってはDCTのみのラインナップが無くなった事に悲観する声もありますが、それ程までに実用的なものとなっている事は間違い無いでしょう。
【燃費向上、実用面での活躍】
一方、近年スポーツ走行を想定していない車種にもパドルシフトが採用されています。勿論雰囲気を楽しむといった嗜好目的による意味合いもありますが、最近では全メーカーの最重要課題となっている燃費の向上にも一役買ってくれる面においても、採用車種が増えた要因となっています。車種で言えばワゴンRスティングレーなどが挙げられます。
ワゴンRスティングレーは室内高が高く、同メーカーのスポーツタイプであるアルトワークス(5速AGS)と比べても、ワゴンRスティングレーは全高が高く伝達効率が悪いCVTとなっています。
CVTにはギアが存在しないので、減速比(以下ギア)を区分けして疑似的に区分けされた領域内で変速するという用途でパドルシフトを用います。それがどのように燃費向上に繋がるのか説明をしますと、自動変速に任せた状態での走行時は、通常走行時には問題なく走れますが、勾配のきつい斜面を登っている際などでは、シフトスケジュールに無駄が生じる事があります。
そういった場面で、ギアを無駄に上げずにこちらで選択して、トルクの太い領域のギアに留める目的でパドルシフトを利用します。そうする事で、効率の良いギアで走り続ける事ができ、燃費の向上へと繋がります。
似たような状況で、キックダウンして加速したい場合などにも、意図的にシフトダウンさせる事で無駄な踏み込みをせずに且つ、素早くシフトダウンが可能となりますので、こちらも燃費の向上に繋がります。
それ以外にも長い下り坂を走る際に、ブレーキを多用する事によってブレーキが焼けたり、ブレーキフルードの温度が上がったりなどでブレーキがきかなくなる現象を防ぐ事もできます。
■メリット
メリットとしては、一つ目はパドルシフトによる変速を自分で操作する楽しみが、AT限定免許でも味わえるという事です。
二つ目に燃費の向上、無駄な変速を手動で回避できる事による燃費の向上・車の負荷軽減などができるということでしょう。
■デメリット
デメリットとしては、変速操作が煩わしい事から、AT車を選んだ人にとっては、無用の長物となってしまい不満の声もあります。そういう人への考慮からか、パドルシフト自体が小さく邪魔にならない大きさに設定している車種が多い事も事実です。特に使わなければ邪魔という事以外にはデメリットはありませんが、パドルシフトを導入した事で上がったコストなども無駄と言えるでしょう。
パドルシフト搭載車
前項でもご説明した通り実用性が高まった事から、様々な車種がパドルシフトの採用を決定しています。では、例にパドルシフトが採用されている車種をご紹介したいと思います。
■マツダ CX-5
マツダの人気SUV、CX-5。こちらにもパドルシフトが採用されています。SUVで雪道を走る際にも、下り坂などでスピードが出過ぎないようにキープする為に、パドルシフトで減速しながら走行したりなど、活躍するシーンはたくさんあります。
■マツダ CX-8
CX-5同様、CX-8にもオプションでパドルシフトを搭載可能となっています。
3列シートで乗客定員いっぱいで乗車した際の、重量がある時に勾配のきつい斜面を加速する際にパドルシフトが活躍するでしょう。
■ホンダ N-BOX
ターボ車にパドルシフトの設定がされています。かなり小さく申し訳なさそうに装着されていますが、ターボがきいてくるタイミングで維持したい時など、パドルシフトがある事でスポーティな走りを思う存分楽しめる事ができます。
■ホンダ S660
こちらはスポーツ走行を想定した車種になりますが、S660にもパドルシフトが採用されています。
マニュアルとCVTのラインナップで、CVTに限定してパドルシフトが用意されています。普段からガンガンスピードを出して走る訳じゃなく、時々ドライブがてらにワインディングして、少しスポーツ走行を楽しみたいという人にはパドルシフトを選択するといった感じでしょう。
ミッドシップのスポーツタイプの車でも問題なく対応できる点からパドルシフトを採用しているので、CVTとは言えパドルシフトが実用的なものとなっていると言えるでしょう。
パドルシフトの後付けはできる?
後付けできるものと、できないものがあるので注意が必要です。
最低条件として、マニュアルモードがある事が絶対条件となりますので、マニュアルモードがあればつけれる場合が多いので、販売店に問い合わせしてみましょう。
マニュアルモードがあれば、次にパーツを探しそのパーツメーカーに自身の車が対応しているかどうかを確認してみましょう。その際は車検証などを用意して確認するとスムーズに対応してくれます。
自分で取り付ける場合は、取説通りに装着すればそこまで難しいものではありません。工賃はおよそ1~3万円くらいと、通常修理ではない事からバラつきがありますし、場所によっては断れる事もありますので、事前に整備工場に問い合わせてからの方がいいでしょう。
まとめ
今回はふつふつと人気が高まってきているパドルシフトについてご紹介させていただきました。
スポーツ走行をしない人以外にも用途やメリットもあるパドルシフトですが、まだまだ搭載車種も少ないのが現状です。現在乗っている車にも対応さえしていれば、簡単に装着する事ができますので、思い切って後付けで着けてみてもいいかもしれません。