セルモーターとは?
ボッシュ スターターモーター
セルモーターとは、エンジンを始動するための最初の回転を与えるモーターの事です。
自動車に搭載されているエンジンは、そのほとんどがレシプロエンジンと言う形式になりますが、レシプロエンジンは構造上、自力で始動し、回転をする事が出来ません。そのため、外部から回転を与えてもらう必要があり、その回転を与えるためにセルモーターが装備されています。
最近の車は、燃費向上のためにアイドリングストップが装備されている事が多いのですが、アイドリングストップは頻繁にエンジンの停止と始動を繰り返すため、セルモーターとそれを駆動する電源であるバッテリーに負担がかかる傾向にあります。
そのため、最近では1回目の車検の際にバッテリー交換を提案される場合が多いようです。
トヨタのハイブリッドシステム(プリウス)
一方、トヨタのトヨタハイブリットシステムや、ホンダのe:HEV、ニッサンのe-POWERのような、「ストロングハイブリッド」と呼ばれるハイブリッド車には、セルモーターがありません。なぜなら、走行用のモーターがセルモーターを兼ねているからです。
スズキ マイルドHV(スターター・ジェネレーター)
モーターは電流を流せば動力を発揮し、外部から回転を与えれば発電機になるという性質を持っているので、最近ではハイブリッド用のモーターとセルモーターを兼ねた簡易的なハイブリッドシステムも登場しています。スズキの「マイルドハイブリッドシステム」等がそれにあたり、比較的低コストでハイブリッドシステムを実現しています。
セルモーターの寿命は?
■乗り方で寿命は変わる
ホンダ ステップワゴン アイドリングストップ
セルモーターの寿命は、セルモーターを使用する回数と密接な関係があります。
アイドリングストップがついていない車で、燃費向上のために自分でイグニッションスイッチを切ってアイドリングストップをしている場合、セルモーターの寿命は短くなる事が考えられます。なぜなら、アイドリングストップがついていない車種では、セルモーターがアイドリングストップのために強化されていないからです。
アイドリングストップがついていない車は、比較的年式が古い車が多いので、車の経年劣化も含めて、セルモーターのトラブルが多くなる傾向があります。
アイドリングストップが付いている車では、アイドリングストップ用に耐久性の高いセルモーターが装着されていて、セルモーターを駆動するバッテリーもそれに対応して強化したものがついています。
そのため、通常の使い方ではセルモーターが故障しにくいような耐久性を確保していますが、極端に市街地走行が多く、頻繁にアイドリングストップと再始動を繰り返す場合などは故障の確率が高いでしょう。
エンジンがかからない場合はセルモーターの故障なのか?
車のトラブルで一番困るのは、「エンジンが掛からない」という事ではないでしょうか。エンジンが掛からない原因はさまざまあり、一概にセルモーターが原因とはいえません。エンジンが掛からない原因には何があるのか、一緒に見ていきましょう。
■エンジンが始動しない原因のほとんどはバッテリー
バッテリー
運転席に座って、いざ出発!というときに、セルモーターが回らずにエンジンが掛からなかったら焦りますよね。そんな時だからこそ、冷静にトラブルシューティングをして行きましょう。
まず、セルモーターが回らない原因の大半はバッテリーです。最近の車のバッテリーは、アイドリングストップのために頻繁にエンジンの停止/再始動を繰り返すために、かなりの負担が掛かっています。
また、カーナビや先進運転支援装備など、最新の車では電装系の装備がたくさんついているので、その分バッテリーへの負担が大きいです。当然、メーカーもアイドリングストップ用に強化したバッテリーを搭載していますが、それでもバッテリーの寿命は短くなる傾向があります。
そのため、セルモーターが回らない場合、まずはバッテリーが正常なのかをチェックしてください。セルモーターの寿命の方が、バッテリーの寿命よりもはるかに長い事を覚えておくといいでしょう。
最新のトヨタのガソリンエンジンモデルは、アイドリングストップを搭載していない車種が増えています。理由はアイドリングストップによる燃費向上での燃料代の削減分よりも、アイドリングストップ対応バッテリーの交換コストの方が高い場合もあり、あまりユーザーメリットが無いというものです。
あのトヨタがアイドリングストップの採用を躊躇するぐらい、アイドリングストップはバッテリーに負担をかけているのでしょう。
■バッテリーが正常でもエンジンが掛からない場合は?
JAF ロードサービス
バッテリーの状態が正常でもセルモーターが回らない場合は、セルモーターの故障を疑わなければなりません。
セルモーターの故障が疑われる場合、セルモーターを長い棒などでたたきながらセルモーターを回してみる方法があります。セルモーター自体が、モーターとギアという比較的単純な構造なので、単純なモーター内部の固着等であれば、これでセルモーターが回る場合もあります。
また、MT車の場合は「押し掛け」という方法もあります。運転手は運転席に座って、イグニッションスイッチをONにしたまま、ギアは1速か2速を選んでクラッチを踏んだ状態にして、後ろから人に車を押してもらって、ある程度スピードが出た時点でクラッチをつなぎます。
すると、駆動輪の回転がクラッチ、トランスミッションを通じてエンジンに伝わり、エンジンが回転を始めてエンジンが始動します。ただし、押し掛けは車の重量が重い場合等は車を押すこと自体が大変ですし、周囲の状況に気を付けて安全を確保して行う必要があります。また、AT車の場合は、物理的に駆動輪とエンジンが繋がっていないため、押し掛けはできません。
上記の方法はあくまで緊急措置ですので、エンジンが掛からない場合は、JAFや自動車保険会社のロードサービスを読んで修理工場に車を持ち込むのがいいでしょう。
もし、修理工場でセルモーターの異常を指摘された場合の部品交換費用は、一般的なセルモーターで3~5万円+工賃程度が相場となっているようです。
まとめ
以上、エンジンが掛からない場合の対処方法を、セルモーターを中心に見てきました。
エンジンが掛からないと言うトラブルの原因は大半がバッテリーですが、まれに、セルモーター自体の故障の場合があります。この記事で、エンジンが掛からない原因や対処方法をあらかじめ予習をしておけば、いざと言うときに冷静に対応できるのではないでしょうか。
よくある質問
■セルモーターの耐用年数は?
セルモーターの耐用年数は、一般的には10年10万キロ以上といわれています。最低でも、そのくらいの耐久性は持たせるようにメーカーも設計をしているようです。ただし、セルモーターはその使用頻度で寿命が大幅に変わりますので、頻繁にアイドリングストップと再始動を繰り返している車は、10年10万キロまで持たない可能性もあります。
■セルモーターの故障の際の初期症状は?
セルモーター自体は、あまり故障しないパーツではあります。セルモーターの異常の初期症状は、音で確認できることが多いようです。通常、エンジンの始動の際には「キュキュ!」という甲高い音がしますが、その音が「キュルキュルキュル」と低く、長くなった場合は要注意です。
ただし、セルモーターの音が変化する原因はバッテリーの劣化も考えられるので、エンジンが掛かりづらいと感じたときは、すぐに整備上場に車を持ち込みましょう。
■セルモーターはなぜ壊れる?
セルモーターの故障原因は、モーター部分にある「ブラシ」の摩耗によって発生することが多いようです。ブラシはモーターに電気を流す部品になりますが、回転するモーターに電流を流すためにモーターの回転部分に常に接触している必要があるため、モーターの使用時間が長いと、それだけブラシの摩耗も進みます。